401 / 865
第401話
回避を選択したという事は防御にリソースを割けない状況。
そして回避モーションは目先の攻撃に対してのアクションであるので、別の方向からの攻撃に対してやや脆弱でもある。
『――っ!?』
グリゼルダは咄嗟に手を翳すと飛来したレールガンが捻じ曲げられる。
グロウモスの狙撃だ。 僅かに遅れて水面が盛り上がり、弾体が飛んでくる。
マルメルが水没しながらもハンドレールキャノンを発射したようだ。
流石に撃破したと思っていた敵機から攻撃されるとは思っていなかったのか、反応が僅かに遅れる。
だが、Sランクプレイヤーは簡単には落ちない。 錫杖を叩きつけるように振り下ろし、弾体を受け止める。 流石に弾が大きいからなのか運動エネルギーを殺しきれずに僅かに拮抗。
三秒にも満たない時間だが、その間にマルメルの執念はSランクを食い破らんと牙を剥く。
ようやく力を失った弾体が落下するが、その頃にはヨシナリとシニフィエが左右にポジショニングしてフルオートで実体弾をばら撒く。 大半は止められたが、一部が障壁を突破して機体に命中。
――通った。
ダメージ自体はそこまでではないがヨシナリは攻撃が通った事に内心で拳を握る。
通った事で仕留める目が見えた事も大きい。 そしてヨシナリ達の攻撃はまだ終わっていない。
グリゼルダは被弾した事で少し焦ったのか反撃しようと錫杖を振り上げたが、何かを察知したのか身を捻りながら回避運動。 そのまま反撃に移ろうとしたが、振ろうとした錫杖が切断されて落ちる。
「同じ事やられてびっくりした?」
ふわわが刃のない柄だけの太刀を振り切った状態で小さく笑う。
刃を転移させて斬撃。 初見で躱したのは流石だが、無傷とはいかなかったようだ。
恐らくあの錫杖はもう使い物にならない。 エネルギー流動を見る限り、先端の装飾が打撃に防御フィールドの特性を乗せる機能を担っている可能性が高かったので恐らくは攻撃性能は激減するはずだ。
ヨシナリとしては今ので仕留めておきたかったが、簡単には行かないようだ。
そして少ないが損傷を与えた時点でグリゼルダも本気になるはず。
個人としてではなく、チームとしての。
――時間切れか。
「シニフィエ!」
ヨシナリは機体を変形させて叫ぶ。 シニフィエは即座に意図に気付いてその背に飛び乗る。
ふわわもその場から全力で離脱を図ったが、それよりも早く銃弾、レーザー、エネルギー弾と無数の攻撃が雨の様に降って来る。
「うひゃー、お義兄さん! もっと飛ばしてください!」
「とっくに全開で噴かしてる!」
シニフィエは言いながらアノマリーを連射して飛んでくる攻撃の一部を撃ち落としていたが、流石に躱しきれずにあちこちに被弾。 咄嗟に機体を大きく振ってシニフィエを遠くへと振り落として逃がす。
インメルマンターンで躱そうとするが、読まれていたのか一部の攻撃が回避先に飛んでくる。
バレルロールするが躱しきれずにウイング部分に被弾。
バランスが崩れたので人型に戻って姿勢を制御して立て直す。
睨むようにグリゼルダの方を見ると凄まじい数の敵機が彼女の周囲に現れていた。
その数、百機以上でジェネシスフレームだけでも十機以上いるのだ。
『お見事でした。 正直、やられてしまうかと思いましたよ』
「はは、そりゃどうも」
ヨシナリはそう返しながらよく言うとアバターの向こうで表情を歪める。
確かにグリゼルダを追いつめたが、彼女にとってはお遊びにしか過ぎなかったのだ。
その証拠に味方をいつでも助けに入れる位置に配置していた。 グリゼルダにとってはどう転んでも勝てる勝負だったという訳だ。
マルメルは完全に水没して動けない。
ふわわ、シニフィエはやられてはいないものの被弾しているので戦闘継続は厳しい。
それはヨシナリも同様だった。 グロウモスは無傷ではあるが、この状況では何もできない。
――完全に詰んでいる。
グリゼルダの孤立を狙って半端に離れた位置を戦場に設定した事がストレートに裏目に出ていた。
不確定要素を排除しようとした結果なので、都合のいい時に助けを期待するのは違うだろう。
ヨシナリの脳裏では必死にこの状況に対する打開策を探そうとしていたが、いくら考えても自力での突破は不可能と出ていた。
『多対一とは言え、ここまで追い込まれたのは良い経験でした。 では、機会があればまたお会いしましょう』
グリゼルダは始末しろと言わんばかりに軽く手を上げ――下ろす直前に日本側の拠点から極太のレーザー攻撃が複数飛んでくる。 敵の集団は即座に察知して回避。
それを狙って無数のエンジェルタイプやキマイラタイプが銃撃しながら突っ込んで来た。
ヨシナリはレーザーの飛んで来た方へと視線を向けると無数のトルーパーの中心に一際巨大な機体を見つけた。 大きさは三十メートル前後。
巨大な鐘のような印象を受けるそれのあちこちには巨大なレーザー砲、ミサイルポッド、機銃などの様々な火器が取り付けられており、その左右を守るように巨大な手が浮遊している。
全ての指先が巨大な砲口になっており、恐らくさっきのレーザー砲はあそこから放たれた物だろう。
「見事な戦いだった。 Sランクプレイヤー相手にその数でここまで追い詰めるとはますます君が欲しくなったよヨシナリ君!」
巨大な機体から響く声には聞き覚えがあった。
