Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第524話

 「推進装置は通常どころか若干の古臭さすらあるが、基礎部分がエンジェルフレームだから見た目以上に手強かった。 ――後は操っている奴の技量だな」

 ヨシナリの口振りから明らかに操っていた相手の技量が高かった事が窺えるが、どうにも反応がおかしい。 普段は割とはっきりと意見を言う彼にしては珍しく少しの歯切れの悪さを感じたのだ。

 「なぁ、なんか気になる事でもあったのか?」
 
 そう尋ねるとヨシナリはあぁと少しぼんやりした様子で応える。

 「気になるっているか、強かったのは確かなんだがそれ以上になんか気持ちが悪かったんだよな」
 「気持ち悪い?」
 
 今一つ理解が出来ずにマルメルが首を傾げる。 

 「あ、相性がわ、悪かったとか?」

 グロウモスが質問を変えるがヨシナリは微妙な様子で首を横に振る。

 「いぇ、そう言う訳ではなかったんですよ。 寧ろ、相性は良い方でした」

 マルメルに言わせればヨシナリと相性の悪い奴ってどんなのだよと言うのが本音だった。
 彼の柔軟性の高さは何度も見ている。 どんな相手であろうが戦い方から弱点を看破する彼のスタイル上、やり難い相手は居ても明確に相性が悪い相手というのはあまり想像ができなかったのだ。

 「その割には楽な相手って感じじゃなかったな」
 「いや、装備構成がホロスコープとそっくりだったんだ」
 「? どういう事だ?」
 
 機動性重視、狙撃銃と突撃銃の中間のような対応力の高いメインアーム。
 相手を見てから死角を探り当てて取りに行く戦い方、決定的だったのがクレイモア入りのレガースだ。 装備構成もそうだが戦い方もかなり似ていた事もあって困惑が強い。

 マルメルはちらりと修理中のホロスコープを一瞥。
 新しい足を付けている最中なので恐らくは蹴り合って破壊されたのだろう。
 なるほど。 ヨシナリが困惑するのも頷ける。 

 偶然とはいえ自分とそっくりな戦い方、装備の相手と当たれば驚きもするか。
 
 「結局、勝ったんだろ?」
 
 ならいいじゃないかと言おうと思ったが、ヨシナリの感じから満足のいく内容ではなかった事は明らかだった。

 「まぁ、時間もかけてられなかったから性能でゴリ押したんだが、あれは勝ったとは言えないな」

 どうやらパンドラのリミッターを外して性能差の暴力で叩き潰したらしい。
 
 「次があれば正面から叩き潰してやるけどな! ――っと修理が終わったみたいだな」

 そう言ってヨシナリはホロスコープへと乗り込む。
 乗り手を得たホロスコープのカメラアイが点灯し、鋼の肉体に魂が宿る。
 再構成されたアトルムとクルックスを装備して出撃準備は完了だ。
 
 「さて、リーダー。 俺達はこれからどうする?」
 
 復活したヨシナリにマルメルは改めて方針を問う。 
 ヨシナリは少し考えるような素振りを見せるが、決めてはいるようだった。

 「外で迎撃に混ざろうかと思う。 一応、フレンドに外と中の様子を聞いたんだが、中に関しては粗方片付いたようだ」

 内部に湧いてきたエネミーはボーンヘッドを中心に改造Ⅰ型とリベリオンフレームが少々というテロリストの機体がメインのようだ。 当然ながら内部には上位機種を扱っているプレイヤーがゴロゴロいる状況でそんな連中が生き残れる訳もなく早々に返り討ちにあったらしい。

 「それ誰に聞いたんだ?」
 「ヴルトム。 あいつ三層に居るらしくて連中と一戦交えたんだってさ」

 連携自体はかなりこなれた感じではあったが機体の性能差があったので思った以上に脆かったとの事。 
 改造Ⅰ型も鹵獲した機体を現地パーツで補修したといった設定なので純正品に比べればいくらか格が落ちる。
 要はⅠ型以下のスペックの機体だらけだったのだ。 負ける訳がなかった。

 流石に簡単すぎたようでヴルトムも首を傾げていたが、片付いたので今は良しとしておくべきだろうとしたようだ。
 
 「で、次は外なんだけど、侵攻戦で出くわした敵性トルーパーで構成されているらしくて、結構手強いみたいだ。 上位機種も結構な数を投入しているらしく、かなり被害が出ているらしい」

 こちらはツガルからで『栄光』は外で戦っているので地上の様子はかなり正確な情報が手に入った。 
 『豹変』は部隊を分けて運用しているらしく、ポンポン率いる分隊は外、ツェツィーリエ率いる本隊は中の防衛に着いているようだ。 
 そして『思金神』だが、こちらはかなり手広くやっている。

 タカミムスビは最下層の最終防衛ラインに配置し、各階層にも戦力を均等に配置。
 情報をくれたタヂカラオは一時的にジェネシスフレームを返却される代わりに外の最前線で戦わされているらしい。 近況を訊ねれば今の所は大丈夫だが、ピンチになったら助けを求めてもいいかな?と半分本気で尋ねられたらしいのでヨシナリは助けに行こうと思っているようだ。
 
 「冗談っぽく言っているけど割とマジっぽいからまずはタヂカラオさんを助けに行こうかと思ってるけどどう思う?」
 「俺は賛成だ。 知らない仲じゃないし、格好よく助けて恩を売っておこうぜ!」
 「わ、私もだ、大丈夫」

 方針が決まった所でヨシナリを戦闘に三人は動き出した。



 エネルギーリングで敵機を破壊する。
 タヂカラオはこれで何機目かなともう数えるのも馬鹿らしくなるほどの敵機を処理してきたのだが、未だに衰える気配がない敵の構成にこれは厄介だなと内心で僅かに焦りを滲ませる。

 一時的にとはいえ返って来た愛機との再会を喜ぶ暇もなく、戦いに次ぐ戦いだ。
 地上の戦況はお世辞にもいいとは言えない。 まず第一波の戦艦による特攻で基地の防衛装置の大半が死んだ。 まるで吸い込まれるように防衛設備に突っ込んで行った戦艦群を見れば相手は分かっていて来ている事は明らかだった。

 今回のイベントの厄介な点は敵が有人である事だ。 加えて基地の防御力を的確に剥ぎ取って来たやり方といい、どう見てもここを攻める訓練をしてきている。
 お陰で外のエネミーが次々に基地へと侵入し始めており、すっかり全域で乱戦となってしまった。

 幸か不幸か『思金神』を筆頭に大手のユニオンが侵入された時を想定してしっかりと防衛ラインを構築しているお陰で敵が基地へ雪崩れ込むといった事態は避けられたが、この様子だと時間の問題と見ていい。  

 敵機に関しては既知の物だったので観察から入らなくて良かったのは数少ない朗報ではあったが、中身の練度は全体的に上がっているようで動きが良くなっている。
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