Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
432 / 865

第432話

 エネルギーの鞭――というよりは追尾するエネルギー弾と捉えた方がしっくりくる。
 打ち払うと先端を分裂させて分散して襲って来る動きも面白い。
 掻い潜って小太刀で切断。 斬り飛ばせば霧散して消える。

 恐らくは柄に繋がっている間は自在に操れるのだろう。 

 『チョロチョロとよく躱す!』

 ウィルは背後に跳んで距離を取ると柄を大きなモーションで振り上げた。
 普段ならさっきと同じ振り下ろしかと思うが、気配で何となくわかる。
 恐らくは大技を繰り出すつもりだ。
 
 掲げられた柄から無数のエネルギーの鞭が現れる。 その数、二十を超えていた。
 
 ――多いなぁ……。

 『これで輪切りになれ!』
 
 振り下ろす。 間合い、タイミングとかなり上手い。
 下がるには微妙に間に合わず、上からの範囲が広い攻撃に周囲にはまだまだ木々が残っているので左右に逃げるのも難しい。 このまま行けば扇状に広がった刃がふわわを本当に輪切りにするだろう。

 だから、彼女は下がらずに腰の太刀、ナインヘッド・ドラゴンに手を添えた。
 攻撃か所の設定を瞬時に行い、即座に抜刀。 動く的には安定して当てられないが、真っすぐに振り下ろされるだけの刃を受ける程度なら充分にやれる。 

 小さく息を吸って鋭く吐く。 
 息を吐いた頃には抜刀は終わっており、ふわわを攻撃範囲に捉えていた刃が七本斬り飛ばされて霧散。 ちょうど、扇の真ん中辺りがごっそりとなくなった形だ。
 
 『ちょ、噓でしょ?』
 
 ウィルの声が僅かに震える。 
 攻め時だとふわわは判断したが、震えた声が若干、演技っぽかったのでまだ何かあるなと警戒しながらエネルギーウイングを噴かして肉薄。 ウィルは即座に発生させた刃を消して再展開。 
 横薙ぎの一撃が飛んでくるが屈む事で回避。 エネルギーウイングを利用しているので少々無理な体勢でも前には進める。 地面を這うように飛行し、後一秒もしない内に剣の間合いだ。

 太刀に手を添え、抜刀の構え。 
 ウィルは攻撃を躱されたばかりなので次を出すまで僅かに間がある。
 
 ――何かあるのならここで使わんと死ぬよ?

 絶対に何か来るとふわわは確信していた。 何故なら彼女の殺気はまだまだ衰えていないからだ。
 このゲームは本当に面白い。 上に行けば行くほどに濃い殺気を放つプレイヤーが増える。
 特にAランクのプレイヤーは個々人で差異はあるが、戦闘時は特に素晴らしい。

 目の前のウィルというプレイヤーも例に漏れず悪くない殺気を放つ。 
 怒り、焦り、戸惑い、後は僅かな恐怖? 自分を早く仕留めて本命を処理したいとでも考えているのかもしれない。 恐らくはこちらを早々に全滅させてベリアル達への対処に専念したいといった所だろう。
 
 混ぜ物が多いと殺気の純度が落ちるのであまり好みではないが、中々に美味しそうだ。 
 ふわわは昔から人の向けてくる感情を何となくだが察する事が出来た。

 最初はそれが何なのか分からなかったが、理解していくにつれて世界との付き合い方が大きく変わり、彼女の生き方、嗜好を定義する最大の要因となったのだ。 特に殺気は大好物だった。
 正直、何故ここまで心惹かれるのかは理解できないが、よくよく考えれば食の好物に何故好きなのかと尋ねられると美味しいからとしか答えられないのと同じで好きなのだからそれでいいと思っていたのだ。 だから、細かい事はどうでもよかった。 彼女は自らの欲望に忠実であれ。

 それのみを胸に戦う。 ふわわの腰から刃が閃かんと鞘から抜き放たれるが、それに合わせてウィルは予備のダガーを向けてくる。 振ってくる感じではない。
 先端に僅かな光が灯ったと同時に機体を僅かに横に傾ける。 射線から逃れる為だ。

 カメラのフラッシュのように瞬き、極細のレーザーがコックピット部分があった場所を通り過ぎる。
 
 『く、これも躱す!? どんな反応――』
 「隠し芸はもう終わり?」
 『一度躱したぐらいでいい気にならないで!』

 ウィルが更にレーザーを短い間隔で連射するが、ふわわは抜刀しながらエネルギーウイングを噴かして旋回。 背後へ回るが、鞘から抜ける前に鞭を振るモーションに入っている。
 ふわわの斬撃とウィルの横薙ぎの一閃が交差し――

 『――クソッ』

 ウィルがそう毒づいた。 彼女の鞭は切断されて霧散。
 ふわわの太刀はウィルの機体のコックピット部分を切り裂いて止まっている。
 刀を引き抜こうとしたがウィルが掴みかかろうとしたので諦めて太刀を手放して距離を取った。

 僅かに遅れてウィルのコックピット部分の破損個所がスパークして爆発。
 ふわわは太刀を手放した手をちらりと一瞥。 

 「やっぱり地面を踏んでないと威力が乗らんなぁ……」

 斬撃を繰り出しながらの旋回は練習はしていたのだが、威力が出ずに両断に至らない。
 半端に斬ってしまい、武器を喪失してしまった。 空いた手で確かめるように太刀を振る動きをするが、あまりしっくりこない。 地面を踏まずに敵機を実体剣で両断するには推進装置の助けが要る。

 「うーん、ウチもまだまだやなぁ……」

 そう呟いてふわわは踵を返し、突破した敵機を追う為に元来た道を戻る。
 まだまだ獲物は残っていそうだが、早くしないと取られてしまうので急がないといけなかった。


 
 「マジか。 ウィルの奴、やられちまいやがった」

 フィアーバは相棒の反応がロストした事に思わず呟く。
 ウィルと左右から挟む形で仕掛ける予定だったのだが、ふわわという刀使いが姿を晒したので仕留めに行ったようだ。 油断するなと釘を刺したのだが、助言も虚しく返り討ちに遭ったとみていい。

 先行した二機が残っているのでまだ挟撃という目的自体は達成可能だ。
 フィアーバは切り替えて前に意識を集中する。 『星座盤』の戦力構成に関しては調べは付いていた。 支援機が一機増えているのは想定外だったが、それ以外に関しては頭に入っている。

 リーダーのヨシナリはノーマルキマイラ。 
 遠目で見ただけだが、+フレームになっている様だったのでイベントのボス撃破の報酬で買ったのだろう。 空中に出てきてくれれば話は早かったのだが、今回は徹底して身を隠すつもりのようだ。
 
 中衛のマルメルとホーコートという新人は中距離戦なので地形的にそろそろ出てくるだろう。
 ふわわの位置は割れているのでこちらにはまだ来れない。
 そして最大の問題は狙撃手であるグロウモスだ。 
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。