Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第417話

 位置が分かった所で攻撃手段がないはずだが――
 ヨシナリの疑問に応えるようにふわわは腰の太刀、転移刃の方に手をかけて一閃。
 八つの刃はあらぬ方向へと飛んでいったが、一つだけ違った。 転移の射程ギリギリの位置に移動した刃は高速回転しながらグロウモスの下へ。 発射体勢に移っていたグロウモスは突然の奇襲に咄嗟に躱そうとしたが、ガクリと何かに引っ張られる感覚。 

 ケーブル。 繋ぎっぱなしだった事で回避が遅れる。
 スコーピオン・アンタレスを手放して躱そうとしたが僅かに遅かった。
 刃はスコーピオン・アンタレスを半ばで断ち切り、グロウモスの片腕を切断。

 「おいおい、八百以上あったのに当てるのかよ」

 グロウモスも安全圏と判断したからこその距離だったのにそれを簡単に飛び越えられた事の動揺は大きいだろう。 だが、驚いている暇はない。
 メインの武装を失ったグロウモスは腕に取り付けられたアームガンを向ける。
 
 散弾銃なので至近距離なら充分に効果があるはずだ。 射程に入ったと同時に発射。
 急旋回で躱される。 広がる前に動く辺り、タイミングを完全に盗まれていた。
 それでも諦めずにグロウモスは腰裏にマウントした大型のリボルバー――シリンダーに開いている穴が三つしかない点から例の腐食弾内蔵だろう。

 これは切り払えない。 だが、ふわわの距離まで近づけてしまった。
 発射するが、最小の動きで躱される。 既に間合いだ。
 グロウモスはもう一発と銃口を向けるが、もう遅かった。 ふわわの太刀が閃き、機体が両断。

 『――クソ』

 グロウモスの小さな声が聞こえたと同時に爆散。 試合終了となった。

 
 「いやー、あんな方法で削って来るとは思わなかったわー」

 戻って来たふわわはびっくりびっくりと言いながらと笑う。 
 ヨシナリはそんな事よりもグロウモスの方が気になっていた。 またいつもの呪詛を撒き散らすのではないかとハラハラしていたのだが――グロウモスは小さく俯いてブツブツと何かを呟いている。

 やはりこうなったかと思いながらさりげなく近づいて耳を澄ませると――

 「狙撃で削るのは確実に効いてた。 機動力は削れた。 位置取りも問題なかった。 転移への対処――防刃? いや、それだけじゃ足りない。 そもそも転移を探知できないと話にならないからセンサー系の強化? 他は……」

 ――普通に反省会をしていた。

 変に粘ついた物を感じなかったのでいい傾向だなと思ってそっと離れ、ふわわに近づく。
 
 「どうでした?」
 「いやー、危なかったわー。 あんな形で当てずに削られたのはちょっと経験なかったからびっくりしたなぁ」
 
 これで半数の試合を消化した事になる。
 戦績としてはヨシナリは1勝0敗1分。 マルメルは0勝0敗1分。
 ふわわは1勝1敗。 グロウモスは0勝1敗。
 
 「よし、では四戦目行っときますか」

 ヨシナリは次のくじを引く。 引いた番号は――4、マルメル対ふわわだ。 
 
 「お、またウチやん」
 「っしゃぁ! 行くぜ!」

 ふわわは楽しそうに笑い、マルメルは気合を入れる。 
 
 「マルメル君? 楽しませてな?」
 「ヨシナリに続いて泣かせてやりますよ」
 「へぇ? それは楽しみやなぁ」

 そんなやり取りをした後、二人のアバターがフィールドへと移動。
 二人の機体がフィールドへ出現する。

 「どう見る?」
 「……ふわわさんだと思う。 マルメルだと厳しい、かも」
 「姉ですね。 マルメルさんの間合いでは姉の斬撃は防げない」
 「ふわわさんじゃないっすかね」

 満場一致でふわわだ。 正直、彼女相手に正攻法で勝つのは難しい。
 いかに彼女の意表を突くか。 腕の見せ所だが、どうなるのか……。
 開始と同時に両者共に動く。 どちらも遠距離では手が出せないので接近する必要があるからだ。

 途中でマルメルは跳躍。 ビルの屋上へ。
 恐らくはふわわを視界から消す事をリスクと考えているからだろう。
 ふわわには転移刃、野太刀と障害物を無視する攻撃手段があるので身を隠すのは悪手だ。

 視界に入った瞬間に銃撃を開始。 ふわわは即座にビルの陰に入る。
 回避と攻撃を匂わせる挙動。 狙いはマルメルの釣り出しだろう。
 マルメルは誘いに乗らず、アノマリーに付けている榴弾砲を撃ち込む。

 綺麗な放物線を描いてふわわが飛び込んだ路地へ向かう。

 「上手い。 かなり練習したな」
 「うん。 綺麗に狙った位置に落ちてる」

 爆発。 ふわわはそのまま路地を抜けて大通りへ出る。
 銃弾を切り払えても爆発は防ぎようがない。 マルメルは榴弾砲をリロードしながらポンポンと次々に榴弾を撃ち込んでいく。  

 「アレをやられると姉は前に出るしかありませんね」
 「でもよぉ、ふわわさんなら躱せるんじゃねぇか?」
 「そうさせない為に手前に落としてます。 マルメルさんは思った以上に姉を研究していますね」

 シニフィエの言う通りだった。 
 直接当てるよりも間接的な攻撃でダメージを与えるのはグロウモスが証明しているので間違いなく有効だ。 ふわわも挙動からやり難そうにしている印象を受ける。

 マルメルは銃撃しつつ他のビルの屋上へと移動。 距離を取るのではなくふわわを常に視界に収める為のポジショニングだ。 グロウモスもやっていたが、とにかく視界から消さない立ち回り。
 銃弾は切り払われるが足は遅くなる。 マルメルは片手でアノマリーを連射しながら残った手で器用に手榴弾を取り出すと放り投げて後退。 接近しようとしていたふわわはたたらを踏むように動きを止め、爆発の範囲から逃れる。 

 「突っ切れないようにほどほどに手前に落とす辺り、かなり上手いな」

 接近されたら手榴弾、離れたら榴弾砲。 それに銃撃を織り交ぜて畳みかける。
 弾が切れたと同時にエネルギー弾に切り替えて撃ち込む。 
 ここぞとばかりにふわわが距離を詰めようとするが、榴弾砲を撃ち込んで黙らせる。

 それでも突破をしようとする場合は肩に積んでいる散弾砲を撃ち込み、その間に器用にマガジン交換。 

 「凄いな。 あのふわわさん相手に中距離を維持してる」

 離れると榴弾砲、近寄ると手榴弾や散弾砲。 常に付かず離れずの位置をキープしている。
 元々、中距離での戦闘に長けてはいたが、相手との距離を意識するようになった事で立ち回りに安定感が生まれている。 それ以上に動きに無駄がない。

 素晴らしいとは思うが足を止めるだけでは彼女を仕留める事は難しいので、勝利を捥ぎ取るには他の手が必要だ。
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