Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第613話

 ツガルの成長に目が行きがちだが、ヨシナリが地上に目を向けるとフカヤが居た。
 彼はこれまでとは違い、ビルからビルへと飛び移る事で戦場を走り回っている。
 よくよく見るとパーツ構成がかなり変わっていた。

 機体もプラスに変わっており、特に頭部――センサー系はかなりの強化を施されているようだ。
 シックスセンスほどではないが、探知項目が多いグレードの高いセンサーシステムと聞いた。
 彼は元々、姿を隠す事で戦いの陰から暗殺を狙うスタイルだ。 

 ある意味、環境に合わせた受動的な動きだったが、今の彼は能動的に動いている。
 途中、着地したと同時に動きを止めた。 僅かに遅れてグロウモスが急にスコーピオン・アンタレスを別の方向へと向けて発射。 敵の勢いを削ぐ。

 彼は持ち前の隠密性と向上した機体の機動性を活かして偵察や戦況の把握に努めているのだ。
 防衛戦のような火力が求められてる場面であまり活躍できない事を気にしていると聞いたのでそれをどうにかしようと彼なりに自己の成長を目指した結果だろう。

 先行し、味方に危機を伝えるポイントマンとして自己を高める事にしたようだ。
 加えて隠密機動にも磨きがかかっていた。 
 推進装置をほぼ使わず、腕に付いているアンカーで飛び回る姿は簡単に捉える事は出来ないだろう。

 武装もあのクロスボウはそのままだが、抑制器付きの拳銃の使用頻度も上がっている。
 射程内に捉えたエネミーを銃撃して撃墜。 隙あれば戦果を挙げる事も忘れない。
 明らかに戦闘に対するモチベーションが以前とは違う。 

 もしかすると何かきっかけがあったのかもしれないが、意識がかなり高くなっている。
 役割に徹するだけでなく、何をすればいいのかが最良なのかを彼なりに考えている事が伝わった。
 こうして他人の成長を見るとヨシナリは自分も負けてられないといった気持ちになる。

 だからこそ他者を観察し、自分の糧へと変えるのだ。
 次に視界に入ったのはまんまるだ。 
 装備構成自体は変わっていないが、砲撃の精度が大きく向上している。

 いつかのミッションで組んで以来、偶に連絡を取り合うがランク戦で勝率が伸び悩んでいるといるという話は聞いていた。 
 彼女は遠距離よりはマルメルのような中距離戦に対する適性が最も高い。
 それでも後方に付いているのは味方とのバランスを考えての事だ。 

 結果的に地味な印象といった結論になってしまうが、中距離戦で培った間合いの測り方は遠距離での砲撃にしっかりと活かされている。 
 彼女もまた、努力で殻を破ろうとしている一人だ。

 敵の構成が変わった。 狙撃が始まり、防壁上の機体が攻撃を受けている。
 どうやらヤドカリ型が湧き始めたようだ。 

 『では、皆さん出番です!』

 待ちくたびれたと言わんばかりにカカラが突出し、それに続く形で近接特化のメンバーが続く。
 ヤドカリ型は接近さえしてしまえば撃破は容易という事もあって直接乗り込んで叩くのが良いという判断になった。 

 実際、凄まじい光景だった。 
 敵の凄まじい攻撃を掻き分けるようにカカラの機体が敵の群れを飛び越え、その圧倒的な火力が戦場を文字通り切り裂く。 
 
 後方――マップの端付近に辿り着いた所でカカラの後ろにぴったりとついていた者達が動き出す。
 
 『背中、借りるねー』

 ふわわがカカラの背に着地し、液体金属刃を一閃。 
 振り切った一撃は範囲内のエネミーを両断する。 
 それに続く形でアドルファス、ベリアル、ユウヤ、平八郎という凄まじい面子が刈り取りに行く。

 ヨシナリの位置からは見えないが、凄まじい光景が広がっている事だけは確かだろう。
 一見、危険に見える一手ではあるが、敵の行動ルーチンは突撃一辺倒で、その途中でプレイヤーを発見した場合は障害物として攻撃を仕掛けるとの事なので実は一番奥に行くのは見た目よりは危険ではなかった。 

 敵のリポップ位置はヤドカリ以外は作戦エリア外からなので後ろから次々と湧いてくる。
 その為、全方位が敵である事には変わらない。 いくら彼等が強くとも群れに呑まれるのではないか?
 そうならない為に彼は円陣を組んで互いの死角を消す形で戦闘に入り、ヤドカリ型を最優先で狙うように立ち回っている。 

 彼等は円陣を維持したままフィールドの外縁を回る形で移動し、ヤドカリ型の掃討を行う。
 空の敵機はカカラが守り、残りのメンバーが地上に集中できる配置だ。
 それにより、狙撃を減らし、地上、空中と両方での進行を遅らせる事もできる。

 「――ってかなんか早くね?」

 カカラの機体が目印となっているので前衛組がどこにいるのかは分かるのだが、思った以上に動きが速い。 
 
 ――あの面子ならあれぐらいはやるか……。

 ヨシナリは内心で小さくそう呟いて現在進行形で屠られているエネミー達に少しだけ同情した。 


 「はっはぁ! どうした走狗どもよ! 所詮は残響、以前ほどの力はないという事か!?」

 ベリアルはそう叫ぶとエーテルの爪でヤドカリ型を引き裂き、貫き、次々と破壊していく。
 
 「やはり、脆いのぅ」

 その隣で平八郎が槍を振り回し範囲内のエネミーを例外なく両断する。
 ヤドカリ型が彼を狙うがゆらりと躱し、お返しとばかりに異様に伸びる突きで串刺し。
 刺さったままのエネミーを邪魔だと言わんばかりに槍を軽く振って近くの敵へと投げつける。

 少し離れた所ではふわわが太刀と小太刀で目についた敵を片端から切り刻んでいた。
 
 ――う、うーん、これは私は場違いなのではないでしょうか?

 そんな様子を見ていたシニフィエは周囲のレベルの高さに少し引いていた。
 流石に一番危険な仕事を任されるだけあって誰も彼も非常に強い。
 シニフィエは戦闘を行いながらちらりと味方機の様子を見る。

 最初に目に入ったのはベリアルだ。 
 凄まじい瞬間加速と短距離転移を織り交ぜる事で意識しないと視界から直ぐに消えてしまう。
 以前から凄まじい強さではあったが、こうして見ると更に強くなっている事が分かる。
 
 転移直後に無防備になるという弱点を消す為に機動と織り交ぜる事で隙を消しているのだ。
 エーテルによる形状変化の強みを最大限に活かした戦い方も秀逸だった。
 至近距離では爪、二歩から三歩分離れた相手はブレードと使い分けも上手い。

 何よりも厄介なのがあの動体視力だ。 
 自分を狙う敵の挙動をいち早く察知するだけでなく反応だけで躱している場面も見えたからだ。
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