Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
420 / 865

第420話

 最終戦。 マルメルとグロウモスの戦いとなるが、果たしてどうなるのか――

 「マルメル君、最近頑張ってるみたいやし何か対策練ってるんかなぁ?」
 「ここ最近、二人で模擬戦やってるのを何度か見かけたので、何かしらの対策は練っているでしょうね」

 マルメルは本当に頑張っていた。 
 空いているメンバーが居れば積極的に模擬戦を申し込み、感想戦にもかなり力を入れている。
 ヨシナリも何度か相談されていたので、やる気は伝わってきていた。

 「そうなんですか? 申し訳ないんですけど、マルメルさんは安定感はあっても突き抜けて強い印象がないのであんまり勝てるビジョンが見えないというか……」
 「お、俺は単純に距離的な不利があるから厳しいと思うっす」

 シニフィエは先入観、ホーコートは装備を見比べての予想だ。
 だが、言い切らないのは今回の戦績が彼女達の想像を超えていたからだろう。
 一勝一分け。 現在、無敗なのだ。 特にふわわに勝った事は大きい。

 ヨシナリとしてもあっさりとはやられないだろうと思っていたがまさか引っ繰り返すとは思っていなかった。 新しい機体も自分なりの解釈で強化してここまで来ているのだ。
 強さに対して貪欲なスタイルはヨシナリからすれば非常に好ましい。

 だから、今回も不利、厳しいといった意見を引っ繰り返す何かを見せつけてくれる。
 そんな期待を抱かせてくれるぐらいには今のマルメルは強かった。
 ウインドウの向こうで最終戦が開始され、両者が弾かれたように動く。

 ヨシナリ、ふわわと二連敗しているグロウモスとしてはここは勝っておきたいと思っているのか、動きにやや焦りが見られる。 対するマルメルはいつも通り、直線加速を活かして距離を詰めに行く。
 ここまでは見慣れた光景だが、マルメルが見慣れない行動を取った。

 アノマリーに取り付けている榴弾砲の弾を変えたのだ。 

 「このタイミングで変えるって事は煙幕か何かか?」

 ヨシナリが呟くと同時にマルメルは榴弾をポンポンと小刻みにばら撒くように飛ばす。
 こうして見ると榴弾の飛ばし方が上手い。 弾の飛び方も意図している感じがするので、狙った位置に正確に落としている。 即座に爆発し熱と衝撃の代わりに重たい煙が広がった。

 「チャフスモークか」
 「何それ?」
 「あぁ、煙だけじゃなくて金属片も一緒にばら撒いてレーダーやセンサー系を潰す装備ですね。 効果時間はそんなに長くないんで、割と使いどころの見極めは要る代物なんですが序盤からばら撒くって事は早々に決着を着けに行くつもりなのか……」

 嵩張るのでそこまで大量に持ち込めないはずだ。 
 それをここまで景気よくばら撒くという事は通常の榴弾は持ってきていない?
 完全に目潰しに使うと割り切ったとみていいだろう。 グロウモス相手には賢い手だった。

 彼女は捕捉してからのエイムが異様に早い。 
 だったら捕捉させなければいいという考えは合理的だ。 だが、視界が利かないのは相手に限った話ではない。 グロウモスはマルメルの意図を読んで機体を変形させ、即座に移動を開始。

 視えないのは分かっているのだ。 スモークが効いている間に接近してくるのは目に見えている。
 ドローンを用いて観測を試みてはいるようだが、煙に入られると発見は困難だ。
 この状況で彼女の取れる手はあまり多くない。 近~中距離でマルメルの相手は自殺行為なので、接近は出来ない以上、煙が晴れるまで逃げ回るか――

 「どうにかして居場所を割り出すかの二択」

 チャフはスモーク程長持ちしないので煙が晴れるより早く効果が落ちる。
 そこを狙い撃つ。 ヨシナリがグロウモスの立場ならなるべく相手の意表を突きたいと考えるのでこれを狙う。 グロウモスも早々に仕留めるつもりなのか、ヨシナリ達の見ている先で機体を変形させ、スコーピオン・アンタレスを構える。 どうやら発見したようだ。

 「あれ?」

 ふわわが小さく首を傾げる。 何故なら観戦者には両者の位置が正確に分かっているからだ。
 発射。 捕捉からエイムまで二秒もかかっていない。
 高出力のエネルギー弾がビルを貫通してマルメルが居るであろう場所を撃ち抜く。

 『?』

 手応えのなさにグロウモスは思わず首を傾げるが、自分が何を射抜いたのかを直ぐに悟って移動。
 僅かに遅れて薙ぐように銃弾が彼女の居た場所を撫でる。
 マルメルだ。 しかも位置は彼女の背後。 さて、何故そんな事が起こったのか?

 「あいつ、色々と持ち込んでるなぁ」

 ヨシナリは苦笑してグロウモスが射抜いた物へと映像をフォーカスする。
 そこには破壊されたドローンと散らばった布のような物。 囮用のドローンだ。
 地面に近い位置を飛行して内部に格納されたダミーバルーンを熱で膨らませるといった気球に近い物で目視は勿論、普段なら簡単に見破れるレベルの代物なのだが、チャフスモークで感度が低下している状態で見分けるのは難しかったようだ。 加えてマルメルがこんな絡め手を使う事は想定しなかったのだろう。

 そういった意味でも騙されたようだ。 
 
 「マルメル君、今回は仕上げて来たなぁ。 グロウモスちゃんの弱点もしっかり研究してきてるやん」
 「ですね。 グロウモスさんは基本的に狙撃で追い込むスタイルなので逆に追い込まれると脆さが出ます。 特にリズムを崩された状態で畳みかけられてって流れで割と負けるのでマルメルの奴、相当研究してきてますね」

 これまでの三戦でマルメルは徹底して個々人に合わせた戦い方を徹底していた。
 ヨシナリとの戦いではタイミングの取り方と射撃精度、ふわわ相手は間合いの維持、グロウモス相手では死角を作る事を意識しているようだ。

 「俺も今回に備えて色々と考えてきたつもりでしたが、マルメルはそれ以上に本気ですね」
 「やねぇ。 いや、見直したわ」

 感心するヨシナリとふわわ。 
 立ち回りの上手さにシニフィエとホーコートも口を閉ざすしかなかった。
 追いかけ回される状況を不味いと判断したグロウモスはちらりと消えかけているスモークを一瞥。

 もう十数秒も保たないだろうが僅かな間でも攪乱できるならと利用する事にしたようだ。
 煙の中へと飛び込む。 マルメルは構わずアノマリーを連射しながらその後を追う。
 マルメルは直線加速には優れているが小回りが利かないので、ビルの隙間を縫うように移動するグロウモス相手に徐々に距離が開き始める。
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。