Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第517話

 いよいよ防衛戦が翌日に迫っており、準備に勤しむ者、変に構えずにその時を待つ者と様々だった。
 そんな中、ヨシナリはうーんと小さく伸びをする。 
 周囲には高層ビルが立ち並び、無数のアバターが歩き回っている姿。

 ここは『思金神』のユニオンホームだ。 
 ついさっきまでタカミムスビ主導のイベント対策会議に出席しており、それが終わって一息ついた所だった。 以前はツガルやポンポンにくっついて参加させて貰ったが、今回は普通に招待されて席も用意されていたので特に問題なく入る事が出来た。 

 ちなみに他も誘ったのだが、マルメルはシニフィエ相手に近距離戦――要は接近された時の立ち回りと体勢を崩した時の立て直しの訓練中でパスとの事。 
 ふわわはそもそもログインしていない。 シニフィエ曰く、あれはしばらく出てこないとの事。
 イベントに間に合うのかが少し不安だ。

 グロウモス、ホーコートはランク戦。 ユウヤは連絡が取れず、ベリアルは修業と言って不参加だ。
 そんな事もあって一人で参加したのだが、流石に情報があまりない事もあってそこまで実のある話ではなかった。 一応、『思金神』を筆頭に大手ユニオンの方針を聞けただけでも収穫ではあったが。

 そのまま引き上げてまたランク戦にでも潜ろうかと考えていたのだが、お誘いがあったので待ち合わせ場所へと向かっている最中だ。 
 場所は『思金神』ホーム内に存在する喫茶店。 正確にはサロンなのだが、貸し切りなので落ち着いて話ができる。
 
 入口にある端末に声をかけるとそのまま中へと通され、エレベーターを昇って上層階へ。
 
 ――どこもかしこも高級ホテルみたいなところだなぁ。

 そんな事を考えながら最上階の一室へ。
 
 「お、来たナ!」
 「うーっすヨシナリ! 調子良さそうじゃん!」
 
 ソファーに座っていたのは三人。 ポンポン、ツガル、そしてこの場を用意したタヂカラオだ。
 タヂカラオはやぁと小さく手を上げる。
 ポンポンが座れ座れと空いた席を叩くので苦笑しながら腰を下ろす。

 「聞いたゾー。 対抗戦でこいつをボッコボコにしたんだろ? やるナ!」
 「いや、お前、話しただろうが、キマイラであの装備構成はあり得ねぇって!」
 「でもジェネシス使って負けたんだろ? ここは勝って力の差を見せつける所だろうが、減点だナ!」

 散々、弄り倒されたのかツガルはやや疲れた様子で、タヂカラオは苦笑。
 それを見てポンポンは少し意外そうな様子だった。

 「あたしとしてはタヂカラオがヨシナリと組むとは思ってなかったナ。 どういう心境の変化だ?」
 
 ポンポンの指摘にタヂカラオは肩を竦めて見せる。 

 「最初は実績作りの為だけだったんだけど中々に居心地が良くてね。 いい勉強をさせて貰ったよ」
 
 ヨシナリとしても残念だった。 可能であるならタヂカラオともっと上まで行きたかったからだ。
 
 「また機会があったら一緒にやりましょう。 何なら通常の協力ミッションでもいい」
 「はは、そうだね。 その時は是非とも誘ってくれたまえよ」

 この集まりは三人にちょっと話さないかと誘われたので全員で意見交換をしようとヨシナリが間を取り持った形になったのだ。 
 タヂカラオのお陰で場所の確保も容易だった事もあって全員が特に抵抗なく頷いてくれたのは都合が良かった。

 どうやらヨシナリが来るまでの間にユニオン対抗戦の話で盛り上がったようだ。

 「そう言えば『豹変』はどこまで行ったんですか? 予選は抜けたんですよね?」
 「あー、ウチは二回戦落ちだ。 『思金神』の一軍と当たっちまったからナぁ」
 「あぁ、タカミムスビさんの所ですか」
 
 名前を出すとポンポンは少し嫌そうな顔をする。 

 「マジで反則みたいな火力だったゾ。 ウチの後衛がほぼ正面から火力で叩き潰された」
 「ってか『思金神』の一軍って全員、ジェネシスなんだろ? 負けても仕方ねーよ」
 「それでもあたしは勝ちたかったんだよ!」

 ツガルの慰めにポンポンは少し悔しそうにそう返す。 

 「はは、負けた事は覆せない以上、別で挽回しようじゃないか。 さて、ヨシナリ君も来た事だし、今日の本題に入ろうじゃないか」

 そう言ってタヂカラオはウインドウを可視化。
 映し出されたのは次の防衛戦で使用されるフィールドの様子だ。
 岩と氷ばかりの何もない荒野に大気がないのか、宇宙空間が良く見える。

 その大地に広がる巨大な基地。 俯瞰して見るととにかく大きい事が良く分かる。
 高層ビル群に侵入者を阻む為なのか防衛システムも完備されていた。
 上空に展開する高出力のエネルギーフィールドに対地対空自動迎撃システム。
 
 少々の攻撃には耐えられるような堅牢さに加え、この基地の主要施設は地下に集中している。
 全五層の構造になっており、一層は宇宙船の入港などに使われるであろう港とトルーパーのメンテナンスや補給を行えるハンガー。 
 
 これは以前の侵攻戦でも見かけたので見間違いようがない。 
 恐らくはプレイヤーの所持している装備を自由に呼び出す事が可能となっているのだろう。
 その為、ペース配分はあまり気にしなくても良さそうだ。

 「整備と補給が保証されてるのはありがてぇな」
 「素直に喜ぶナ。 よく見ろ、地上に近い一層部分だゾ。 侵入を許した時点で真っ先に潰されるヤベー場所だ」

 ポンポンの言う通りだった。 
 外に近い分、復帰も容易だが入られた場合、真っ先に狙われるであろう施設だ。
 そうなればどうなる? 補給と整備を絶たれるのだ。

 後がなくなる事は純粋に不味いが、それ以上に士気の低下が懸念される。
 ヨシナリは無言で映像をスクロール。 
 二層は食料の生産プラントらしく森と居住地らしきものが広がっている。 

 地形的に迎撃には向いているので、本音を言えば一層と入れ替えて欲しい施設だ。
 三層は研究エリアと表示されており、詳細は不明。 四層はインフラ関係を担っている。
  
 五層は基地の動力部。 ここが破壊される事が敗北条件の一つとなっている。
 
 「動力が破壊されれば基地が機能不全を起こすのは分かるんですが、この研究エリアってのが滅茶苦茶怪しいですね」

 詳細が不明な理由がさっぱり分からない。

 「だナ。 降りれば分かるのに詳細を伏せる理由が分からん」
 「僕としては敵が正面から来てくれるのかって所が怪しいと思っているがね?」
 「……ですよねー」

 タヂカラオの言う通りだった。 敵が正面から突撃一辺倒で来るとは限らないのだから。
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