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第538話
特にトルーパーでは通れない人間サイズの通路が無数にあるのがヨシナリ的には非常に気に入らなかった。
最初はテロリストが使っていたのであんな感じの連中が入るのに使ってるんだろうと疑っていたのだが、それ以前にあいつらは何だったんだといった気持ちが強い。
忍び込んで来たテロリストは第三層を目指していたようで中で何かをしていたようだが、施設には目立った被害が出ないまま全滅したとの事。
こうして思い返してみると違和感が凄まじい。
居なくなったので脅威ではなくなったが、なんだか気持ちが悪い事には変わりなかった。
次に気になるのはタカミムスビの動きだ。 彼の機体は侵攻でもそうだが、拠点防衛で特に力を発揮する。 そんな彼が最下層で引き籠るというのも考えてみれば違和感があった。
――まさかとは思うが、この展開を読んでいた?
疑問は尽きないがどちらにせよ足を引っ張ってこない以上はそこまで気にする必要はない。
色々と引っかかる事が多いのは事実ではあるが、最も重要なのはこれから自分達はどう動くべきかだ。
今は交代で機体の補給と整備を行っている状態だが、それが済んだのなら方針を決めるべきだった。
ヨシナリの考えとしては大きく二つ。
一つはここ――要は外で敵の侵入を妨害し続ける事。 無難な選択肢ではある。
何故なら敵の意識の大半は基地へと向かっている以上、外のヨシナリ達は精々障害物としか認識されていないだろう。 つまり、そこまで力を入れて潰しに来ない。
何故なら基地を制圧すれば終わるのだから、そちらに力を入れるのは至極当然だろう。
加えてヨシナリ達にもメリットは存在する。 最も大きなものはこの母艦を運用できる事。
第一層は徐々に制圧されていっている以上、機体の整備や補給が滞るのは目に見えていた。
外であるならこの艦と内部の設備が使い放題だ。
仮に落とされたとしても他を奪えばいい。 つまり、補給に困る事がないのだ。
加えて、敵の変化を誰よりも早くキャッチできる。 ヨシナリとしてはこれが最も大きな利点と捉えていた。
敵の戦力構成は非常に重要な情報で、仮に負けたとしても次に活かせるからだ。
もう一つは内部への突入。 数を揃える必要があるが上手く立ち回れば敵を挟撃できるので、一時的ではあるが敵の侵攻を遅らせる事が期待できる。
ただ、先に触れた通りこの基地の入口は五か所。
つまり一か所で押し返したとしても他が押し切られればあまり意味がなく、焼け石に水でしかない。
加えて補給と整備があまり期待できないので途中で力尽きる可能性も高い危険な道のりだ。
「――という事を考えていたんですけどどう思いますか?」
流石に一存で決める内容ではなかったので全員に相談する。
メリット、デメリットを提示してどちらが良いのかの判断を聞きたかった。
「……行ってもあんまり変わらなさそうだし、ここで粘ればいいんじゃね?」
「俺も同意だな。 ここなら補給と整備が受けられるから継戦能力が担保される。 中は中に居る連中に任せればいいだろ」
真っ先に意見を口にしたのはマルメルで、ヴルトムもそれに同意する。
マルメルとしてはあまり変化がないなら自分達が行ってもいかなくても変わらないと言いたいのだろう。
ヴルトムとしては補給と整備が整った環境を手放したくない事と、ここに居れば撃墜数が稼げるので美味しい稼ぎの場から離れがたいといった気持ちもあるようだ。
「俺としてはぼちぼち中に戻ろうかって考えてる。 ボス達が中だから少し心配だ」
「あたしもだ。 おねーたまは大丈夫って言ってたけど、そろそろ厳しそうだしナ」
ポンポン、ツガルは戻るつもりのようだ。
ニャーコ、まんまるの二人はポンポンの方針に従うつもりのようで口を挟まない。
「わ、私はどっちでもいい。 ヨシナリが決めていい、よ?」
「中の様子には興味があるが、僕としては外でもう少し戦っていたい。 敵の上位機種が現れるとしたらここからだろうし、敵の変化をいち早く把握できるポジションを離れたくない」
グロウモスは全体の方針に従うと言い、タヂカラオは変化の最前線であるここに居たいと。
