Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第384話

 蓋を開ければ『星座盤』の圧勝だった。
 流石にこの結果は想定していなかったのかタヂカラオは呆然としている。
 当然だろう。 メンバーは全員Bランク以上で固め、自身はジェネシスフレームまで持ち込んだのだ。
 
 その上での敗北。 言い訳のしようがなかった。
 
 「あ、あのー」

 ヨシナリは何と声をかけたらいいのか分からなかったので、取り敢えず何か言わないとと思い声を上げたが、タヂカラオはややギクシャクとした動きで小さく胸を張る。

 「は、はは、いやぁ、参った。 参ったよ。 今回は完敗だ。 約束のPは後で送金するので確認してくれたまえよ。 では、我々はこれから反省会があるので失礼する。 次はこうは行かないから覚悟しておきたまえよ!」

 精一杯の強がりかランカーとしての矜持か最低限の体裁は整えてタヂカラオは去っていった。
 返事を待たずに消えたのは仕方のない事だろう。 振り返るとホーコートは落ち込んでいるのか俯いているが、他は勝利を喜んでいた。 マルメルは親指を立て、ふわわはうんうんと頷いている。

 グロウモスは小さく拳を握り、シニフィエどうですかと胸を張っていた。
 ヨシナリはそんな仲間達に苦笑。

 「取り敢えず戻って感想戦しますか」

 仲間を伴ってユニオンホームへと引き上げた。


 「まずは二軍以下とは言え『思金神』に勝てたのは大金星と言えるでしょう。 皆さん、お疲れ様です! やりましたね!」

 まずはホームに戻ったヨシナリはそう言ってメンバーを労う。
 
 「いやぁ、俺達の実力だって言いたいところだけど、お前に貰った機体が無かったら普通に力負けしてたと思うぞ」
 「そうやねー。 相手も弱いって訳やなかったし、前のままでも勝てない事はないと思うけどここまで楽に勝てたのはヨシナリ君のお陰やと思うよ」
 
 グロウモスは無言で肯定するように何度も頷く。 

 「さて、では恒例の感想戦と行きましょう。 順番に見ていくので何か意見や感想があれば積極的に発言してください。 では、行きます」
 
 そう言ってヨシナリはリプレイ映像を再生。 
 フィールドは都市。 『星座盤』『思金神』は西と東に配置されている。
 『星座盤』の作戦としてはふわわ、シニフィエが前衛。 マルメル、ホーコートが中衛、グロウモスが後衛というフォーメーションだ。 ヨシナリは遊撃として敵を引っかき回す形になるのだが、今回は相手のタヂカラオが狙って来るであろう事は読めたので抑えに専念する形となった。

 ヨシナリが最初にフォーカスしたのはホーコートだ。
 アップになってホーコートは僅かに俯く。 ヨシナリとしても一人だけ脱落してしまった事を気にしているようなので最初に触れてさっさと済ませてしまおうといった判断だった。

 「まずはホーコート。 最初に言っとくけど、相手は格上だったからやられてしまった事を責める気は欠片もないよ。 短時間でも足止めできたんだ。 俺に言わせれば上出来だった」
 「いや、でも俺は――」
 「その辺の反省はこれからしよう。 まずは映像を見ようか」

 何か言おうとするホーコートをヨシナリは小さく首を振って制する。 
 画面の向こうでは敵のエンジェルタイプと接触したホーコートが早々に追い込まれている姿が映し出されていた。 ヨシナリがホーコートに与えた指示は一つ。
 
 得意な機動をギリギリまで温存する事。 彼の右旋回を起点とした射撃のクオリティは高い。
 だが、パターンが限定されているので、高ランクのプレイヤーが相手であるなら早ければ二、三回で癖を掴まれる。 どうにか耐えて相手が勝ちを確信した瞬間を見極めて使うのが数少ない勝ち筋だったのだが、ホーコートは最初の攻防で無理だと判断したのか即座に得意起動で相手を攪乱しての撃破を狙った。 

 最初こそ彼の動きに敵も動揺していたようだが、二回、三回と見ている内に明らかに見切られ始めている。

 「あー、もう読まれとるなぁ」
 「攻撃モーションに入る前に躱す動きしてるぞ」

 ふわわとマルメルの言う通りで、この時点でもうホーコートには勝ち目がなかった。
 そう、ホーコートの動きの起点は右旋回。 つまり、最初の動き出しは右なのだ。
 次の攻撃動作はそこから派生するので慣れれば攻撃の死角を読む事は造作もない。
 
 それに気づいていないホーコートは何度も右旋回を繰り返し――

 「……次か次の次ぐらいで終わりですかね」

 シニフィエの言う通り、ホーコートが右旋回に入った同時に先回りされ、エネルギーブレードで一撃。 そのまま撃破されてしまった。
 
 「――とまあ、見て貰った通り、前にも指摘したと思うけどお前は動きの起点が必ず右旋回からになるからそれに気づかれたら破綻する。 それを悟らせない為に多用するなという話だったんだけど、難しかったか?」
 「……はい、左じゃ次ぐらいで落とされるって思ってつい……」
 
 スペック的にも技量的には格上の相手なのだ。 無理もない話だった。  
 ヨシナリは気にするなと小さくホーコートの肩に手を置く。

 「うん。 次は右に頼らないように他の動きを良くしていこうな」
 「はい。 先輩、俺、頑張ります」

 悔しいのか少し泣きそうになっているホーコートに小さく頷いて見せ、映像を巻き戻して次の場面にフォーカスする。

 「お、次は俺か」

 映し出されたのはマルメルの機体だ。 
 彼のアウグストはキョロキョロと素早く首を振って状況を把握。 恐らくは敵と味方の簡単な配置を把握する為だろう。 ホーコートに一機向かい、砲戦装備のプリンシパリティがグロウモスに釘付けにされたのを確認してから向かって来るキマイラループスに意識を集中している。

 他から仕掛けられる心配がないと判断しての事だろう。

 「おー、マルメル君、冷静やねー」
 「ですね。 ちゃんと周りが見えている」
 「どうよ? ちゃんと成長してるだろ?」

 胸を張るマルメルにヨシナリは苦笑で返し、映像に視線を戻す。
 マルメルはハンドレールキャノンを撃ち込み、複数のビルに風穴を開ける。
 本来想定されていた使い方である牽制に利用したようだ。 初手で切ったのは相手の機動性から普通に当てるのは難しいと判断しての事だろう。

 マルメルは追撃とばかりにビルに開いた風穴からアノマリーを実弾にして連射。 
 敵機は近くのビルに飛び乗って回避。 マルメルは構わずに撃ち続ける。 
 ダブルドラムマガジンを採用してるので少々無駄打ちしても問題ないのも今のマルメルの強みと言っていいだろう。
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