444 / 865
第444話
フカヤがふわわに、センドウがベリアルに敗北した事によって『栄光』は大きく戦力を落とす事となる。
それを敏感に察知したマルメルはここを攻め時と判断してそのまま前に出た。
二挺の突撃銃と腰の短機関銃を展開し、四つの銃で火力を集中させるべく撃ちまくったのだが――
一機のソルジャー+が巨大な盾を持って現れる。 イワモトだ。
「イワモトさんじゃないっすか。 やっぱ硬いっすねぇ!」
『やぁ、マルメル君。 当たったからには恨みっこなしだよ』
銃弾、エネルギー弾では傷一つ付かないタワーシールドを見てマルメルはハンドレールキャノンを展開。
流石にこれは躱すだろうと発射。 イワモトは回避を選ばずに盾を地面に突き立てる。
タワーシールドは表面のあちこちが開き、内部構造が剥き出しになる。 同時に不可視のフィールドを展開。 それには見覚えがあった。 予選で同じような代物を見たばかりだったからだ。
「またかよ」
放たれた弾体は盾の障壁に干渉されて進めない。 斥力フィールドだ。
だが、イワモトも簡単に防いでいる訳ではなく、機体の足が僅かに地面に沈んでいるのが分かった。
数秒の拮抗の後に弾体が逸れて何処かへと飛んでいくが、その頃にはマルメルは回り込んでイワモトの側面へ。 大した防御だったが、予選で遭遇したフィアーバと違ってイワモトの機体は機動性の面で難がある。 それをどう補うのか――マルメルはエネルギーフィールドを展開しつつ後退。
理由は背後からの砲撃だ。 後方で火力支援を行っている機体が火力をマルメルに集中し始めた。
イワモトを守るという意味では正解かもしれないが、火力を集中すればそれだけ他への対処が疎かになる。 特にマルメルの役目は敵の攻撃を引き受ける事も盛り込まれているので狙われるのはある意味では彼の仕事の一つと言えた。
距離を取った所でイワモトが盾の陰から巨大な散弾砲を構え、即座に発射。
――あの盾、中々便利だな。
嵩張る上、かなり重いから使いたいとは思わないが、こういった場では身を隠す遮蔽物として使えるのでフィールドの特性とは噛み合っていると言える。 だが、それは味方の援護が充分だった場合だ。
大きく旋回する事でイワモトの散弾砲を躱し、それを追うように銃口がこちらを向くがそれで充分だった。
何故ならイワモトの背後にはいつの間にか忍び寄っていたシニフィエが居たからだ。
気づいて咄嗟に振り返るが、既に彼女は拳が届く間合い。
イワモトはシニフィエに頭部を抱えるように掴まれた後、強烈な膝蹴りをコックピット部分に喰らっていた。 単に膝を打ち付けるだけなら多少のダメージで済むのだろうが、彼女の場合はそんな結果では終わらない。
空気が抜けるような音がしたかと思えば凄まじい衝撃がイワモトの機体を貫いた。
発生源はシニフィエの膝。 そこから杭のような物が付き出してイワモトの機体を貫いたのだ。
パイルバンカー。 流石のマルメルも膝に仕込んでいるとは思わなかったので、くの字に折れ曲がったイワモトの機体を見てうわと小さく声を上げた。
いつの間にか敵からの援護が来なくなったなと振り返るとふわわとアルフレッドが残りの敵を片付けており、これで敵の残数は二機となった。
カナタには手出し無用との事なので、残りは実質ツガルのみとなる。
空を見上げると空中でかなりの高速戦闘が繰り広げられている様子が目に入った。
マルメルはどうしたものかと考えながら空での戦いを見つめる。
――マジかー。
ツガルはほぼ全滅した味方を見て内心でそう呟く。
今回のイベントにはそれなりに力を入れて臨んだつもりだった。
前回、前々回と『星座盤』に負け続けていたので今度こそは借りを返すと連携訓練も密に行ったのだが、ヨシナリ達相手にはどうやら足りなかったようだ。
センドウによる奇襲で二機落とした所までは良かったのだが、それ以降があまりよろしくなかった。
動揺こそあった物の『星座盤』の連携は強固で、その程度の事では崩れなかったのだ。
ツガル達はしっかりと対策を練って来たつもりだった。 『星座盤』は自覚があるかは不明だが、ヨシナリが中心に居る事で機能を最大限に発揮するチームだと考えていたのだ。
真っ先に撃破できれば最高。
そうでなくともツガルが抑える事で機能しなくなる事を狙ってのこのポジションだ。
今のヨシナリと戦って勝てるのはカナタか自分だけだと思っていた。 センドウでも可能ではないかと思われているが、負け続けた事で彼女はヨシナリの撃破に執着を見せている。
ツガルとしてはその執念はセンドウという人間にとってはノイズと考えていた。
彼女の最大の強みはその冷静さであるからだ。 それを欠いた状態でヨシナリに仕掛けてもツガルには返り討ちに遭う未来しか見えない。 だから、センドウには敵の数を減らすように促し、自分がヨシナリに当たる事にしたのだ。
ツガルとしてもやられっぱなしは性に合わないので自分が潰してやりたいといった欲はありはしたが、冷静に戦えていると自己分析している。
ジェネシスフレームに乗り換えて日が浅く、この機体のポテンシャルを最大限に引き出せているのかは少し怪しいが有利に事を運べているはずだ。
――にもかかわらず、ヨシナリは健在。
「ひらひらと器用に躱すじゃねーか!」
『はは、こっちも割と必死ですよ!』
ヨシナリは気軽にそう返すが、明らかに前よりも機体もそうだが何より技量が向上している。
以前、ヨシナリに尋ねた事があった。 上手くなる秘訣は何かと。
返って来た答えにツガルは少し驚いた事は未だに記憶に新しい。
ヨシナリの答えは『できるまでやる』だ。
具体的には一つの機動を完全に使いこなすまで、反復練習を積み重ねるのだと言う。
使いこなしたい挙動を行う。 何度も何度も何度も何度も、そして記録した映像から修正点、改善点を洗い出し、更に反復練習。 それを自分が満足いくクオリティーになるまで繰り返す。
こうしてヨシナリはその技量を向上させてきたのだ。
それを知ったツガルは表面上は凄いなと褒めたが、内心では狂っていると思っていた。
ゲームは楽しむ物だ。 だが、ヨシナリの場合はそれは過程の一つで、本質的には勝利に執着しているとツガルは思っていた。 勝つ為にあらゆる手を打ち、あらゆる努力を惜しまない。
――それこそがヨシナリという人間の本質。
それを敏感に察知したマルメルはここを攻め時と判断してそのまま前に出た。
二挺の突撃銃と腰の短機関銃を展開し、四つの銃で火力を集中させるべく撃ちまくったのだが――
一機のソルジャー+が巨大な盾を持って現れる。 イワモトだ。
「イワモトさんじゃないっすか。 やっぱ硬いっすねぇ!」
『やぁ、マルメル君。 当たったからには恨みっこなしだよ』
銃弾、エネルギー弾では傷一つ付かないタワーシールドを見てマルメルはハンドレールキャノンを展開。
流石にこれは躱すだろうと発射。 イワモトは回避を選ばずに盾を地面に突き立てる。
