Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第501話

 イベントが終了し、公式サイトが更新された。
 大半のプレイヤーは次のイベントの告知だろうとやや薄いリアクションで眺めていた。
 想像通り、主な告知内容は次回の大規模イベントについてだ。
 
 第二次防衛戦。 例によってステージの概要だけで、出現エネミーの詳細などは一切不明だ。
 後はショップのラインナップの追加。 ゲームのバランス調整。
 
 ――と、ここまでは普段通りの内容なのだが、最後の一項目だけは違った。

 ゲーム内での一部動画配信が可能となったとの事。
 対象コンテンツはランク、ユニオン戦のみで、今後拡大する予定。 
 配信の際は申請等のやや面倒な手続きは必要となるが、外部にほとんど情報を漏らさないICpwがこういった許可を出す事は非常に珍しかった。

 彼女もその新体制に乗った一人だった。
 配信の待機画面――あちこちに石が積まれた河原が広がっているそこに一体のアバターが現れる。
 
 「みーんなー! こーんにーちはー! 賽の河原系アイドル『賽河原さいかわら ツミキ』でっす。 よろしくね☆」

 墓石をモチーフにしたような独特の衣装と可愛らしい顔に大きめの瞳。
 風景に似合わない明るい声で視聴者にそう挨拶した。 
 同接は1300。 設置したコメント欄を見ると――

 『こんにちはー』『こんにちはー』『あれ? こいつの声どっかで聞いたな』
 『ほら、あれじゃね?』『こんにちはー』『ICpw配信許可出したのかー。 俺、やらねーから楽しみー』『キタ――(゜∀゜)――!!』『うえーい』

 ツミキは反応は悪くないと思いながらICpwを起動。

 「デビューしたてだけど一生懸命頑張るからよろしくね☆」

 『あ、思い出した。 こいつ「卯建 うだつ サガル」じゃね?』
 『よろしくね☆のイントネーションがまんまじゃん』
 『炎上して消えたと思ったらこんな所で転生してたのかよ』
 『なんで炎上したの?』『バンドメンバー全員と付き合って修羅場になって解散からの引退』
 『男漁りし過ぎだろ』『皆、兄弟になってバンドの結束が強くなるんじゃねーのかよwww』
 『失望しました。 ファン辞めます』『こいつ裏でヤりまくりかよって考えると萎えるな』
 『そんな事はどうでもいいからランク戦やれ』『ロボゲーやって?』
 『ってかランクどの程度なん?』『始まってないのに面白くなってきたな』

 ――も、もうバレてるーー!?

 お、おかしいな。 ちゃんと冷却期間も設けたし、声の感じも変えたのに早すぎるでしょ。
 どいつもこいつも余計な事ばかり覚えていやがって。 

 「え、えぇ……? ツミキ、デビューしたての赤ちゃんだから分かんないなぁ☆ バブー」

 思考を表に出さずに努めてにこやかに笑って見せる。
 活動していない間、このゲームで腕を磨いてきた。 
 そして配信が可能になった今こそ、この大人気ゲームでいいポジションを取って、あわよくば企業から案件を貰えれば色々と道が開ける! そんな意気込みで彼女はランク戦にアクセス。

 「はい! まずはツミキの機体を紹介するね☆」

 映し出されたのは一機のトルーパー。
 灰色のソルジャーⅡ型。 機体名は『ケルン・ケアン』。
 装備は突撃銃、自動拳銃、実体剣。 装甲は薄めにして機動性重視。
 
 『ふーん。 普通』『バランス重視か、技量がモロに出るビルドだな』
 『プラス買わねーの?』『エネルギーウイングあったらだいぶ違うと思うけど』
 『つまんねー構成』『ランクどれぐらい?』『えぇやん』
 『他人のランク戦しっかり見るの初めてだから楽しみー』
 『がんばれー』『相手次第かねぇ』

 「ちょっとー、一生懸命作ったんだからつまんないとかいうなー! トルーパーに求められるのは汎用性だからー! なんでもできる万能性ですからー! あ、ツミキのランクはFだよー☆ これでも結構、頑張ってるんだゾ☆」 
 
 マッチングが完了し、対戦相手が決まった。 
 
 「お、決まった! 対戦よろしくお願いします☆ これでも結構、やってるから相手によっては瞬殺かな?」

 『Fか。 まぁまぁだな』『どこから目線だよそこそこ高いだろ』
 『楽しみー』『わくわく』『こいつが負けて泣くのが楽しみー』
 『装備的に誰が相手でもそこそこやれるだろ』『えらい自信だな』
 『こいつが瞬殺されたら笑う』『Fランで何をイキってんだこいつ』
 『まぁまぁ、口だけじゃないかもしれないから見てみようぜ』
 『お手並み拝見だな』『ツミキたんがんばえー』 

 フィールドは荒野。 岩場が点在しているだけで分かり易い場所と言える。
 ツミキの機体と相手の機体がフィールドに出現。 
 配信の場合、視聴者はツミキの一人称視点と三人称視点で切り替える事が可能だ。

 「えーっと対戦相手はー。 『マルメル』さん? 初めて当たる人かな。 よーし、ぶっ倒すぞ☆」

 『Fランでそんな有名なプレイヤーいねぇだろ』
 『上位に上がらないと同じ相手と何度も当たるのは割と稀』
 『あれ? マルメルって「星座盤」の奴じゃね?』
 『げ、マジだ』『なにそれ? 有名なん?』『知らねー』
 『いや、あいつ等ってランク詐――』

 やや不穏な物がコメントに流れたがそろそろ操作に集中しなければならない。
 カウントダウンが終わり戦闘が開始。 まずは相手の装備を確認してから。
 機体を急上昇させ、相手の機体を視界に捉える。 

 強化装甲に両肩に散弾砲と大型の突撃銃がマウントされていた。
 明らかに重量系だ。 機動性に振っている自分との相性は悪くない。
 
 ――初戦だし、勝っていい所見せよう。

 突撃銃で一当てして相手の動きを引き出して――

 「よーし、いっくぞー☆」

 敵機を射程に捉えたと同時に何かが光り、機体の胴体に風穴が開いた。

 「え?」

 何が起こったのか全く分からなかった。 気が付けば機体は爆散して試合が終わっていた。
 待機画面に戻されたツミキは呆然と首を傾げる事しかできなかった。

 『wwwwwwwwwwwww』『まさかの瞬殺wwwww』
 『うっそだろお前w』『戦闘時間13秒wwwwww』 
 『瞬殺かな?とか言って瞬殺されてる奴が居るってマジっすかwwwwww』
 『雑魚過ぎて笑う』『つーか、それよりもあれハンドレールキャノンじゃね?』
 『あの距離で普通に当ててくるのヤバくね?』
 『え? そうなん? 使った事ねーから知らねー』
 『ねぇ? どんな気持ち? 瞬殺されてどんな気持ち??』『失望しました。 ファン辞めます』

 「あ、あはー☆ やられちゃったー。 ま、まぁ、運が悪かったですね! 気を取り直して次行こ☆」

 『そうだね』『次、逝こ?』『次は20秒ぐらいは保たせろよ』
 『がんばえー』『これは負け芸か何かを極める感じなのか』
 『雑っ魚』『失望しました。 ファン辞めます』

 煽って来るリスナーに内心で苛立ちながらも次のマッチングが成立したのでツミキは再び戦場へと移動した。
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