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第468話
「は? うっそだろ?」
マルメルは思わず呟く。 シニフィエ、ベリアル、ユウヤと立て続けに反応がロスト。
撃破されたようだ。 シニフィエはともかく、ベリアルとユウヤがあっさりやられた事が信じられなかったが、現に反応が消えている点からも事実として受け入れなければならない。
「ど、どうしますか!?」
焦りに塗れた声でホーコートが指示を求めてきたので、返って冷静になれた。
マルメルは一つ深呼吸。 まず必要なのは状況の整理だ。
ヨシナリが言っていた。 焦るような事があったのならまずは分かる所から手を付けるべきだと。
要は見えている範囲の情報を整理して気持ちを落ち着け、対策を練れと言う事だ。
咄嗟の判断が必要な状況では難しいが、膠着している今なら多少は考える余裕はある。
まずは戦況。 南側ではグロウモスが敵のエンジェルタイプに抑えられている。
西側の谷底ではふわわが一機仕留めて移動中。
中央の上空ではヨシナリとタヂカラオが敵のジェネシスフレーム二機を相手に苦戦中。
シニフィエは東側の谷を越えた辺りでロスト。 ベリアル、ユウヤはマップの北東辺りでやられた。
そしてマルメルとホーコートは谷を挟んで敵と撃ちあいの最中。
次に戦力だ。 まずは味方はシニフィエ、ベリアル、ユウヤが落ち、彼の装備品扱いのアルフレッドも離脱する形になるので残り六機。
対する敵側だが、ふわわ、ユウヤ、ベリアルの三人で一機ずつ撃破したので残り七機。
物量的に大きな開きはないが、ジェネシスフレームの数が違うので厳しいといった所だろうか。
三人がやられた位置が東側なので谷を越えてこちらに来るか、谷を越えたふわわを狙うかで変わって来る。
マルメルとしてはふわわが向こうの敵を仕留めてくれれば身動きが取れるので望ましい展開だが、敵の動きが読めない以上、思惑通りに行くか怪しい。
「ま、マルメルさん。 あの、俺……」
「どうした?」
不意にホーコートが言い難そうにしていたので、言ってみろと促す。
こういった場面で自己主張するのは珍しかったからだ。
「先輩の方に行ってもいいですか?」
「ヨシナリの方へ? アレに割り込めるのか?」
「た、多分ですけど。 止めるぐらいなら何とか……」
マルメルはどうしたものかと考える。
これに関してはヨシナリに言い含められていた事だった。
ホーコートは例の挙動以外はランク相応なので、はっきり言って単独で動かせない。
動かせば早々に落とされるので、最大限に活用する為には誰かとセットで動かすのがベスト。
得意レンジが近いマルメルと組ませるのは最適解と言えるだろう。
だからこそマルメルは事前に言い含められていた。 下手に突っ込ませずに自分の延長として運用しろと。
あまり褒められた動かし方ではないが、現状では自己判断での連携が望めないのでこういう形でしかホーコートを活かせなかったのだ。
自発的に動くのは戦況的にはあまりよろしくはないが、当人の成長としては良い傾向だ。
――と、ヨシナリならいいそうだった。
だが、判断するのはマルメルだ。 好きにさせるか、止めておけと安定を取るか。
「――まぁ、いいか。 好きにしろよ」
最悪、おまけがやられたとでも思えばそこまで痛いとは思わない。
「あ、あざっす! 俺、やってみます!」
ホーコートがエネルギーウイングを全開にして急上昇。
真っすぐにヨシナリの方へと飛んでいった。
ホーコートは少し前にあるメールを貰った。
差出人は不明。 内容は『魔法の呪文を教えてあげる』というもので、複雑な内容だったにもかかわらず一度目にしたら頭にこびりついて離れなかった。
調べようと見直そうとしたらいつの間にボックスから消えていたので、本当に来たのかも怪しい。
だが「魔法」の威力は本物だった。 記憶が飛ぶが映像を見返せば、何が起こったのかは分かる。
これを使えば敵機の撃破は難しいかもしれないが、隙を作るぐらいはできるはずだ。
ホーコートは自分でも理解できない恐怖にも似た感情を抑え込む。
「わたしは――」
『――ちょっと聞いて欲しい』
ホーコートの言葉が形になる前にヨシナリ通信が割り込み、何かが霧散した。
『随分と上手に躱す。 だが、そろそろ限界じゃないかな?』
