Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第387話

 「いや、すっげー周りが見えるようになりましたね」

 以前までは自分と標的しか見えていなかったのだが、今の彼女は敵、味方の動きも意識していた。
 新しい機体への適応もそうだが、プレイヤースキル――特に集団戦におけるそれが大きく向上している。
 
 「そ、そうかな? ウヒ、フヒヒヒ」

 グロウモスはにちゃりとした笑い声をあげるが、もういつもの事なので段々と気にならなくなってきた。
 流れはさっきのシニフィエの視点で見た展開の別側面だ。 グロウモスは途中でシニフィエの意図に気付き、落下が始まったと同時に落下点に敵機を誘導。 結果、二機を纏めて始末する事に成功した。

 ――いや、マジで凄いな。

 「と、取り敢えず次に行きますか」

 映像を巻き戻して次の場面にフォーカス。 今度はふわわだ。

 「おー、今度はウチやねー」
 「もう、結果が見えてるから相手がどんな目に遭うかを確認するだけの作業になりそうだな」
 「確かホーコートさんが負けた相手も始末したの姉さんでしたよね?」
 「……さーせん」

 ヨシナリもあんまり見る所なさそうだなと思いながら映像を注視。
 敵のエンジェルタイプはふわわの事をある程度知っているのか、露骨に距離を取って銃撃を繰り返す。 ふわわ相手なら分かり易く有効な手段だ。

 グルーキャノンもあるが射程はそこまで長くない。 
 射程外にプラス、ビルを盾にして上手く立ち回っている。
 
 「露骨に距離を取るなぁ」
 「まぁ、下手に踏み込んで真っ二つにされたら目も当てられないからな」

 地形の利用も上手い。 
 ふわわの視界から消えた瞬間を見計らってエネルギーウイングを噴かしている。
 欠片も油断していない点からもふわわの事を警戒している事が窺えた。

 「上手いですけど、姉さんの動きを意識しすぎですね。 動きが単調になってません?」 
 「やねー、この辺りかなー? 目が慣れてきたのは」

 本人の言う通り、ふわわの機体が不意に小さく腰を落とし太刀に手を添える。
 普通の太刀ではない『ナインヘッドドラゴン』だ。 

 ――おいおい、もう使えるようになったのか?

 確かまとめて当てられるのが四つとか言っていたが――敵機が視界から消えた瞬間に一閃。
 それで終わりだった。 敵機はビルの隙間からバラバラになって飛び出した。
 攻撃を仕掛けようとしたタイミングで喰らったので相手は何をされたか分からずに終わったはずだ。 バラバラになった敵機を見て、マルメルはひぇと声を上げ、グロウモスは「可哀そう」と小さく呟き、シニフィエとホーコートは軽く引いていた。

 敵を一機細切れにしても満足しなかったのかふわわは野太刀を構えて抜刀の構え。
 ヨシナリは一瞬、何をやってるんだと思ったがまさかと映像を操作してカメラを大きく引く。
 ふわわの視線の先にはちょうどホーコートを仕留めた敵機が居た。 

 ――うわ、マジかよ。

 バチバチと野太刀と鞘の間に紫電が走り、地面を踏み砕くように一歩踏み込んで一閃。
 異変に気が付いた敵機が振り返ったがもう遅かった。 攻撃範囲に存在したビル数棟と一緒に斜めに両断され、ずるりと空中で二つになって爆発。  

 「いやぁ、良い所にいたからついやっちゃったわー」
 「はは、やりましたねー流石です」

 もうそう返すしかなかった。 Bランクを立て続けに瞬殺。
 どうなってるんだよこの人と言いたくなるのをぐっと堪え、ヨシナリはにこやかに笑いながら映像を巻き戻して最後、ヨシナリ自身の戦闘へとフォーカスした。

 最初はヨシナリが逃げ回りつつ、攻撃の間隙を突いて反撃するといった構図が続く。
 タヂカラオの放つ無数のエネルギーリングを広範囲にばら撒き、ヨシナリはその全てを外側から回避する。

 「なぁ、なんであの輪っかを潜って躱さないんだ?」
 「あぁ、シックスセンスで視たんだけど、輪の内側に重力異常があったから下手に通ると碌なコトンにならないって分かってたからな。 多分だけど動きを封じてくるタイプだと思う。 それ以前にあの潜れと言わんばかりの形状、怪しすぎるだろ?」
 「あー、確かに滅茶苦茶怪しいなぁ」

 リングは広がりながら飛ぶので外側から躱したいのなら広がり切る前である必要があるが、前に出過ぎると連射に捉えられる。 その為、近すぎず、遠すぎずの距離を維持しつつ攻撃を躱すといった慎重な立ち回りが要求されるのだ。

 「流石はジェネシスフレームやね。 攻撃と飛行はあの手足に付いてる輪っかで賄ってるんかー」
 「両足も合わせると攻撃できる部位は四か所になるんですね。 うーん、面倒くさい」

 ふわわはやや感心したようにシニフィエは自分ならどう切り抜けようかと首を捻る。
 映像の中のヨシナリは変形しながらアトルムとクルックスで銃撃しつつ何かを探るように動く。
 
 「うーん。 ジェネシスフレームは確かに凄いけど、ウチとしてはこの状態のヨシナリ君の方が怖いなぁ。 この時、何を考えてたん?」
 「敵の反応を見ながら弱点を探ってる感じですかね」
 「ふーん? 拳銃を使ってるのは回避優先って感じ?」
 「はい、アシンメトリーに比べてアトルムとクルックスは隙が少ないんで、こういった場面では使い易いんですよ」
 「拳銃もかなり変わってるなぁ」
 「モノ自体は変わってませんよ。 オプションパーツで強化しました。 具体的にはバースト射撃、エネルギー弾の発射機構、おまけにロングマガジンで装弾数を盛ってます」

 バースト射撃は一度に三発の弾丸を吐き出す事で瞬間的に火力を上げる事が可能ではあるが銃弾の消耗が激しいので下手に撃ちまくるとあっという間に弾が切れる。
 それを補う為のエネルギー弾の発射機構とロングマガジンだ。 それでも残弾を意識しないと気が付けば弾切れなんて場面が多いので装弾数を体で覚える訓練を繰り返した。

 練習を頑張った甲斐あって、弾切れと同時にマガジン排出と交換が非常にスムーズだ。
 
 「おー、リロード早! あれちゃんと空になってんのか?」
 「なってるぞ。 死ぬほど練習したからな」

 ひたすらに撃ちまくって弾切れの感覚を体に覚え込ませる。 
 様々な体勢での抜き撃ち等々。 これまではアトルムとクルックスをサイドアームとして活用しきれていなかった事を痛感したヨシナリは空いた時間を利用してひたすらに練習を繰り返した。

 特に長期戦を行う場合の武器の消耗を考えるとアシンメトリーを失った場合にも充分に戦えるレベルまでに仕上げる必要があると思っていたからだ。
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