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第614話
シニフィエの見立てではベリアルは姉であるふわわと同様にセンスが先行しているタイプだ。
己の感覚のみで常人にはできない事をやってのける天才。
得意分野では他者の努力を嘲笑うかのような圧倒的なパフォーマンスを発揮するが、ムラが多いというのがこの手の人種に対する彼女の認識だった。
こういうタイプは得意分野では圧倒的な伸びを見せるが、そうでないものに関してはそこまでではない。
少なくともふわわはそうだった。
視線を少し動かすとその姉が剣を振るい、次々と敵を斬り捨てている姿が目に入る。
その戦いぶりは凄まじく、ジェネシスフレームを使っているランカーと比べても遜色ないものだった。
単純な踏み込みではなく、エネルギーウイングと併用する事で人体では不可能な速さで間合いを潰し一刀で狙った敵機を両断する。
元々、姉は自分にしか興味がなく、できない事は自身の強みが補ってくれると信じている節があった。
このゲームを始める前は特に顕著で本人に自覚があったかは不明だが、シニフィエから見ても自信を通り越して傲慢と感じられる場面も散見され、このままでいいのだろうかと見ていて少し不安だったのだ。
だが、このゲームを始めて少ししてから姉から徐々に傲慢さが消え、少しずつだが周囲と向き合う姿勢が変わって来ていた。
シニフィエとしては驚き以外の感想が出ない事態だ。
何故なら姉は他人の話は聞くが、気に入らなければ無視するので父ですら制御は難しいと匙を投げた。
そんな姉が変わった切っ掛けはとあるゲームとそこで出会った一人のプレイヤー。
顔も知らない赤の他人。 好奇心で見に来てみればなるほどと納得してしまった。
義兄という人間は自らを凡庸と思っている節があるが、その精神性はそんな言葉で収まるような物ではない。
負けず嫌い。 簡単に言えばそうだが、それを実践する為にありとあらゆる努力を惜しまない秀才だ。
決して天才ではない。 一つの事ができるようになるまでそれなり以上の時間がかかる。
だが、その強靭な精神は目的の為にあらゆる努力を許容し、天才を越える成果を見せつけて来た。
熱く、眩しい。 見ているだけでこちらも熱くなってしまう何かがあった。
姉もその熱を感じたからこそ、義兄の近くに身を置いているのだろう。
彼女の本能とも呼べる物が義兄の傍に居る事が自身にとってプラスと判断させたのだ。
――お陰で姉は努力をする事を覚えましたよお義兄さん。
強みを伸ばすだけでは届かない。 センスだけでは越えられない。
ライバルを打倒する為に姉はあらゆる努力を惜しみなく行うようになった。
先日の修行に関しても以前の姉ならまずやらなかっただろうと断言できる。
その結果、あの戦いだ。
あれだけ圧倒的な技量差があったにも関わらずもう引っ繰り返してしまった。
強さを追求する為に妥協をしなくなった姉はまだまだ強くなっていくだろう。
――うーん。 付いて行けるかなぁ……。
野太刀を振るい、文字通り戦場を切り裂いたふわわを見てシニフィエは少しだけ不安になった。
――作戦行動、か。
アドルファスはドローンを展開し、敵の掃討に集中する。
ドローンによる攻撃で敵の布陣に穴を開け、それを広げる棟にエネルギーライフルを連射。
カカラは言った。 自分達の個人技だけに頼るのは決して悪い事ではないが、頭打ちになると。
特にこのゲームは最近、集団戦の重要性が上がっている事もあって、大人数での立ち回りは覚えておいて損はない。
一人よりも複数の力を掛け合わせた方が実力以上の力を発揮できる。
1よりは2。 酷く単純な話だが、人間という自我を持つ生き物がそこに絡むとプラスがマイナスに転じる事は多々ある事だ。
1+1=2ではなく1+1=-1になる事も十二分にあり得る。
アドルファスの経験上、精々は1.5程度にしかならないと思っていた。
だからこそ、そんな不安定な力ではなく安定した自分の力のみを求めたのだ。
不確かな1.5よりも確かな1。 ある意味、それは彼にとっての哲学に近い物だったのかもしれない。
事実、個人技を重視する事で彼はこのゲームでは最高峰とも言える地位へと上り詰めた。
だが、先日のユニオン対抗戦で少しその考えが揺らいだのだ。
――『星座盤』
こちらが全員、Aランクにも関わらず残り一機まで追い詰められた。
ステファニーのやらかしこそあったが、それを差し引いても驚くべき結果だ。
逆の立場であったのならアドルファスは自信をもって勝てると言えるだろうか?