ヤガミの刺突を躱しながらヨシナリは応えずに意識を集中する。
何回躱したか覚えていないが、そろそろ見えて来た。
まずは彼女の機体と攻撃手段についてだ。
ネザーランドドワーフ。 武装がエネルギーダガーのみ、推進装置はエネルギーウイング。
極限まで軽量化されているだけあって、動きが非常に軽快だ。
軽快なだけならまだどうにでもなったのだが、厄介な点はあの飛び跳ねるような機動にある。
どうやら足元――具体的には爪先から不可視の足場のような物を作り出し、それを蹴る事とエネルギーウイングの合わせ技で瞬間加速。 敵機を一突きにする。
この攻撃には優れた点が二つあり、まずは一点目。
躱されたとしても反転して次の攻撃に繋がる点。
通過と同時に一回転して足場を作って再度、蹴る事で次の攻撃に移る。
大抵の相手は初撃を躱した時点で体勢を崩されるので次を躱せない。
仮に知っていたとしても簡単に躱せるものではない。
そして二点目は燃費にある。 シックスセンスでエネルギー流動が見えるからこそ分かるのだが、足場の形成とエネルギーウイングを加速の際に瞬間的に使用するだけなので驚くほどにジェネレーターの出力に余裕がある。
その為、ヤガミの集中力が続く限り、無限に攻撃を繰り出せるのだ。
要は彼女の戦闘スタイルは超高速の刺突を当たるまで繰り返すといったものだった。
一対一でこの状況に持って行かれたのならラーガストのようにスピードと反応で上を行くか、ベリアルの短距離転移のようなスピードを無視できる何かがなければこのまま削られて終わる。
非常に練られた上に完成度の高い攻撃手段ではあるが、無敵でも完璧でもない。
付け入る隙は充分にある。 問題はその隙を作る所にあるのだが、幸いにも近くに味方が居るので一人では無理な事でもなんとかなりそうだ。
正面からの刺突を回避し、ヤガミが反転して背後から二撃目。
エネルギーウイングを噴かして旋回する事で横に躱す。
――ここだ。
「ホーコート!」
「うっす!!」
ヨシナリへ突っ込もうとする軌道にホーコートが右旋回で先回りし、突撃銃を連射。
斜めからの銃撃なのでヨシナリだけが射線に入らない位置。
充分に当たるタイミングだが――
マルメルは思わず呟く。 シニフィエ、ベリアル、ユウヤと立て続けに反応がロスト。
撃破されたようだ。 シニフィエはともかく、ベリアルとユウヤがあっさりやられた事が信じられなかったが、現に反応が消えている点からも事実として受け入れなければならない。
「ど、どうしますか!?」
焦りに塗れた声でホーコートが指示を求めてきたので、返って冷静になれた。
マルメルは一つ深呼吸。 まず必要なのは状況の整理だ。
ヨシナリが言っていた。 焦るような事があったのならまずは分かる所から手を付けるべきだと。
要は見えている範囲の情報を整理して気持ちを落ち着け、対策を練れと言う事だ。
咄嗟の判断が必要な状況では難しいが、膠着している今なら多少は考える余裕はある。
まずは戦況。 南側ではグロウモスが敵のエンジェルタイプに抑えられている。
西側の谷底ではふわわが一機仕留めて移動中。
中央の上空ではヨシナリとタヂカラオが敵のジェネシスフレーム二機を相手に苦戦中。
シニフィエは東側の谷を越えた辺りでロスト。 ベリアル、ユウヤはマップの北東辺りでやられた。
そしてマルメルとホーコートは谷を挟んで敵と撃ちあいの最中。
次に戦力だ。 まずは味方はシニフィエ、ベリアル、ユウヤが落ち、彼の装備品扱いのアルフレッドも離脱する形になるので残り六機。
対する敵側だが、ふわわ、ユウヤ、ベリアルの三人で一機ずつ撃破したので残り七機。
物量的に大きな開きはないが、ジェネシスフレームの数が違うので厳しいといった所だろうか。
三人がやられた位置が東側なので谷を越えてこちらに来るか、谷を越えたふわわを狙うかで変わって来る。
マルメルとしてはふわわが向こうの敵を仕留めてくれれば身動きが取れるので望ましい展開だが、敵の動きが読めない以上、思惑通りに行くか怪しい。
「ま、マルメルさん。 あの、俺……」
「どうした?」
不意にホーコートが言い難そうにしていたので、言ってみろと促す。
こういった場面で自己主張するのは珍しかったからだ。
「先輩の方に行ってもいいですか?」
「ヨシナリの方へ? アレに割り込めるのか?」
