Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第418話

 手榴弾も榴弾もそう長くは使えない。 撃ちまくっている間に手榴弾、榴弾の順に弾が切れた。
 ふわわは即座にそれを察して一気に踏み込む。 マルメルは地上に降りずにビルからビルへと飛び移って後退。 ふわわが射程に入ったタイミングで散弾砲で牽制。 

 当たると思っていないのかアノマリーでの銃撃と併せてばら撒くように撃ちまくる。
 爆発物が尽きた事もあって直ぐに散弾砲の弾が切れた。 使い捨てるつもりだったようで切り離す。
 散弾砲が外れた事により少し動きが軽くなったが、ふわわから逃げ切れるほどではない。

 どういうつもりだと考えていたが、恐らくは転移刃を使わせない為だ。
 ふわわは確かにあの武器を高い水準で使いこなしていると言えるが、そんな彼女と言えどまともに当てる為には高い集中が必要だ。 少なくとも1から2秒は完全に止まる。
 
 裏を返せば足を止めなければ使ってこない。 
 だが、転移を封じたからと言ってふわわが止まる訳がなかった。 
 散弾砲がなくなった事で接近に対する障害がなくなり、一気に距離が詰められる。
 
 左右に走って躱し、できないものは切り払い。 流石のマルメルも動きに若干の焦りがあった。
 ふわわは器用に躱しながらビルの隙間に降りる。 マルメルは即座に死角から来ると判断したのか、逆に前に出てふわわの降りた場所を飛び越えて距離を稼ごうとしたが――

 『あ、ヤベ』

 マルメルはそう呟いて何もない所に銃弾をばら撒く。
 恐らくは転移の気配を探知して妨害の為に銃弾をばら撒いたのだ。
 だが、九か所全てをカバーする事は不可能だったようで三つが飛んでくる。
 
 マルメルはとっさにアノマリーを盾にしつつ身を捻って回避。 
 二つは強化装甲に大きな切り傷を刻んだだけだが、残り一つがアノマリーを両断する。
 アノマリーを投げ捨てながら予備の突撃銃に持ち変えてビルの淵に着地して足元に連射。

 追い立てられたようにふわわが飛び出す。 回り込むと見せかけて転移刃で仕掛けたのだ。
 
 ――これがあるからあの人は怖いんだよなぁ……。
 
 ふわわはエネルギーウイングを用いてホバリングしながら振り返り、両手は野太刀。
 流石に不味いと判断したのかマルメルは後を追うように撃ちながらビルから飛び降りて着地。
 ふわわは機体を左右に振って下がっていく。 ヨシナリはここでふわわの狙いを悟る。

 恐らく大きな交差点の角に入ってマルメルの射線を切った後、野太刀の一撃を喰らわせるつもりだ。
 マルメルはどうにかビルの陰に入る事を防ごうとふわわの移動先に弾をばら撒いていたが、器用に躱して視界から消える。 

 ――どう狙う?

 正直、嫌なシチュエーションだった。 手元が見えないので斬撃の軌跡が分からない。
 足を薙ぐ、袈裟に両断、脳天から縦に一閃。 考えている時間はないのですぐに対処を決めなければならない。 
 マルメルは相手の斬撃に当たりを付けて勘で躱すしかないのだ。 

 ふわわの選択は袈裟に両断。 マルメルの選択は姿勢を低くして前に飛び込む事だ。
 斬。 野太刀の一閃はビルとマルメルのバックパックを両断した。
 使い物にならなくなったバックパックをパージしながらハンドレールキャノンを展開。

 勝負に出た。 
 エネルギーウイングを噴かして強引に体勢を戻すが、その頃には既にふわわの間合いだ。
 太刀による一閃。 相変わらずとんでもない速さの斬撃だ。
 
 僅かに遅れてマルメルがハンドレールキャノンを向けるが発射の直前に肘から先を斬り落とされた。
 宙に舞った腕があらぬ方向へと弾体を飛ばす。 

 「これは決まりましたね」
 
 シニフィエが小さく呟く。 彼女の言う通り、ふわわの勝ちパターンだ。
 近すぎて突撃銃は使えないのでマルメルは咄嗟に盾にして二撃目を防ぐが、突撃銃が半ばから斬り飛ばされた。 残った半分を投げつけながら下がるがふわわがそれを許すはずがない。

 次の斬撃を防ぐのは無理だ。 今度こそはと袈裟に両断を狙うふわわの一撃だったが――
 マルメルここでふわわの想定を上回る動きをした。 彼は斬撃に合わせて下がらずに前に出たのだ。
 
 「あぁ、そうか」

 納得したように呟く。 
 いくらふわわの斬撃だろうが速度が乗り切らないと充分に威力が発揮できない。
 加えてマルメルの機体は強化装甲装備だ。 そんな半端な状態で両断は難しい。
 結果、ふわわの太刀はマルメルの肩に食い込みはしたが、切断には至らなかった。

 『やっと捕まえたぜ』
 
 マルメルは残った腕でふわわの機体をホールド。 抱きしめる形になっている。
 狙いは何だと思考するよりも早く強化装甲の前面が展開。 内部から電子音が小刻みに鳴り響く。
 
 「……あ、ヨシナリのレガースと同じ――」

 最初に正解に辿り着いたグロウモスがそう呟く。
 クレイモアだ。 密着しているこの状態ではいくらふわわでも回避は不可能。

 『温存しておいてよかったぜ』
 『ちょ、うそー!!』
 
 爆発。 
 ゼロ距離で大量のベアリング弾を喰らったふわわの機体はひとたまりもなく全身が穴だらけになった。 確かめるまでもなく即死だ。 マルメルの強化装甲がバラバラと地面に脱落し、残骸と成り果てたふわわの機体が地面に落ちる。 

 「すげぇ、勝っちまいやがった」

 ヨシナリがそう呟くと同時に試合終了。 

 
 「悔しい、くーやーしーいー!!」

 ふわわが珍しく本気で悔しがっていた。 流石に2敗は堪えたようだ。
 これでふわわの試合は終了。 戦績は1勝2敗。
 シニフィエがまぁまぁと慰めるように背中をさする。 

 「いや、凄げぇなマルメル。 最初から狙ってた?」 
 「詳しい話は感想戦の時にやるけど、まぁなとだけ言っとくぜ」
 
 ヨシナリはなるほどと頷いて次のくじを引く。 残りは二試合。
 グロウモスとヨシナリ、マルメルのどちらかだ。 ヨシナリが引いた番号は――3。

 「俺の番みたいだな。 よろしく、グロウモスさん」
 「フヒ、よ、よろしく」

 ヨシナリとグロウモスはそのままフィールドへ移動する。


 「あ、あー、どっちが勝つと思、う?」
 「ウチはヨシナリ君かなー」

 マルメルが振り返ると既にいつもの調子を取り戻したふわわは即答。

 「得意距離的にグロウモスさんでは?」
 「お、俺は先輩だと思う」

 シニフィエは装備構成からホーコートはよく分からないのでヨシナリと答える。
 マルメルとしても前の戦いを見ている身としては素直にヨシナリだと思った。
 だが、グロウモスがシックスセンス対策をしていないとも思えなかったので絶対とも思っていない。

 どうなるのやらと思いながらウインドウの先に居る二人をじっと見守った。
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