Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第401話

 回避を選択したという事は防御にリソースを割けない状況。 
 そして回避モーションは目先の攻撃に対してのアクションであるので、別の方向からの攻撃に対してやや脆弱でもある。 

 『――っ!?』

 グリゼルダは咄嗟に手を翳すと飛来したレールガンが捻じ曲げられる。 
 グロウモスの狙撃だ。 僅かに遅れて水面が盛り上がり、弾体が飛んでくる。
 マルメルが水没しながらもハンドレールキャノンを発射したようだ。 

 流石に撃破したと思っていた敵機から攻撃されるとは思っていなかったのか、反応が僅かに遅れる。
 だが、Sランクプレイヤーは簡単には落ちない。 錫杖を叩きつけるように振り下ろし、弾体を受け止める。 流石に弾が大きいからなのか運動エネルギーを殺しきれずに僅かに拮抗。

 三秒にも満たない時間だが、その間にマルメルの執念はSランクを食い破らんと牙を剥く。
 ようやく力を失った弾体が落下するが、その頃にはヨシナリとシニフィエが左右にポジショニングしてフルオートで実体弾をばら撒く。 大半は止められたが、一部が障壁を突破して機体に命中。

 ――通った。

 ダメージ自体はそこまでではないがヨシナリは攻撃が通った事に内心で拳を握る。
 通った事で仕留める目が見えた事も大きい。 そしてヨシナリ達の攻撃はまだ終わっていない。
 グリゼルダは被弾した事で少し焦ったのか反撃しようと錫杖を振り上げたが、何かを察知したのか身を捻りながら回避運動。 そのまま反撃に移ろうとしたが、振ろうとした錫杖が切断されて落ちる。

 「同じ事やられてびっくりした?」

 ふわわが刃のない柄だけの太刀を振り切った状態で小さく笑う。
 刃を転移させて斬撃。 初見で躱したのは流石だが、無傷とはいかなかったようだ。
 恐らくあの錫杖はもう使い物にならない。 エネルギー流動を見る限り、先端の装飾が打撃に防御フィールドの特性を乗せる機能を担っている可能性が高かったので恐らくは攻撃性能は激減するはずだ。

 ヨシナリとしては今ので仕留めておきたかったが、簡単には行かないようだ。
 そして少ないが損傷を与えた時点でグリゼルダも本気になるはず。
 個人としてではなく、チームとしての。 

 ――時間切れか。

 「シニフィエ!」

 ヨシナリは機体を変形させて叫ぶ。 シニフィエは即座に意図に気付いてその背に飛び乗る。
 ふわわもその場から全力で離脱を図ったが、それよりも早く銃弾、レーザー、エネルギー弾と無数の攻撃が雨の様に降って来る。 

 「うひゃー、お義兄さん! もっと飛ばしてください!」
 「とっくに全開で噴かしてる!」

 シニフィエは言いながらアノマリーを連射して飛んでくる攻撃の一部を撃ち落としていたが、流石に躱しきれずにあちこちに被弾。 咄嗟に機体を大きく振ってシニフィエを遠くへと振り落として逃がす。
 インメルマンターンで躱そうとするが、読まれていたのか一部の攻撃が回避先に飛んでくる。

 バレルロールするが躱しきれずにウイング部分に被弾。 
 バランスが崩れたので人型に戻って姿勢を制御して立て直す。 
 睨むようにグリゼルダの方を見ると凄まじい数の敵機が彼女の周囲に現れていた。

 その数、百機以上でジェネシスフレームだけでも十機以上いるのだ。 
 
 『お見事でした。 正直、やられてしまうかと思いましたよ』
 「はは、そりゃどうも」

 ヨシナリはそう返しながらよく言うとアバターの向こうで表情を歪める。
 確かにグリゼルダを追いつめたが、彼女にとってはお遊びにしか過ぎなかったのだ。
 その証拠に味方をいつでも助けに入れる位置に配置していた。 グリゼルダにとってはどう転んでも勝てる勝負だったという訳だ。 

 マルメルは完全に水没して動けない。 
 ふわわ、シニフィエはやられてはいないものの被弾しているので戦闘継続は厳しい。
 それはヨシナリも同様だった。 グロウモスは無傷ではあるが、この状況では何もできない。

 ――完全に詰んでいる。

 グリゼルダの孤立を狙って半端に離れた位置を戦場に設定した事がストレートに裏目に出ていた。
 不確定要素を排除しようとした結果なので、都合のいい時に助けを期待するのは違うだろう。
 ヨシナリの脳裏では必死にこの状況に対する打開策を探そうとしていたが、いくら考えても自力での突破は不可能と出ていた。 

 『多対一とは言え、ここまで追い込まれたのは良い経験でした。 では、機会があればまたお会いしましょう』

 グリゼルダは始末しろと言わんばかりに軽く手を上げ――下ろす直前に日本側の拠点から極太のレーザー攻撃が複数飛んでくる。 敵の集団は即座に察知して回避。
 それを狙って無数のエンジェルタイプやキマイラタイプが銃撃しながら突っ込んで来た。

 ヨシナリはレーザーの飛んで来た方へと視線を向けると無数のトルーパーの中心に一際巨大な機体を見つけた。 大きさは三十メートル前後。 
 巨大な鐘のような印象を受けるそれのあちこちには巨大なレーザー砲、ミサイルポッド、機銃などの様々な火器が取り付けられており、その左右を守るように巨大な手が浮遊している。

 全ての指先が巨大な砲口になっており、恐らくさっきのレーザー砲はあそこから放たれた物だろう。
 
 「見事な戦いだった。 Sランクプレイヤー相手にその数でここまで追い詰めるとはますます君が欲しくなったよヨシナリ君!」

 巨大な機体から響く声には聞き覚えがあった。 
 このサーバー最大のユニオン『思金神』のリーダー。 タカミムスビの声だ。
 
 「さてさて、随分と好き放題してくれたね。 そろそろ、我々の反撃と行こう」
 『Sではありませんが近い位置にいるランカーといった所ですか?』
 「そこはご想像にお任せするよ。 前回はあまりいい所がなくて沈んでしまってね。 フランスサーバーの諸君。 日本最強のユニオンと我が機体『アマノイワト』の力をお見せしよう」

 グリゼルダの質問にタカミムスビは小さく笑って見せ、手と本体の全ての火力を解放した。
 レーザー、ミサイル、実体弾、エネルギー弾と無数の攻撃を凄まじい密度で放つ圧倒的な火力。
 侵攻戦に居たメガロドン型に比べるとやや劣るが充分に殴り合えるレベルだった。

 「よく戦ってくれた。 ここは我々に任せて君達は下がりたまえ」
 「助かります」

 タイミングよくマルメルの機体がどうにか浮上してきたのでシニフィエと左右から抱えて後退。
 背後では大規模ユニオン同士の凄まじい潰し合いが始まっていたが、努めて見ないようにした。
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