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第576話
カナタが前に出ると相手の前衛も応じるように姿を現した。
先頭は見間違える訳のないツェツィーリエ。 問題はその左右に居るプレイヤーだ。
片方はスピード特化の近接機、ユニオン『タヴォラロトンダ』のウィル。
もう片方はケンタウロスのような特徴的な下半身。 『烏合衆』のケイロン。
「会えて嬉しいわツェツィーリエ。 できれば手を組みたい所だったんだけど?」
カナタがそう言うとツェツィーリエは肩を竦めて見せる。
「こちらとしても組んでも良かったのだけれどここのルールに察しが付くとちょっと難しくなっちゃってね?」
「どういう事?」
カナタは内心でぶつかるとなると厳しいと考えていた。
ウィルも厄介だが、ケイロンが特に不味い。
それに加えてツェツィーリエの三人を相手にするのは余り現実的ではなかった。
まずは情報を集めつつ可能であれば戦闘を避ける方向に持っていけないか。
カナタはそう考えて会話を続ける。
「そっちも察しているとは思うけどここには何もない」
「そうね。 調べたけど何もなかった」
「当然ながら上を調べたら敵の巣のような物があってそこから先にはここと似たようなデザインの惑星がいくつも。 つまり私達は複数のブロックに分けられているという訳ね」
それに関しては察しが付いていた。
参加人数を考えればもっと頻繁に他のプレイヤーと遭遇していてもおかしくないからだ。
「ここで考えたのよ。 何故、ブロック分けのような事を行い、エネミーを小出しにするのかをね」
「何かわかったのなら教えて貰えると嬉しいかな?」
ツェツィーリエはちらりとケイロンを振り返ると小さく溜息を吐く。
「……本当は奇襲をかけるつもりだったんだけど、ケイロンがうるさくってね。 まぁ、いいわ。 教えてあげる。 まずは確認、このイベントのクリア条件は?」
「宝の入手」
「そう、明確なゴールがあるの。 このイベントはね、レースなのよ。 誰が最初に宝を手に入れられるかの」
そこまで聞いてカナタの脳裏にも理解が広がる。
現状からスコア獲得が状況打開の鍵になっている可能性は高い。
素早く駒を進めたいのなら獲得スコアの多いプレイヤーを仕留めた方が効率的だ。
しかもこのイベントの厄介な所は意図的に進捗の分からないプレイヤーの存在を意識させている点にある。
見えない以上、どこまで進んでいるのかが分からない。
もしかしたら他のブロックに割り振られたプレイヤー達はこんな所で足踏みしておらず、もう遥か先に進んでいるのではないのだろうか?
そんな思考に囚われてしまえば誰しも焦りに支配される事になるだろう。
「まぁ、そんな訳よ。 さっき、何チームか潰してきたんだけどスコア、かなり美味しいわよ?」
ツェツィーリエはそう言って笑って見せる。 向こうは完全にその気だ。
これはやるしかなかった。
「分かった。 あんまり気は進まないけど、相手になってあげるわ!」
「そう、話が早くて助かるわー。 負けても悪く思わないでね?」
「それはこっちのセリフ!」
カナタが背の大剣を抜いたと同時にツェツィーリエとウィルが襲い掛かって来た。
――まぁ、そうなるよなぁ。
会話を聞いていたマルメルはどこか納得すらしていた。
ここでチマチマ雑魚を仕留めてポイント稼いでも行けはするだろうが、効率が悪い。
早い者勝ちである以上、足踏みは勝負を放棄する事に等しいのだ。
少なくともヨシナリは絶対にそんな事はしない。
先に行っているであろうあいつに追いつく為にこんな所で足踏みはしてられないのだ。
それにとマルメルはケイロンを見る。
――俺はツいてる。
ユニオン対抗戦での借りを返してやる。 拳を強く握り、機体を加速。
「ケイロンと戦うの?」
マルメルの動きから意図に気付いたアリスがやんわりと止めるような口調で尋ねる。
「はい、何か問題が?」
「負けると思うけど?」
普通に考えればそうなるだろう。 スペック、技量、読みの深さ。
あの時の自分には何もかもが足りておらず、何もかもが下回っていたから負けた。
だからどうした。 負けた相手が目の前に居るのだ。
叩き潰してあの時の屈辱を晴らし、そして仲間達にこう言うのだ。
この前、イベントで負けた奴と出くわしたんだけど借りを返してやったぜと。
「相手がでしょ?」
マルメルがそう返すとアリスが驚きに僅かに眼を見開き、そして楽し気に目を細めた。
「そう、ならやって見なさいな」
「言われなくても!」
「私は狙撃手の処理をするわ。 精々、頑張りなさい」
マルメルは正面へ向かうのに対し、アリスは戦場を回り込むように動く。
「あぁ、もう! 皆、血の気多すぎない!?」
エーデは後退してセンサー系の感度を上げつつ、ミサイルの発射準備。
まんまるはそれに合わせて後退し、敵機に狙いを付ける。
「ちなみにまんまるさんはツェツィーリエ相手でも撃てるの?」
「そこは問題ないですぅ。 マスターはそういう事すると怒る人なので」
それだけ聞ければ充分だ。 エーデは壁の向こうにミサイルをばら撒いた。
カナタが二機とぶつかっている所をケイロンは少し離れた位置で見ていた。
彼は一人を嬲るような戦いは好みではなかったので終わったら仕掛けようと考えていたのだが、一機のソルジャータイプがこちら向かって来ているのを確認。
狙いは明らかに自分だ。 ケイロンは内心で首を傾げる。
わざわざ動いていない自分に仕掛ける意図は何だ?
