465 / 865
第465話
二つのハンマーのヘッド部分が正面から打ち合う事で互いが跳ね返る。
ユウヤは鬱陶しいと思いながらもそれに応じざるを得なかった。
目の前の敵――ウルツァイトはとにかくしつこく正面からの打ち合いを狙って来る。
小細工なしでここまで上がって来ただけあって接近戦でのセンスは本物だった。
ウルツァイトの機体は重量系ではあるが直線加速に優れており、逃げようとしても追いかけてくる。
とにかく正面に来て打ち合いをしろとしつこいのだ。 当人にはそんな意図はないが、チームの方針としてはウルツァイトの役割はユウヤの足止め。
ベリアルも明らかに足止めを喰らっているので、ヤガミ達が決着を着けるまで粘るつもりだろう。
ヨシナリが簡単にやられるとは思っていないが、ヤガミはAランクでも手強い部類に入る相手だ。
やられない保証もない。
アルフレッドとのセンサーシステムのリンクで戦況はかなり詳しく把握できている。
現在、上空ではヨシナリとタヂカラオがヤガミとアベリアを相手に戦闘中。
どちらも苦戦しているようだ。 ヨシナリはヤガミ相手に良く持ち堪えており、タヂカラオも性能で劣る機体で頑張ってはいるが技量に大きな差がない以上は機体性能差は大きい。
特にアベリアはバランス重視の機体なので性能差が顕著に現れる。
谷底ではふわわがラクリマと交戦中。 中央では谷を挟んでマルメルとホーコートが銃撃戦。
南ではグロウモスがエンジェルタイプに頭を押さえられていて身動きが取れない。
少し下がった位置――要はここからやや南にシニフィエが居るのだが、今しがた反応が消えた。
やられたようだ。 普通に考えるなら撃破されたと見るべきなのだが、やられ方に少し違和感があった。 恐らくは何らかの奇襲を受けたと見て間違いない。
まだ捲れていない奴が居るので恐らくは残ったAランクだろう。 機体の能力的にも間違いない。
――タヂカラオの野郎、何が参戦は四人だ。 七人全員来ているじゃねぇか。
ここは少々無理をしてでも突破を図る必要がある。
「――ふ、互いに苦戦しているようだな。 我が好敵手よ」
思考に割り込むようにベリアルからの通信が飛び込んで来た。
「何だ厨二野郎。 今、忙しい。 つまらねぇ話なら後にしろ」
「貴様の前に立ちはだかる黒鉄の鉄槌は突破は簡単ではない。 何故なら奴の鉄槌は煉獄の炎に耐えうる硬度を誇っているからだ」
「だからなんだ?」
「貴様の炎は防ぐが、我が闇であるならその堅牢を貫けるだろう」
それを聞いてユウヤはなるほどとベリアルの言葉の意図を理解した。
「かの兎は魔弾の射手単独では手に余る。 時間が惜しい」
「分かった。 タイミングはこっちで取る。 合わせろ」
「ふ、任せろ」
カラカラはブレードを振り回す。
繰り出した斬撃をベリアルは次々と掻い潜り、カウンターを繰り出そうとするが、ラドンの銃撃で後退。 この繰り返しだ。
気を抜けばあっさり崩される均衡だが、ベリアルには何度も負けているだけあってカラカラもラドンもしっかりと対策は練ってきていた。
基本的にベリアルは手数で圧倒してくるタイプだ。 そこに短距離転移と分身を織り交ぜる事で相手の判断を遅らせてくる。 非常に厄介な相手だ。
何度も負けた相手であって可能であれば叩きのめしてやりたいリストの上位に名を連ねている。
ただ、厄介であって無敵ではない。
ベリアルの挙動は早いが見えないほどではなく、センサー系を強化したので転移の前兆である空間の歪みも観測できるのでラドンの援護がある状態なら充分に対処は可能。
問題はこれだけやって抑えるだけで精一杯という事だ。
予定としては他を片付けたメンバーがこちらに来て囲んで潰す。
今回、参戦したランカーはカラカラを含めて七人。 正直、過剰ではないかと思っていた。
このチームは『思金神』の三軍だ。 つまり一軍、二軍が居る以上、優勝は不可能。
なら適当に流してしまえばいいというのがカラカラの本音だった。
そんな理由もあってあまりやる気がなかったのだ。
欠席したかったのだが、ヤガミの意向で全員が強制参加。
逆らうなら降格も視野に入れると言われてしまったので従わざるを得なかった。
カラカラもそうだが、三軍のAランクプレイヤーは全員ユニオンから機体製作の予算を提供されているので四軍以下に落ちるとジェネシスフレームは没収される。
そうなるとAランクの維持は難しく、普段からRMTで散財しているカラカラに新しくジェネシスフレームを購入する金はなかった。
カラカラは現状に満足しているので、これ以上もこれ以下も望んでいない。
何故ならこのAランク帯で生き残る事は出来ても勝ち上がる事は難しいと思っているからだ。
ラーガスト。 あの化け物Sランクと一度でも戦えば嫌でも現実という物を思い知らされる。
文字通りの瞬殺。 絶対的な自信のあった速度で大きく上回られた時点で心が折れてしまったのだ。
だからと言ってこのゲームを辞める事も出来なかった。 定期的――週に一回支給されるPがあるからだ。
1P=一万から二万クレジット。 要はリアルマネーに変換できる事もあって手放せないのだ。
基本的にどのランクも報酬はランクの固定報酬にプラス勝利数で増額される。
ただ、Aランクは週間の戦闘回数が決められており、それを達成しなければ問答無用で降格となるのだ。 つまりAランクプレイヤーは地位を維持する為にこのゲームに縛られる形になる。
カラカラとしても負けすぎなければ既定の戦闘回数を満たすだけで、社会人の平均月収以上の金額が手に入るこのポジションを手放す気はなかった。 上には行けない。 だが、下にも落ちたくない。
これがAランクプレイヤーの大半が陥るジレンマだ。
上に行きたいなら戦闘回数を増やす必要がった。
だが、回数を増やせば敗北のリスクが高まり、場合によっては降格の危険が発生する。
降格したくないなら回数を減らせばいい。 結果、最低限の戦闘だけこなして後は適当。
それで維持できるのかといった疑問はあるが、残念ながら一定数のプレイヤーはそうなっているので維持するだけならどうにでもなってしまうのだ。 ラドン達がイベントに乗り気ではない理由でもある。
――だから――
このイベントもユニオンからの評価を落とさない程度に成果を出さなければならなかった。
ユウヤは鬱陶しいと思いながらもそれに応じざるを得なかった。
目の前の敵――ウルツァイトはとにかくしつこく正面からの打ち合いを狙って来る。
小細工なしでここまで上がって来ただけあって接近戦でのセンスは本物だった。
ウルツァイトの機体は重量系ではあるが直線加速に優れており、逃げようとしても追いかけてくる。
とにかく正面に来て打ち合いをしろとしつこいのだ。 当人にはそんな意図はないが、チームの方針としてはウルツァイトの役割はユウヤの足止め。
ベリアルも明らかに足止めを喰らっているので、ヤガミ達が決着を着けるまで粘るつもりだろう。
ヨシナリが簡単にやられるとは思っていないが、ヤガミはAランクでも手強い部類に入る相手だ。
