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第475話
挙動で追いつけると判断し、射撃武器ではなく大剣『イラ』で斬り込む。
機動の要である足を破壊しに行ったのだが、ヤガミは足を囮にして蹴りでヨシナリの視界を奪いに行った。
「例の足場。 攻撃にも使えるとは思わなかった……」
ヨシナリは小さく溜息を吐いて手で顔を覆う。
少し考えれば分かる事だったのだが、思い至る余裕がなかった。
視界は無くても他の探知機能は生きており、戦闘行動自体は可能だった事もあってどうにかはなるのだが視界が利かないと遠近感が掴めない。
その為、もう接近戦は無理だった。
同時に精密射撃も難しく、アトルムとクルックス以外の選択肢がなかったのだ。
二挺拳銃のバースト射撃でばら撒くように連射。 片足と推進装置にダメージを負ったヤガミだったが、ヨシナリの銃撃を被弾覚悟で突破し、懐へ入る。
正面から突っ込んで来る事を想定し切れていなかったヨシナリはアトルムとクルックスに内蔵された銃剣を起動して刺突。 当然ながら近接スキルでヤガミに勝てる訳もなくあっさりと躱されて逆にエネルギーブレードで貫かれた。
この時点でヨシナリは撃破は免れないと判断し、エーテルの杭でヤガミを貫く。
相打ち狙いだ。 流石のヤガミもこれは躱せずにまともに喰らい――二機は爆発。 脱落となった。
「もうちょっとだったんだけどなぁ……」
「ヤガミさん相手に相打ちに持って行けただけでも大したものだよ。 それよりも僕こそすまない、あそこで仕留められていればよかったんだが……」
それは言っても仕方のない話だった。
タヂカラオはアベリアの相手をしながら合わせてくれたのだ。 確かに仕留められれば最上だったが、手傷を与えてくれたお陰で相打ちにまで持って行けたとも言える。
「いえ、あれで充分ですよ。 寧ろ、あの状況でよく合わせてくれましたね。 本当に助かりましたよ」
言いながら映像を切り替える。 今度はタヂカラオにフォーカス。
Aランクのアベリアとの一騎打ちだったが、彼の動きは終始安定していた。
「これは相手にも恵まれたね。 アベリア君ではなかったらあっさりやられていた可能性が高かった」
タヂカラオはそう言って謙遜するが、アベリアの機体は突出した強みがない代わりに欠点も少ない汎用性重視の機体だ。 つまり技量が露骨に出る機体とも言える。
そんなアベリア相手に一歩も引かずに撃ち合えたのは紛れもなくタヂカラオの実力だった。
――が、技量は同等でもマシンスペックの差を覆す事は難しく、徐々にだが押され始めていた。
途中、ヤガミへ一撃入れた所でアベリアの逆鱗に触れたのが、攻撃が激しくなる。
こうして見るとタヂカラオの動きは巧みだった。 ミサイルなどの実弾兵器が多めだったのは支援を重視した為であって他の武器の扱いが未熟と言う事はない。
事実、彼のポテンシャルを最大限に発揮する事を目的として作られたジェネシスフレームは重力制御による飛行と攻撃を兼ねた配分が重要な機体だった事もあり、大抵の距離、武装は器用に扱えるのだろう。 映像の中の彼も無理に撃墜を狙わずに相手の攻撃を防ぎつつ、動きの綻びを探しているような印象を受けた。
マルメルとは別種の安定感を感じられる。 そして何より――
映像が進み、戦いに決着が着こうとしていた。 防御が徐々に削られ、ジェネレーターの負荷が限界を迎えた所でアベリアがとどめに向かうが、それこそがタヂカラオの狙いだったようだ。
彼の脇を抜ける形で弾体がアベリアへと命中。
ジェネシスフレームでもハンドレールキャノンの一撃に耐える事は難しい。
傍から見ても驚愕を浮かべたアベリアの機体は爆散。 脱落となった。
「いや、あのタイミングでマルメルからの援護を引き出すのは想定できませんって。 ――狙ってたんですか?」
「あぁ、前の模擬戦での君の真似だよ。 僕はもっと仲間を信じるべきだと思ってね?」
タヂカラオはそう言ってマルメルの肩をポンと叩く。
「ありがとう。 君のお陰でアベリア君に一発喰らわせてやれたよ。 実を言うと最高にスカッとした」
「はは、そりゃよかったっすね。 俺としても割とギリギリの綱渡りでしたよ」
ヨシナリの目から見てもかなりの博打だった。
