Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
447 / 786

第447話

しおりを挟む
 「はは、お前、そのランクでその装備って詐欺すぎんだろ」

 ツガルは思わずそう呟く。 
 エーテルによって覆われ、黒く染まったホロスコープは形状に差異こそあるがその見た目は闇の王を自称するAランクプレイヤーの機体に酷似していた。

 『ふはははは、我がホロスコープの黒金剛石ブラックダイヤモンドの如き威容を慄くがいい!』

 エネルギーウイング、足の推力偏向ノズルからエーテルの黒い輝きが噴き出す。
 
 ――来る。 
 
 ツガルは機体を加速させる。 慣性を無視し、更にランダム性を持たせた機動で攪乱を意識。
 回転しながら闇雲に弾をばら撒くだけではあのエーテルの装甲を抜けないので仕留めるには一点に集中して撃ち込む必要がある。 対するヨシナリは大剣を変形させたハンマー。

 恐らく喰らったらシールドを貫通して落とされかねない。 落ちなかったとしてもバランスを大きく崩されるのは目に見えているので喰らう訳にはいかなかった。
 仕留めたいならコックピットか、推進装置だが、ヨシナリのホロスコープは腰部にエネルギーウイングが二基、そして両足に推力偏向ノズルと四つ搭載されているので一つ潰した程度では墜落は難しい。

 ツガルの機体はスペックの大半を機動性に割り振っている事もあって、火力と耐久に関しては既存機と大きく変わらない。 重力制御による飛行は凄まじい飛行能力を付与してくれるがジェネレーター出力をかなり圧迫する上、斥力フィールドを併用する関係で高出力の光学兵器が積めなかったのだ。

 武装に関しては現在、実戦データの収集中と並行して実弾系の兵装を開発中だったのだが、今回に間に合わなかった。 その為、プレーンな状態での参戦となってしまったのは厳しくはあるが、機動とエネルギー式の機銃で大抵の相手はどうにかなる。 

 ――そう思っていたのだが、目の前のヨシナリはその大抵の相手に当てはまらないようだ。

 読み取れ、ヨシナリの思考を。 ツガルは必死に思考を回す。
 あいつなら俺が何をしてくると判断する? 
 今のホロスコープの機動性はボーディングパイクと同等以上だ。 

 先手を取る事もできるだろう。 なら先に仕掛けてくる?
 ハンマーは攻撃の回転は良くないはずだ。 なら、ここは先手を相手に譲り、カウンターで仕留める。 一撃躱せば自分のターンだ。 

 ――さぁ、来い!

 背後を取ったと同時にヨシナリが高速旋回。 とんでもない速さで、即座に背後に回られる。
 ツガルは機銃を連射。 上昇で躱される。 この機体は前後に銃口がある関係で仕留めたいなら側面か上下から来るのは読めていた。 

 上。 一気に振り下ろす。 ハンマーが唸りを上げてツガルに向けて振り下ろされる。
 まだだ。 ギリギリまで引き付けろ。 相手に思惑通りに進んだと思わせるんだ。
 接触の直前に縦旋回。 ヨシナリからすればハンマーのヘッド部分をすり抜けたように見えただろう。

 このまま背後を取ると思わせて真上からエネルギーウイングを狙う。
 タイミングはかなりシビアだが、この角度、位置なら充分に当てられる。
 エーテルの鎧に守られていようともエネルギーウイングは推進力を吐き出す為に他よりも脆い。
 
 これで――

 どうだと撃とうとしたツガルの視界一杯に広がったのはハンマーのヘッド部分だった。
 何でだ? そんな疑問は刹那。 よくよく考えれば分かる話で、ヨシナリはハンマーを振り抜いた後もエネルギーウイングを噴かし続けて一回転したのだ。

 直撃。 咄嗟に斥力フィールドを展開したが、衝撃を完全に殺す事には至らない。
 外殻部分が大きく陥没し、内部の機体にもダメージが入る。 先端を狙われたのだが、運悪く頭部側だった事もあって画面のあちこちにエラーメッセージが次々にポップアップ。

 ――だが、まだやられてはいない。

 ツガルは吹き飛ばされながらも機体を立て直す。 
 重力制御による飛行システムはこういった状況で特に力を発揮する。
 即座に立て直しが終わり、銃口を向けたのだが、ヨシナリは空いた手を向けていた。

 掌の奥に闇が蠢く。 発射。
 ツガルの無数のエネルギー弾はヨシナリの掌から放たれた闇色の光線に呑み込まれた。
 外殻が熔解し、本体が露出。 機体のダメージが閾値を突破した。

 「ったく、また負けかよ。 次はこうは行かねぇからな」

 負け惜しみにそう呟くと同時に機体が爆発。 ツガルは退場となった。


 「ふぅ、きつかった」

 エーテルの鎧を解除してパンドラの出力を元に戻す。
 ホロスコープを覆っていた鎧が空気に溶けるように剥がれ落ち、ついでに腕も溶け落ちた。
 
 「これは駄目だなぁ……」

 思わず呟く。 
 掌に付けた給排気口からエーテルを収束させた砲を放ったのだが、腕がエーテルの流入に耐えられなかったようだ。 爆発せずに内部でパーツが融解して落ちただけで済んだのは運がいいと言える。 

 やはり500%での駆動は無理があったようだ。 
 エラーメッセージを見るとフレームにダメージが入っているという珍しい内容が表示されていた。
 大抵の場合はフレームにダメージが行く前に機体が大破するので割とレアな状態だ。

 シックスセンスは辛うじて生きてはいるが、エネルギーウイングも推力偏向ノズルもエラーメッセージを大量に吐いている状態なのでもう戦闘は無理だろう。
 
 「ヨシナリ! 無事か!?」

 マルメルから通信が入る。 ヨシナリは苦笑してあぁと応えた。

 「何とかな。 やっぱ、慣れない事はするもんじゃないよ。 悪いが俺はここまでだ。 センサーリンクは生きてるから後は頼む」
 「おう! ――にしてもジェネシスフレームを単独撃破とか凄いじゃねーか!」
 「詳しい話は感想戦の時にでもしよう。 決着はまだだから気は抜くなよ」

 マルメルの後は任せとけという頼りになる返事を聞いて通信を切断。
 ゆっくりと降下しながらヨシナリはさっきの挙動を脳裏で反芻する。
 キマイラのスペックを超過した駆動はジェネシスフレームと同等以上の戦闘能力を発揮した。

 ランカーとの戦いではこれ以上ないほどに頼もしい武器だが、使えば機体が使い物にならなくなるのは大きな問題だ。 

 「300か200まで落とすか?」

 だが、落としすぎると半端な強化になるので無駄に機体を傷めつけるだけに終わる。
 そう判断したからこそ500%というギリギリの出力での使用に踏み切ったのだ。
 
 「――ってか機体がボロボロなのにコネクターは無事なの納得いかねぇな」

 そう呟いてまた思考に入ろうとしたが、不意に響いた衝撃音に掻き消される。
 発生源に視線を向けるとそこでは二人のAランクが本気の潰し合いをしている姿が見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【なろう490万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて490万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき90万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...