Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第476話

 まずは敵機の話だ。 ラクリマの立ち回りに問題はなかった。 
 相手を視界に捉えつつ、自分の得意距離に持ち込んでの攻撃。
 特にふわわに関しては視界から外すと何をしてくるか分からない以上、常に挙動の前兆をキャッチできる立ち回りは彼女を相手にする場合の最適解と言える。

 実際、戦闘開始から少しの間はほぼ一方的な展開となった。
 回転が速く、連射の利く小口径の回転式拳銃。 
 打撃力に優れ、相手を撃ち抜くというよりは殴り倒す事を目的とした大口径銃。 

 そして最後に接近された時の為の切り札として用意されたであろうハンドキャノン。
 命中精度と射程を犠牲にした威力に振った武装。 七機のジェネシスフレームが居たが、総合力で言うのならヤガミの次ぐらいの実力者だ。 ふわわは器用に躱し、防ぎ、いなす。

 ここまでなら苦しい展開だなと思う所だが、問題はこの先だ。
 ラクリマが大口径の回転式拳銃を使い始めた頃にそれが起こった。
 
 「……意味が分からない」

 ヨシナリは思わずそう呟いた。 それだけ理解に苦しむ光景だったからだ。
 ふわわは銃弾を素手で払いのけた。 そうとしか見えない動きだったからだ。
 見間違いだと信じたかったヨシナリは無言で映像を巻き戻して再生。

 拡大してスロー再生。 飛んで来た銃弾をふわわの手の甲がそっと触れてその軌道を逸らす。
 一度だけならまぐれと言えなくもないが飛んで来た銃弾全てを同じ手段で受け流していた。
 そう、叩き落すのではなく、受け流す。 そっと手を添えて銃弾の軌道を変える。

 どう見ても人間技ではなかった。 
 
 「前からヤバいとは思ってたけど、ついに素手でやり始めたかー」
 「……相手の人、可哀そう……」

 マルメルはこの人ならやりかねないと呟き、グロウモスは相手に同情した。
 シニフィエは特に驚いていないのか無反応。 ホーコートは理解不能と言わんばかりにウインドウとふわわを見比べていた。 

 「いや、これはシステムアシストか何かを使っているのかい? いや、このゲームの性質上、不可能か。 自前の反射神経でこんな真似ができるものなのか……」

 タヂカラオも信じられないと言わんばかりだ。 
 ユウヤとベリアルもこれには流石に驚いていた。
 
 「これ、マジでどうやってるんですか?」
 「んー? 最初に撃たせて感覚を掴んで後は何となくって感じかな―」

 ある意味、彼女らしい返答だったが見る度に恐ろしい何かに変貌しているなとヨシナリは内心で震えていた。 次に仕留める時は実弾兵器は効果は見込めないか? いや、手首のスナップで弾いている点から防ぐにしても限度が――

 そんな事を考えている間に映像は進み、今の挙動に動揺している間にふわわが間合いを詰めてナインヘッド・ドラゴンを用いての一閃。 ラクリマは躱せずに細切れになった。
 これだけでも大活躍なのだが、ふわわの活躍はまだ終わらない。

 首尾よくラクリマを片付けた彼女は谷を越えて北側へと移動し、マルメルと銃撃戦を繰り広げていたエンジェルタイプをあっさりと仕留める。
 ここまではいい。 素手で銃弾を弾いた事から目を逸らしつつ、問題のシーンへと目を向ける。

 ベリアルとユウヤを片付けたカラカラとアノビィが忍び寄る。
 アノビィが一定の距離で足を止めた。 目測で50メートル前後。
 恐らくは例のウイルス攻撃の射程距離内だ。 カラカラがすっと背後に忍び寄り、エネルギーブレードを展開。 背後から一突きにするつもりのようだ。

 ユウヤにやられた損傷が重いのか動きは悪いが、気付いていない相手を仕留めるぐらいは訳ないだろう。 
 突こうをとブレードを構えた瞬間にふわわがおもむろに背後に太刀を一閃。
 カラカラの機体があっさりと両断される。 アノビィはあからさまに動揺したが、効いているはずだと判断して検証に入ったようだ。 石などを投げてふわわの反応を見てから仕掛けに行ったのだが、攻撃態勢に入ったと同時にラクリマと同じようにナインヘッド・ドラゴンによる斬撃を喰らってバラバラになった。 試合終了。

 誰も何も言わないが、ややあってヨシナリは呟く。

 「何で?」
 「何が?」
 「いや、明らかに見えてなかったでしょ? 何で分かったんですか?」
 
 明らかにアノビィの位置が分かっている様には見えなかった。
 ――にもかかわらず正確に捉えて転移刃で一閃。
 この動きから分かる事があった。 カラカラの時もそうだったが、移動中は無反応。
 
 だが、攻撃態勢に入ったと同時に即座に反応した。 

 「例の殺気って奴ですか?」
 「うーん。 まぁ、そんな感じやねー」
 
 軽い調子で言っているがヨシナリにはさっぱり分からなかった。
 ベリアル達からの証言から明らかにセンサー系の欺瞞を行い、外界を正しく認識する事は非常に難しくなる。 違和感が全くないとは言わないが、初見で見切るのは非常に難しい。

 前知識は必須と言える。 そんな状態の相手をあっさりと捉えて一撃。
 明らかにヨシナリの理解を越えた挙動だった。

 「シニフィエ。 殺気について何か分かる?」
 
 ふわわは感覚派と言う事もあって上手く説明ができていない。 
 その為、言語化が上手いシニフィエに振ったのだが――

 「や、私に振られても何となくでしか説明できませんよ」
 
 そう前置きしてシニフィエは殺気についての簡単な説明を始めた。

 「まぁ、殺気とか安易に言うと胡散臭く感じますが、父曰く『意識の焦点が向かう先』との事です」
 「ごめん。 よく分からないからもうちょっと詳しく」
 「えぇっとですね。 ちょっとこれを見て貰えますか?」

 そう言ってシニフィエは指を一本立てて見せる。 全員の視線がそこに集まった。 
 
 「簡単に言うとこれです。 皆さんの意識は私の指先に集まってますよね。 姉の場合はそれが自分に向けられた時、ビビッと感じるらしいんですよ?」
 
 ヨシナリはそれを聞いてうーんと考える。 所謂「視線を感じる」というものに近いのだろうか? 
 確かにふわわが敵に反応したタイミングは敵機が攻撃態勢に入った時だ。
 恐らくは攻撃を仕掛けようと相手の動きに集中した瞬間にその殺気とやらの圧が強まるのだろう。

 ヨシナリも強敵と遭遇した時や、感覚的にヤバいと感じた経験がない訳ではないがここまで明確に感じ取れるほどではない。 そういった意味でも規格外な人だなとふわわに対しての認識を強化した。
 気になる事は多いが、そろそろ次の試合が決まる頃だろう。 

 二回戦でこれだと先が思いやられるが、目指すのは優勝なのだ。
 どんな相手でも正面から叩き潰すのみ。 次はもっと活躍してやるとヨシナリは拳を握った。
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