アベリアをマルメルの射線に誘導する事もそうだが、発射のタイミングを分からないようにする為にギリギリまで追い込ませた後、自機でマルメルを隠したのだ。
しかも発射の瞬間を見せない為に躱さずに脇から通す胆力も凄まじい。
下手をすると――いや、下手をしなくても自機ごと貫かれていた可能性は充分にあった。
そもそもハンドレールキャノンは精密射撃に向いていない。 マルメルが使いこなしているとはいえ、期待通りの場所に叩きこめるのかも博打だったはずだ。
そんなあやふやなギャンブルに勝利したタヂカラオには尊敬の二文字しかなかった。
「ヨシナリ君。 アベリア君達は僕を裏切者と罵ったが、僕は君の下に付いた事を欠片も後悔してはいないよ。 手応えを感じるんだ。 自分が強くなっているっていうね。 そして何より楽しいんだ。 君達と死力を尽くして戦う事が」
そう言ってタヂカラオは笑って見せる。
彼の笑みからは以前に感じられた傲慢さが完全に消え失せており、純粋にこのゲームを楽しむという強い意志のようなものが窺える。
「まだまだ大会は続きます。 引き続き頼りにしてますよ」
「あぁ、任せてくれたまえ。 僕自身も楽しみで仕方がないよ。 このチームでどこまで行けるのかがね」
ヨシナリは次の映像――もう問題の映像と言い換えてもいいそれに切り替えた。
敢えて最後に回したふわわの戦闘記録だ。 ヨシナリは終盤に言及しようと思ったのだが、彼女は序盤から凄まじい事になっていた。
彼女は西側から谷底を通って北上する予定だったのだが、途中で敵のAランクプレイヤーと遭遇。
ラクリマ。 三種類の回転式拳銃を操るやや変則的な中距離戦を得意とするプレイヤーだ。
特徴は状況に合わせて銃を変える事と、回転の速い攻撃。 銃をホルスターに戻す事でリロードを行うといった変わった給弾方法も面白い。
事前に情報を貰っていたが実際に目にすると機体、プレイヤースキル共に安定感があった。
自分の得意距離を維持しつつ、ふわわの行動を阻害。 一方的に攻撃できる状況を常に維持する事で優位に戦いを進める。
なるほど、相性が良くないという話にも納得だったが――
機動の要である足を破壊しに行ったのだが、ヤガミは足を囮にして蹴りでヨシナリの視界を奪いに行った。
「例の足場。 攻撃にも使えるとは思わなかった……」
ヨシナリは小さく溜息を吐いて手で顔を覆う。
少し考えれば分かる事だったのだが、思い至る余裕がなかった。
視界は無くても他の探知機能は生きており、戦闘行動自体は可能だった事もあってどうにかはなるのだが視界が利かないと遠近感が掴めない。
その為、もう接近戦は無理だった。
同時に精密射撃も難しく、アトルムとクルックス以外の選択肢がなかったのだ。
二挺拳銃のバースト射撃でばら撒くように連射。 片足と推進装置にダメージを負ったヤガミだったが、ヨシナリの銃撃を被弾覚悟で突破し、懐へ入る。
正面から突っ込んで来る事を想定し切れていなかったヨシナリはアトルムとクルックスに内蔵された銃剣を起動して刺突。 当然ながら近接スキルでヤガミに勝てる訳もなくあっさりと躱されて逆にエネルギーブレードで貫かれた。
この時点でヨシナリは撃破は免れないと判断し、エーテルの杭でヤガミを貫く。
相打ち狙いだ。 流石のヤガミもこれは躱せずにまともに喰らい――二機は爆発。 脱落となった。
「もうちょっとだったんだけどなぁ……」
「ヤガミさん相手に相打ちに持って行けただけでも大したものだよ。 それよりも僕こそすまない、あそこで仕留められていればよかったんだが……」
それは言っても仕方のない話だった。
タヂカラオはアベリアの相手をしながら合わせてくれたのだ。 確かに仕留められれば最上だったが、手傷を与えてくれたお陰で相打ちにまで持って行けたとも言える。
「いえ、あれで充分ですよ。 寧ろ、あの状況でよく合わせてくれましたね。 本当に助かりましたよ」
言いながら映像を切り替える。 今度はタヂカラオにフォーカス。
Aランクのアベリアとの一騎打ちだったが、彼の動きは終始安定していた。
「これは相手にも恵まれたね。 アベリア君ではなかったらあっさりやられていた可能性が高かった」
