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第618話
最初から最後まで何が出て来るのかが把握でき、対策をしっかりと練って攻略する。
ゲームとしては王道と言っていい向き合い方だ。
ヨシナリもそう思っており、楽に勝てるならそれに越した事はない。
参加メンバーの大半はそう思っているのかもしれない。
だが、これまでのイベント戦で運営の情け容赦ない地獄を潜り抜けて来たヨシナリはこうも思ってしまったのだ。
――なんか物足りないな、と。
理由は分かっていた。 全てが既知で未知がないからだ。
仲間との密な連携が求められる高難度ミッションで人数もギリギリ、難しくはあった。
だが、絶望が足りなかった。 苦難が足りなかった。 強敵が足りなかった。
あの想定を上回る絶望が、少しの失敗で全てが終わりかねない苦難が、勝ち筋が見当たらない強敵が。
全てが既知のこのミッションには存在しないのだ。 分かっている。
これはイベント戦ではなく汎用ミッションだ。 そこまでを求めるのは酷な話というもの。
だからこそヨシナリは仲間達との連携を高める場としてこの戦いを認識していたのだ。
格段に動きの良くなったユウヤ、動きのキレが更に増したベリアル。
安定感の増したマルメル、恐ろしくも強くなったふわわ。
完成に近づいたグロウモス、機体を乗り換えて大きく進化しようとしているシニフィエ。
そして徐々にチートに使われているだけでなく、自分なりの何かを掴もうとしているホーコート。
ツガルやポンポン達、他のユニオンから来てくれた友人達の成長から受ける刺激。
得るものは充分にある。 ならばそこで満足しておくべきではないか?
頭では分かっていたのだが、心の奥底にある渇望がもっともっとと空腹を訴えるのだ。
「……我ながらこのゲームに脳を焼かれ過ぎだろ」
苦笑して小さく呟く。 さて、そろそろボスラッシュに備えて――
――તમે ઠીક છો。 તે વધુ રસપ્રદ બને છે?
瞬間、ゾクリとしたものが背筋を抜け、反射的に振り返る。
声だったのだろうか? 誰か――性別や年齢すら分からないが、何かが聞こえたような気がした。
――規定人数以下での消化を確認。
イベントボスの切り替え作業を開始――ロード中――完了。
「――は?」
ヨシナリは思わず呟いた。 何故なら現れたボスが違ったからだ。
空を泳ぐ巨大な威容。 忘れる訳がない。 侵攻戦で遭遇したメガロドン型だ。
『な!? バカな! こんな事は一度もなかったぞ!』
タヂカラオが驚きの声を上げていた。
彼の驚きが伝播したかのようにあちこちから戸惑いの声が上がるが「落ち着け!」とポンポンが一喝。
『確かに話は違うがあの連中とも何回か戦ってるんだ。 充分に勝てるゾ!』
「ですね。 戦い方は変える必要はありますが、勝てない相手ではありません!」
ポンポンの言葉に同調するヨシナリだが、アバターの下にある口元は笑っていた。
決して表には出さないが、こう思ってしまったのだ。 面白くなってきたと。
出現するボスが変わった以上、事前に用意した策は使えない。
メガロドン型の出現数は三十体。 カタツムリ型の代わりに出てきたと見ていい。
このエネミーは非常に分かり易く、非常に強力だった。
重装甲と高火力に物を言わせて周辺を焼き払うだけだからだ。
強力なエネルギーフィールドも備わっている事もあって物理、光学兵器と両面で高い防御性能を誇る。
出現位置と動きから真っすぐに基地に突っ込んで来ると見ていい。
つまり全てを並行して処理する必要がある。
――やってやる。
ヨシナリは機体を変形させて加速。 自分の位置から一番近いメガロドン型へと突っ込んで行く。
「ツガルさん、ポンポンさん、タヂカラオさん。 足止め、行けますか?」
質問としては簡素なものだったが、抜けている部分も正確に理解した三人はほぼ同時に表情を歪めた。
『お、お前、無茶苦茶言いやがる』
『自信がないなら下がってていいゾ? あたしは燃えて来た』
『はは、これはタカミムスビさんに報告が要るなぁ。 やるだけはやるけどあまり期待しないでくれよ』
三人は即座に散って各々、メガロドン型へと向かう。
「予定は変わりましたがやる事自体は変わりません。 カカラさん!」
『応! 面白くなってきたな!』
カカラ達も即座に動き出し、手近なメガロドン型へ向かう。
「防壁担当は敵の射程に入ったら独自の判断で持ち場を放棄。 あれは防げません!」
『おいおいおいおい、話が違うじゃねーか!』
ヴルトムが悲鳴を上げ、他のメンバーもメガロドン型に火力を集中し始めた。
指示を出している間にメガロドン型はもう目の前だ。
――久しぶりだな! 今の俺が何処まで通用するのかを試してやる。
最後に遭遇したのはフランスサーバーとの戦闘で第三軍として現れた時だろうか?
