Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第421話

 グロウモスの狙いは距離を取った上での仕切り直しだ。
 その為に必要なのはとにかく離れる事。 マルメルの手が届かない位置にまで逃げられたのなら巻き返せる。
 そう考えているのかもしれない。 

 ――逃げ切れたのならの話だが。

 マルメルの機体だが、よく見れば――いや、よく見なくてもおかしな点が一点あった。
 背中のバックパックがなかったのだ。 給弾機能と弾帯に繋がった短機関銃が取り付けられたバックパックが。 タイミング的にグロウモスに仕掛けた時にはもう下ろしていた見ていい。

 機動力を上げる為に下ろした? 理由としては理解できなくもない。
 グロウモスの機体は防御にはあまり力を入れていないので、当たるのならアノマリーだけでも撃破は比較的容易と言える。 だが、今のマルメルがそんな安易な行動を取るだろうか?

 ヨシナリはあり得ないと断ずる。 下ろした事には必ず意味があるはずだ。
 ならどんな意図でバックパックを手放したのか? 可能性として最も大きなものは――

 「これ、追い込まれてるんじゃないか?」
 
 ヨシナリの予想は早々に的中した。 グロウモスの逃げた先に無数の銃弾が突き刺さる。
 咄嗟に躱せたのは運が良かったからだろう。 明らかに後ろを意識しており、前への警戒が疎かになっていた。 マルメルは後方、なら彼女を攻撃したのは何か?

 ビルの上にマルメルの下ろしたバックパックが置いてあり、繋がれた短機関銃が無機質に銃口をグロウモスに向けて銃撃していた。 オートではなく、遠隔操作だろう。
 上手い使い方だった。 バックパックは予備のジェネレーターも積んでいるので給弾システムも問題なく機能する。 しかもしっかりと射界に入るように追い込んでいる所も上手い。

 グロウモスは咄嗟に処理しようとスコーピオン・アンタレスを構えて撃つがバックパックはエネルギーフィールドを展開して防御。 

 「上手い。 こっちにもフィールドの発生装置を積んでたのか」

 一手無駄にさせられた。 そして足止めを合わせれば二手のロス。
 逃げ回っている状態でこの遅れは致命的だ。 グロウモスは咄嗟にスコーピオン・アンタレスを手放して腰に差したリボルバーを抜いて構えようとしたが、いつの間にか背後まで来ていたマルメルが銃口を腕で払いのける。 

 グロウモスは咄嗟にアームガンを向けようとするがそれよりも早くマルメルの展開したハンドレールキャノンの砲口がコックピット部分に突き刺さる。 エネルギーの充填は既に済んでおり、バチバチと紫電を撒き散らし解放の時を待っていた。 発射。

 至近距離からハンドレールキャノンを喰らったグロウモスは即死。 
 胴体部分に巨大な風穴が開いたのでどうしようもない。 
 機体が力なく崩れ落ち、試合終了となった。 


 「っしゃぁ! っしゃぁ! っしゃぁぁぁ!!」

 戻って来たマルメルは勝ったのが嬉しかったのか拳を振り上げていた。
 対するグロウモスはぐぬぬと悔しそうにマルメルの方を見ている。
 これで全試合が終了した。 順位としては――

 1位ヨシナリ、マルメル、2勝1分け。 無敗で同着だ。 
 3位がふわわで1勝2敗、4位がグロウモスの全敗。
 ヨシナリとしてはトップを取れた事は勿論嬉しいが、それ以上にメンバーの成長を感じられたので収穫が多い戦いだった。 

 「ぐぬー、くーやーしーいー!」
 「……ぜ、全敗……」

 ふわわは悔しがり、グロウモスは項垂れる。
 ヨシナリはその様子を努めて気にせず、感想戦を行いましょうと記録していた映像を呼び出す。

 「悔しがるのは後にしてまずは映像を見返しましょう。 意見があればどんどん言ってください」

 最初はシニフィエ、ホーコート戦だ。
 開始と同時にホーコートが中距離で牽制しつつ高度を落として障害物に身を隠しつつ移動。
 シニフィエが追いかけてきた所、要は角で待ち構えて至近距離で食らわせようとしたのだろうが、あっさり読まれてビルに突き刺した閃光手裏剣でセンサー系が潰されてそのままフィニッシュといった流れだ。 

 「下手に長引かせずに早めに勝負に出たのは良いと思う。 ただ、誘い込み方が露骨だったから、もうちょっと工夫が要ると思う」
 「角に入る時とか分かり易いわー。 おいでおいでって手招きしてるように見えるなぁ」
 「ぶっちゃけ、姉の言う通りですね」

 ヨシナリはそういった者のチートに頼らなかった点は素直に評価していた。
 ふわわ、シニフィエの評価は誘いが露骨すぎるといったやや辛辣な物だったが、概ね正しい。
 
 「あ、相手の動きを予測できていない。 雰囲気でやるのは悪いとは言わないけど、その調子だと自分の死角を増やす事になると思う」
 「もうちょい苦戦を装うかガチで苦戦してから使った方が通り易かったと思う。 演技力がもうちょっとあったら成功率が上がるかもしれねぇぞ」

 グロウモスの言いたい事は物理的な死角ではなく意識的な物だろう。
 恐らくは視野を広く持てと言いたいようだ。 マルメルは仕掛けのタイミングを意識した方がいいといった真っ当で無難なアドバイスだった。
 
 「マルメルも言っているけど、角で仕掛けるって最初から決めてただろ?」 
 「はい、まぁ、そんな感じでした」
 「うん。 発想自体は悪くないと思うから、次はどうやれば安定して当てられるかを考えてみよう。 右旋回とかの得意な動きに頼らないようにしているのは良かったと思う。 この調子で頼むぜ」

 ヨシナリはそう言って気にするなと笑ってホーコートと肩を叩く。

 「うっす」
 「――で、私には何かないんですかお義兄さん?」
  
 シニフィエがすっと寄って来るがヨシナリはさりげなく距離を取る。

 「うーん。 実を言うとあんまりない」
 「えー、何でですか?」
 「ふわわさんにも言える事だけど、君達はセンスとリアルスキルに依存した立ち回りだから俺からできるアドバイスがないんだよ。 近接に関しては言う事はないし、中距離は手裏剣でカバーできているからバランスは取れている。 サーバー対抗戦の時の動きを見れば間の取り方、連携への入りも上手いのは良く分かったからその調子で頑張ってくれとしか。 どうしてもなんか言えって言うんならこうして映像を見返して判断的にどう思うって聞く事ぐらいじゃないか?」

 実際、彼女達に関しては完成したスタイルを持っているので無理に矯正したとしてもパフォーマンスの低下する未来しか見えないので成長するに任せた方がいい。 
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