Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第443話

 ――二つ。

 センドウは射線の先に居たホーコートというプレイヤーを仕留め、次の標的を狙うべく移動する。
 ジェネシスフレーム『スロウイングライン』。 隠密と狙撃に特化した彼女の専用機だ。
 センドウはあれから――前回の制限戦から考えていた事があった。 

 自らの強化を。 
 その為の分かり易い手段として彼女はAランクの昇格とジェネシスフレームの入手を目指したのだ。
 少々の事なら割り切れると思っていたが、前回のユニオン対抗戦ではグロウモスにあっさりと敗れ、制限戦では同条件のヨシナリに敗北した。 別にランクが下だからと侮っている訳ではないが、このゲームでは上位に位置しているという自負はあったので連敗は彼女のプライドを酷く傷つけたのだ。

 これを払拭する為に今回の戦いは必ず勝利する。 
 それを完遂する為に徹底してセンドウは自らの弱点を潰した。
 こうして組み上がったのがこの機体だ。 

 ――ここで疑問が生まれる。 センドウに足りない物は何か?

 まずは隠密性。 既存のステルス装備ではダメだ。
 ヨシナリのシックスセンスから隠れるのは非常に困難の為、別の方法でステルス性を高める必要があった。 それは機体を組む上での最低条件だ。

 ジェネシスフレームは彼女の戦闘記録から複数の開発担当から設計図が送られてくる。
 その中で目を引いた物があった。 センサー欺瞞システム『ミミック』。
 これは単純なステルスではなく、敵の探知手段を相殺した後に偽の反応を送り返す代物だ。

 ただ、問題は通常のセンサーシステムなら可能なのだが、複合的な探知機能を備えたシックスセンスを騙せるレベルになるとあまり遠くに偽の反応を出現させられない。
 精々、数メートル程度だが、初撃を躱せるのなら充分だ。 

 そして彼女が選んだ武器――一体型狙撃銃『スリーインザブラック』。
 超極細の高出力レーザーを発射する狙撃銃。 普段は腕と背中の装甲なのだが、展開すると腕と一体化して銃を形成する。 高出力ではあるが極限まで絞っており、照射時間は1秒もない。

 その為、発射の瞬間は探知される可能性はあるが、最小限の放出なので簡単には見つからない。
 特に初見で見切るのは非常に難しいと言えるだろう。 実際、グロウモスは碌に反応できずに沈んだが、ヨシナリに躱されたのは驚きだった。 

 だが、こちらの位置は掴まれていない上、ツガルが抑えているので現状は脅威とは言えない。
 『星座盤』のメンバーは九名+ユウヤが居る以上、アルフレッドが居る可能性が高いので十機と判断するべきだ。 彼女の役目はとにかく敵の数を減らす事。

 個々人のランクは上だが、チームとしての完成度は悔しいが『星座盤』に分があると見ていた。
 中距離戦の技量を大きく伸ばしたマルメルに近接戦の鬼であるふわわ。
 追加のメンバーであるシニフィエ、ホーコート。 実力は不明だが、ランクを見れば脅威度は二人に比べればかなり低く見積もってもいいだろう。

 そして最大の問題であるベリアルとタヂカラオ。
 ベリアルは言うまでもなくAランク。 自分よりも遥かに長い期間このランクで戦ってきた凄腕だ。
 そしてタヂカラオは少し前までBランクだった事もあって対戦経験は多い。
 
 彼の厄介な所は対戦する度に装備が変わる事だ。 
 恐らくは様々な装備を試す為に日によって構成を変えているのだろう。
 大抵の武器を平均以上に扱える器用なプレイヤー。 

 戦闘面だけを切り取って考えればヨシナリに近い印象を受ける厄介な相手だった。
 何故『星座盤』所属で参加しているのかは不明だが、ジェネシスフレームではないので脅威度は幾分か落ちる。 今の自分なら充分に勝てる相手だった。

 彼女は前に出ず、フカヤと共に陰から敵を仕留める事を狙う。
 それは上手く行っていた。 一番動きの悪いホーコートを早々に沈め、次はシニフィエを狙おうと考えたのだが、砲撃によって生じた粉塵などに紛れてたのか姿が捉えられない。

 なら次はふわわを狙おうと考え、フカヤと同期してしかけようとしたのだが肝心のフカヤが早々に撃破されてしまった。 無理に狙わずにマルメルに狙いを変えたのだが、そこでふと気が付く。
 ベリアルの姿がない。 さっきまでは足止めに専念していた僚機と交戦している姿を捉えていたのだが、ふわわを狙おうと意識を逸らした瞬間にロストした。 

 ――何処に――

 『愚かな。 闇から目を逸らしたな』
 
 躱せたのは奇跡に近い。 
 咄嗟に前に転がるように飛び込み、即座に背後へとスリーインザブラックを構える。
 絞っている分、エネルギーの充填は早い。 構えた頃には発射は可能になっていた。
 
 発射するが、既にベリアルの姿はない。 センサーシステムの感度を上げているので位置は分かる。
 背後。 振り返りながら回避運動。 とにかくベリアルから距離を取らないと不味い。
 短距離転移に関してはある程度把握していたので、転移で接近されるにしても猶予があると思っていたのでいきなり背後に回られるのは想定外だ。

 『俺は闇の王、そして影もまた闇。 影は貴様の後ろをどこまでも追いかける。 逃げる事は叶わない』

 訳の分からない事を言い出した。 
 センドウは自分を相手に喋る余裕があるのかと僅かな怒りと共に銃口を向けるが背後にも反応。
 例の転移を利用した分身だ。 センサー上は二機居るように見えるが、転移後にエーテルによって機体の形状を形成する関係上、後に出てきた反応が本物。

 振り返って撃とうとしたのだが、動作は止められる。
 銃身を掴まれたのだ。 正面のベリアルに。
 
 「前が本物!?」
 『この修羅の巷に足を踏み入れたばかりの新参者、か。 貴様は狩人としては優秀なのだろう。 だが、修羅としては未熟』

 ベリアルに関しては過去に参戦した事があったので対策は練っていた。
 時間を稼ぐ為に二機を抑えに使ったのだが――ステータスを確認すると既にロストしていた。 信じられない事にこの短時間で二機を撃破したようだ。 

 センドウは諦めずに空いた手を向けると手首からハンドガンが飛び出すが構えると同時にコックピット部分を貫かれていた。

 『我が闇と対峙し、最期まで諦めなかった点だけは見事と言っておこう。 だが、それだけだ』

 センドウは道連れにしてやると機体をどうにか動かそうとしたが、コックピットを破壊された以上は気持ちではどうにもならない。 声も出ず悪態も吐けなかった。

 『闇に呑まれよ』

 ベリアルの呟くような声を最後にセンドウの機体は完全に破壊され、退場となった。
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