このサーバー最大のユニオン『思金神』のリーダー。 タカミムスビの声だ。
「さてさて、随分と好き放題してくれたね。 そろそろ、我々の反撃と行こう」
『Sではありませんが近い位置にいるランカーといった所ですか?』
「そこはご想像にお任せするよ。 前回はあまりいい所がなくて沈んでしまってね。 フランスサーバーの諸君。 日本最強のユニオンと我が機体『アマノイワト』の力をお見せしよう」
グリゼルダの質問にタカミムスビは小さく笑って見せ、手と本体の全ての火力を解放した。
レーザー、ミサイル、実体弾、エネルギー弾と無数の攻撃を凄まじい密度で放つ圧倒的な火力。
侵攻戦に居たメガロドン型に比べるとやや劣るが充分に殴り合えるレベルだった。
「よく戦ってくれた。 ここは我々に任せて君達は下がりたまえ」
「助かります」
タイミングよくマルメルの機体がどうにか浮上してきたのでシニフィエと左右から抱えて後退。
背後では大規模ユニオン同士の凄まじい潰し合いが始まっていたが、努めて見ないようにした。
そして回避モーションは目先の攻撃に対してのアクションであるので、別の方向からの攻撃に対してやや脆弱でもある。
『――っ!?』
グリゼルダは咄嗟に手を翳すと飛来したレールガンが捻じ曲げられる。
グロウモスの狙撃だ。 僅かに遅れて水面が盛り上がり、弾体が飛んでくる。
マルメルが水没しながらもハンドレールキャノンを発射したようだ。
流石に撃破したと思っていた敵機から攻撃されるとは思っていなかったのか、反応が僅かに遅れる。
だが、Sランクプレイヤーは簡単には落ちない。 錫杖を叩きつけるように振り下ろし、弾体を受け止める。 流石に弾が大きいからなのか運動エネルギーを殺しきれずに僅かに拮抗。
三秒にも満たない時間だが、その間にマルメルの執念はSランクを食い破らんと牙を剥く。
ようやく力を失った弾体が落下するが、その頃にはヨシナリとシニフィエが左右にポジショニングしてフルオートで実体弾をばら撒く。 大半は止められたが、一部が障壁を突破して機体に命中。
――通った。
ダメージ自体はそこまでではないがヨシナリは攻撃が通った事に内心で拳を握る。
通った事で仕留める目が見えた事も大きい。 そしてヨシナリ達の攻撃はまだ終わっていない。
グリゼルダは被弾した事で少し焦ったのか反撃しようと錫杖を振り上げたが、何かを察知したのか身を捻りながら回避運動。 そのまま反撃に移ろうとしたが、振ろうとした錫杖が切断されて落ちる。
「同じ事やられてびっくりした?」
ふわわが刃のない柄だけの太刀を振り切った状態で小さく笑う。
刃を転移させて斬撃。 初見で躱したのは流石だが、無傷とはいかなかったようだ。
恐らくあの錫杖はもう使い物にならない。 エネルギー流動を見る限り、先端の装飾が打撃に防御フィールドの特性を乗せる機能を担っている可能性が高かったので恐らくは攻撃性能は激減するはずだ。
ヨシナリとしては今ので仕留めておきたかったが、簡単には行かないようだ。
そして少ないが損傷を与えた時点でグリゼルダも本気になるはず。
個人としてではなく、チームとしての。
――時間切れか。
「シニフィエ!」
ヨシナリは機体を変形させて叫ぶ。 シニフィエは即座に意図に気付いてその背に飛び乗る。
ふわわもその場から全力で離脱を図ったが、それよりも早く銃弾、レーザー、エネルギー弾と無数の攻撃が雨の様に降って来る。
「うひゃー、お義兄さん! もっと飛ばしてください!」
「とっくに全開で噴かしてる!」
シニフィエは言いながらアノマリーを連射して飛んでくる攻撃の一部を撃ち落としていたが、流石に躱しきれずにあちこちに被弾。 咄嗟に機体を大きく振ってシニフィエを遠くへと振り落として逃がす。
インメルマンターンで躱そうとするが、読まれていたのか一部の攻撃が回避先に飛んでくる。
バレルロールするが躱しきれずにウイング部分に被弾。
バランスが崩れたので人型に戻って姿勢を制御して立て直す。
睨むようにグリゼルダの方を見ると凄まじい数の敵機が彼女の周囲に現れていた。
その数、百機以上でジェネシスフレームだけでも十機以上いるのだ。
『お見事でした。 正直、やられてしまうかと思いましたよ』
「はは、そりゃどうも」
ヨシナリはそう返しながらよく言うとアバターの向こうで表情を歪める。
確かにグリゼルダを追いつめたが、彼女にとってはお遊びにしか過ぎなかったのだ。
その証拠に味方をいつでも助けに入れる位置に配置していた。 グリゼルダにとってはどう転んでも勝てる勝負だったという訳だ。
マルメルは完全に水没して動けない。
ふわわ、シニフィエはやられてはいないものの被弾しているので戦闘継続は厳しい。
それはヨシナリも同様だった。 グロウモスは無傷ではあるが、この状況では何もできない。
――完全に詰んでいる。
グリゼルダの孤立を狙って半端に離れた位置を戦場に設定した事がストレートに裏目に出ていた。
不確定要素を排除しようとした結果なので、都合のいい時に助けを期待するのは違うだろう。
ヨシナリの脳裏では必死にこの状況に対する打開策を探そうとしていたが、いくら考えても自力での突破は不可能と出ていた。
『多対一とは言え、ここまで追い込まれたのは良い経験でした。 では、機会があればまたお会いしましょう』