タワーシールドは表面のあちこちが開き、内部構造が剥き出しになる。 同時に不可視のフィールドを展開。 それには見覚えがあった。 予選で同じような代物を見たばかりだったからだ。
「またかよ」
放たれた弾体は盾の障壁に干渉されて進めない。 斥力フィールドだ。
だが、イワモトも簡単に防いでいる訳ではなく、機体の足が僅かに地面に沈んでいるのが分かった。
数秒の拮抗の後に弾体が逸れて何処かへと飛んでいくが、その頃にはマルメルは回り込んでイワモトの側面へ。 大した防御だったが、予選で遭遇したフィアーバと違ってイワモトの機体は機動性の面で難がある。 それをどう補うのか――マルメルはエネルギーフィールドを展開しつつ後退。
理由は背後からの砲撃だ。 後方で火力支援を行っている機体が火力をマルメルに集中し始めた。
イワモトを守るという意味では正解かもしれないが、火力を集中すればそれだけ他への対処が疎かになる。 特にマルメルの役目は敵の攻撃を引き受ける事も盛り込まれているので狙われるのはある意味では彼の仕事の一つと言えた。
距離を取った所でイワモトが盾の陰から巨大な散弾砲を構え、即座に発射。
――あの盾、中々便利だな。
嵩張る上、かなり重いから使いたいとは思わないが、こういった場では身を隠す遮蔽物として使えるのでフィールドの特性とは噛み合っていると言える。 だが、それは味方の援護が充分だった場合だ。
大きく旋回する事でイワモトの散弾砲を躱し、それを追うように銃口がこちらを向くがそれで充分だった。
何故ならイワモトの背後にはいつの間にか忍び寄っていたシニフィエが居たからだ。
気づいて咄嗟に振り返るが、既に彼女は拳が届く間合い。
イワモトはシニフィエに頭部を抱えるように掴まれた後、強烈な膝蹴りをコックピット部分に喰らっていた。 単に膝を打ち付けるだけなら多少のダメージで済むのだろうが、彼女の場合はそんな結果では終わらない。
空気が抜けるような音がしたかと思えば凄まじい衝撃がイワモトの機体を貫いた。
発生源はシニフィエの膝。 そこから杭のような物が付き出してイワモトの機体を貫いたのだ。
パイルバンカー。 流石のマルメルも膝に仕込んでいるとは思わなかったので、くの字に折れ曲がったイワモトの機体を見てうわと小さく声を上げた。
いつの間にか敵からの援護が来なくなったなと振り返るとふわわとアルフレッドが残りの敵を片付けており、これで敵の残数は二機となった。
カナタには手出し無用との事なので、残りは実質ツガルのみとなる。
空を見上げると空中でかなりの高速戦闘が繰り広げられている様子が目に入った。
マルメルはどうしたものかと考えながら空での戦いを見つめる。
――マジかー。
ツガルはほぼ全滅した味方を見て内心でそう呟く。
今回のイベントにはそれなりに力を入れて臨んだつもりだった。
前回、前々回と『星座盤』に負け続けていたので今度こそは借りを返すと連携訓練も密に行ったのだが、ヨシナリ達相手にはどうやら足りなかったようだ。
センドウによる奇襲で二機落とした所までは良かったのだが、それ以降があまりよろしくなかった。
動揺こそあった物の『星座盤』の連携は強固で、その程度の事では崩れなかったのだ。
ツガル達はしっかりと対策を練って来たつもりだった。 『星座盤』は自覚があるかは不明だが、ヨシナリが中心に居る事で機能を最大限に発揮するチームだと考えていたのだ。
真っ先に撃破できれば最高。
そうでなくともツガルが抑える事で機能しなくなる事を狙ってのこのポジションだ。
今のヨシナリと戦って勝てるのはカナタか自分だけだと思っていた。 センドウでも可能ではないかと思われているが、負け続けた事で彼女はヨシナリの撃破に執着を見せている。
ツガルとしてはその執念はセンドウという人間にとってはノイズと考えていた。
彼女の最大の強みはその冷静さであるからだ。 それを欠いた状態でヨシナリに仕掛けてもツガルには返り討ちに遭う未来しか見えない。 だから、センドウには敵の数を減らすように促し、自分がヨシナリに当たる事にしたのだ。
ツガルとしてもやられっぱなしは性に合わないので自分が潰してやりたいといった欲はありはしたが、冷静に戦えていると自己分析している。
ジェネシスフレームに乗り換えて日が浅く、この機体のポテンシャルを最大限に引き出せているのかは少し怪しいが有利に事を運べているはずだ。
――にもかかわらず、ヨシナリは健在。
「ひらひらと器用に躱すじゃねーか!」
『はは、こっちも割と必死ですよ!』
ヨシナリは気軽にそう返すが、明らかに前よりも機体もそうだが何より技量が向上している。
以前、ヨシナリに尋ねた事があった。 上手くなる秘訣は何かと。
返って来た答えにツガルは少し驚いた事は未だに記憶に新しい。
ヨシナリの答えは『できるまでやる』だ。
具体的には一つの機動を完全に使いこなすまで、反復練習を積み重ねるのだと言う。
使いこなしたい挙動を行う。 何度も何度も何度も何度も、そして記録した映像から修正点、改善点を洗い出し、更に反復練習。 それを自分が満足いくクオリティーになるまで繰り返す。
こうしてヨシナリはその技量を向上させてきたのだ。
それを知ったツガルは表面上は凄いなと褒めたが、内心では狂っていると思っていた。
ゲームは楽しむ物だ。 だが、ヨシナリの場合はそれは過程の一つで、本質的には勝利に執着しているとツガルは思っていた。 勝つ為にあらゆる手を打ち、あらゆる努力を惜しまない。
――それこそがヨシナリという人間の本質。
あなたにおすすめの小説
ホスト異世界へ行く
REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」
え?勇者?
「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」
☆★☆★☆
同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ!
国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!?
しかも元の世界へは帰れないと来た。
よし、分かった。
じゃあ俺はおっさんのヒモになる!
銀髪銀目の異世界ホスト。
勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。
この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。
人誑しで情緒不安定。
モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。
そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ!
※注意※
パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。
