438 / 865
第438話
その間にヨシナリ、マルメル、シニフィエ、ホーコートの四人がフィアーバの撃破に向かう。
ウィルが落ちた以上、残ったAランクはフィアーバとコンシャス、エーデの三人になるが、エーデに関してはベリアルに任せるつもりだったので無視。
コンシャスはまともに戦えば時間がかかるので勝ち筋が明確にイメージできているフィアーバに的を絞ったのだ。
フィアーバはエネルギー管理がかなり重要な機体だ。 その為、シックスセンスでエネルギー流動が見えている以上、比較的ではあるがやり易い相手だった。
両肩にマウントされた盾をジョイントを駆使して180°旋回させ、左右360°で上下以外の全ての攻撃に対応できる。 防御性能はこのゲームでもトップクラスだが、エネルギーフィールド、歪曲フィールドと機構を用いての防御なので盾自体の強度は高い止まりだった。
「それにしても反則みたいな防御性能だな」
スコーピオン・アンタレスの高出力のレーザー攻撃を防ぎ、マルメルのハンドレールキャノンの弾体ですら弾き飛ばした。 恐らくはふわわの野太刀でも無理だろう。
正面からならという但し書きが付くが。 フィアーバというプレイヤーは防御に徹し、相手の綻びを狙うスタイルなのだが、孤立させてしまえばその強みの大半は消える。
取り巻きを早々に減らし、残りをシニフィエ達に任せたヨシナリとマルメルはとにかく手数で攻めた。
「二人とも撃ちまくってるけど、これは相手を釘付けにする為?」
「あぁ、このフィアーバってAランクの盾は単純にエネルギーを使った分だけ防御性能を上げられる代物と思ってください。 要は防げば防ぐほどにリソースを盾に割り振らないといけないので機体のパフォーマンスが落ちるんですよ」
最初は返り討ちにするつもりだったので撤退を意識していなかったから気付いていなかったようだが、これが後になって効いてくるのだ。
「あぁ、そうやったんかー。 グロウモスちゃんにも撃たせてるのは削りの一環?」
「ですね。 後はコンシャス達を引き寄せる意味もありました」
フィアーバは一対多では強みを活かせないが、多対一、多対多であるならかなり脅威度が上がる。
コンシャス達に混ざられると厳しい事になっていただろう。
「まぁ、そこは僕が担当する事になったんだけど、中々に人使いが荒いリーダーだね?」
「最初からコキ使うって言ってるじゃないですか。 正直、期待以上でしたよ」
本音だった。 グロウモスを連れて逃げ回ってくれればいいぐらいの期待感だったのだが、しっかりと守り抜いたのはタヂカラオの実力と言える。 戦闘にフォーカスすると敵の遠距離攻撃をエネルギーフィールドで防ぎつつ、ミサイルをばら撒きながら突撃銃で牽制。
無理に撃破を狙わずに時間を稼ぐ立ち回りだ。
突っ込んで来た敵は上手く盾にして数の利を活かさせない動きは参考になる。
その間にグロウモスは高出力のレーザーを発射する為の外部パーツを排除してタヂカラオの援護に回っていた。 ヨシナリ、マルメルと直接戦闘に入ったので誤射の危険もあって切り替えたのだ。
機体を盾にしなくて良くなったタヂカラオは自由になり、グロウモスは地形を活かして逃げ回りながら狙撃を狙う。 少し遅れて残りの二機を片付けたふわわが合流する形になっていた。
「ところでお義兄さん。 私の活躍はどうですか?」
唐突にシニフィエがそんな事を言い出したのでどれどれと映像を少し巻き戻してフォーカス。
タイミングとしてはマルメルはハンドレールキャノンで削りに徹していたので、ヨシナリ、シニフィエ、ホーコートが仕掛けた頃だ。
ヨシナリが一機を撃墜し、そのままフィアーバへと向かった裏でシニフィエが敵機の背後に忍び寄って組み付き、推進装置を拳の一撃で破壊して機動性を奪うとそのまま地面に引き倒し、拳を引くと叩きつけるように振り下ろした。 腰の裏――正確にコックピットを狙うやり方は姉に通ずる面がある。
「うわ、一撃かよ」
マルメルが思わず呟く。
機体の脆い個所を的確に狙って打ち込んでいるのは流石だった。
シニフィエが「褒めてくれていいんですよ?」と言っていたのでヨシナリは「偉い、偉い」と流した。
「何かお義兄さん、私に辛辣じゃありません!?」
「あっはっは、あんたは褒めると調子に乗るからこれぐらいがちょうどいいんやない?」
抗議の声を上げるシニフィエの反応にふわわが笑っているのを尻目に映像をホーコートにフォーカス。 やられたのは知っていたが、経緯は知らないので見てみると――
「あー……」
思わず声が漏れた。
ちらりとホーコートを一瞥すると、消えてしまいたいと言わんばかりに縮こまっている。
何が起こったのかというと、得意の右旋回からのアタックで仕留めるつもりだったのだが、樹にぶつかったのだ。 そこを狙い撃たれて撃破。
「す、すんません。 俺、何やってんだろう……」
「まぁ、こういう事もあるだろ。 今回はちょっと焦り過ぎたな。 人数差あったし焦る気持ちは分かるから気にしなくていいよ」
明らかに落ち込んでいるホーコートに対してヨシナリは努めて優しくそういった。
別にわざと足を引っ張っている訳でもないので、責める事はないだろう。
元々、ホーコートはGランクだ。 それを加味すればまぁ、いいかといった気持ちになる。
期待していないのかと聞かれると嘘になるが、最初から気長に育てるつもりでいるので本人にやる気がある限りは面倒を見るつもりだった。
「はっはっは、やっちまったな後輩! 敵に集中しすぎて周りが見えなくなる奴だろ? 俺も経験あるぜ!」
「そう言う事もあるやろ。 いくらでも挽回の機会はあるから次、頑張りー」
マルメルは笑ってホーコートの肩をバシバシと叩き、ふわわは次頑張れと一言。
グロウモスは同調するようにうんうんと頷く。 シニフィエ一瞥するだけで無言。
ユウヤとベリアルは見向きもせず、タヂカラオは苦笑。
映像を進めると景気よく遠くから撃ちまくっていた『ベクヴェーム』をベリアルとユウヤが――正確にはベリアルが全滅させ、その間にユウヤがヨシナリ達に合流。 三人でフィアーバを撃破。
残ったコンシャスはふわわ、シニフィエが合流した事によって形勢が逆転して勝利、決着となった。
ウィルが落ちた以上、残ったAランクはフィアーバとコンシャス、エーデの三人になるが、エーデに関してはベリアルに任せるつもりだったので無視。
コンシャスはまともに戦えば時間がかかるので勝ち筋が明確にイメージできているフィアーバに的を絞ったのだ。
フィアーバはエネルギー管理がかなり重要な機体だ。 その為、シックスセンスでエネルギー流動が見えている以上、比較的ではあるがやり易い相手だった。
両肩にマウントされた盾をジョイントを駆使して180°旋回させ、左右360°で上下以外の全ての攻撃に対応できる。 防御性能はこのゲームでもトップクラスだが、エネルギーフィールド、歪曲フィールドと機構を用いての防御なので盾自体の強度は高い止まりだった。