最後にベリアルだが――
「戻りたい者は戻るがいい。 あの走狗共は先触れに過ぎん。 真の戦いはこれからになるだろう。 ――俺には分かる。 戦いの気配がするのだ」
「闇の王よ。 貴公の眼はどちらにより強い戦火の気配を捉えた?」
ベリアルは適当な事を言っているように聞こえるが、こういった話は割と信用できる。
ふわわを散々見て来た所為か、直感や気配というものの存在も判断材料に加えようと考えていた。
だからヨシナリは否定せずに質問を変える。 どちらが危険そうか?と。
「両方。 この悪辣な祭典を開いた黒幕共のやり口は知っていよう。 そんな者達が片方だけに苦難を課すか? 否、断じて否だ。 奴らはこの戦場を等しく蹂躙する事を本質としているが故、内と外の違いは些細な物でしかない」
――なるほど。
半数以上が首を傾げているが、ヨシナリは面白いと内心で頷く。
つまりベリアルは敵の目的は五層到達と見せかけてプレイヤーの全滅と言っているのだ。
仮にそうであった場合は確かにどこにいようと些細な違いにしかならない。
「だったら俺は外に残りますよ。 どっちも同じならヴルトムの言う通り、継戦能力が維持しやすいこちらの方がやり易い。 流石に全員に方針を強要する気はないので戻るのなら先に整備と補給を受けてください。 少なくとも二層に降りるまでは碌に補給が受けられないので、ペース配分に気を付けてくださいね」
ヨシナリがそう言うとツガルとポンポンは沈黙。
「あー、そういう事なら俺も残ろっかなー」
「まぁ、あたしが居なくてもおねーたまなら大丈夫だろうしナ」
ややあってそんな事を言い出した。 いきなり手の平を返したのは何故だと首を傾げる。
「いや、前のイベントの時もそうだったんだがよぉ、お前ってこういったイベント戦で面白そうな場面を引き当ててる印象があるからな」
「だナ。 戻ってそれを見逃すと後で悔しい思いをしそうだし残るゾ!」
「いや、期待してくれるのはありがたいですけど、何もなくても苦情入れないでくださいよ?」
予防線を張るヨシナリに二人は分かった分かったと頷いた。
最初はテロリストが使っていたのであんな感じの連中が入るのに使ってるんだろうと疑っていたのだが、それ以前にあいつらは何だったんだといった気持ちが強い。
忍び込んで来たテロリストは第三層を目指していたようで中で何かをしていたようだが、施設には目立った被害が出ないまま全滅したとの事。
こうして思い返してみると違和感が凄まじい。
居なくなったので脅威ではなくなったが、なんだか気持ちが悪い事には変わりなかった。
次に気になるのはタカミムスビの動きだ。 彼の機体は侵攻でもそうだが、拠点防衛で特に力を発揮する。 そんな彼が最下層で引き籠るというのも考えてみれば違和感があった。
――まさかとは思うが、この展開を読んでいた?
疑問は尽きないがどちらにせよ足を引っ張ってこない以上はそこまで気にする必要はない。
色々と引っかかる事が多いのは事実ではあるが、最も重要なのはこれから自分達はどう動くべきかだ。
今は交代で機体の補給と整備を行っている状態だが、それが済んだのなら方針を決めるべきだった。
ヨシナリの考えとしては大きく二つ。
一つはここ――要は外で敵の侵入を妨害し続ける事。 無難な選択肢ではある。
何故なら敵の意識の大半は基地へと向かっている以上、外のヨシナリ達は精々障害物としか認識されていないだろう。 つまり、そこまで力を入れて潰しに来ない。
何故なら基地を制圧すれば終わるのだから、そちらに力を入れるのは至極当然だろう。
加えてヨシナリ達にもメリットは存在する。 最も大きなものはこの母艦を運用できる事。
第一層は徐々に制圧されていっている以上、機体の整備や補給が滞るのは目に見えていた。
外であるならこの艦と内部の設備が使い放題だ。
仮に落とされたとしても他を奪えばいい。 つまり、補給に困る事がないのだ。
加えて、敵の変化を誰よりも早くキャッチできる。 ヨシナリとしてはこれが最も大きな利点と捉えていた。
敵の戦力構成は非常に重要な情報で、仮に負けたとしても次に活かせるからだ。