可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑
局地戦闘機 飛電の栄光と終焉
みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》
盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。
ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……
始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。
さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。
スーパーのビニール袋で竜を保護した
チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。
見つけ次第、討伐――のはずだった。
だが俺の前に現れたのは、
震える子竜と、役立たず扱いされたスキル――
「スーパーのビニール袋」。
剣でも炎でもない。
シャカシャカ鳴る、ただの袋。
なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。
討伐か、保護か。
世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。
これは――
ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。
52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった
よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】
皆様の熱い応援、本当にありがとうございます!
ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です!
【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】
電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。
気がついたら異世界召喚。
だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。
52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。
結論――王都の地下下水道に「廃棄」。
玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。
血管年齢は実年齢マイナス20歳。
そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。
だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。
下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。
捨てられた魔道具。
長年魔素を吸い続けた高純度魔石。
そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。
チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。
あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。
汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。
スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。
この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。
魔力は毒である。代謝こそが命である。
軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。
でも、だからこそ――まず1話、読んでください。
【最新情報&著者プロフィール】
代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作!
◆ 2月に待望の【第2巻】刊行!
◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中!
◆ 【コミカライズ企画進行中】!
すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!
森のカフェしっぽっぽ
森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。
一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、
猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。
しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。
地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。
ただし、異世界人は地球には来られない。
行き来できるのはサトルだけ。
向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、
頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、
静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、
サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。
仕事に疲れた会社員。
将来に迷う若者。
自信をなくした人。
サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。
そして、棚の影で震えるジル。
怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。
それでも店からは逃げない。
その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。
これは――
福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。
震えながらでも前に立つ者が、
今日も小さく世界をつなぐ。