Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第543話

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 動く前に状況の整理だ。 まずは味方の状態。
 『星座盤』はヨシナリ、マルメル、グロウモス、ベリアルと全員健在。
 他も同様だ。 ツガル、フカヤ、ポンポン達、タヂカラオ、ヴルトムと彼の仲間十人。
 
 合計で二十一機。 フカヤが持って来た戦艦があるので整備と補給手段は確保できている。
 次に現在地。 一番近くの穴から入ったのでこの要塞の最下層に位置する場所だ。
 巨大すぎるので少しかかるが、エネルギー流動から中枢の方向は分かるので道に迷う事はなさそうだった。

 現在は敵影は見当たらず、戦闘音もしない。 要塞内は静かな物だった
 もう少し派手な出迎えを想定していたのだが、コンシャス達の有様を見れば違う事は分かり切っている。
 最後にこれからどうするか? 当然ながら中枢を目指して移動する事になるのだが、少し迷っていた。

 当初のプランとしては数名を残してこの場所を確保しておきたかったのだが、敵が転移を使っている可能性がある以上、戦力の分割は危険だった。 
 同様に戦艦を放置して戻った時に破壊されていたという事も可能であれば避けたい。

 施設内に整備可能な設備がある事を期待して戦艦は放置するか?
 味方に替えが利かない以上、何を優先するべきかは明白だった。
 
 「――って考えているんですけど皆さんはどう思います?」

 自分一人で結論を出す訳にも行かない内容なので仲間達に相談する事にしたのだ。
 
 「この状況がヤベぇって事は分かってるから全員一緒に行動でよくね?」
 「わ、私も残されるのはす、少し不安かも」

 マルメル、グロウモスは理由は微妙に異なるが結論は同じのようだ。
 ベリアルはお前に任せると言わんばかりに力強く頷いた。

 「あたしも全員行動に賛成だ。 敵の数がどれだけいるのかも分からねーから分散は危険と思うゾ」
 「僕も戦力を分けるのは得策ではないと思う。 少なくとも敵の正体が分かるまではね」

 今の所、ほぼ全員が部隊の分割に否定的なのは凄まじいとヨシナリは思ってしまった。
 それだけこの状況が異様という事だろう。 

 「ヴルトムはどう思う?」
 
 ヨシナリはまだ意見を口にしていないメンバーに話を振る。 

 「俺としても固まるのは賛成なんだが、さっきタヂカラオさんが言ってた正体が分かるまでってのを重視したい」
 「――というと?」
 「ここで戦闘があったって事だろ? つまりはこれをやった奴が戻って来る可能性は充分にあると思うんだ」

 そこまで聞いてヴルトムの意図を理解した。

 「あぁ、つまり戻ってくるのを待ち構えて仕留めようって事か」
 「そうだ。 このイベントは基本的に時間の経過は俺達にとって有利に働く。 そいつを最大限に活用する場面なんじゃないかって思う」

 ――確かに。

 消極的とも思えるが、聞けば聞くほどにヴルトムの案は理には適っていた。
 現在、この場を確保しているのはヨシナリ達だ。 つまり敵に地の利はない。
 初見の地形に飛び込むよりはこの場に留まって敵が来るのを待ち、仕留めてからゆっくりと調べる。
 
 忘れがちだがこの戦いは防衛戦。 制限時間内まで基地を守り抜けば勝利なのだ。
 加えて――ヨシナリは味方機の残骸を見る。 派手に破壊されている事が目立つがそれ以上に損傷の傾向が同じな事が気になった。

 恐らくだがこれをやった奴は単騎、居ても数機といった所だろう。
 つまり数がそこまで多くはない。 案としては堅実と言える。

 「いつまでも引き籠ってるって訳にはいきませんが、案としては悪くないかもしれませんね。 ちょっと様子を見ま――」

 ヨシナリの言葉に周囲も同意を示すような反応を示したその時だった。
 視界に凄まじい違和感を放つ異物が現れたのだ。 具体的には見慣れない機体。
 色は黒に近い茶色。 すっきりとした人型ではあるが、見た目から既存のフレームとは違う事が窺える。 

 間違いなくジェネシスフレーム。 両肩の後ろと腰に推進装置、腰には実体剣が一本。
 特に頭部が目を引き、真っ赤なカメラアイ――いや、眼球に近い生々しさがある相貌。
 そして頭部には湾曲した角。 フィクションでよく見る悪魔に近い印象を受ける。

 転移反応は視認してから現れた。 
 流石にこれは想定していなかった事もあってその場の全員が棒立ちになる。
 敵機に腕が霞む――前に背後から仕掛けた者がいた。 

 「ふ、この闇の王を相手に悪魔を繰り出すとはこの儀式を糸引く者は随分と皮肉が効いている」

 ベリアルだ。 背後に短距離転移。 
 完全に入るタイミングだったが、敵の挙動はそれ以上だった。
 プセウドテイがいきなり切り刻まれたのだ。 手足や纏ったエーテルの破片が飛び散るが、本体の損傷は軽微なのは流石だった。

 「く、何だこれは!?」

 ようやく反応が追い付いたメンバーが動き出す。 

 「シックスセンスで視えないって反則だゾ!」

 ポンポンがエネルギーライフルを連射し、僅かに遅れてマルメル、まんまるが十字砲火。
 グロウモスは光学迷彩で姿を消して移動。 ヨシナリ、ニャーコがベリアルのフォローの為に敵機を挟む。
 
 エネルギークローを展開したニャーコのラッシュに合わせてヨシナリがアトルムとクルックスを抜いてバースト射撃。 敵機の四つの推進装置が点滅するように瞬き、ニャーコのラッシュを全て紙一重で躱し、次の瞬間には逆にニャーコの機体がバラバラになった。

 四肢が落ち、推進装置が爆発。 
 墜落する前に敵機がその機体を掴むとヨシナリの前に盾にするように突き出した。
 
 ――こいつ。

 敵機は余裕たっぷりにいつの間にか抜いていた剣を手の中で回転させ刃が自分に向かないようにした後、親指を立てて首を掻き切る仕草。 挙動の端々から隠しきれない嗜虐性を感じる。
 確認するまでもなく、コンシャス達をやったのはこいつだ。

 ニャーコのシグナルはまだ生きている。 まずは助ける所からだ。
 敵機は掴んでいたニャーコの機体を手放す。 重力に引かれて落ちる直前にその胸から刃が突き出てヨシナリに向かって来る。 

 反応できたのは運もあったが、警戒していた事が大きい。 
 急旋回で回避。 敵機は血糊を落とすように剣を一振りすると突き刺さったままのニャーコの機体が抜けて飛んでいく。 

 「弾幕を張れ! 躱す隙間をなくせ!」

 ヴルトムと仲間達が撃ちまくるが敵機は意に介さず、凄まじいスピードで回避。
 壁際を飛び、射線を誘導した後に目当ての場所へ。 戦艦だ。
 
 「ま、待て!」

 意図に気付いたヴルトムが制止の声を上げるが止められる訳もなく、次々と停泊している戦艦に銃弾やエネルギー弾が突き刺さった。
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