何だか随分と久しぶりに感じてしまう。
射程に入ったと同時に内蔵機銃を連射しながらアシンメトリーを発射。
メガロドン型は応じるように各所からホーミングミサイルを発射しながらレーザーやガトリング砲をばら撒く。
実弾、光学兵器と様々な弾種の攻撃がヨシナリに襲い掛かるが、こいつの攻撃に関しては一度見ている事もあって対処も頭に入っている。
実弾、レーザー、エネルギー弾は基本的に真っすぐに飛んでくる。
その為、メガロドン型の側面に回り込む形で旋回すればどうにでもなるが、基地を背負った状態でそれをやると被害が拡大するので仕掛けるのは斜め前から。
そうする事でメガロドン型はヨシナリを狙う為に回頭せざるを得ない。
これには三つの利点があった。 まずは基地を射線から外せる事。
もう一つは回頭という余計なアクションをさせる事で発射までにタイムラグを発生させる事ができる。
つまり躱す為の猶予が手に入るのだ。 そして三つ目。
他のエネミーには通用しなかったが果たしてこいつはどうだろうか?
繰り返しになるが、メガロドン型の出現位置はカタツムリ型と同じで基地を包囲する形だ。
そして全機が基地へと向かって来る。 そんな状態で回頭して攻撃を仕掛けるとどうなるのか?
答えは非常に簡単で、射線の先には別のメガロドン型。 極太のレーザーがエネルギーフィールドに阻まれるが完全に殺しきれずに貫通。 小さくない損傷を与えていた。
――狙い通りだ。
蟻型のような細かい挙動ができるエネミーには通用しないがメガロドン型のような鈍重な機体に誤射を避けるという繊細な真似ができるのかが怪しいと思っていたのだが正解だったようだ。
ヨシナリは内心で拳を握り――
「勝てるぞ」
――小さくそう呟いた。
ゲームとしては王道と言っていい向き合い方だ。
ヨシナリもそう思っており、楽に勝てるならそれに越した事はない。
参加メンバーの大半はそう思っているのかもしれない。
だが、これまでのイベント戦で運営の情け容赦ない地獄を潜り抜けて来たヨシナリはこうも思ってしまったのだ。
――なんか物足りないな、と。
理由は分かっていた。 全てが既知で未知がないからだ。
仲間との密な連携が求められる高難度ミッションで人数もギリギリ、難しくはあった。
だが、絶望が足りなかった。 苦難が足りなかった。 強敵が足りなかった。
あの想定を上回る絶望が、少しの失敗で全てが終わりかねない苦難が、勝ち筋が見当たらない強敵が。
全てが既知のこのミッションには存在しないのだ。 分かっている。
これはイベント戦ではなく汎用ミッションだ。 そこまでを求めるのは酷な話というもの。
だからこそヨシナリは仲間達との連携を高める場としてこの戦いを認識していたのだ。
格段に動きの良くなったユウヤ、動きのキレが更に増したベリアル。
安定感の増したマルメル、恐ろしくも強くなったふわわ。
完成に近づいたグロウモス、機体を乗り換えて大きく進化しようとしているシニフィエ。
そして徐々にチートに使われているだけでなく、自分なりの何かを掴もうとしているホーコート。
ツガルやポンポン達、他のユニオンから来てくれた友人達の成長から受ける刺激。
得るものは充分にある。 ならばそこで満足しておくべきではないか?
頭では分かっていたのだが、心の奥底にある渇望がもっともっとと空腹を訴えるのだ。
「……我ながらこのゲームに脳を焼かれ過ぎだろ」
苦笑して小さく呟く。 さて、そろそろボスラッシュに備えて――
――તમે ઠીક છો。 તે વધુ રસપ્રદ બને છે?
