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第43話
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――<第三小鍵 64/72>
――<第三小鍵 68/72>
同時に両者の全身に炎と闇が溢れだす。
慈照は火球を生み出して発射、少年は小さく後ろに跳ぶ。
回避する為の動きではなかったが、火球は命中する前に不可視の壁に阻まれて爆発する。
何をしたと訝しむが、それよりも早く少年の反撃が来た。
闇が形を成した剣や鎌のようなものが無数に出現し、お返しとばかりに飛来。
慈照は火球で迎撃。 空中で爆発が起こったが、全てを破壊するには至らずに一部が突き抜ける。
走って回避しながら冷静に敵の能力を見極めるべく目を凝らす。
「ふっ、俺は闇。 全てを覆い、呑み込む闇。 闇ゆえに捉える事は叶わない」
少年の呟きに慈照は僅かに目を細めた。
言葉通りに受け取るなら闇や影に同化して攻撃に使用しているのだろう。
だからと言って完全に同化しているのなら攻撃は透過されるはずだ。
何せ、影や闇には実体はないのだから。 それをわざわざ防いだところを見ると、闇に紛れて姿を消す程度が限界と見ていい。 千里眼はまだそのままなので、闇の奥はある程度だが見通せるのだが少年の姿は見えない。 しかし、それは彼を見失った事を意味しなかった。
慈照の眼は闇の奥を見通せる。 少年の姿は見えない。
それが意味する事は少年の居る部分だけ見えなくなっていると言う事だ。
つまり見えないだけで捉える事は出来ている。 慈照は淡々と火球を撃ち込み、反応を窺う。
少年は器用に動き回って火球を躱し、時には影を用いて防ぐ。
「ふ、我が姿を捉えるとは中々やるな」
それを見て慈照はこの少年がどうやってここまで勝ち上がってきたのかを察する。
千里眼があるからこそ少年の動きを捉えられており、ない場合は捕捉する事は非常に困難だ。
少年はあの調子で痛々しい口上の後に闇に紛れて奇襲を仕掛け、何人もの人間を殺害したのだろう。
影、または闇と同化する能力はこの環境下では圧倒的に有利に進められる。
放置すれば大半の者が碌に反撃も出来ずに殺される事となる。 慈照は改めて認識した。
目の前の少年は言っていた。 これは自身が神に至る為の儀式だと。
神や儀式に関しては妄言と捉えているのでどうでもいいが、その為に他を皆殺しにするのは無視できない。 つまりこいつは出会う人間を手当たり次第に殺す狂った殺人者だ。
最低限の分別が付いていればまだ救いはあったが、よく分からない単語をこねくり回して現実から目を背けている点からも救いようがない事は明らかだった。
――こいつはここで必ず仕留める。
社会に適応できない屑は悉く、生きている価値がない。
慈照は自らの価値観に従って自らの魔導書を握る手に力を籠め、別の力を開放する。
第二位階を用いて他の悪魔を召喚。 悪魔たちは召喚者である慈照に従って少年へと襲いかかる。
「他の悪魔を使うか! だが、俺とて神へ至る為にこんな所で斃れる訳にはいかない! ――出でよ戦いの果てに我が一部となった者達! 王の声に応え、目覚めるがいい!」
少年も同様に第二位階を用いて悪魔を召喚。 だが、慈照が七体に対して少年は四体。
数の差を覆す事は難しく、少年の召喚した悪魔たちは劣勢を強いられる。
ライオンのような悪魔が飛びかかり、蛸や烏賊のような水棲生物の特徴を持った悪魔が水を操って防御する。 複数の悪魔による殺し合いの隙間を縫うように二人は攻撃の応酬を行う。
状況は慈照にとって有利で少年にとっては不利だった。
召喚できる悪魔の数が少ない事もあるが、何よりも能力の相性が悪い。
彼の悪魔である『68/72』は第三位階まででは闇を操る所までで、彼自身を闇へと変える事はできない。 第三位階以下の真髄は敵を闇に紛れて奇襲する隠密性の高さだ。
