Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第498話

 「あのー、お義兄さん? 姉を倒したこの相手ですが、何か意識していた事ってあります?」
 「明らかにふわわさんと同じで近接特化だから中距離を意識してちょっと出方を見た感じかな。 見ての通り、時間をかけてられない状況だったから早めに戦い方を組み立てないとこっちが落ちるからね」

 付け加えるならこの状態のホロスコープならスペック的な差はほとんどなく、寧ろ機動性だけなら上回ってすらいる。 
 それを最大限に活かしてスピードでかき回しつつ、アシンメトリーを連射。
 手数を増やせば相手は対処せざるを得ない。 モタシラは明らかに機動性に振っており、防ぐ素振りが見えなかった時点でヨシナリは突っ込む事を決めていた。

 「まぁ、本音を言うならあんまり深くは考えてなかったんだ。 とにかく早く仕留めないとって感じかなぁ」
 「……それであの動きですか」
 「必死だったんだよ」
 
 モタシラは簡単な相手ではなく、緩急を付けた瞬間加速で間合いを詰める。
 ヨシナリが向けた銃口を絡めとって跳ね上げた。

 「うわ、ふわわさんの時にも見たけどこんな簡単に相手の武器を絡めとれるものなのかよ」
 「いや、実際凄いぞ。 初見だったとはいえ、間合いに入られただけでなく、あんなに簡単に弾かれるとは思わなかった」

 こうして見返すとモタシラというプレイヤーは相手の間を盗むのが上手い。
 間合い的な意味でもあるが、相手の意識の隙間を狙うのが上手いのだ。
 攻撃の切り替え等の別の事に僅かに意識を割いた瞬間に踏み込む。 

 恐らくは力の流れのような物を感覚的に掴んでいるのかもしれない。
 そうでもなければこんな簡単に武器を取られないはずだ。 
 自分はともかく、ふわわ相手にやってのけている点からもリアルで何かをやっているのは確かだ。

 ――この人も剣術か何かやってるんだろうなぁ……。

 この環境で剣一本でここまで来れるんだから並ではないのは分かり切っていた。
 切断されると思っていたので破壊されなかったのは幸運だ。
 どちらにせよアシンメトリーが使えなくなるのは想定内だったのでそのままアトルムを抜くが、巻き取る動きで今度は腕ごと切断される。

 「あれで腕を落とされるとは思わなかった」
 「所謂、小手打ちですね。 剣の性能もあると思いますが、綺麗に落としますねー」
 
 シニフィエは本当は手首辺りを狙うんですけどと付け加えていたが、ヨシナリの思考はあの動きをどう処理するかに傾いていた。 
 今回はお互いに初見だった事もあって運もあったが次回は恐らく通用しないだろう。

 ヨシナリは切断された腕を一顧だにせずに蹴りを放つが、鞘で止められる。
 勢いに乗る前に鞘の先端を当てられたので勢いを完全に殺されており、クレイモアを仕掛けていなければ完全に封じられていた。

 流石のモタシラもクレイモアは想定していなかったようだが咄嗟に鞘を捨てて躱す辺り凄まじい。
 躱されただけならそれでも良かったのだが、ホロスコープの足が砕け散っていた。
 恐らく限界を超えた駆動にガタが来ていたからだろう。 

 ヨシナリは構わずに残った推進装置を全開にしてモタシラに体当たり。

 「ここで当たりに行く判断ができるのは凄いよ」

 タヂカラオは感心したように漏らす。 
 彼の目から見てもモタシラの回避はやや無理のある体勢だったので、追撃は通り易いと思っていたが当てられるかはまた別の話だ。 そのまま密着状態でエーテルのブレードを出して仕留める。
 
 ほぼゼロ距離からの攻撃だったのでモタシラの機体は耐え切れずに大破。
 
 「うわ、すっげ。 倒しちまったよ……」

 ヨシナリはそのままタヂカラオの援護に行こうとしていたが、近くで待機していたケイロンが即座に襲い掛かる。 

 「こいつ明らかに終わるの待ってたな」
 「だな、こうして見るとよく分かるけど、あの時はもう集中しすぎて目の前の状況を捌く事しか考えられなかったよ」

 他人の獲物を横取りしないというルールがあるとの事なので、終わったら次が来るのは当然の流れだった。 
 
 「とんでもねーボスラッシュだな」
 「纏めて相手にしなくて済むだけありがたいよ」

 同時に来られていたら確実に負けていたと言い切れるのである意味、相手の慢心に救われているとも言えた。 
 ――とは言ったもののホロスコープはもう限界が近く、手段を選んでいる場合ではなかった。

 更に出力を上げ、そのまま突っ込んだ。 傍から見れば自棄を起こしたようにも見えるかもしれない。 片手での大剣の刺突。 片手片足を失っているホロスコープの攻撃手段はそれしかない。

 ケイロンは受けて立つとハルバードを構え、間合いに入ったと同時に一閃。 
 タイミングは完璧だ。 躱すのは非常に難しいと判断したのだろう。 小細工をする気配がない。
 振ったタイミングでホロスコープが急制動。 ケイロンの一撃が空を切る。

 漆黒の鎧の奥で無数の光が瞬き、推進装置が悲鳴のように黒い光を吐き出し、欠損した手足がエーテルによって再構成。 それにより、両手が使えるようになったヨシナリは剣をハンマーに切り替えながら回転を乗せてフルスイング。 

 「自棄起こしたように見せかけての一撃。 流石のケイロンもヨシナリ君が腕を再構成して来るとは思わなかっただろうね」
 「それも込みで突っ込みましたからね」

 完全に入るタイミングかと思われたが、ケイロンは咄嗟にハルバードを差し込んで防御。
 
 「これ間に合うの凄いですねー」
 「正直、俺も入ったと思ったから驚いたよ」
 「でも、そのまま追撃してるお義兄さんも大概だと思いますよ」

 ハルバードを砕かれ、ダメージを受けながらもケイロンは拳を固めて殴り返そうとしていたが、その間にヨシナリはハンマーを手放して更に一回転。 今度は蹴りを繰り出した。
 モタシラとの戦いを見ていた事もあってケイロンの対処は的確だ。 当たる前に膝を拳で打ち抜いた。

 本来なら胴体に喰らわせた後、ゼロ距離で起爆するつもりだったが構わずに使用。
 ベアリング弾がケイロンの頭部を消し飛ばし、ついでに脆くなったホロスコープの足も吹き飛んだ。
 足をエーテルで補いながら至近距離でクルックスを抜いて連射。 バースト射撃で全弾を叩きこみ、リロードしようとしたがレーザー誘導システムが機能しなくなったので、エネルギー弾に切り替えようとしたが払いのけられる。

 携行武器を失ったので胸部の給排気口からエーテル弾を発射しようとしたが、ケイロンの拳がホロスコープの胸部に深々と食い込んだ。
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