瞬間、ゾクリとしたものが背筋を抜け、反射的に振り返る。
声だったのだろうか? 誰か――性別や年齢すら分からないが、何かが聞こえたような気がした。
――規定人数以下での消化を確認。
イベントボスの切り替え作業を開始――ロード中――完了。
「――は?」
ヨシナリは思わず呟いた。 何故なら現れたボスが違ったからだ。
空を泳ぐ巨大な威容。 忘れる訳がない。 侵攻戦で遭遇したメガロドン型だ。
『な!? バカな! こんな事は一度もなかったぞ!』
タヂカラオが驚きの声を上げていた。
彼の驚きが伝播したかのようにあちこちから戸惑いの声が上がるが「落ち着け!」とポンポンが一喝。
『確かに話は違うがあの連中とも何回か戦ってるんだ。 充分に勝てるゾ!』
「ですね。 戦い方は変える必要はありますが、勝てない相手ではありません!」
ポンポンの言葉に同調するヨシナリだが、アバターの下にある口元は笑っていた。
決して表には出さないが、こう思ってしまったのだ。 面白くなってきたと。
出現するボスが変わった以上、事前に用意した策は使えない。
メガロドン型の出現数は三十体。 カタツムリ型の代わりに出てきたと見ていい。
このエネミーは非常に分かり易く、非常に強力だった。
重装甲と高火力に物を言わせて周辺を焼き払うだけだからだ。
強力なエネルギーフィールドも備わっている事もあって物理、光学兵器と両面で高い防御性能を誇る。
出現位置と動きから真っすぐに基地に突っ込んで来ると見ていい。
つまり全てを並行して処理する必要がある。
――やってやる。
ヨシナリは機体を変形させて加速。 自分の位置から一番近いメガロドン型へと突っ込んで行く。
「ツガルさん、ポンポンさん、タヂカラオさん。 足止め、行けますか?」
質問としては簡素なものだったが、抜けている部分も正確に理解した三人はほぼ同時に表情を歪めた。
『お、お前、無茶苦茶言いやがる』
『自信がないなら下がってていいゾ? あたしは燃えて来た』
『はは、これはタカミムスビさんに報告が要るなぁ。 やるだけはやるけどあまり期待しないでくれよ』
三人は即座に散って各々、メガロドン型へと向かう。
「予定は変わりましたがやる事自体は変わりません。 カカラさん!」
『応! 面白くなってきたな!』
カカラ達も即座に動き出し、手近なメガロドン型へ向かう。
「防壁担当は敵の射程に入ったら独自の判断で持ち場を放棄。 あれは防げません!」
『おいおいおいおい、話が違うじゃねーか!』
ヴルトムが悲鳴を上げ、他のメンバーもメガロドン型に火力を集中し始めた。
指示を出している間にメガロドン型はもう目の前だ。
――久しぶりだな! 今の俺が何処まで通用するのかを試してやる。
最後に遭遇したのはフランスサーバーとの戦闘で第三軍として現れた時だろうか?
何だか随分と久しぶりに感じてしまう。
射程に入ったと同時に内蔵機銃を連射しながらアシンメトリーを発射。
メガロドン型は応じるように各所からホーミングミサイルを発射しながらレーザーやガトリング砲をばら撒く。
実弾、光学兵器と様々な弾種の攻撃がヨシナリに襲い掛かるが、こいつの攻撃に関しては一度見ている事もあって対処も頭に入っている。
実弾、レーザー、エネルギー弾は基本的に真っすぐに飛んでくる。
その為、メガロドン型の側面に回り込む形で旋回すればどうにでもなるが、基地を背負った状態でそれをやると被害が拡大するので仕掛けるのは斜め前から。
そうする事でメガロドン型はヨシナリを狙う為に回頭せざるを得ない。
これには三つの利点があった。 まずは基地を射線から外せる事。
もう一つは回頭という余計なアクションをさせる事で発射までにタイムラグを発生させる事ができる。
つまり躱す為の猶予が手に入るのだ。 そして三つ目。
他のエネミーには通用しなかったが果たしてこいつはどうだろうか?
繰り返しになるが、メガロドン型の出現位置はカタツムリ型と同じで基地を包囲する形だ。
そして全機が基地へと向かって来る。 そんな状態で回頭して攻撃を仕掛けるとどうなるのか?
答えは非常に簡単で、射線の先には別のメガロドン型。 極太のレーザーがエネルギーフィールドに阻まれるが完全に殺しきれずに貫通。 小さくない損傷を与えていた。
――狙い通りだ。
蟻型のような細かい挙動ができるエネミーには通用しないがメガロドン型のような鈍重な機体に誤射を避けるという繊細な真似ができるのかが怪しいと思っていたのだが正解だったようだ。
ヨシナリは内心で拳を握り――
「勝てるぞ」
――小さくそう呟いた。
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