声を聞かれたとしても姿を隠し位置を悟らせない隠形は来ると分かっていても防ぐ事は難しい。
だが、慈照が手に入れた『45/72』はその隠形を看破する。
その為、最大の攻撃手段である奇襲が使えないのだ。 闇を凝縮して武具とする事も可能だが、所詮は不定形のものに形を与えただけの代物なので攻撃手段としてはあまり上等とは言えない。
対する慈照の火球と言う分かり易い攻撃手段は命中すれば人間を容易く消し炭に変える破壊力を内包しており、身に纏う炎は少々の飛び道具は焼き尽くす防具としても機能している。
少年の攻撃は防御を突破できたとしてもいい位置に当てなければ致命傷を与えられないが、慈照は体のどこかに当たれば確実にその部位を使用不能にできるというかなり不利な状況となっているのだ。
「くっ! 流石は炎の悪魔、悪魔でありながら浄化の炎を使うとは……。 だが、俺の闇はその程度では消し去れん。 何故なら光がある所には必ず闇があるからだ。 闇ある限り、この俺は――疑神プセウドテイは不滅だ!」
「だったらどうにかしてみたらどうだ? それっぽい単語を弄んだところで、お前の不利は変わらない。 設定の垂れ流しと押し付けはあの世でやるんだな」
慈照はそろそろ少年の行動パターン――回避の癖を掴みつつあったのでそろそろ当てられそうだと思っていた。 少年も詰められている事には気付いていたので、何らかの打開策を講じないと不味いと考えている。 そしてその方法にも心当たりがあった。
「――いいだろう。 貴様に俺の本気を見せてやろう。 我が掌中に存在する闇の力、その真髄をな。 不正の器、無価値を象る闇の王よ、わが求めに応じその力を示せ!」
――<第四小鍵 68/72>
瞬間、闇が、闇そのものが蠢くような不気味な気配を慈照は感じ取った。
――<第四小鍵 64/72>
それは理屈ではなく、本能に近い何かだった。
慈照はそれに従って少年と同様に第四位階を開放。 その姿が激しく燃え上がり豹のような巨大な姿に変じる。 その体は炎に包まれており、まるで炎そのものが形を取ったかのような姿だった。
同時に闇の刃がその全身を貫いた。
「ぐ、おぉ――」
激痛に慈照は苦痛の呻き声を上げる。
「ふ、ふは、ふはははははは。 素晴らしい、素晴らしいぞこの力は! やはり運命は俺に神になれと告げている。 このまま闇の前に屈するがいい!」
少年の狂気を孕んだ声がこの空間に響き渡る。
慈照は位階を上げた事により、火力と規模を増した火球を放つが命中しない。
いや、正確には命中はしたのだが、文字通り闇に呑み込まれて消えたのだ。
――<第三小鍵 68/72>
同時に両者の全身に炎と闇が溢れだす。
慈照は火球を生み出して発射、少年は小さく後ろに跳ぶ。
回避する為の動きではなかったが、火球は命中する前に不可視の壁に阻まれて爆発する。
何をしたと訝しむが、それよりも早く少年の反撃が来た。
闇が形を成した剣や鎌のようなものが無数に出現し、お返しとばかりに飛来。
慈照は火球で迎撃。 空中で爆発が起こったが、全てを破壊するには至らずに一部が突き抜ける。
走って回避しながら冷静に敵の能力を見極めるべく目を凝らす。
「ふっ、俺は闇。 全てを覆い、呑み込む闇。 闇ゆえに捉える事は叶わない」
少年の呟きに慈照は僅かに目を細めた。
言葉通りに受け取るなら闇や影に同化して攻撃に使用しているのだろう。
だからと言って完全に同化しているのなら攻撃は透過されるはずだ。
何せ、影や闇には実体はないのだから。 それをわざわざ防いだところを見ると、闇に紛れて姿を消す程度が限界と見ていい。 千里眼はまだそのままなので、闇の奥はある程度だが見通せるのだが少年の姿は見えない。 しかし、それは彼を見失った事を意味しなかった。
慈照の眼は闇の奥を見通せる。 少年の姿は見えない。