「た、多分ですけど。 止めるぐらいなら何とか……」
マルメルはどうしたものかと考える。
これに関してはヨシナリに言い含められていた事だった。
ホーコートは例の挙動以外はランク相応なので、はっきり言って単独で動かせない。
動かせば早々に落とされるので、最大限に活用する為には誰かとセットで動かすのがベスト。
得意レンジが近いマルメルと組ませるのは最適解と言えるだろう。
だからこそマルメルは事前に言い含められていた。 下手に突っ込ませずに自分の延長として運用しろと。
あまり褒められた動かし方ではないが、現状では自己判断での連携が望めないのでこういう形でしかホーコートを活かせなかったのだ。
自発的に動くのは戦況的にはあまりよろしくはないが、当人の成長としては良い傾向だ。
――と、ヨシナリならいいそうだった。
だが、判断するのはマルメルだ。 好きにさせるか、止めておけと安定を取るか。
「――まぁ、いいか。 好きにしろよ」
最悪、おまけがやられたとでも思えばそこまで痛いとは思わない。
「あ、あざっす! 俺、やってみます!」
ホーコートがエネルギーウイングを全開にして急上昇。
真っすぐにヨシナリの方へと飛んでいった。
ホーコートは少し前にあるメールを貰った。
差出人は不明。 内容は『魔法の呪文を教えてあげる』というもので、複雑な内容だったにもかかわらず一度目にしたら頭にこびりついて離れなかった。
調べようと見直そうとしたらいつの間にボックスから消えていたので、本当に来たのかも怪しい。
だが「魔法」の威力は本物だった。 記憶が飛ぶが映像を見返せば、何が起こったのかは分かる。
これを使えば敵機の撃破は難しいかもしれないが、隙を作るぐらいはできるはずだ。
ホーコートは自分でも理解できない恐怖にも似た感情を抑え込む。
「わたしは――」
『――ちょっと聞いて欲しい』
ホーコートの言葉が形になる前にヨシナリ通信が割り込み、何かが霧散した。
『随分と上手に躱す。 だが、そろそろ限界じゃないかな?』
ヤガミの刺突を躱しながらヨシナリは応えずに意識を集中する。
何回躱したか覚えていないが、そろそろ見えて来た。
まずは彼女の機体と攻撃手段についてだ。
ネザーランドドワーフ。 武装がエネルギーダガーのみ、推進装置はエネルギーウイング。
極限まで軽量化されているだけあって、動きが非常に軽快だ。
軽快なだけならまだどうにでもなったのだが、厄介な点はあの飛び跳ねるような機動にある。
どうやら足元――具体的には爪先から不可視の足場のような物を作り出し、それを蹴る事とエネルギーウイングの合わせ技で瞬間加速。 敵機を一突きにする。
この攻撃には優れた点が二つあり、まずは一点目。
躱されたとしても反転して次の攻撃に繋がる点。
通過と同時に一回転して足場を作って再度、蹴る事で次の攻撃に移る。
大抵の相手は初撃を躱した時点で体勢を崩されるので次を躱せない。
仮に知っていたとしても簡単に躱せるものではない。
そして二点目は燃費にある。 シックスセンスでエネルギー流動が見えるからこそ分かるのだが、足場の形成とエネルギーウイングを加速の際に瞬間的に使用するだけなので驚くほどにジェネレーターの出力に余裕がある。
その為、ヤガミの集中力が続く限り、無限に攻撃を繰り出せるのだ。
要は彼女の戦闘スタイルは超高速の刺突を当たるまで繰り返すといったものだった。
一対一でこの状況に持って行かれたのならラーガストのようにスピードと反応で上を行くか、ベリアルの短距離転移のようなスピードを無視できる何かがなければこのまま削られて終わる。
非常に練られた上に完成度の高い攻撃手段ではあるが、無敵でも完璧でもない。
付け入る隙は充分にある。 問題はその隙を作る所にあるのだが、幸いにも近くに味方が居るので一人では無理な事でもなんとかなりそうだ。
正面からの刺突を回避し、ヤガミが反転して背後から二撃目。
エネルギーウイングを噴かして旋回する事で横に躱す。
――ここだ。
「ホーコート!」
「うっす!!」
ヨシナリへ突っ込もうとする軌道にホーコートが右旋回で先回りし、突撃銃を連射。
斜めからの銃撃なのでヨシナリだけが射線に入らない位置。
充分に当たるタイミングだが――
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