グリゼルダは始末しろと言わんばかりに軽く手を上げ――下ろす直前に日本側の拠点から極太のレーザー攻撃が複数飛んでくる。 敵の集団は即座に察知して回避。
それを狙って無数のエンジェルタイプやキマイラタイプが銃撃しながら突っ込んで来た。
ヨシナリはレーザーの飛んで来た方へと視線を向けると無数のトルーパーの中心に一際巨大な機体を見つけた。 大きさは三十メートル前後。
巨大な鐘のような印象を受けるそれのあちこちには巨大なレーザー砲、ミサイルポッド、機銃などの様々な火器が取り付けられており、その左右を守るように巨大な手が浮遊している。
全ての指先が巨大な砲口になっており、恐らくさっきのレーザー砲はあそこから放たれた物だろう。
「見事な戦いだった。 Sランクプレイヤー相手にその数でここまで追い詰めるとはますます君が欲しくなったよヨシナリ君!」
巨大な機体から響く声には聞き覚えがあった。
このサーバー最大のユニオン『思金神』のリーダー。 タカミムスビの声だ。
「さてさて、随分と好き放題してくれたね。 そろそろ、我々の反撃と行こう」
『Sではありませんが近い位置にいるランカーといった所ですか?』
「そこはご想像にお任せするよ。 前回はあまりいい所がなくて沈んでしまってね。 フランスサーバーの諸君。 日本最強のユニオンと我が機体『アマノイワト』の力をお見せしよう」
グリゼルダの質問にタカミムスビは小さく笑って見せ、手と本体の全ての火力を解放した。
レーザー、ミサイル、実体弾、エネルギー弾と無数の攻撃を凄まじい密度で放つ圧倒的な火力。
侵攻戦に居たメガロドン型に比べるとやや劣るが充分に殴り合えるレベルだった。
「よく戦ってくれた。 ここは我々に任せて君達は下がりたまえ」
「助かります」
タイミングよくマルメルの機体がどうにか浮上してきたのでシニフィエと左右から抱えて後退。
背後では大規模ユニオン同士の凄まじい潰し合いが始まっていたが、努めて見ないようにした。
あなたにおすすめの小説
ホスト異世界へ行く
REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」
え?勇者?
「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」
☆★☆★☆
同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ!
国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!?
しかも元の世界へは帰れないと来た。
よし、分かった。
じゃあ俺はおっさんのヒモになる!
銀髪銀目の異世界ホスト。
勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。
この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。
人誑しで情緒不安定。
モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。
そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ!
※注意※
パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。
可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑
局地戦闘機 飛電の栄光と終焉
みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》
盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。
ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……
始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。
さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。
スーパーのビニール袋で竜を保護した
チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。
見つけ次第、討伐――のはずだった。
だが俺の前に現れたのは、
震える子竜と、役立たず扱いされたスキル――
「スーパーのビニール袋」。
剣でも炎でもない。
シャカシャカ鳴る、ただの袋。
なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。
討伐か、保護か。
世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。
これは――
ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。
52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった
よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】
皆様の熱い応援、本当にありがとうございます!
ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です!
【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】
電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。
気がついたら異世界召喚。
だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。
52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。
結論――王都の地下下水道に「廃棄」。
玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。
血管年齢は実年齢マイナス20歳。
そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。
だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。
下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。
捨てられた魔道具。
長年魔素を吸い続けた高純度魔石。
そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。
チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。
あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。
汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。
スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。
この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。
魔力は毒である。代謝こそが命である。
軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。
でも、だからこそ――まず1話、読んでください。
【最新情報&著者プロフィール】
代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作!
◆ 2月に待望の【第2巻】刊行!
◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中!
◆ 【コミカライズ企画進行中】!
すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!
森のカフェしっぽっぽ
森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。
一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、
猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。
しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。
地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。
ただし、異世界人は地球には来られない。
行き来できるのはサトルだけ。
向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、
頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、
静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、
サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。
仕事に疲れた会社員。
将来に迷う若者。
自信をなくした人。
サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。
そして、棚の影で震えるジル。
怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。
それでも店からは逃げない。
その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。
これは――
福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。
震えながらでも前に立つ者が、
今日も小さく世界をつなぐ。