Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第547話

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 「守りに? 何だか忙しい奴だな」
 「今の所、そこが唯一付け入れそうな面だな」

 実際、かなり違和感のある挙動ではあったが、これまでの行動を見れば何となく見えてくるものもある。
 そしてこれからの動きに対しての指針にもなる要素だった。
 
 「確かにおかしな話だよナ」
 「……多分ですけどこの要塞内部のエネミーはあいつしかいません」 
 「僕もそう思う。 俄かには信じたいけど、このタイミングで下がる理由が他に考え難い」

 驚くべき内容ではあるが、そう考えると説明が付く事が多い。
 最初の違和感はコンシャス達のやられ方。 後に氷解するが、明らかにさっきのエネミーにやられていた。 

 それだけなら複数のエネミーが単騎でこの要塞内を警備しているとも解釈できなくもないが、この広さでそれをやる意味が分からない。 なら、あのエネミーが単騎で守っていると解釈した方が腑に落ちるのだ。
 普通なら無理だと断じるがあの転移が要塞全てをカバーできるというのなら話は別だ。

 他のエネミーが一切出現しない事もその結論に至った要因だが、最も大きな理由はあのエネミーの性格。
 明らかにプレイヤーを仕留める事を楽しんでいた。 
 つまりエネミーにとってヨシナリ達は獲物なのだ。 それも独り占めしたい。
 
 恐らくは外に景気よく吐き出しているエネミーを内部の警備に回す事も可能なのだろうが、それをやらないという事はそういう事だろう。
 
 ――随分と信用されて――いや、職権を乱用しているのか?

 舐め切った態度が不快ではあったが、これまでに出くわしたどの敵よりも人間臭かった。
 強さは圧倒的であっても付け入る隙は充分に存在する。
 
 「――とまぁ、そんな訳で機体の修理と補給が終わったら真っすぐに中枢を目指します」
 「すまん。 敵が一機なのは分かったが、俺達が中枢に向かう理由は?」 

 マルメルが手を上げて質問。 
 
 「ぶっちゃけるとこのままだと俺達は確実に負ける。 その為には戦力が要るんだ。 で、敵は一機。 なら他のプレイヤーとの合流を目指して戦力の増強を図るのが分かりやすい近道だ」
 「ま、似たような事を考えた奴は言われなくても中枢に向かってるだろうしナ」
 
 要塞の構造の所為か通信の距離が制限されており、外部からの通信も断片的にしか入ってこない。
 その為、中枢へ向かいながら敵が一機、ないし少数である事と強敵であるので合流して事に対処する方がいいと情報を垂れ流しながら移動するのだ。 

 「運が良ければ何人かが来てくれるだろ」 

 そもそもこの要塞を攻略しようと考え、防衛線を突破したプレイヤー達なのだ。
 戦力として大いに期待できる。 後はどれだけ戦力が集まるか次第だ。

 
 「いや、助かったぜ」

 軽い休憩を挟み、損傷の激しかったツガルの機体が直った所で出発となった。 
 『星座盤』からはヨシナリ、マルメル、グロウモス、ベリアル。
 他はポンポン、まんまる、ツガル、タヂカラオが先行し、ヴルトムと仲間達は機体の移動速度の問題で後を追う形になる。 

 戦艦が無事だったのならこの場を確保する事も選択肢に入ったのだが、航行不能になった以上はあまり守る価値がない。
 補給を確保するという観点で見れば必要なのだが、位置が問題だった。
 ここは要塞の外縁、目的地は中心付近なので、戻るにしても決着がついた後になってしまう。

 のんびりと腰を据えてもいいような気もするが、あの敵を放置すると侵入した友軍機が皆殺しにされてしまう可能性もあり、余り悠長に構えてはいられない。 
 
 「じゃあヴルトム、後ろはよろしく」
 「あぁ、通信で中枢に集まる事と、敵機の情報を通信でばら撒きながら行けばいいんだろ?」

 ヴルトムは任せておけと頷いて見せる。 
 本来なら戦力を分けるのはあまりいい手ではないが、ヴルトム達の機体とは速度差が大きすぎるので先行して後で追いついてもらう方がいいと判断した結果だ。

 それに遅いと言う事はその分、呼びかけに時間を割けるので悪い事ばかりではない。
 途中で他のプレイヤーと合流できる可能性もあるので無駄にはならないとヨシナリは思っていた。
 敵も少ないので移動中に襲われる危険も少ない。 

 恐らくはヨシナリ達よりも狙われる可能性はかなり低いと見ていた。
 明らかにランカーを優先していたので行くにしても他の処理をしてからになると見ている。
 
 「よし、じゃあ出発しますか!」

 声を上げると各々から返事が返ってくる。 いいチームだった。


 「ったく、そう簡単に勝たせてはくれねーよなぁ!」

 Aランクプレイヤー『アドルファス』はドローンを操りながらエネルギーライフルを連射。
 敵機はひらひらと躱し、転移を織り交ぜて接近を試みるが、薙ぐように放たれた無数の銃弾に回避を選択する。 

 「流石は運営、手強いな!」

 ガトリング砲で弾をばら撒きながらカカラが笑う。 
 アドルファスは単騎でこの要塞への侵入を目指していたのだが、途中で合流したカカラと突入し、二人でこの中枢を目指していた。
 
 もう少しで中枢らしき場所に辿りつくと思っていたのだが、広い空間に出たと同時に目の前のエネミーが突然湧いてきたのだ。 
 少し撃ち合っただけで強敵と理解できた。 

 ――こいつはぶっ倒し甲斐があるぜ!

 アドルファスは自分より強そうな奴を倒して最強になりたいと常々考えていた。
 彼にとっての聖典はバトル漫画だ。 戦う理由? くだらない。
 自分よりも強そうな奴をぶっ倒して上だと証明する以上に理由なんて必要ない。

 他人から見れば薄い動機、薄い理由なのかもしれないが、アドルファスを突き動かすのに必要なのはそれだけだった。 
 当然、気持ちだけで勝てるほどこのゲームは甘くない。 
 だから、燃やさなければならない。 強くなるという執念を。

 彼の愛するバトル漫画の主人公達はそうやって己の限界を突破して来たのだ。
 自分もそうする事で己の理想に近づけるだろう。 
 事実、彼はAランクでも上位のプレイヤーとしてこのゲームに君臨していた。

 そんな彼にも勝てない相手、勝てる気がしない相手は存在する。
 ラーガストだ。 目下、彼の目指す頂きはあの怪物の打倒。
 だから、ランク戦ではラーガストと当たる事を常に祈るほど、彼との戦いを熱望しているのだ。

 強くなる為には戦いが必要。 これは絶対条件だ。
 そんな理由で彼は強くなる為の機会を一欠片も逃したくないと考えていた。
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