Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第386話

 フォーカスされたのはシニフィエの機体だ。
 
 「お、ついに私の出番ですね。 お義兄さん、未来の妹の活躍に刮目してくださ――あ、姉さん。 ちょっと関節極めるのは止め、止めて、痛くはないけどなんか圧がかかって――」

 シニフィエとふわわから目を逸らし、ついでに謎の威圧感を発しているグロウモスからも目を逸らし、ヨシナリはやや強引にウインドウに視線を固定する。 
 ウインドウにはシニフィエが敵機のエネルギーライフルを躱しながら上昇している姿が映っていた。

 発射の直前には回避に入っているのでタイミングを完璧に掴んでいるのは明らかだ。
 
 「これ、どうやってるの?」
 「え? あぁ、簡単ですよ。 相手の指の動きを見ればいいんです。 引き金に力がかかった瞬間に噴かせば躱すのはそこまで難しくないですよ。 エネルギー弾とかレーザー系の武器って基本、真っすぐにしか飛ばないので普通の銃弾よりも楽ですね」

 ――普通の銃よりってなんだよ……。

 ふわわといい、彼女達の実家は道場と言っていたが、一体何を教えているんだ?
 やや恐ろしい物を感じていたが、戦闘の続きに意識を戻す。
 敵のエンジェルタイプは単発武器で捉えきれないと判断して連射武器に切り替えた。

 シニフィエは回避しながら上に逃げる。 
 当然ながら敵機も追うが機動性は上なのでシニフィエは徐々に追いつかれていく。
 
 「なぁ、何であのエンジェルタイプ一気に間合いを詰めないんだ? エネルギーウイングを噴かしたら直ぐじゃね?」
 「多分だけどシニフィエの機体が近接特化だから間合いに入るのを嫌がって一方的に攻撃できる距離を維持したかったんだと思う」

 接近はするが肉薄はしない。 彼女の近接スキルを警戒しているのは明らかだ。
 最低ランクのプレイヤー相手でも油断しないのは慎重と取るべきか弱腰と取るべきかは結果で判断する事になるが、ヨシナリとしては前者と評価したいところだった。

 ――相手がシニフィエでなければだが。
 
 シニフィエが向かう先は巨大な雲。 飛び込んで視界を封じると判断して敵機は急加速。
 
 「……あ、決めにいった……」
 
 グロウモスの言う通りだった。 
 恐らくは碌に反撃しないシニフィエを見て時間稼ぎが目的とでも判断したのだろう。
 そう考えれば高度を上げた理由にも納得がいくからだ。 そうなるとやる事は一つ。

 急加速による先回り。 
 エネルギーウイングを噴かして一気に背後に回り込む――と見せかけて正面。
 振り返って背を向けたシニフィエに向けて短機関銃を向ける。 発射と同時にシニフィエの機体がぐるりと横に回転して上下が入れ替わった。 

 背面のブースターに装着したフレキシブルジョイントによって片方のブースターを180°回転させて噴かしたのだ。 それにより横に回転し、上下が入れ替わった。
 発射。 短機関銃から放たれた弾丸がシニフィエの脚部に命中するが小口径弾なのか破壊には至らない。 

 「硬いな――って、よく見たら装甲を盛ってるのか」

 よくよく見て見るとシニフィエの機体の足には追加のスラスターと装甲が盛られていた。
 
 「元々、この体勢に持って行くつもりだったので足は硬くしときました」
 
 どうやら振り返ったのは正面からの攻撃を誘う為だったようだ。
 シニフィエは腕に仕込んでいた手裏剣を投擲。 敵機は最小の動きで回避するが、頭部付近で閃光を撒き散らしながら爆発した。 

 「『閃光式爆裂手裏剣』小さい代わりに効果範囲が狭いんですけど頭部の近くで炸裂させれば一秒から二秒はセンサー系が死ぬって事だったので採用しました」

 視界不良になった敵機は一瞬だが完全に無防備になった。
 その隙を逃さずに腰の左右ににマウントされていたボックスからワイヤーアンカーが飛ぶ。
 先端にスラスターが付いている所を見ると有線操作ができる代物のようだ。

 アンカーは自機と敵機を固定するように巻き付いた。 
 この時点でヨシナリはシニフィエが何をしようとしているのかを察し、敵機の脇を足で固定しながら足を両手で掴んだ辺りでマルメルも気が付いて「ひぇ」と声を漏らす。

 「あぁ、この為にフレキシブルジョイントなんて付けたのか」
 「いやぁ、一回やってみたかったんですよ」

 ブースターを横に向けて全開で噴かすとシニフィエの機体は敵機を巻き込んで高速回転しながら地面に向けて落下を始めた。 そのまま地面に叩きつけるのかと思ったが、シニフィエの思考はヨシナリ達の上を行っていた。 何故なら彼女は地上に居たプリンシパリティ目掛けて落下したのだ。

 とある事情で誘導されたプリンシパリティは反応が致命的に遅れてしまった。
 直撃の瞬間に拘束を解いてシニフィエは離脱。 錐揉みしながら突っ込んだエンジェルタイプはそのままプリンシパリティに衝突。 限界高度から繰り出された圧倒的物理による暴力によって二機のトルーパーは大破。 砕け散った後に爆散した。

 「――こ、これは酷い」

 ヨシナリも思わずそう漏らしてしまう。 しかも相手はIランクの初心者。 
 これをやられたら悔しさのあまり、部屋で暴れる自信があった。
 そして実行した本人は――
 
 「イエーイ」

 ――とピースサイン。

 ヨシナリはそっと目を逸らした。

 「――と、取り敢えず次に行こうか」
 「お義兄さん! 私には何かないんですか?」
 「いや、あの内容で言う事ある? 敵の誘導から拘束、スクリューパイルドライバーでのフィニッシュまで完璧な組み立てだったよ」

 成功している時点で何も言う事はなかった。
 ヨシナリは映像を巻き戻し、今度はグロウモスにフォーカスする。
 彼女の場合は完全に役割に徹した動きだった。 敵の火力を担うプリンシパリティに対してスコーピオン・アンタレスの威力を見せつけ、釘付けにしつつ誘導。

 彼女の視点で見るとシニフィエの動きは非常に分かり易かった。
 明らかに自分の動きを見ろと言わんばかりだ。 

 「この時点で気が付いていたんですか?」
 「ううん。 でも、何かするんだろうなとは思ってたから敵がなるべくシニフィエの下に行くように誘導はした」

 敵機はスコーピオン・アンタレスの威力を見てしまった以上、彼女から目を離せない。
 その時点ですでに術中だった。 敵機の反撃を可変形態による走破性で躱し、居場所を悟らせない立ち回り、何よりもシニフィエの動きを認識できた事は視野が広がっている証拠でもある。
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