Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第582話

 「これ、絶対に後付けだろ」

 指定されたポイントに向かうとそこには周囲とは不釣り合いな造りの鉄製のゲートが地面に張り付いている。
 近づくと開閉指示のコマンドが出現したので実行するとゆっくりと口を開けた。
 カナタを先頭にマルメル、アリス、エーデ、まんまるの順に中へ。

 少し降りた先には五機分のハンガーと休憩所のような場所があった。
 要は機体のメンテナンスをしている間、アバター状態で寛げる場所のようだ。
 カナタはメニューで何ができるのかを確認。 事前に説明があったように機体の修復と弾等の補給、後は一時的なログアウトが可能となっている。
 
 「さっき調べた時、何もなかったし、スコアが溜まったら自動で精製される感じですかね」
 「そうなんじゃない? どちらにせよ累計スコアで使用権が得られる仕組みみたいだし、足りない状態だと仮に発見できても扱えなかったでしょうね」

 マルメルとアリスはそんな話をしながら機体をハンガーに預けてアバター状態になる。
 
 「――というかこのイベント、ゴールがはっきりしないから疲れるなぁ」
 
 エーデはアバターの肩をぐりぐりと回転させながら機体を降りる。
 まんまるはそうですねと同意しつつ特にそれ以上の自己主張はしない。
 全員はアバター状態で休憩所で一息つく事となったのだが、この後の方針は決めておくべきだろう。

 「はい、一先ずですが拠点は手に入りました。 機体の修理は三十分程度で終わるとの事なので完了次第、動きたいと思いますが大丈夫ですか?」
 
 カナタとしては早めにスコアを稼いでおきたかったので本音を言えばすぐにでも他のプレイヤーを探しに行きたいぐらいだった。 
 このイベントの厄介な点は他のプレイヤーの進捗が一切分からない点にある。
 その為、他はもっと先に行っているのではないか? そんな焦燥感が襲って来るのだ。
 
 「俺はそれで問題ないっすよ」
 
 マルメルは即答、アリスもえぇと頷く。 エーデ、まんまるも異論はないのか同様に頷いた。
 
 「では三十分の休憩を挟んで再出発しましょう!」
 


 「――へぇ、そうなんだ! じゃあ後の時って完全に別行動だったの?」
 「そっすよ。 まぁ、ヨシナリはあの二人なしでも勝つつもりだったみたいですけど」

 修理と補給が終わるまでは自由時間となるのだが、マルメルはどうした物かと考えているとエーデが以前のユニオン対抗戦の話が聞きたいと言い出したので今に至る。

 「いや、実を言うと逃げないからちょっと嫌な予感してたんだよねぇ」
 「気になる事はあったけど充分に数で潰せるって思ってたでしょ?」
 
 完全にヨシナリの言っていた事そのままだが、その通りだったのかエーデは笑う。

 「あ、分かった? コンシャスは三回目だから君達の事を疫病神か何かと勘違いしてさぁ、ここで祓っておかないと後々まで祟るなんて言い出したのが切っ掛けなんだよ」
 「はは、なんっすかそれ! 俺らそんな風に思われてたんですか?」

 エーデとの話は面白かった。 
 特に敵視点での貴重な話は自分達の動きと擦り合わせるとなるほど思える気付きがあったからだ。 
 
 「そうなんだよ。 彼、割とゲンを担ぐからそういうのすっごく気にするんだってさ。 僕としても君達は強敵だと思ったからここで潰しとけば楽かなって思ってさ」
 「そりゃお目が高い!」
 
 他のメンバーは三人ともログアウト中だ。 食事などを簡単に済ませておくとの事。
 その為、残った二人で話をしていた。 

 「……で、さ。 マルメルはこのチームどう思う?」
 
 不意にエーデはそんな事を言い出した。 
 明らかに切り出すタイミングを窺っていたので、何だろうなと思っていたがこれかと察してしまう。
 短い期間ではあるが訓練して擦り合わせはしてきたつもりだが、実戦で動いて見るとかなり違ってしまうのはよくある事だ。 

 正直、エーデの言いたい事は何となく分かった。 
 恐らくだが、まんまるも似たような事を考えていそうだなとすら思っている。
 
 「ぶっちゃけやり難いって話っすかね」
 
 さっきの戦闘を振り返るとそれは顕著だ。 
 相手の構成はツェツィーリエ、ウィルの前衛二人に中衛のケイロンと後衛のセンドウ、グロウモス。
 ケイロンがマルメルと一騎打ちをする関係で四対四の構図となったのだが、センドウはステルスで身を隠し、グロウモスは壁を挟んで隠れていた関係で後衛の二人はかなりやり難そうにしていた。

 特に敵の前衛二人は後衛の攻撃範囲を意識していた事もあってカナタに張り付いていた事もあって碌に狙えなかったのだ。 

 「うん、まぁ、そうなんだけどできればもうちょっと後ろを意識してくれると嬉しいんだけどね……」

 エーデはもごもごと不満を口にした。 明らかに本人に言いたいが言い難いといった様子だ。
 それを聞いてマルメルはどうしたものかと考える。  
 カナタは指揮官としてどうかと聞かれると悪くはないとは思っていた。

 ただ、比較対象がヨシナリなので、彼と比べるといくらか劣っていると感じてしまうのだ。
 何処が違うのかと考えるとぼんやりと見えてくる。 
 周囲をどう捉えているかの違いだろう。 

 ヨシナリの場合は味方と自分の強みを活かした相乗効果を狙っていくスタイルに対してカナタは自分を中心に味方機をオプションとみなして戦うスタイルだ。
 だから基本的に「自分」と「自分以外」で切り分けている。 

 これは良い悪いと言う話ではなく、単純に相性の問題だった。
 「栄光」のメンバーはカナタを中心とした連携に慣れて、それに特化したある意味では精鋭と言える。
 ただ、外様のメンバーで固めた状態ではそれは十全に機能しない。 

 マルメルも感じていた事だが、無理に合わせる必要があるのは少しストレスがかかる。
 
 ――いや、「星座盤」がストレスフリーなだけか?

 「僕としてはあんまり波風は立てたくないんだけど、勝ちたいっていうんなら連携に問題抱えたままなのはどうかと思って……」
 
 エーデなりにチームの事を考えているのは分かるので何とかしてやりたいとは思っていた。
 明らかにさっきの戦闘ではマルメルでも突っ込める程の問題がいくつかあったので、次に行く前に軽くは話しておいた方がいいだろう。

 「分かりました。 じゃあ戻ってきたら二人で少し話してみましょうか」
 「ほ、本当かい!? いや、一人だと不安でさぁ……」

 エーデは心底からほっとした様子を見てマルメルはこんな調子でよくユニオンを運営できたなと少しだけ不安になった。
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