Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第489話

 信じられない事にあのふわわを剣で撃破したのは凄まじいが、装備が剣と言う事は対処は彼女と同じでいいはずだ。 
 集中、集中、集中、今回は前回と違って横槍が入る可能性は低い。
 目の前の敵のみを見据え、その一挙手一投足の全てを意識しろ。

 モタシラは着地して銃撃から逃げ回る。 撃ち返しては来ない。
 飛び道具を持っていないか隠しているかの二択。 ふわわのような極端な例は珍しいのであると判断。
 使ってこないのは安易に使うと種が割れて、それにより効果が期待できなくなる可能性が高い。

 明らかに近接特化だ。 
 飛び道具の警戒は当然だが、それ以上に間合いを詰めてくる事に注意を払う必要がある。
 推進装置はエネルギーウイング。 急加速は可能のはずだ。

 機体のエネルギー分布的に低出力での運用であれだけの動きが出来ている時点で超が付く軽量機。
 つまりカカラと違って当たりさえすればどうにでもなる相手だ。
 次に考えるべきはふわわをどう攻略したのかだ。 その手段さえ捲れればこいつは仕留められる。

 ――と、普段なら考えて時間をかけて観察するが、逃げ回られたらこちらが保たない。

 危険ではあるが虎穴に飛び込む必要がある。 
 アトルムとクルックスをホルスターに戻してアシンメトリーに持ち替える。
 実弾を連射しながら加速。 今のホロスコープなら回り込む事も難しくはない。
 
 相手も高機動機だが、出力が同等以上なのでこんな真似も可能だ。
 追い抜いて少し離れた位置で反転。 実弾を撃ち尽くし、即座にエネルギー弾に切り替えて連射。
 発射の間隔が長いエネルギー弾は比較的ではあるが躱す事は容易だ。 

 Aランクプレイヤーなら当然のようにやってのけるだろう。 
 モタシラが一気に加速。 間合いを詰め、少し離れた位置にも関わらずに攻撃態勢。
 切っ先を揺らしながらの刺突。 遠いと思っていたが、刀身が伸びたのではないかと錯覚するほどに鋭く長い一撃。 銃口を向けたアシンメトリーが切っ先に巻き込まれて跳ね上げられる。

 手から抜かれるのは予想外だったが、使えなくされる所までは想定内だ。
 その頃には既にアトルムを構えていた。 巻き取ったまま前に出て刺突かと思ったが、刃を返して一閃。 アトルムを握った腕が半ばで切断された。

 ――それぐらいはやるよなぁ!

 頑丈な奴よりは当てたら簡単に吹き飛ぶ奴の方がやり易い。
 蹴りを放つ。 モタシラは驚異的な反応により腰の動きだけで鞘を向けると先端で蹴りを止めた。
 だが、それも想定内だ。 起爆。 

 『何!?』

 鞘が砕け散り、モタシラにも一部ベアリング弾が被弾。
 咄嗟に地面を蹴って背後に跳んだのだ。 あのタイミングで躱すのか。
 驚異的な反応だと思いながらも追撃を――エラー。 右足欠損。

 どうもクレイモアの起爆に足が耐えられなかったらしい。 
 ヨシナリは構わずに残った足とエネルギーウイングの推進力を最大にして突撃。
 肩からモタシラへと体当たり。 ベアリング弾を受けて足回りにダメージを受けたのか、躱しきれずにまともに喰らった。

 『ぐ、随分と無茶をする』

 当たり前だ。 こっちには時間も余裕もないんだ。
 そのままモタシラを地面に押し付けて機体を削る。 このまま大根みたいにおろしてしてやると思ったが流石に黙ってやられるつもりはないようだ。 こちらを掴もうとするが、お前はもう詰んでる。

 エーテルの鎧を形状変化。 
 ホロスコープの胴体部分から無数のブレードが付き出し、モタシラの機体を次々と貫く。
 
 『何!? これは――』

 ブレードを自切してモタシラから離れる。 
 モタシラの機体は僅かな時間地面を擦りながら吹き飛び、ややあって爆発。
 後、六機。 次はタヂカラオと戦っているアリスを――急上昇で回避。

 地面が大きく爆ぜ、雪と土が巻き上げられる。
 飛んできた方へ視線を向けるとケンタウロスのような機体が現れた。 
 ケイロン。 マルメルをやった奴だ。

 機動力と重装甲を両立させた機体。 毛色はやや違うが傾向としてはカカラに近いか。
 ハルバードを片手に空いた手で散弾砲を構えて発射。 距離があるにも関わらずに撃ってきたのはこちらの反応を探る為の牽制だろう。 

 ちらりとホロスコープのステータスをチェック。
 片腕、片足欠損それにより推力25%ダウン。 バランスが崩れた事による運動性の低下。
 内部のダメージ蓄積。 内部機構は勿論、フレームにもダメージが溜まっており、もう五分も保たない。 ヨシナリの見立てではまともに戦えるのは二分が限度だろう。

 武装はアシンメトリー、クルックス、イラとパンドラのみ。
 内部で発生した爆発によって内蔵機銃は壊れた。 
 
 「どうせ後二分も保たないんだ。 灰になるまでやってやるよ」

 ――悔いのない戦いを。 

 出力を500%まで引き上げる。 機体が更に悲鳴を上げた。
 
 「頼むからもう少しだけ保ってくれよホロスコープ」

 エネルギーウイングと片方だけになった推力偏向ノズルを全開にして正面から突撃。
 いちいち躱している時間が惜しかった。 片腕で重要部分を庇う。 
 機体をエーテルの鎧で強化。 

 耐弾性能を可能な限り引き上げ、被弾を減らす為に地面スレスレを這うように飛行。
 機体を左右に振って狙いを付け難くする。 ケイロンはもう一発撃った後、諦めてハルバードを両手で握った。 接近戦で仕留める構えだ。

 ヨシナリはそれに応じるようにイラを抜く。 集中、集中、集中。
 敵の挙動から思考を読み取れ。 相手は今のヨシナリを見て何を考える?
 Aランクプレイヤーである以上、何も考えていないなんて事はあり得ない。

 ホロスコープは片手、片足。 選択した武器は片手では振り難い大剣。
 ユウヤの使っていた武器と言う事は知られている可能性が高いが、大剣として使うと判断するだろう。 理由は変形させる為には刃の半ばにある持ち手を引く必要があるからだ。

 つまり片手のホロスコープには不可能。 そしてまともに振れない状態で取れる攻撃手段は?
 刺突。 加えて推進装置を全開にして突っ込んで来る所を見ると乾坤一擲の一撃を狙っている。 
 死にぞこないと思っている? いや、慢心は感じない。 慢心の結果が良くないものであったなら大きな悔いが残ると理解しているからだ。

 ――だから俺は待ち構えている敵に正面から挑む――振りをする。

 タイミングを見極めろ。 同じ手は通用しない。 
 そして何度も試す余裕もない。 接触まで一秒もないのだ。
 敵機のハルバードがピクリと動き、横薙ぎの一閃が放たれた。
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