あれから何度も考えたが、難しいと判断せざるを得ない。
彼等の強さの秘密は個人技の高さにもあるが、それ以上に高い精度の連携にある。
特にカカラを落とした動きは秀逸だった。 少なくともアドルファスには真似できそうもない。
そしてその後のイベント戦での敗北。 カカラと二人で挑んだあの強敵。
成す術もなく敗北した。 個人技が全く通用しない、ラーガストと同じ領域の怪物。
あんなの勝てる訳はないと諦める事も出来たが、そうもいかない事があった。
何故ならベリアルとヨシナリはアレを倒したらしいのだ。
真偽は定かではないが、ベリアルは戦友の力を借りて手にした勝利だとやや過剰にヨシナリが居たから勝てたと主張していた。
その事実にも驚きだが、それ以上にあのベリアルが他人に対してここまで言う事が更に驚きだ。
ユウヤもそうだが、あの二人は誰とも慣れ合わない自分達と同類だと思っていた。
それがユニオンに正式所属し、己の矜持を曲げて個ではなく群れの一部となる。
アドルファスは横目で二人の戦いを観察。
ベリアルは持ち前のスピードと短距離転移とを掛け合わせた以前よりも更に進化した挙動を見せるが、それ以上に大きな変化があった。 攻撃方向を偏らせる事で敵の群れを僅かに誘導している。
エネミーのルーチンは基地への突撃が最優先でプレイヤーへの攻撃はある程度接近した相手へ仕掛ける程度だ。
これは何度もクリアした『思金神』からの情報なので信憑性は高く、事実その通りだった
そうでもなければ敵の只中で生きていられず、早々に呑み込まれてい終わっていたはずだ。
カカラを上空に置き、その真下に近接組が円陣を組み、それを動かす事で移動しながらヤドカリ型の排除を行う。
基本的にヤドカリ型はフィールドの外縁から動かないのでそこをなぞるように移動すれば効率よく排除できるという訳だ。
己の感覚のみで常人にはできない事をやってのける天才。
得意分野では他者の努力を嘲笑うかのような圧倒的なパフォーマンスを発揮するが、ムラが多いというのがこの手の人種に対する彼女の認識だった。
こういうタイプは得意分野では圧倒的な伸びを見せるが、そうでないものに関してはそこまでではない。
少なくともふわわはそうだった。
視線を少し動かすとその姉が剣を振るい、次々と敵を斬り捨てている姿が目に入る。
その戦いぶりは凄まじく、ジェネシスフレームを使っているランカーと比べても遜色ないものだった。
単純な踏み込みではなく、エネルギーウイングと併用する事で人体では不可能な速さで間合いを潰し一刀で狙った敵機を両断する。
元々、姉は自分にしか興味がなく、できない事は自身の強みが補ってくれると信じている節があった。
このゲームを始める前は特に顕著で本人に自覚があったかは不明だが、シニフィエから見ても自信を通り越して傲慢と感じられる場面も散見され、このままでいいのだろうかと見ていて少し不安だったのだ。
だが、このゲームを始めて少ししてから姉から徐々に傲慢さが消え、少しずつだが周囲と向き合う姿勢が変わって来ていた。
シニフィエとしては驚き以外の感想が出ない事態だ。
何故なら姉は他人の話は聞くが、気に入らなければ無視するので父ですら制御は難しいと匙を投げた。
そんな姉が変わった切っ掛けはとあるゲームとそこで出会った一人のプレイヤー。
顔も知らない赤の他人。 好奇心で見に来てみればなるほどと納得してしまった。
義兄という人間は自らを凡庸と思っている節があるが、その精神性はそんな言葉で収まるような物ではない。
負けず嫌い。 簡単に言えばそうだが、それを実践する為にありとあらゆる努力を惜しまない秀才だ。
決して天才ではない。 一つの事ができるようになるまでそれなり以上の時間がかかる。
だが、その強靭な精神は目的の為にあらゆる努力を許容し、天才を越える成果を見せつけて来た。
熱く、眩しい。 見ているだけでこちらも熱くなってしまう何かがあった。
姉もその熱を感じたからこそ、義兄の近くに身を置いているのだろう。
彼女の本能とも呼べる物が義兄の傍に居る事が自身にとってプラスと判断させたのだ。