やられない保証もない。
アルフレッドとのセンサーシステムのリンクで戦況はかなり詳しく把握できている。
現在、上空ではヨシナリとタヂカラオがヤガミとアベリアを相手に戦闘中。
どちらも苦戦しているようだ。 ヨシナリはヤガミ相手に良く持ち堪えており、タヂカラオも性能で劣る機体で頑張ってはいるが技量に大きな差がない以上は機体性能差は大きい。
特にアベリアはバランス重視の機体なので性能差が顕著に現れる。
谷底ではふわわがラクリマと交戦中。 中央では谷を挟んでマルメルとホーコートが銃撃戦。
南ではグロウモスがエンジェルタイプに頭を押さえられていて身動きが取れない。
少し下がった位置――要はここからやや南にシニフィエが居るのだが、今しがた反応が消えた。
やられたようだ。 普通に考えるなら撃破されたと見るべきなのだが、やられ方に少し違和感があった。 恐らくは何らかの奇襲を受けたと見て間違いない。
まだ捲れていない奴が居るので恐らくは残ったAランクだろう。 機体の能力的にも間違いない。
――タヂカラオの野郎、何が参戦は四人だ。 七人全員来ているじゃねぇか。
ここは少々無理をしてでも突破を図る必要がある。
「――ふ、互いに苦戦しているようだな。 我が好敵手よ」
思考に割り込むようにベリアルからの通信が飛び込んで来た。
「何だ厨二野郎。 今、忙しい。 つまらねぇ話なら後にしろ」
「貴様の前に立ちはだかる黒鉄の鉄槌は突破は簡単ではない。 何故なら奴の鉄槌は煉獄の炎に耐えうる硬度を誇っているからだ」
「だからなんだ?」
「貴様の炎は防ぐが、我が闇であるならその堅牢を貫けるだろう」
それを聞いてユウヤはなるほどとベリアルの言葉の意図を理解した。
「かの兎は魔弾の射手単独では手に余る。 時間が惜しい」
「分かった。 タイミングはこっちで取る。 合わせろ」
「ふ、任せろ」
カラカラはブレードを振り回す。
繰り出した斬撃をベリアルは次々と掻い潜り、カウンターを繰り出そうとするが、ラドンの銃撃で後退。 この繰り返しだ。
気を抜けばあっさり崩される均衡だが、ベリアルには何度も負けているだけあってカラカラもラドンもしっかりと対策は練ってきていた。
基本的にベリアルは手数で圧倒してくるタイプだ。 そこに短距離転移と分身を織り交ぜる事で相手の判断を遅らせてくる。 非常に厄介な相手だ。
何度も負けた相手であって可能であれば叩きのめしてやりたいリストの上位に名を連ねている。
ただ、厄介であって無敵ではない。
ベリアルの挙動は早いが見えないほどではなく、センサー系を強化したので転移の前兆である空間の歪みも観測できるのでラドンの援護がある状態なら充分に対処は可能。
問題はこれだけやって抑えるだけで精一杯という事だ。
予定としては他を片付けたメンバーがこちらに来て囲んで潰す。
今回、参戦したランカーはカラカラを含めて七人。 正直、過剰ではないかと思っていた。
このチームは『思金神』の三軍だ。 つまり一軍、二軍が居る以上、優勝は不可能。
なら適当に流してしまえばいいというのがカラカラの本音だった。
そんな理由もあってあまりやる気がなかったのだ。
欠席したかったのだが、ヤガミの意向で全員が強制参加。
逆らうなら降格も視野に入れると言われてしまったので従わざるを得なかった。
カラカラもそうだが、三軍のAランクプレイヤーは全員ユニオンから機体製作の予算を提供されているので四軍以下に落ちるとジェネシスフレームは没収される。
そうなるとAランクの維持は難しく、普段からRMTで散財しているカラカラに新しくジェネシスフレームを購入する金はなかった。
カラカラは現状に満足しているので、これ以上もこれ以下も望んでいない。
何故ならこのAランク帯で生き残る事は出来ても勝ち上がる事は難しいと思っているからだ。
ラーガスト。 あの化け物Sランクと一度でも戦えば嫌でも現実という物を思い知らされる。
文字通りの瞬殺。 絶対的な自信のあった速度で大きく上回られた時点で心が折れてしまったのだ。
だからと言ってこのゲームを辞める事も出来なかった。 定期的――週に一回支給されるPがあるからだ。
1P=一万から二万クレジット。 要はリアルマネーに変換できる事もあって手放せないのだ。
基本的にどのランクも報酬はランクの固定報酬にプラス勝利数で増額される。
ただ、Aランクは週間の戦闘回数が決められており、それを達成しなければ問答無用で降格となるのだ。 つまりAランクプレイヤーは地位を維持する為にこのゲームに縛られる形になる。
カラカラとしても負けすぎなければ既定の戦闘回数を満たすだけで、社会人の平均月収以上の金額が手に入るこのポジションを手放す気はなかった。 上には行けない。 だが、下にも落ちたくない。
これがAランクプレイヤーの大半が陥るジレンマだ。
上に行きたいなら戦闘回数を増やす必要がった。
だが、回数を増やせば敗北のリスクが高まり、場合によっては降格の危険が発生する。
降格したくないなら回数を減らせばいい。 結果、最低限の戦闘だけこなして後は適当。
それで維持できるのかといった疑問はあるが、残念ながら一定数のプレイヤーはそうなっているので維持するだけならどうにでもなってしまうのだ。 ラドン達がイベントに乗り気ではない理由でもある。
――だから――
このイベントもユニオンからの評価を落とさない程度に成果を出さなければならなかった。
あなたにおすすめの小説
ホスト異世界へ行く
REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」
え?勇者?
「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」
☆★☆★☆
同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ!
国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!?
しかも元の世界へは帰れないと来た。
よし、分かった。
じゃあ俺はおっさんのヒモになる!
銀髪銀目の異世界ホスト。
勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。
この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。
人誑しで情緒不安定。
モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。
そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ!
※注意※
パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。
