Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第385話

 敵機は僅かに撃ち返そうとする素振りを見せていたが、穴から狙うには死角になる位置へ移動する。
 こちらも判断が早い。 

 マルメルは構わず撃ちまくり、制圧射撃で敵に主導権を握らせないようにしているのがよく分かる。
 敵機はビルの屋上から屋上へと飛び移り、マルメルの移動に合わせて降りたりしているのは射線をとらせない為だろう。

 こちらもマルメルの装備をある程度把握して自分が有利になる立ち回りを意識している。
 Bランクだけあって動きにあまり無駄がない。 途中、停止しているのは罠などを警戒しての事と思われる。 明らかに誘導するような撃ち方だったのでかなり警戒しているようだ。 対応力を上げる為に警戒中は人型に戻しているのも良い判断だと思った。
 
 一通り確認して罠はないと判断したのか変形して一気に加速。 地上を走って距離を詰め、マルメルを上から襲える位置にあるビルに変形、ブースターを噴かして急上昇で登り、屋上に着いたと同時に変形。
 四つ足形態になったのは上からの強襲狙い。 可変形態でいる状態の方が長い所から四つ足での戦闘に長けているプレイヤーと思われる。 マルメルは気付いていたようで視線は僅かに上だが、銃口は正面。

 敵機の攻撃を誘っているのは明らかだ。 

 「マルメル君、気付いてたん?」
 「そりゃ、気付きますよ。 アウグストに積んでるセンサー系、シックスセンスほどじゃないですけどかなり高性能なんで、あの時点で上からの強襲狙いってのは分かってました。 ――まぁ、罠を警戒しながら進んでるのはちょっと分からなかったんで、何か狙ってるんじゃないかって深読みはしてましたけど」

 敵機の姿を認識したと同時にマルメルは後退しながら銃口を持ち上げてアノマリーを連射。
 
 「おぉ、上手い!」
 「顔出した瞬間とかやるなぁ!」
 「……う、うん。 いい感じ、だと思う」

 狙い自体は良かったが、敵の防御力に対しての想定は少し甘かったようだ。
 エネルギーフィールドを展開して防ぐ。 正確には弾の威力を減衰させてダメージを減らす事を目的としていたようだ。 改めて敵のキマイラループスを確認するが、銀色のボディに機動性を損なわない程度の重装甲。 

 少々の被弾は許容している事が明らかな機体構成だ。 喰らいながらも敵機に喰らいつく。
 そんな意志すら感じる戦い方だ。 やや鈍重な印象を受ける機体だが、キマイラループスだけあって四つ足を利用した機動は捉えるのは難しい。

 マルメルは後退しながら引き撃ちに移行。 
 敵機は右に左にと小刻みに移動し、ビルの隙間を通って回り込む。
 
 「上手いな。 四つ足なのに障害物の多い市街地でここまで動けるのは相当だぞ」
 「あぁ、ぶっちゃけあの距離で捉えるのはきつい」
 
 敵機はそのままマルメルを追い越して先回り。 
 重装甲の機体を見て旋回性能が高くないと判断して背後から仕掛ける事にしたようだ。
 重たい機体は旋回性能に難があるので死角から仕掛けるのは悪い手ではない。

 ――まぁ、対策は施しているが。

 敵機が背後に回って来たと同時にマルメルは背面に搭載されているエネルギーウイングを噴かして急旋回。 マルメルの機体は空中戦を想定していない。
 そもそもマルメル自体が高機動戦闘に向いていないのでエネルギーウイングはこういった急旋回に利用する為に付けている。 タイミングは完璧。

 そのままハチの巣にしてやろうと言わんばかりに連射するが、そこに敵機の姿がない。
 何故ならビルの壁面に張り付いているからだ。 

 「おー、虫みたい」

 シニフィエの言う通り、壁に張り付く姿は獣というよりは虫に近かった。 
 どうやったのかと言うと足の裏から何かを出して壁面に突き刺す事で固定しているのだろう。
 ビルの壁面に大きな亀裂が走っている所を見ると長時間は無理そうだが、数秒は可能なので相手の攻撃のタイミングを外すぐらいは可能だ。 

 「あのタイミングで張り付くのは上手いな」

 マルメルが攻撃を外したタイミングで両肩に搭載されている大型の機関砲を向ける。
 発射。 重たい銃声が連続して響く。 徹甲弾が次々とマルメルの機体に襲い掛かるが、アウグストにもエネルギーフィールドの発生装置は内蔵しているので展開して防御。

 減衰こそするが距離が近いのでダメージは大きい。 
 マルメルは僅かに下がるような素振りを見せたが、後退はしなかった。
 アノマリーを投げ捨て、腕を交差させて防御姿勢で突っ込んだ。

 「ここで突っ込むのは良い判断やねー」
 「正直、俺も下がると思ってた」
 
 マルメルは傾向的に想定外が発生すると守りに入るので、ヨシナリも下がると思っていたがそうはならなかった。 敵機も下がると判断していたようで僅かに驚いくような素振りを見せる。
 
 「お前にも割と言われてたからな。 ここで下がるのは良くないって思ったんだ」

 被弾しながら間合いを詰める。 
 敵機は距離を詰められると不味いと判断したのか人型に変形しながら大型の散弾砲を構えた。
 流石にアレをまともに喰らうと不味い。 敵機はそのまま発射。

 「――おぉ!?」

 ヨシナリは思わず声を上げた。 
 何故なら敵機の発射に合わせてマルメルは強化装甲をパージしたのだ。  
 ただ、剥がすだけでなく内部に爆裂ボルトを仕込んでいるので破片が飛び散るようになっている。 前方に飛ばす事で散弾を防いだのだ。
 
 エネルギーフィールドと併用する事で最小のダメージで突破。 
 衝撃で仰け反りはしたが、即座に立て直してショルダータックルを当てて敵機諸共近くのビルに突っ込む。 敵機が動けなくなった所で腕のハンドレールキャノンを向けるが、銃口が上に跳ね上がる。
 
 敵機が足のスラスターを噴かして強引に銃口を逸らしたのだ。
 ――が、マルメルの本命は残った腕だった。 
 反対の腕を敵機に押し付けて発射体勢。 流石にこれは対処できなかったのか腕で押しのけようとしていたが間に合わない。 発射。
 
 至近距離から発射された弾体が敵機の頭部から胸にかけてを消し飛ばした。
  
 「どうよ!?」
 「お見事! あそこでよく引かなかったな! あそこで引っ繰り返したのは流石だ」
 「だろ? 褒めろ! 俺をもっと褒めろ!」
 「流石マルメル! 凄い! 強い! 頼りになる!」
 「きゃー、マルメル君、すごーい」
 「……す、すごーい」
 「さすがっす」
 「マルメルさんすごーい」 

 全員が乗っかって褒めだしたのでマルメルは嬉しそうにくねくねと身をくねらせた。
 いやぁそれほどでもと言っているマルメルの活躍は充分に堪能したのでヨシナリは映像を巻き戻して次の場面へとフォーカスした。
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