Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第612話

 ――よし、今のところは上手くいっているな。

 ヨシナリは基地の上空に侵入してきたエネミーを撃墜しながら戦場を確認。
 滑り出しとしては上々だ。 
 防壁に配置した『大渦』のメンバーに弾幕を張らせて地上を足止めしつつ数を削ぐ。

 今回の防衛戦は勝利条件がボスの撃破である以上、守るよりは数を減らす事を念頭に置く必要がある。
 ミサイル等の爆発物でとにかく纏めて消し飛ばす事で効率よく数を稼ぐ。
 今回のミッションは撃破数も報酬に影響が出るので、彼等は嬉々として働いてくれるだろう。

 空に関してはグロウモス、アリス、カカラを軸として高火力の兵装を備えた機体が薙ぎ払う形で守る。
 特にアリスの参加は大きい。 彼女の機体はこの戦場ではかなり有用だ。
 マルメルやまんまるにかかる負担が激減した。 

 そして彼等の守りを突破して来るエネミーをヨシナリ達が狩る。
 どう頑張っても被害は出るので考えるのは可能な限り最小のダメージで切り抜ける事。
 時計を確認するとそろそろ三十分を越える。 

 撃破ペース的に次に進む頃だろう。 
 その証拠にやたらと接近を試みようとする蛾に地上にはカブトムシやクワガタに混ざって芋虫の姿が見える。 一時間も経たない内に第二に入れたのは良いぺ―スといえた。

 特にグロウモス達が空の敵をかなり減らしてくれている事もあって今のところはかなり余裕がある。
 ベリアル達は防壁の近くで待機しており、次のウェーブに備えている状況だ。
 暇を持て余したアドルファスはドローンを飛ばして迎撃に参加しているようだが、それに関しても問題はない。 

 ――このペースだと二時間を超える前には出てきそうだな。

 第三ウェーブ。 ヤドカリ型の登場だ。
 そうなれば近接組の出番となるのだが、それまでは大人しくしていてもらおう。
 戦場を俯瞰。 今の所は何の問題もない。 

 ――それにしても随分と難易度を落としてきたな。

 推奨人数100前後にスケールダウンしただけあってヌルいと感じてしまう。
 大手ユニオンは推奨人数の10倍で周回するらしい。 
 『思金神』に至っては初期は100倍というとんでもない人数を投じたらしい。
 
 効率の問題で今は負けない程度の人数に絞ったらしいが。
 それでも勝って当たり前といえるレベルの戦力で臨んでいるようだ。
 ヨシナリは戦場から個々の動きにフォーカス。 

 まずはマルメル。 グロウモス達がカバーしきれない部分を埋める為に走り回ってくれている。
 地上を行きながら時折、空を見上げると最小の動きでエネミーを撃墜していた。
 特に意識しているのは給弾作業を行っているメンバーだ。 彼等が襲われると即座にカバーに入る点からも周りがかなり見えているのが分かる。

 ――落ち着いてきたなぁ。

 以前は勢い任せな面が目立つプレイだったが、今は間合いと戦況を見る事が出来ているので将来的には何も言わなくてもいい仕事をしてくれそうだった。
 本人はあまり結果を出せていない事を気にしてはいたが、あの安定感は一緒にいると落ち着けるのでヨシナリは当人が思っている以上にマルメルの事を頼りにしていた。

 次にグロウモス。 
 狙撃だけでなく、スコーピオン・アンタレスの拡張パーツを用いる事で高出力のレーザー攻撃を使って火力支援まで行えるようになった。 元々は隠密に偏った半端なビルドだったのだが、開き直って攻撃に振り切ってからの彼女は後衛としての完成度を大きく高めている。

 特に戦況を見て、どこに撃ち込めば相手が嫌がるのかを見極める目は素晴らしい。
 ヨシナリ自身もそれに何度も助けられてきた事もあって、それを再確認できたのは大きな収穫だ。
 加えて立ち回りの上手さも目を引く。 その証拠にランク戦では絶好調のようだ。

 ホーコート。
 ここ最近、リアルの事情でログインできなかったらしく、目立った技量の向上は見られなかったが、目立っていないだけで成長自体はしている。 
 ただ、例のチートを中心に戦い方を組み立てているのはどこかで矯正の必要はあると思うが。

 視線の先では右旋回からのアタックでエネミーを撃墜していた。
 
 ふわわ、シニフィエは現在、待機中なので動きを見れるのはこれからとなるが、先日手合わせしたのである程度は掴めている。 
 シニフィエはエネルギーウイングによる急加速を利用しての接近戦に落ち着いたようだ。 
 飛び道具相手に泣かされた事が多い彼女だったが、短所を消すよりは長所を伸ばす方向に舵を切ったという事だろう。 

 賢い娘なので余計な口を出さなくても好きにやらせれば勝手に強くなっていくという安心感もあった。
 
 ――たまにパーツ買ってくれと強請ってくるのは控えて欲しいが。

 ベリアルはここ最近、一緒に訓練する事が多いので何の問題もない。
 それよりも気になるのはユウヤだ。 アルフレッドは味方への情報支援で走り回っている。
 ラーガストに随分と痛めつけられたと聞いたが、それによりどんな変化を遂げたのか。
 
 現状は動いていないが、ウェーブが切り替わればその活躍は嫌でも目にする事になるだろう。
 元々、高いレベルで完成していた事もあってあまり心配はしていなかった。
 ユニオンメンバーの戦いを見れただけでも充分な収穫だが、今回は他のメンバーの戦いを見れるのだ。

 次のサーバー対抗戦に備えて少しでも経験を積み、新しい何かを手に入れたい。
 ヨシナリはそんな事を考えながらエネミーを撃墜しつつ、視線を他へと向ける。
 目に入ったのは槍のような流線型のフォルムが特徴的な機体――ツガルだ。

 もう少ししたら目標の金額が溜まるとの事で最初のアップグレードを目指しているようだ。
 現状はエネルギー式の機銃のみという武装面ではやや貧弱な印象を受けたが、手数を増やす事でそれを補っている。 

 恐らくは次のアップグレードで機動力を活かした体当たりやブレードを用いた斬撃、要は近接攻撃を可能にする武装を積む事になるだろう。
 特定機能に特化している以上、長所を伸ばす事を追求するのは当然だ。

 それに扱いに慣れて来たのか動きのキレが増していた。 
 縦横だけでなく、敵機を中心に螺旋を描くような三次元的な動きは独特で面白い。
 至近距離で機銃を連射し、危なげなくエネミーを撃墜していく様子にはちょっとした爽快感すらある。

 彼もまた現状に甘んじておらず、成長を続けている。
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