可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑
局地戦闘機 飛電の栄光と終焉
みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》
盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。
ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……
始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。
さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。
スーパーのビニール袋で竜を保護した
チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。
見つけ次第、討伐――のはずだった。
だが俺の前に現れたのは、
震える子竜と、役立たず扱いされたスキル――
「スーパーのビニール袋」。
剣でも炎でもない。
シャカシャカ鳴る、ただの袋。
なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。
討伐か、保護か。
世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。
これは――
ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。
52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった
よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】
皆様の熱い応援、本当にありがとうございます!
ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です!
【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】
電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。
気がついたら異世界召喚。
だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。
52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。
結論――王都の地下下水道に「廃棄」。
玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。
血管年齢は実年齢マイナス20歳。
そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。
だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。
下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。
捨てられた魔道具。
長年魔素を吸い続けた高純度魔石。
そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。
チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。
あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。
汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。
スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。
この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。
魔力は毒である。代謝こそが命である。
軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。
でも、だからこそ――まず1話、読んでください。
【最新情報&著者プロフィール】
代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作!
◆ 2月に待望の【第2巻】刊行!
◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中!
◆ 【コミカライズ企画進行中】!
すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!
森のカフェしっぽっぽ
森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。
一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、
猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。
しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。
地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。
ただし、異世界人は地球には来られない。
行き来できるのはサトルだけ。
向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、
頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、
静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、
サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。
仕事に疲れた会社員。
将来に迷う若者。
自信をなくした人。
サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。
そして、棚の影で震えるジル。
怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。
それでも店からは逃げない。
その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。
これは――
福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。
震えながらでも前に立つ者が、
今日も小さく世界をつなぐ。