――お陰で姉は努力をする事を覚えましたよお義兄さん。
強みを伸ばすだけでは届かない。 センスだけでは越えられない。
ライバルを打倒する為に姉はあらゆる努力を惜しみなく行うようになった。
先日の修行に関しても以前の姉ならまずやらなかっただろうと断言できる。
その結果、あの戦いだ。
あれだけ圧倒的な技量差があったにも関わらずもう引っ繰り返してしまった。
強さを追求する為に妥協をしなくなった姉はまだまだ強くなっていくだろう。
――うーん。 付いて行けるかなぁ……。
野太刀を振るい、文字通り戦場を切り裂いたふわわを見てシニフィエは少しだけ不安になった。
――作戦行動、か。
アドルファスはドローンを展開し、敵の掃討に集中する。
ドローンによる攻撃で敵の布陣に穴を開け、それを広げる棟にエネルギーライフルを連射。
カカラは言った。 自分達の個人技だけに頼るのは決して悪い事ではないが、頭打ちになると。
特にこのゲームは最近、集団戦の重要性が上がっている事もあって、大人数での立ち回りは覚えておいて損はない。
一人よりも複数の力を掛け合わせた方が実力以上の力を発揮できる。
1よりは2。 酷く単純な話だが、人間という自我を持つ生き物がそこに絡むとプラスがマイナスに転じる事は多々ある事だ。
1+1=2ではなく1+1=-1になる事も十二分にあり得る。
アドルファスの経験上、精々は1.5程度にしかならないと思っていた。
だからこそ、そんな不安定な力ではなく安定した自分の力のみを求めたのだ。
不確かな1.5よりも確かな1。 ある意味、それは彼にとっての哲学に近い物だったのかもしれない。
事実、個人技を重視する事で彼はこのゲームでは最高峰とも言える地位へと上り詰めた。
だが、先日のユニオン対抗戦で少しその考えが揺らいだのだ。
――『星座盤』
こちらが全員、Aランクにも関わらず残り一機まで追い詰められた。
ステファニーのやらかしこそあったが、それを差し引いても驚くべき結果だ。
逆の立場であったのならアドルファスは自信をもって勝てると言えるだろうか?
あれから何度も考えたが、難しいと判断せざるを得ない。
彼等の強さの秘密は個人技の高さにもあるが、それ以上に高い精度の連携にある。
特にカカラを落とした動きは秀逸だった。 少なくともアドルファスには真似できそうもない。
そしてその後のイベント戦での敗北。 カカラと二人で挑んだあの強敵。
成す術もなく敗北した。 個人技が全く通用しない、ラーガストと同じ領域の怪物。
あんなの勝てる訳はないと諦める事も出来たが、そうもいかない事があった。
何故ならベリアルとヨシナリはアレを倒したらしいのだ。
真偽は定かではないが、ベリアルは戦友の力を借りて手にした勝利だとやや過剰にヨシナリが居たから勝てたと主張していた。
その事実にも驚きだが、それ以上にあのベリアルが他人に対してここまで言う事が更に驚きだ。
ユウヤもそうだが、あの二人は誰とも慣れ合わない自分達と同類だと思っていた。
それがユニオンに正式所属し、己の矜持を曲げて個ではなく群れの一部となる。
アドルファスは横目で二人の戦いを観察。
ベリアルは持ち前のスピードと短距離転移とを掛け合わせた以前よりも更に進化した挙動を見せるが、それ以上に大きな変化があった。 攻撃方向を偏らせる事で敵の群れを僅かに誘導している。
エネミーのルーチンは基地への突撃が最優先でプレイヤーへの攻撃はある程度接近した相手へ仕掛ける程度だ。
これは何度もクリアした『思金神』からの情報なので信憑性は高く、事実その通りだった
そうでもなければ敵の只中で生きていられず、早々に呑み込まれてい終わっていたはずだ。
カカラを上空に置き、その真下に近接組が円陣を組み、それを動かす事で移動しながらヤドカリ型の排除を行う。
基本的にヤドカリ型はフィールドの外縁から動かないのでそこをなぞるように移動すれば効率よく排除できるという訳だ。
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