もう一つは内部への突入。 数を揃える必要があるが上手く立ち回れば敵を挟撃できるので、一時的ではあるが敵の侵攻を遅らせる事が期待できる。
ただ、先に触れた通りこの基地の入口は五か所。
つまり一か所で押し返したとしても他が押し切られればあまり意味がなく、焼け石に水でしかない。
加えて補給と整備があまり期待できないので途中で力尽きる可能性も高い危険な道のりだ。
「――という事を考えていたんですけどどう思いますか?」
流石に一存で決める内容ではなかったので全員に相談する。
メリット、デメリットを提示してどちらが良いのかの判断を聞きたかった。
「……行ってもあんまり変わらなさそうだし、ここで粘ればいいんじゃね?」
「俺も同意だな。 ここなら補給と整備が受けられるから継戦能力が担保される。 中は中に居る連中に任せればいいだろ」
真っ先に意見を口にしたのはマルメルで、ヴルトムもそれに同意する。
マルメルとしてはあまり変化がないなら自分達が行ってもいかなくても変わらないと言いたいのだろう。
ヴルトムとしては補給と整備が整った環境を手放したくない事と、ここに居れば撃墜数が稼げるので美味しい稼ぎの場から離れがたいといった気持ちもあるようだ。
「俺としてはぼちぼち中に戻ろうかって考えてる。 ボス達が中だから少し心配だ」
「あたしもだ。 おねーたまは大丈夫って言ってたけど、そろそろ厳しそうだしナ」
ポンポン、ツガルは戻るつもりのようだ。
ニャーコ、まんまるの二人はポンポンの方針に従うつもりのようで口を挟まない。
「わ、私はどっちでもいい。 ヨシナリが決めていい、よ?」
「中の様子には興味があるが、僕としては外でもう少し戦っていたい。 敵の上位機種が現れるとしたらここからだろうし、敵の変化をいち早く把握できるポジションを離れたくない」
グロウモスは全体の方針に従うと言い、タヂカラオは変化の最前線であるここに居たいと。
最後にベリアルだが――
「戻りたい者は戻るがいい。 あの走狗共は先触れに過ぎん。 真の戦いはこれからになるだろう。 ――俺には分かる。 戦いの気配がするのだ」
「闇の王よ。 貴公の眼はどちらにより強い戦火の気配を捉えた?」
ベリアルは適当な事を言っているように聞こえるが、こういった話は割と信用できる。
ふわわを散々見て来た所為か、直感や気配というものの存在も判断材料に加えようと考えていた。
だからヨシナリは否定せずに質問を変える。 どちらが危険そうか?と。
「両方。 この悪辣な祭典を開いた黒幕共のやり口は知っていよう。 そんな者達が片方だけに苦難を課すか? 否、断じて否だ。 奴らはこの戦場を等しく蹂躙する事を本質としているが故、内と外の違いは些細な物でしかない」
――なるほど。
半数以上が首を傾げているが、ヨシナリは面白いと内心で頷く。
つまりベリアルは敵の目的は五層到達と見せかけてプレイヤーの全滅と言っているのだ。
仮にそうであった場合は確かにどこにいようと些細な違いにしかならない。
「だったら俺は外に残りますよ。 どっちも同じならヴルトムの言う通り、継戦能力が維持しやすいこちらの方がやり易い。 流石に全員に方針を強要する気はないので戻るのなら先に整備と補給を受けてください。 少なくとも二層に降りるまでは碌に補給が受けられないので、ペース配分に気を付けてくださいね」
ヨシナリがそう言うとツガルとポンポンは沈黙。
「あー、そういう事なら俺も残ろっかなー」
「まぁ、あたしが居なくてもおねーたまなら大丈夫だろうしナ」
ややあってそんな事を言い出した。 いきなり手の平を返したのは何故だと首を傾げる。
「いや、前のイベントの時もそうだったんだがよぉ、お前ってこういったイベント戦で面白そうな場面を引き当ててる印象があるからな」
「だナ。 戻ってそれを見逃すと後で悔しい思いをしそうだし残るゾ!」
「いや、期待してくれるのはありがたいですけど、何もなくても苦情入れないでくださいよ?」
予防線を張るヨシナリに二人は分かった分かったと頷いた。
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