「それにしても反則みたいな防御性能だな」
スコーピオン・アンタレスの高出力のレーザー攻撃を防ぎ、マルメルのハンドレールキャノンの弾体ですら弾き飛ばした。 恐らくはふわわの野太刀でも無理だろう。
正面からならという但し書きが付くが。 フィアーバというプレイヤーは防御に徹し、相手の綻びを狙うスタイルなのだが、孤立させてしまえばその強みの大半は消える。
取り巻きを早々に減らし、残りをシニフィエ達に任せたヨシナリとマルメルはとにかく手数で攻めた。
「二人とも撃ちまくってるけど、これは相手を釘付けにする為?」
「あぁ、このフィアーバってAランクの盾は単純にエネルギーを使った分だけ防御性能を上げられる代物と思ってください。 要は防げば防ぐほどにリソースを盾に割り振らないといけないので機体のパフォーマンスが落ちるんですよ」
最初は返り討ちにするつもりだったので撤退を意識していなかったから気付いていなかったようだが、これが後になって効いてくるのだ。
「あぁ、そうやったんかー。 グロウモスちゃんにも撃たせてるのは削りの一環?」
「ですね。 後はコンシャス達を引き寄せる意味もありました」
フィアーバは一対多では強みを活かせないが、多対一、多対多であるならかなり脅威度が上がる。
コンシャス達に混ざられると厳しい事になっていただろう。
「まぁ、そこは僕が担当する事になったんだけど、中々に人使いが荒いリーダーだね?」
「最初からコキ使うって言ってるじゃないですか。 正直、期待以上でしたよ」
本音だった。 グロウモスを連れて逃げ回ってくれればいいぐらいの期待感だったのだが、しっかりと守り抜いたのはタヂカラオの実力と言える。 戦闘にフォーカスすると敵の遠距離攻撃をエネルギーフィールドで防ぎつつ、ミサイルをばら撒きながら突撃銃で牽制。
無理に撃破を狙わずに時間を稼ぐ立ち回りだ。
突っ込んで来た敵は上手く盾にして数の利を活かさせない動きは参考になる。
その間にグロウモスは高出力のレーザーを発射する為の外部パーツを排除してタヂカラオの援護に回っていた。 ヨシナリ、マルメルと直接戦闘に入ったので誤射の危険もあって切り替えたのだ。
機体を盾にしなくて良くなったタヂカラオは自由になり、グロウモスは地形を活かして逃げ回りながら狙撃を狙う。 少し遅れて残りの二機を片付けたふわわが合流する形になっていた。
「ところでお義兄さん。 私の活躍はどうですか?」
唐突にシニフィエがそんな事を言い出したのでどれどれと映像を少し巻き戻してフォーカス。
タイミングとしてはマルメルはハンドレールキャノンで削りに徹していたので、ヨシナリ、シニフィエ、ホーコートが仕掛けた頃だ。
ヨシナリが一機を撃墜し、そのままフィアーバへと向かった裏でシニフィエが敵機の背後に忍び寄って組み付き、推進装置を拳の一撃で破壊して機動性を奪うとそのまま地面に引き倒し、拳を引くと叩きつけるように振り下ろした。 腰の裏――正確にコックピットを狙うやり方は姉に通ずる面がある。
「うわ、一撃かよ」
マルメルが思わず呟く。
機体の脆い個所を的確に狙って打ち込んでいるのは流石だった。
シニフィエが「褒めてくれていいんですよ?」と言っていたのでヨシナリは「偉い、偉い」と流した。
「何かお義兄さん、私に辛辣じゃありません!?」
「あっはっは、あんたは褒めると調子に乗るからこれぐらいがちょうどいいんやない?」
抗議の声を上げるシニフィエの反応にふわわが笑っているのを尻目に映像をホーコートにフォーカス。 やられたのは知っていたが、経緯は知らないので見てみると――
「あー……」
思わず声が漏れた。
ちらりとホーコートを一瞥すると、消えてしまいたいと言わんばかりに縮こまっている。
何が起こったのかというと、得意の右旋回からのアタックで仕留めるつもりだったのだが、樹にぶつかったのだ。 そこを狙い撃たれて撃破。
「す、すんません。 俺、何やってんだろう……」
「まぁ、こういう事もあるだろ。 今回はちょっと焦り過ぎたな。 人数差あったし焦る気持ちは分かるから気にしなくていいよ」
明らかに落ち込んでいるホーコートに対してヨシナリは努めて優しくそういった。
別にわざと足を引っ張っている訳でもないので、責める事はないだろう。
元々、ホーコートはGランクだ。 それを加味すればまぁ、いいかといった気持ちになる。
期待していないのかと聞かれると嘘になるが、最初から気長に育てるつもりでいるので本人にやる気がある限りは面倒を見るつもりだった。
「はっはっは、やっちまったな後輩! 敵に集中しすぎて周りが見えなくなる奴だろ? 俺も経験あるぜ!」
「そう言う事もあるやろ。 いくらでも挽回の機会はあるから次、頑張りー」
マルメルは笑ってホーコートの肩をバシバシと叩き、ふわわは次頑張れと一言。
グロウモスは同調するようにうんうんと頷く。 シニフィエ一瞥するだけで無言。
ユウヤとベリアルは見向きもせず、タヂカラオは苦笑。
映像を進めると景気よく遠くから撃ちまくっていた『ベクヴェーム』をベリアルとユウヤが――正確にはベリアルが全滅させ、その間にユウヤがヨシナリ達に合流。 三人でフィアーバを撃破。
残ったコンシャスはふわわ、シニフィエが合流した事によって形勢が逆転して勝利、決着となった。
あなたにおすすめの小説
ホスト異世界へ行く
REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」
え?勇者?
「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」
☆★☆★☆
同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ!
国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!?
しかも元の世界へは帰れないと来た。
よし、分かった。
じゃあ俺はおっさんのヒモになる!
銀髪銀目の異世界ホスト。
勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。
この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。
人誑しで情緒不安定。
モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。
そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ!
※注意※
パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。
可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑
局地戦闘機 飛電の栄光と終焉
みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》
盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。
ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……
始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。
さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。
スーパーのビニール袋で竜を保護した
チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。
見つけ次第、討伐――のはずだった。
だが俺の前に現れたのは、
震える子竜と、役立たず扱いされたスキル――
「スーパーのビニール袋」。
剣でも炎でもない。
シャカシャカ鳴る、ただの袋。
なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。
討伐か、保護か。
世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。
これは――
ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。
52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった
よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】
皆様の熱い応援、本当にありがとうございます!
ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です!
【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】
電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。
気がついたら異世界召喚。
だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。
52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。
結論――王都の地下下水道に「廃棄」。
玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。
血管年齢は実年齢マイナス20歳。
そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。
だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。
下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。
捨てられた魔道具。
長年魔素を吸い続けた高純度魔石。
そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。
チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。
あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。
汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。
スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。
この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。
魔力は毒である。代謝こそが命である。
軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。
でも、だからこそ――まず1話、読んでください。
【最新情報&著者プロフィール】
代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作!
◆ 2月に待望の【第2巻】刊行!
◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中!
◆ 【コミカライズ企画進行中】!
すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!
森のカフェしっぽっぽ
森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。
一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、
猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。
しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。
地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。
ただし、異世界人は地球には来られない。
行き来できるのはサトルだけ。
向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、
頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、
静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、
サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。
仕事に疲れた会社員。
将来に迷う若者。
自信をなくした人。
サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。
そして、棚の影で震えるジル。
怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。
それでも店からは逃げない。
その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。
これは――
福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。
震えながらでも前に立つ者が、
今日も小さく世界をつなぐ。