Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第394話

 三角錐を思わせるデザインの下半身。 足はなく浮遊している。
 カラーリングは黒一色。 周囲には真珠を思わせる純白の大剣が三本浮かんでいた。 
 腕を組んで胸を張っている姿は自信の表れか。

 『ジャパンのAランク。 叩き潰して差し上げましょう』
 「やってみろ」
 
 ユウヤは即座に散弾砲を発射。 エドゥルネは躱さずに浮遊する大剣で防御する。
 命中するが散弾は大剣を砕くが、エドゥルネ自身には届いていない。
 結果を確認する前には既に走り出していた。 一歩、二歩目で背の大剣を抜いて加速の勢いをそのまま利用しての刺突。

 『ふふ、遅い遅い』
 
 エドゥルネは僅かに機体を傾けて回避しながらいつの間にか何処からか取り出した大剣を握り、横薙ぎの一撃。 跳躍し、空中で一回転。 
 その間に大剣をハンマーに変形させて回転の勢いを乗せて一撃――は空を切る。

 浮遊している機体は滑るように移動して後退しつつ躱し、お返しとばかりに腕を一振り。
 エドゥルネの背後から三本の大剣が現れそのままユウヤへ向けて飛翔。
 ユウヤは下がらずに前に出る。 大剣は彼を捉えきれずに地面に突き刺さった。

 『いい動き』

 刺さった大剣が何かに引っ張られるように抜けて回転しながら背後から襲い掛かる。
 ユウヤは振り返らずに散弾砲を二連射。 二本に剣を破壊。 
 三本目は屈んで躱し、通り過ぎる前に柄を掴む。 
 
 感触を確認してアバターの向こうで小さく眉を顰める。
 
 ――イベント戦で出くわした奴と同じ系統の武装か。

 ヨシナリはサイコキネシスの類かもしれないと言っていたが、なるほどと納得した。 
 掴んだ剣の感触から何かに引っ張られている。 恐らくは見えない腕のような物で掴んで振り回しているといった認識で間違いないはずだ。 そうなると次は――

 ユウヤは駆け出して橋から飛び降りる。 少し遅れて地面が僅かに抉れた。

 ――こちらの機体を掴もうとしてくる。

 見えない以上、地上や空中戦は不利。 
 なら、比較的ではあるが、攻撃が視認できる可能性のある水上戦の方がまだマシだった。
 
 『おやおや、さっきまでの威勢はどうしましたかぁ?』
 
 ユウヤは応えずに散弾砲を撃ちこみつつ、思考を回転させる。
 本来ならアルフレッドとのセンサーリンクで容易く看破できるのだが、今回はそうもいかなかった。
 理由は前回の侵攻戦でアルフレッドが大破したからだ。 ヨシナリが惑星の反応炉を破壊した事により爆発に巻き込まれてフィールドに居たあらゆる存在が消し飛んでイベントは終了となった。

 普通なら自機が破壊されて終了なのだが、アルフレッドだけはそうも行かない。
 アルフレッドはシステム上はエネミー扱いなので破壊された場合、構成パーツは全てロストとなる。
 その為、シックスセンスを始め、フレームまで完全に消滅したので一から買い直しとなった。

 事情を知ったヨシナリが平謝りの後、修理費用にとかなりの額を置いていったので修理の目途は立っている。 この機会に全体的なアップグレードを行うつもりなので構成を考えている間に今日を迎えてしまった。 

 そんな事情もあって情報支援を受ける事が出来ないのだ。 
 ユウヤは冷静に敵機を観察。 ジェネシスフレーム、恐らくランクはA。
 動き自体はAランクの範疇なのでSはあり得ない。 足がなく、移動はフロートによる浮遊。
 
 推進装置はエネルギーウイングではなく重力操作系の推進装置だろう。
 重力を無視した滑るような動きは目が慣れるまでは見に徹した方がいい。
 武装は現状見えている範囲では二種類。 まずは周囲に浮かんでいる大剣。
 
 重量による破壊力は脅威だが、散弾砲で破壊は可能なのでそこまで怖い代物ではない。
 問題は破壊しても何らかの手段でどこからか呼び出し――ではなく精製しているのだろうが、気軽に使い捨てている点からもまだまだ余裕は感じられる。

 もう一つはその大剣を振り回す為の武装。 重力操作かサイコキネシスの類だろうが、シックスセンスによる情報支援がないので正確に見通す事は不可能だ。
 その為、見えている範囲から読み取るしかない。 大剣は最大三本、破壊されれば補充はするが、四本以上にはならない。 ユウヤの見立てでは視えない手のようなもので物を掴んで振り回しているような印象だった。

 これの厄介な点は掴む為の『手』である以上、大剣を振り回すだけではないという事だ。
 場合によってはこちらを掴んで来るだろう。 観測できない手段で機体に干渉してくるのは厄介だった。 

 「――面倒くせぇのと当たったな」

 小さく呟く。 これは少し時間がかかりそうだった。
 
  

 「――弱い――」

 そう呟いたのはフランスサーバーのAランクプレイヤー『カロリーネ』。
 目の前には無数の残骸が転がっていた。 彼女の仕業だ。
 現在地はフランス側の陣地。 残骸は上陸するべく突っ込んで来た日本側の機体達だった。

 彼等はエドゥルネと交戦を始めたユウヤを追い越し、水上を進んで上陸を果たそうとしていたのだが瞬く間に全滅。 カロリーネはつまらなさそうに小さく息を吐く。
 
 フランスサーバーは前回、中国第一サーバーに大敗を喫したばかりだったので今回は勝利をと意気込んでいる者も多い。 カロリーネもその一人だったのだが、少なくとも今の段階では拍子抜けだった。
 ジャパンサーバー。 第三とはいえあのアメリカサーバーに勝利したとの事だったので期待していたのだが、余りにも弱すぎた。 彼女の役目は拠点の防衛の為に居残っていたのだが、果たして必要だったのだろうか?

 そんな事を考えていたのだが、不意に機体のセンサーが何かを捉えた。
 友軍ではない。 識別は敵――振り返るとビルの上に一機のトルーパーが彼女の機体を見下ろしていた。 

 『ふ、その力、この俺と似て非なる物。 面白い』
 
 闇を凝縮したかのような漆黒の機体。 
 装甲が陽炎のように揺らめいている点からも異様さが際立つ。
 明らかにジェネシスフレームだ。 つまりAランク以上の強者。

 「――貴方は面白い??」
 『享楽を求めるか。 基底の娘よ。 感じるぞ、その静謐の内に秘められたる闘争の欲望を!』
 「――故障? 言っている意味が分からない?」

 翻訳機を噛ませているのだが、相手の言っている意味が分からなかった。
 
 『幾百、幾千の言の葉を重ねようとも所詮、貴様は光の住民。 闇の叡智に触れた所で異なる世界の概念を理解する事は能わない。 だが、これだけは覚えておくがいい。 我が名はベリアル! そして我が力の化身たるプセウドテイの名を! ――何故ならこれより貴様を屠る者の名だからだ!』

 ベリアルと名乗ったプレイヤーはそう言って何故か自らを抱きしめるような珍妙なポーズを取った。
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