Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第424話

 いい試合だったと感心しつつ次――マルメル、ふわわ戦だ。
 改めて見直すとマルメルの伸びが凄まじい。 特に射撃精度に関してはまるで別人だ。
 
 「初見の時も驚いたけどお前、マジで凄いな。 ふわわさん相手に間合いを維持しながら戦うとかどれだけだよ」
 「まぁな! 俺もやればできるってもんだぜ!」

 榴弾砲と手榴弾、散弾砲、突撃銃の四つを用いての面制圧。 
 グロウモスも同じ結論に至っていたが、ふわわ相手に点や線の攻撃は有効ではない。
 その為、回避が難しい面攻撃に偏るのは自然な流れかもしれないが、だからと言って簡単に実行できるのかと言われればそんな事はない。 彼女の踏み込み――緩急を付けたステップは射手のタイミングを外しに来るのであそこまで完全な形で釘付けにするのは非常に困難だ。 

 見れば見るほどにマルメルの成長には驚かされる。 
 だが、ふわわもまた凄まじい。 手元が見えない位置に移動したと同時に転移刃。
 反応して弾をばら撒くマルメルの反応も見事だが、あの扱いが難しい武器を使いこなし始めている。

 ふわわもスタイルを更新している最中といった印象を受けるが、基本は踏み込んでの太刀による斬撃。
 少し前まではエネルギーウイングにやや振り回されている印象を受けたが、独特なステップと織り交ぜる事で見た目以上に距離感が図り辛い。 意識の間隙を突くような加速は見えているにも関わらず幻惑されてしまう。 太刀は攻撃にそして振り回し易い小太刀を防御に使いつつ、敵に大きな隙が出来れば野太刀による一撃。 隙ができないのなら視線を切った上での転移刃。

 手元が見えない状態で使われるとセンサー系で転移の反応を感知しないと回避は困難だ。
 野太刀もアタッチメントを交換する事により、縦だけではなく横にも振れるようになったので見切る事が難しくなっている。 実際、転移刃を喰らってから目に見えてマルメルが押され始めたからだ。

 ――やはり近距離まで近づかれるとかなり厳しい戦いを強いられるな。

 死中に活を求めるという点では選択肢の一つではあるのだが、リスクが高すぎる。
 かと言って距離を取ると当たらない。 難しい相手だ。
 だが、マルメルはそのリスクを最大限許容して勝負に出た。

 ふわわの間合いの内ではマルメルは成す術もなく圧倒される。 
 腕を落とされ傷を刻まれていくが――

 「これ、狙ってたのか?」

 ――最後の一撃。 ふわわの斬撃を敢えて飛び込む事で止めたのは素晴らしい。

 いくら彼女が規格外だとしても斬撃に速度を乗せないと両断は無理だ。
 
 「まぁ、一応。 振り切られる前に当たりに行けば斬り落とされる事はないかなって思ってな。 それに俺の機体は強化装甲装備だ。 割と勝ち目のある賭けだと思ってた」

 実際にふわわの刃は装甲を切り裂けずに止まっていた。 
 ここまで持って行ければマルメルの切り札が活きる。 ふわわの機体を抱きしめるようにホールド。
 動きを封じた上で胸部の強化装甲を展開。 内部に仕込んでいたクレイモアを起爆。

 「いやー、これは流石に躱せなかったわー」

 爆発。 ゼロ距離で炸裂したクレイモアがふわわの機体を完全に粉砕。 
 そのまま試合終了となった。 マルメルの取った作戦は基本的にはヨシナリ達が対ふわわにと考えた動きの合わせ技だ。 意表を突く、射程外から躱し辛い攻撃で削る。

 だが、それを自分なりに応用したのは紛れもなくマルメルの実力と言えるだろう。

 「ってか、胸部の強化装甲にあんな物を仕込んでたのかよ」
 「おう、驚いただろ? お前が使ってるのより大型で、信管を無効にできる奴だから割と安全なんだよ」
 「俺と戦った時に使わなかったのは? 捨てなきゃ勝ててたかもしれないぞ?」
 「あぁ、アレは最初からふわわさんに使うって決めてたからな。 ま、ノールックがお前用の必殺技で、クレイモアがふわわさん用に温めてた必殺技って感じだな!」
 「はは、お前、マジですげぇよ」

 マルメルは手放しで褒められて気分がいいのか「もっと褒めてくれていいぞ」と胸を張る。
 驚かされっぱなしだなと思いながら次の試合へ。 次はヨシナリとグロウモス戦だ。
 これに関してはあまり特筆する点がなかった。

 「まぁ、ほぼ殴り合いだったからなぁ」

 互いのポジショニングと狙撃精度を競う殴り合い。 それ以上でもそれ以下でもなかった。
 純粋な技量による勝負だったので、ヨシナリとグロウモスはブツブツと自分の動きを客観視してこうすればよかったのかもと呟くだけに終わる。 そして最後の試合。

 「これに関しては特に力が入ってたな」

 ヨシナリは思わず呟く。 マルメル、グロウモス戦だが、開始早々にチャフスモークで徹底的にセンサー系を殺した上で囮をばら撒きつつ、煙の中で隠れながらバックパックを下ろして遠隔操作の砲台としてセット。 グロウモスが囮に引っかかったタイミングで居場所を割ってバックパックを下ろした場所へ追い込む。 

 「これ、グロウモスさんの居場所、大体の当たりを付けてただろ?」
 
 発見から仕掛けるまでの動きが速い。 恐らくは隠れていそうな場所をいくつか候補を挙げて直ぐに移動できる位置にポジショニングしていたのだろう。

 「まぁ、トレーニングやら模擬戦で散々追いかけ回されたからな。 何となくこの辺に居そうだなって所は分かったんだ」
 「へー、マルメル君やるやん!」

 褒めるふわわと歯ぎしりしてそうなグロウモスにヨシナリは苦笑しながら映像に視線を戻すと、追い込まれたグロウモスがマルメルの設置した砲台に引っかかっていた。
 こうして改めて見るとグロウモスは追い込まれると脆さが目立つ。 距離を取る事に思考の大部分が割かれるからだろうが、結果として罠に誘い込まれるのだから割と大きな弱点と言えた。

 「ど、どうすればいいと思う?」
 
 縋るような口調でアドバイスを求めてくるのでヨシナリはどうしたものかと考える。
 
 「こればかりは慣れですかね? 気の持ちようとかで片付けるのは違うと思うので追い込まれる事を意識して慣らしていくのが無難な対策なのでは?」
 「やねぇ。 グロウモスちゃんは追い込む事に慣れ過ぎて追い込まれる事の経験が足りてないと思うよー」

 グロウモスは納得したのかしていないのか、小さく頷くと「次は負けない」と呟いた。
 その後も簡単に意見の交換を行った後に解散。 
 ヨシナリとしては中々に実りのあるいい催しだったと思っていた。
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