Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第495話

 モタシラは明らかに待ちのスタイル。
 その為、ふわわは待っていても仕方がないとでも判断したのか凄まじい猛攻を繰り出す。
 暴風のような一撃をモタシラは次々にいなすが、刀は一本。 つまり一度に捌ける攻撃は一つ。

 ふわわは小太刀を巻き取らせて囮として仕留めに行った。 
 だが、モタシラの基本は切っ先を大きく動かさない事にある。 
 その真髄は即座に次の行動に移れる点あるとヨシナリは解釈した。 

 敵の攻撃をいなして態勢を崩すか武器を弾いて気勢を削いだ後、即座に追撃に移る。
 単純故に非常に分かり易いが、実行するのは難しい。 
 あの動作の完成度を見ればどれだけ剣を振って来たのかがよく分かる。 

 ふわわは諦めずにグルーキャノンなどを織り交ぜた攻撃を繰り出すが、その悉くが当たらない。
 業を煮やしたのか途中、野太刀を捨てて軽量化を図り、意地でも当てに行こうといった雰囲気が伝わってくる。

 「割とムキになってました?」
 「嫌な聞き方するなぁ……。 うん、まぁ、そうかもしれへん……」

 実際、野太刀を捨ててからのふわわの戦い方は普段とは明らかに違ったからだ。 
 完全に攻撃に特化した前のめりの攻め。 普段と同じやり方では捉えられないとでも判断したのだろう。 

 だが、モタシラはそんなふわわの猛攻を平然と受け流すが、刀だけでは捌き切れないと判断したのか躱している場面が増えた。 

 「攻撃自体は有効か。 問題は当たらない事ですね」
 
 防御を捨てて攻めに全振りしただけあって手数が大きく増えていた。
 それでも突破できないのは凄まじい。 

 ――ちょっと焦って来たな。

 彼女の挙動を普段から見ているヨシナリとしてはふわわが徐々に焦っている事を感じ取り、そろそろ決着が着くと予感していた。 
 それは正しく、ふわわは必殺を宿した上段からの斬撃を繰り出す。

 刀で一度防がせ、追撃を回避させた上での一撃。 
 相手の防御を飽和させた所を狙ったのは見事ではあるが、モタシラはその上を行っていた。
 斬撃に切っ先を当てて止めたのだ。 銃弾を切り払うのも大概だと思っていたが、斬撃をピンポイントで止めるのも人間技ではなかった。

 流石にこれにはふわわも驚いたのか映像の中の彼女は明らかに動揺している。
 モタシラの凄まじさはそれだけでは終わらない。 ふわわの太刀を縦に切ったのだ。
 真ん中まで斬った後に僅かに捻る。 それだけで彼女の刃は砕け散った。

 小太刀は巻き取らせて手から抜けていたのでもう攻撃手段がナインヘッドドラゴンしか残っていない彼女は距離を取ろうと下がったが、下がった分だけ踏み込まれる。
 
 「ふわわさん相手にアレをやるのか……」
 
 思わず声が漏れる。 モタシラはふわわが下がると同時に踏み込んだのだ。
 ふわわからすれば自分は動いていないのではないかとすら思えるほどのシンクロ。
 流石にこれには反応できずに突きの一撃でコックピット部分を貫かれて敗北。 脱落となった。
 
 ふわわはいつもの軽口を叩くのかとも思ったが、今回の負けは効いたのか黙ったままだ。
 何か声をかけようかとも思ったが、言葉が見つからなかったので、次にフォーカス。
 映し出されたのはホーコートだ。 

 「――?」

 音声が乱れる――というよりはよく聞こえない。 エラーか何かだろうか?
 挙動は見えるのだが音声がまともに入ってこなかった。 まぁ、いいかと映像を再生する。
 相手はフェボルというドローンに特化した機体。 その為、自分では動かずに物量で圧倒するタイプだ。

 複数種類のドローンを駆使して柔軟に対応する強敵を前にホーコートはただひたすらに逃げ回る事しかできなかった。 
 瞬殺されていないだけでも上出来だと思っていたが、不意にホーコートの動きが変わる。
 敵の攻撃に反応し、ドローンの包囲を突破しようとし始めた。

 「おぉ! やるじゃん後輩!」

 マルメルが素直に感心するような声を上げるが、ヨシナリはアバターの向こうで表情を僅かに歪める。 動きが良すぎる上、挙動の傾向がいつものチートと似ていた。
 恐らく何らかの手段で挙動のバリエーションを増やしたのだろう。 

 シニフィエは首を傾げ、タヂカラオはやや訝しんでいたので気付いている者は気付いていそうだ。 
 ベリアル、ユウヤは負けた事がショックなのか反応を示さない。
 実際、ホーコートの動きはかなり良かった。 突撃銃が効果がない事を早々に理解し、足元にばら撒いて雪を舞わせる事で視界を潰して死角を作る動きも秀逸だ。

 だが、その程度ではAランクは落とせない。 
 急な変調に慣れた相手が仕留めに行った。 
 ホーコートの機体がスタミナ切れになった所を狙った十字砲火。 対処としては完璧と言える。

 ――が、相手はホーコートの事を少し甘く見ていたようだ。

 被弾して爆発寸前の機体で特攻をかけ、相手へと体当たり。 
 爆発を利用して道連れにしたのだ。 二機が爆散。 
 Aランクとの1:1交換と考えると大戦果だが、ヨシナリとしては素直に褒められる状態ではなかった。

 ホーコートへ視線を向けると後ろめたさでもあるのか、逸らす。
 内心で小さく溜息を吐いた。 自覚があるのならいいか。 
 言っても仕方がない事でもあったので、責めるのも違うと思ったからだ。

 「ま、頑張ったな。 次はもうちょっといい所まで行けるようにしような」

 そう言って知らない振りをした。 
 ホーコートは少しだけほっとしたように「はい、頑張ります」と頷く。
 今はこれでいい。 努めて気にせずに次へとフォーカス。

 次はタヂカラオへとフォーカス。 
 元々、ヨシナリと組んで空中戦を行うつもりで固まっていたのだが、カカラによって分断され、バドというプレイヤーに狙い撃ちにされた事で引き離された。

 非常に分かり易いスピード特化の軽量機。 
 目立つ携行武装は見当たらないが、爪がエネルギー式のブレードになっているので貫手や斬撃を主としている。 
 そして最も厄介なのは転移システムだ。 
 フランス戦で出くわしたグリゼルダと同じゲートのような物を出現させて空間を繋ぐタイプで、打撃や斬撃を飛ばしてくる。

 「いや、ヨシナリ君のシックスセンスによる支援がなければ普通にやられていたよ」

 タヂカラオは転移の兆候を見切ってどうにか回避しつつ反撃していた。
 反撃が出来ていたのはバドが転移の扱いにまだ慣れていない事も大きい。

 「実際、死角ばかりを狙って来ていたから、これで緩急を付けられると厄介だったね」
 
 タヂカラオはそう言って小さく肩を竦める。
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