Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第611話

 ブリーフィングを終えてヨシナリ達はフィールドへと降り立つ。
 開始まで時間がないので全員が大急ぎで動き出す。 30分もないのでとにかく時間との戦いだ。
 今回の防衛対象である基地には整備、補給用のハンガーはあるが装備の生産施設は存在しないので武器の追加を仕入れる事は出来ない。 

 ただ、破損した武器の復旧は可能なので手札を増やす事は出来ないが、元に戻す事は可能だ。
 全員が持ち込んだ物資などを集積し、必要な場所へと振り分ける。
 主にセントリーガンや防御用のタワーシールドなどだ。 

 ヤドカリ型の狙撃を防げるレベルの盾を用意するのは骨だったが、幸いにもランカーが数多く居た事もあって大量に用意できた。
 ヴルトム達がカカラの機体の背に大量の物資を乗せて輸送に入り、防壁の上で待っている者達が大急ぎで設置し、防御陣地を築く。 

 推奨人数に少し足りない状態なので人数を武器で補うしかないのだ。
 特に序盤から中盤は敵のスウォームを捌く為にはとにかく火力が必要だった。
 セントリーガンと交換用の弾丸ボックス、タワーシールド、ロケットランチャー、ミサイルランチャー等々。 
 
 当然、ヨシナリ達も積極的に動き、迎撃準備を進める。
 防衛戦である以上、守りは特に重要だ。 
 防壁の上に『大渦』のメンバーを等間隔で配置して迎撃に当たって貰う。  

 大半がⅠ型でⅡ型やパンツァータイプはそう多くない以上、他で補って死に難くする。
 迎撃に不向き、もしくは経験が足りない低ランクのプレイヤー達は給弾作業の為に施設と防壁を往復しつつ、空から来る敵の迎撃を担う。 
 
 その間にグロウモスは基地の中央――最も背の高い建物の屋上に陣取る。
 スコーピオン・アンタレスは基地の電源ケーブルと接続しており、常に最大の威力を発揮できる状態で待機。 その周囲には交換用のバレルが大量に用意されていた。

 彼女の役割は爆撃機である蛾の迎撃だ。 余裕があれば他の支援も行う。
 ヨシナリはちらりと視界の端に表示された残り時間を確認する。
 残り五分。 事前に段取りを組んでいたお陰で作業に関してはほぼ予定通りに完了した。
 
 最後にメンバーが配置に付けば準備は完了だ。 
 ヨシナリは小さく目を閉じる。 脳裏に広がるのは過去に参加したイベントだ。
 最初の時は機体、装備、経験も碌にない状態でマルメルと二人で逃げ回るだけで精一杯だった。

 二回目は終盤まで生き残りはしたが、ラーガストのアシストだけで終わった。
 ヨシナリとしては悔いの多く残るイベントだけあって今回、かなり力を入れて準備を行ってきたのだ。
 
 ――行くぞ。

 カウントがゼロになり、イベントが開始される。

 
 地平線の向こうから地響きと共に無数のエネミーが全方位から押し寄せてくる。
 
 「よし、ミサイルの有効射程に入った時点で撃ちまくれ。 とにかく数を減らすぞ!」

 ヴルトムはメンバーに指示を飛ばす。 通信の向こうから威勢のいい返事が響く。
 ヨシナリとの付き合いもそこそこになって来たが、あいつは次々と厄介で面白い話を持ってくる。
 今回もそうだ。 本来なら推奨人数の数倍を容易する事で安定周回ができるこのステージをギリギリの人数でクリアしようなんてお誘いだった。

 クリア報酬は頭割りなので一番人数の多いヴルトム達が大半を持って行く事になるのだが、明らかに気にしている様子はなかった。 
 他もまた同様で明らかにヨシナリ達は金よりも経験を積む事に重きを置いている。
 正直、金が欲しいヴルトムとしては真似できないストイックさだ。

 恐らくだが、ヨシナリはヴルトムの本音も見透かしてこの提案を持って来たのではないかと思っていた。
 実際、ヴルトムからすれば勝てればという但し書きこそ付くがかなり美味しい話だからだ。
 報酬額は決まっており、人数での頭割り。 つまり最低限の人員でクリアすれば一人一人の取り分がかなり増えるのだ。

 ――上手いよなぁ……。

 報酬という美味しい餌と全力を出さなければ負けてしまう難易度。
 高い目標を設定する事で集中させ、報酬でモチベーションを上げる。
 狙ってやっているのか判断が付かないが、ヴルトム達には完璧に機能していると言っていい。

 仲間達の反応からも士気の高さが窺える。 
 敵が射程に入った事で攻撃開始。 ミサイルやロケット弾が派手な音を立てて飛んでいく。
 無数の爆発音と銃声が響く。 

 敵の数に対して味方の数が少ないのでとにかく群れの勢いを削ぐ事が必要だ。
 まずはヴルトム達が派手にばら撒いて削り、空は――極太のレーザーが空をさっと薙ぐように放たれ、西側の空から来ていた無数のエネミーが次々と爆散。 グロウモスのレーザー攻撃だ。

 ヴルトムがそちらに視線を向けると長時間の照射で使い物にならなくなったバレルを排除。
 その間に銃本体から冷却の為の蒸気が吹き出す。 
 グロウモスは慣れた手付きで銃身を交換すると敵が密集している場所へと構え、再度発射。
 
 ――とんでもねぇ威力だな。

 碌に動けなくなる上、いちいち冷却と銃身の交換が必要という面倒な手順が必要なので使いどころは限られるがこういった状況ではしっかりと刺さる。 
 反対の東側でも同様に高出力のレーザーがエネミーを薙ぎ払う。 

 こちらはアリスのレーザー攻撃だ。 
 北側はカカラがとんでもない数のミサイルをばら撒き南はまんまるやマルメル達が持ち込んだ攻撃範囲の広い武装を使って敵を次々と撃墜していく。

 1500から2000機撃破との事だったが、この調子だとすぐに条件が満たされそうだった。
 今回の防衛戦の最終目的はボスの撃破だ。 つまり守ってばかりでは勝てない。
 特に戦力に乏しい状態なので早めに展開を進める必要があるのだ。

 「そろそろ俺達の出番か」

 高火力、広範囲の攻撃で敵を薙ぎ払ってはいるが、物量差はどうにもならない。
 エネミーが防壁を突破して基地の上空へと侵入する。 目についた敵機にヴルトムは銃撃。
 蜂型は機動性に優れてはいるが、装甲が薄く当たれば簡単に落とせる。

 ヴルトムの撒き散らした銃弾がエネミーを次々と穴だらけにし、大破した蜂型が空中で爆散。
 過去に参加したイベントでの自分を思い返すと動けてるなと少しだけ成長を実感できて少し気分が良かった。

 ――が、戦場を切り裂くように飛ぶ黒い機体が視界に入る。

 ヨシナリだ。 戦闘機形態からの高速機動で次々と敵機を撃墜し、狙われた所で人型へと変形。
 流れるような動きで二挺拳銃を抜いて返り討ちにする。
 以前の彼を知っている身としてはまるで別人だ。 

 「あれ見るとちょっと自信なくすなぁ」

 思わずそう呟いた。
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