よく分からなかったが挑んで来る相手は大歓迎だった。
特に性能、技量差がある事を理解して挑んで来る相手はケイロンとしてはとても好ましい。
何故なら人が高い壁に挑む姿は美しいからだ。 相手を確認。
プレイヤーネーム『マルメル』覚えがあった。 ユニオン対抗戦で当たった相手だ。
あの『星座盤』という素晴らしい力を持ったユニオンの一人で、死力を尽くしてケイロンに挑んだ勇者の一人だった。
内容こそ、ケイロンの完勝と言える戦いだったが、彼はマルメルの事を高く評価していた。
あの状況で委縮せず、冷静に地形、環境を利用して勝ちを捥ぎ取りに行った気概は素晴らしい。
惜しむらくは地力が足りなかった点だろう。
マルメルがケイロンに思考する余裕を与えなければあぁはならなかった可能性は充分にあった。
砕けた氷に足を取られ、動きを封じられた所に必殺の一撃を当てられたのかもしれない。
先頭は見間違える訳のないツェツィーリエ。 問題はその左右に居るプレイヤーだ。
片方はスピード特化の近接機、ユニオン『タヴォラロトンダ』のウィル。
もう片方はケンタウロスのような特徴的な下半身。 『烏合衆』のケイロン。
「会えて嬉しいわツェツィーリエ。 できれば手を組みたい所だったんだけど?」
カナタがそう言うとツェツィーリエは肩を竦めて見せる。
「こちらとしても組んでも良かったのだけれどここのルールに察しが付くとちょっと難しくなっちゃってね?」
「どういう事?」
カナタは内心でぶつかるとなると厳しいと考えていた。
ウィルも厄介だが、ケイロンが特に不味い。
それに加えてツェツィーリエの三人を相手にするのは余り現実的ではなかった。
まずは情報を集めつつ可能であれば戦闘を避ける方向に持っていけないか。
カナタはそう考えて会話を続ける。
「そっちも察しているとは思うけどここには何もない」
「そうね。 調べたけど何もなかった」
「当然ながら上を調べたら敵の巣のような物があってそこから先にはここと似たようなデザインの惑星がいくつも。 つまり私達は複数のブロックに分けられているという訳ね」
それに関しては察しが付いていた。
参加人数を考えればもっと頻繁に他のプレイヤーと遭遇していてもおかしくないからだ。
「ここで考えたのよ。 何故、ブロック分けのような事を行い、エネミーを小出しにするのかをね」
「何かわかったのなら教えて貰えると嬉しいかな?」
ツェツィーリエはちらりとケイロンを振り返ると小さく溜息を吐く。
「……本当は奇襲をかけるつもりだったんだけど、ケイロンがうるさくってね。 まぁ、いいわ。 教えてあげる。 まずは確認、このイベントのクリア条件は?」
「宝の入手」
「そう、明確なゴールがあるの。 このイベントはね、レースなのよ。 誰が最初に宝を手に入れられるかの」
そこまで聞いてカナタの脳裏にも理解が広がる。
現状からスコア獲得が状況打開の鍵になっている可能性は高い。
素早く駒を進めたいのなら獲得スコアの多いプレイヤーを仕留めた方が効率的だ。
しかもこのイベントの厄介な所は意図的に進捗の分からないプレイヤーの存在を意識させている点にある。
見えない以上、どこまで進んでいるのかが分からない。
もしかしたら他のブロックに割り振られたプレイヤー達はこんな所で足踏みしておらず、もう遥か先に進んでいるのではないのだろうか?