タヂカラオはそう言って謙遜するが、アベリアの機体は突出した強みがない代わりに欠点も少ない汎用性重視の機体だ。 つまり技量が露骨に出る機体とも言える。
そんなアベリア相手に一歩も引かずに撃ち合えたのは紛れもなくタヂカラオの実力だった。
――が、技量は同等でもマシンスペックの差を覆す事は難しく、徐々にだが押され始めていた。
途中、ヤガミへ一撃入れた所でアベリアの逆鱗に触れたのが、攻撃が激しくなる。
こうして見るとタヂカラオの動きは巧みだった。 ミサイルなどの実弾兵器が多めだったのは支援を重視した為であって他の武器の扱いが未熟と言う事はない。
事実、彼のポテンシャルを最大限に発揮する事を目的として作られたジェネシスフレームは重力制御による飛行と攻撃を兼ねた配分が重要な機体だった事もあり、大抵の距離、武装は器用に扱えるのだろう。 映像の中の彼も無理に撃墜を狙わずに相手の攻撃を防ぎつつ、動きの綻びを探しているような印象を受けた。
マルメルとは別種の安定感を感じられる。 そして何より――
映像が進み、戦いに決着が着こうとしていた。 防御が徐々に削られ、ジェネレーターの負荷が限界を迎えた所でアベリアがとどめに向かうが、それこそがタヂカラオの狙いだったようだ。
彼の脇を抜ける形で弾体がアベリアへと命中。
ジェネシスフレームでもハンドレールキャノンの一撃に耐える事は難しい。
傍から見ても驚愕を浮かべたアベリアの機体は爆散。 脱落となった。
「いや、あのタイミングでマルメルからの援護を引き出すのは想定できませんって。 ――狙ってたんですか?」
「あぁ、前の模擬戦での君の真似だよ。 僕はもっと仲間を信じるべきだと思ってね?」
タヂカラオはそう言ってマルメルの肩をポンと叩く。
「ありがとう。 君のお陰でアベリア君に一発喰らわせてやれたよ。 実を言うと最高にスカッとした」
「はは、そりゃよかったっすね。 俺としても割とギリギリの綱渡りでしたよ」
ヨシナリの目から見てもかなりの博打だった。
アベリアをマルメルの射線に誘導する事もそうだが、発射のタイミングを分からないようにする為にギリギリまで追い込ませた後、自機でマルメルを隠したのだ。
しかも発射の瞬間を見せない為に躱さずに脇から通す胆力も凄まじい。
下手をすると――いや、下手をしなくても自機ごと貫かれていた可能性は充分にあった。
そもそもハンドレールキャノンは精密射撃に向いていない。 マルメルが使いこなしているとはいえ、期待通りの場所に叩きこめるのかも博打だったはずだ。
そんなあやふやなギャンブルに勝利したタヂカラオには尊敬の二文字しかなかった。
「ヨシナリ君。 アベリア君達は僕を裏切者と罵ったが、僕は君の下に付いた事を欠片も後悔してはいないよ。 手応えを感じるんだ。 自分が強くなっているっていうね。 そして何より楽しいんだ。 君達と死力を尽くして戦う事が」
そう言ってタヂカラオは笑って見せる。
彼の笑みからは以前に感じられた傲慢さが完全に消え失せており、純粋にこのゲームを楽しむという強い意志のようなものが窺える。
「まだまだ大会は続きます。 引き続き頼りにしてますよ」
「あぁ、任せてくれたまえ。 僕自身も楽しみで仕方がないよ。 このチームでどこまで行けるのかがね」
ヨシナリは次の映像――もう問題の映像と言い換えてもいいそれに切り替えた。
敢えて最後に回したふわわの戦闘記録だ。 ヨシナリは終盤に言及しようと思ったのだが、彼女は序盤から凄まじい事になっていた。
彼女は西側から谷底を通って北上する予定だったのだが、途中で敵のAランクプレイヤーと遭遇。
ラクリマ。 三種類の回転式拳銃を操るやや変則的な中距離戦を得意とするプレイヤーだ。
特徴は状況に合わせて銃を変える事と、回転の速い攻撃。 銃をホルスターに戻す事でリロードを行うといった変わった給弾方法も面白い。
事前に情報を貰っていたが実際に目にすると機体、プレイヤースキル共に安定感があった。
自分の得意距離を維持しつつ、ふわわの行動を阻害。 一方的に攻撃できる状況を常に維持する事で優位に戦いを進める。
なるほど、相性が良くないという話にも納得だったが――
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