Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第422話

 ヨシナリはマルメル達を振り返る。

 「俺もヨシナリと同意見。 殴り合いじゃ勝てる気しねーし、その調子で頑張ってくれとしか」
 「ご、ごめん。 私もよく分からない」

 マルメル、グロウモスは言う事がないと首を振る。 
 
 「ですかー。 まぁ、ちょっと考えてみます」

 シニフィエはふむと考え込むように沈黙し、ホーコートも同様に静かになったのでヨシナリは次の映像を表示する。 次はヨシナリ達の戦いだ。
 初戦はヨシナリ、ふわわ戦。 ヨシナリの立ち回りとしては序盤は中距離を維持しつつ銃撃を行い、ふわわに手を出し難くする動きだ。

 「これ間の取り方上手ぇなぁ。 転移刃を振るには微妙に遠くて野太刀を振るには近すぎる位置だ」

 明らかにふわわの間合いを意識しての距離の取り方。 彼女の事をよく研究している動きだ。
 武器のアップグレードにより、ビル一棟ぐらいなら楽に貫通できる事になった事でふわわの射線を切りながらシックスセンスで探知した情報を元に一方的に攻撃を仕掛けつつ、動き出しも抑えている。

 「ウチが近接武器しか持ってないからって一方的に……。 ヨシナリ君酷いわぁ」
 「気を抜いたら一撃で両断しに来る方が酷いですよ」

 よよよと泣き真似をするふわわをヨシナリは小さく苦笑して流す。
 大抵の相手ならこのまま沈むのだが、ふわわは恐ろしい事に射撃のタイミングを掴んで来たのか躱し方に無駄がなくなって来た。 
 
 「一応、タイミングを外しながら撃ってるのに躱してくるんだから怖いなぁ……」

 躱しながら余裕が出来たタイミングで野太刀の準備。 

 「ビル越しなのにタイミング掴んで躱してるのマジで理解できねぇ」

 マルメルの言う通りだった。 加えて反撃の体勢を整えながらの回避なので、余裕がある事が窺える。 野太刀を掴んで抜刀の体勢を取りながらの回避。
 ヨシナリの攻撃直後を狙って地面を強く踏んで一閃。 その際に鞘を固定しているアタッチメントが向きを変えて縦ではなく横薙ぎの軌跡を描く。

 「前までは縦固定だったから知ってれば躱せない事はなかったんだが、横になるとヤバさが増すなぁ」
 「機体見た時に野太刀を固定してるアタッチメントが違うなって思って警戒はしてたんだ」

 映像ではふわわが野太刀を振るう。 完全にヨシナリを両断できるタイミングだ。
 普段ならこれで決まるタイミングだが、野太刀はヨシナリを両断できずに折れ飛ぶ。
 ユウヤから貰った大剣――イラで受けたのだ。 

 「ウチ、これで決まったって思ったんやけどなぁ。 それ何で出来てるん?」
 「いや、俺にもよく分からないんですよ。 プロパティを見ても材質不明なんで何でできているのかさっぱり」
 
 その後、大技を繰り出して動きを止めたふわわにヨシナリが大剣を握って突撃。 
 エネルギーウイングを活かして機体ごと大剣を振り回す戦い方はヨシナリなりに模索した結果だろう。 刺突を躱されてからの大剣をハンマーに切り替え、足の推力偏向ノズルとエネルギーウイングを使用しての高速旋回してフルスイング。

 「これ、入ったと思ったんだけどなぁ……」

 ヨシナリが呟いている先ではふわわがハンマーのヘッド部分を野太刀の鞘で器用にいなす。
 
 「あのタイミングで躱すかよ。 ほんと半端ねぇなぁ……」

 マルメルも声が少し震えていた。 大半の人間がアレは入っただろうと思えるタイミング。
 それをあっさりと躱すのだから彼女の近接スキルは規格外だと言える。
 だが、そんなふわわでも今の一撃はいなすので精一杯だったようで、たまらずに後退。

 間合いが開いた事でヨシナリがアシンメトリーに持ち代えて銃撃、ふわわは躱さずに切り払い。
 即座に立て直した彼女は間合いを詰めるべく一気に踏み込む。
 マルメルは何でここまで追い込まれて平然と突っ込めるんだとふわわの恐ろしさにまた震える。

 ヨシナリの実弾が切れてエネルギー弾に切り替えた事で攻撃密度が低下。
 そのタイミングでヨシナリを間合いに捉える。 ヨシナリはアシンメトリーにこだわらずにアトルムとクルックスに持ち代えてバースト射撃。 元々、攻撃の繋ぎや牽制にしか使っていなかったアトルムとクルックスを強化してサイドアームとしてより高い火力を出せるようにしたようだ。

 「こうして見ると前とはかなり変わってるねー」

 ふわわは感心したようにヨシナリの挙動をじっと観察。 明らかに戦い方が変わっている。
 武器が変わったのだから当然なのだが、ヨシナリの場合はもはや進化と言ってもいいレベルだ。
 戦えば戦うほどに強くなる。 そんなヨシナリの姿を見てふわわは笑顔になった。

 ――本当に飽きがこない子やねぇ。

 シニフィエもふわわと同様にヨシナリの動きに感心していた。
 姉を接近戦で下がらせただけでも凄まじいが、それ以上にしっかりと動きの傾向を研究している事が窺える。 絶対に仕留めてやるという気迫――殺意に近い物を感じた。

 ――あぁ、だから姉はこんなにもお義兄さんの事を気に入ってるんだなぁ……。

 何となく姉がヨシナリを気に入っている理由を察している間に戦いは最後の攻防に移行していた。
 ふわわの放った転移刃を片端から撃ち落とすが、全て落としきれずにダメージを負って体勢を崩す。
 ここで終わりのはずだったのだが、最後にヨシナリは誰も予想もできない攻撃を繰り出した。

 初見時はよく分からなかったが、こうして見るとよく分かる。
 ホロスコープの胸部装甲の隙間から黒い光が漏れ、目の前に黒いエーテルの杭が出現し散弾のように飛ぶ。 至近距離だった事と完全に虚を突かれた事、そして勝ちを確信したタイミングだったのでこれは躱せなかった。 ふわわはまともに喰らい、機体は大破。 試合終了となった。

 「なぁ、ヨシナリ。 あれ、どういう仕組みなんだ?」
 「あぁ、パンドラっていう特殊ジェネレーターの機能の一つなんだが、アレはエネルギーをエーテルに変換して半物質化する機能があるってのは知ってるよな?」
 「まぁ、一応は」
 「基本的に物質化するのは機外に出したエーテルだけなんで、効率良くエーテルを外に吐き出す仕組み――要は吸排気口があればどこからでも攻撃ができる訳だ」

 中でもできなくはないが壊れるからなと付け加える。

 「だったらエーテルを撒き散らしてあちこちから飛ばせるって事か?」
 「いや、そこまで便利じゃない。 干渉範囲は数メートルだから出して直ぐに固めないと使えないんだ。 そういった意味ではベリアルの使い方は最適解だったな」

 パンドラの扱いにはまだまだ改善の余地がある。 
 脳裏にはベリアルの戦いが鮮明に浮かび、自分はまだまだ強くなれるといった手応えを感じていた。
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