そんな思考に囚われてしまえば誰しも焦りに支配される事になるだろう。
「まぁ、そんな訳よ。 さっき、何チームか潰してきたんだけどスコア、かなり美味しいわよ?」
ツェツィーリエはそう言って笑って見せる。 向こうは完全にその気だ。
これはやるしかなかった。
「分かった。 あんまり気は進まないけど、相手になってあげるわ!」
「そう、話が早くて助かるわー。 負けても悪く思わないでね?」
「それはこっちのセリフ!」
カナタが背の大剣を抜いたと同時にツェツィーリエとウィルが襲い掛かって来た。
――まぁ、そうなるよなぁ。
会話を聞いていたマルメルはどこか納得すらしていた。
ここでチマチマ雑魚を仕留めてポイント稼いでも行けはするだろうが、効率が悪い。
早い者勝ちである以上、足踏みは勝負を放棄する事に等しいのだ。
少なくともヨシナリは絶対にそんな事はしない。
先に行っているであろうあいつに追いつく為にこんな所で足踏みはしてられないのだ。
それにとマルメルはケイロンを見る。
――俺はツいてる。
ユニオン対抗戦での借りを返してやる。 拳を強く握り、機体を加速。
「ケイロンと戦うの?」
マルメルの動きから意図に気付いたアリスがやんわりと止めるような口調で尋ねる。
「はい、何か問題が?」
「負けると思うけど?」
普通に考えればそうなるだろう。 スペック、技量、読みの深さ。
あの時の自分には何もかもが足りておらず、何もかもが下回っていたから負けた。
だからどうした。 負けた相手が目の前に居るのだ。
叩き潰してあの時の屈辱を晴らし、そして仲間達にこう言うのだ。
この前、イベントで負けた奴と出くわしたんだけど借りを返してやったぜと。
「相手がでしょ?」
マルメルがそう返すとアリスが驚きに僅かに眼を見開き、そして楽し気に目を細めた。
「そう、ならやって見なさいな」
「言われなくても!」
「私は狙撃手の処理をするわ。 精々、頑張りなさい」
マルメルは正面へ向かうのに対し、アリスは戦場を回り込むように動く。
「あぁ、もう! 皆、血の気多すぎない!?」
エーデは後退してセンサー系の感度を上げつつ、ミサイルの発射準備。
まんまるはそれに合わせて後退し、敵機に狙いを付ける。
「ちなみにまんまるさんはツェツィーリエ相手でも撃てるの?」
「そこは問題ないですぅ。 マスターはそういう事すると怒る人なので」
それだけ聞ければ充分だ。 エーデは壁の向こうにミサイルをばら撒いた。
カナタが二機とぶつかっている所をケイロンは少し離れた位置で見ていた。
彼は一人を嬲るような戦いは好みではなかったので終わったら仕掛けようと考えていたのだが、一機のソルジャータイプがこちら向かって来ているのを確認。
狙いは明らかに自分だ。 ケイロンは内心で首を傾げる。
わざわざ動いていない自分に仕掛ける意図は何だ?
よく分からなかったが挑んで来る相手は大歓迎だった。
特に性能、技量差がある事を理解して挑んで来る相手はケイロンとしてはとても好ましい。
何故なら人が高い壁に挑む姿は美しいからだ。 相手を確認。
プレイヤーネーム『マルメル』覚えがあった。 ユニオン対抗戦で当たった相手だ。
あの『星座盤』という素晴らしい力を持ったユニオンの一人で、死力を尽くしてケイロンに挑んだ勇者の一人だった。
内容こそ、ケイロンの完勝と言える戦いだったが、彼はマルメルの事を高く評価していた。
あの状況で委縮せず、冷静に地形、環境を利用して勝ちを捥ぎ取りに行った気概は素晴らしい。
惜しむらくは地力が足りなかった点だろう。
マルメルがケイロンに思考する余裕を与えなければあぁはならなかった可能性は充分にあった。
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