Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
622 / 865

第622話

 「――とまぁ、全員の配置に関してはこんな感じなんだけど、大丈夫そうですか?」

 一通りの説明を済ませたヨシナリが全員をぐるりと見回すと特に異論などはないようだ。
 場所は変わって基地から少し離れた何もない場所。 
 ヴルトム達『大渦』は基地まで下がって防壁の上に居るが、残りはここで迎え撃つ。

 ヨシナリ達の準備が終わったと判断したのか空から堂々と一機のトルーパーが現れた。
 イソギンチャクではなかったが、フロート型の下半身にバイザー型の頭部、武装を兼ねた肘から下が浮遊している。
  
 「は、本当に出やがった」

 ツガルがやや引き攣った声を漏らす。 彼の本音としては来てほしくなかったといった所だろう。
 僅かな時間、互いに睨み合う形になったが、戦闘開始は即座だ。
 
 「全機散開!」

 ヨシナリの鋭い叫びに全員が一斉に動き出した。 

 「最初は俺だ! あん時の借りを返してやるぜ!」

 一気に加速したツガルが得意の機動で加速しながら旋回。 機銃を連射しながら距離を詰める。
 敵機は何もない場所からドローンを精製。 花のようにも見えるデザインのそれはシールドを展開しツガルの銃撃を受け止める。 

 「なら、これでどうだ!」

 ツガルは振り切ってやると加速するがドローンは難なくついてくる。 
 影のようにぴったりと張り付き、彼を完全に封じ込めていた。
 無数のミサイルやプラズマキャノンが敵機に殺到。 カカラとまんまるだ。

 敵機は更に二種類のドローンを精製。 先端の束ねられたガトリング砲とやや大型な砲のような物だ。
 恐らくは光学兵器とヨシナリは判断した。 ガトリング砲が即座に弾丸を吐き出しミサイルを迎撃。
 もう一つは想像に反して実体弾――カプセルのような物を発射する。

 ――何だあれは?

 カプセルはプラズマキャノンに当たると機能を解放。 プラズマからエネルギーが消失する。
 
 「プラズマキャノンからエネルギーを奪った? いや、霧散させて無効化した?」

 だからどうしたと言わんばかりに迎撃されたミサイルの爆発に紛れて接近した平八郎が正面から驟雨のような突きのラッシュ。 
 敵機はドローンを使わずにフロートのスラスターを細かく噴かす事で機体を左右に振って回避。 
 
 「ぬぅ、ならばこれでどうだ!」

 平八郎のラッシュが回転を増し、敵機が溜まらずに後退した所で薙ぎに切り替える。
 袈裟の両断を狙った一撃は紙一重で躱された。 僅かに後退しての回避。
 軌道を完全に見切っている。 悔し気に唸る平八郎の左右から彼を追い抜くようにアドルファスのドローンが敵機に殺到するが、応じるように別のドローンを精製。

 ――何だあれは?

 筒のような代物だったが、正体が判明したのは次の瞬間だ。
 縦に開いたと同時に電磁パルスを撒き散らす。 効果範囲内に入ったアドルファスのドローンは全て機能停止。 殺虫剤を喰らった虫のように力なく落下する。

 僅かに遅れて二か所から高出力のレーザーが飛んでくる。 
 アリスとグロウモスの狙撃だが、敵機は鏡のようなドローンを呼び出すと即座に射線に配置。
 命中と同時にレーザーは大きく屈折してあらぬ方向へ。

 ――これも防ぐのかよ!

 完璧な連携ではないが防御を飽和させるべく畳みかけているのだが、悉く防がれる。
 だが、こちらの攻撃はまだ終わっていない。 迷彩を解いたフカヤがボルトを射出。
 敵機は一瞥すらせずに機体を僅かに傾けて躱す。 今度は無数の小型ドローンを精製。

 ドローンは敵機の周囲に散って、銃口を真下に向ける。
 
 「おい、まさか――」

 何をしようとしているのかを悟って戦慄する。
 連続した銃声と金属音。 転移によって飛んで来た分割された刃が銃弾によって弾き飛ばされたのだ。
 
 「嘘ぉー!」

 ふわわが驚きの声を上げる。 当然だった。
 ナインヘッド・ドラゴンの転移刃を一つ残らず撃ち落とされたのだ。
 ヨシナリでも似た反応になるだろう。 

 「だったらこれでどうだ!」

 背後の基地から無数の銃弾や砲弾、ミサイルが飛んでくる。
 ヴルトム達による火力支援だ。 大型のドローンが出現し、高出力のレーザーを放って薙ぎ払う。
 細かな銃弾などはシールド型のドローンが間に入って防ぐ。

 それに紛れてニャーコとシニフィエが肉薄。 ニャーコの拳によるラッシュ。
 敵機は機体を左右に振って回避。 ドローンすら使わない。

 「舐めすぎですよ!」

 間に差し込まれたドローンを踏み台にして軌道を変えて間合いに入る。
 横薙ぎの蹴り。 完全に捉えたはずだったが、シニフィエの一撃は機体をすり抜けた。
 ホログラフだ。 いつの間に!?
 
 本体は何処だとヨシナリは目を凝らずと、機体半機分後ろに下がっただけだった。
 目測を狂わされたと悟ったシニフィエは慌てて後退。 敵機の追撃を防ぐためにヨシナリ、マルメル、ポンポンが銃撃して気を引く。 

 ――は、とんでもねぇな。

 笑うしかなかった。 攻撃、防御、機動、反応とどれを取っても一級品だ。
 加えてあれだけのドローンを適切に運用できる能力も凄まじい。
 ラーガストと互角に渡り合えるのも頷ける。 

 しかもこれだけのメンバー相手に観察する余裕すらあるようだ。
 明らかに防御に徹していたのは余裕がないのではなく、余裕の表れに見える。
 だが、観察していたのはヨシナリも同じだ。 一応はある程度のスペックは視えた。

 まず、ドローンの種類は多岐に渡り、恐らくは全容を把握する事は不可能に近い。
 要は個別への対処は無理と割り切るしかない。 
 ただ、エネルギー流動を視ればどこに現れるのかは分かる。
 
 次にあの機体について、記憶にある物とそう変わらない。 
 機動は下半身のフロートに依存しており、スラスターと重力制御で機動性は非常に高い。
 ジェネレーターもかなりの高出力ではあるが、あれだけの数のドローンを賄えている理由は別にあった。
 
 あの時はシックスセンスがなかったので分からなかったが、一つ一つにジェネレーターが内蔵されているのだ。 
 つまり、完全に動力を自前で賄っている。 

 ――そりゃいくらでも出せる訳だ。 
 
 種類、数だけでも反則じみているのにスタミナも減らないのはイカサマじゃないかと思ってしまう。
 そして一番厄介なのは反応速度だ。 センサーシステムはシックスセンスと同等の観測範囲の広い代物を使っているのは分かっていた。

 それを差し引いても攻撃に対しての反応が良すぎる。 
 挙動の柔軟性からチートの可能性は低い。 つまり純粋な技量でこれなのだ。
 
 ――これ、勝てるのか?
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。