それが意味する事は少年の居る部分だけ見えなくなっていると言う事だ。
つまり見えないだけで捉える事は出来ている。 慈照は淡々と火球を撃ち込み、反応を窺う。
少年は器用に動き回って火球を躱し、時には影を用いて防ぐ。
「ふ、我が姿を捉えるとは中々やるな」
それを見て慈照はこの少年がどうやってここまで勝ち上がってきたのかを察する。
千里眼があるからこそ少年の動きを捉えられており、ない場合は捕捉する事は非常に困難だ。
少年はあの調子で痛々しい口上の後に闇に紛れて奇襲を仕掛け、何人もの人間を殺害したのだろう。
影、または闇と同化する能力はこの環境下では圧倒的に有利に進められる。
放置すれば大半の者が碌に反撃も出来ずに殺される事となる。 慈照は改めて認識した。
目の前の少年は言っていた。 これは自身が神に至る為の儀式だと。
神や儀式に関しては妄言と捉えているのでどうでもいいが、その為に他を皆殺しにするのは無視できない。 つまりこいつは出会う人間を手当たり次第に殺す狂った殺人者だ。
最低限の分別が付いていればまだ救いはあったが、よく分からない単語をこねくり回して現実から目を背けている点からも救いようがない事は明らかだった。
――こいつはここで必ず仕留める。
社会に適応できない屑は悉く、生きている価値がない。
慈照は自らの価値観に従って自らの魔導書を握る手に力を籠め、別の力を開放する。
第二位階を用いて他の悪魔を召喚。 悪魔たちは召喚者である慈照に従って少年へと襲いかかる。
「他の悪魔を使うか! だが、俺とて神へ至る為にこんな所で斃れる訳にはいかない! ――出でよ戦いの果てに我が一部となった者達! 王の声に応え、目覚めるがいい!」
少年も同様に第二位階を用いて悪魔を召喚。 だが、慈照が七体に対して少年は四体。
数の差を覆す事は難しく、少年の召喚した悪魔たちは劣勢を強いられる。
ライオンのような悪魔が飛びかかり、蛸や烏賊のような水棲生物の特徴を持った悪魔が水を操って防御する。 複数の悪魔による殺し合いの隙間を縫うように二人は攻撃の応酬を行う。
状況は慈照にとって有利で少年にとっては不利だった。
召喚できる悪魔の数が少ない事もあるが、何よりも能力の相性が悪い。
彼の悪魔である『68/72』は第三位階まででは闇を操る所までで、彼自身を闇へと変える事はできない。 第三位階以下の真髄は敵を闇に紛れて奇襲する隠密性の高さだ。
声を聞かれたとしても姿を隠し位置を悟らせない隠形は来ると分かっていても防ぐ事は難しい。
だが、慈照が手に入れた『45/72』はその隠形を看破する。
その為、最大の攻撃手段である奇襲が使えないのだ。 闇を凝縮して武具とする事も可能だが、所詮は不定形のものに形を与えただけの代物なので攻撃手段としてはあまり上等とは言えない。
対する慈照の火球と言う分かり易い攻撃手段は命中すれば人間を容易く消し炭に変える破壊力を内包しており、身に纏う炎は少々の飛び道具は焼き尽くす防具としても機能している。
少年の攻撃は防御を突破できたとしてもいい位置に当てなければ致命傷を与えられないが、慈照は体のどこかに当たれば確実にその部位を使用不能にできるというかなり不利な状況となっているのだ。
「くっ! 流石は炎の悪魔、悪魔でありながら浄化の炎を使うとは……。 だが、俺の闇はその程度では消し去れん。 何故なら光がある所には必ず闇があるからだ。 闇ある限り、この俺は――疑神プセウドテイは不滅だ!」
「だったらどうにかしてみたらどうだ? それっぽい単語を弄んだところで、お前の不利は変わらない。 設定の垂れ流しと押し付けはあの世でやるんだな」
慈照はそろそろ少年の行動パターン――回避の癖を掴みつつあったのでそろそろ当てられそうだと思っていた。 少年も詰められている事には気付いていたので、何らかの打開策を講じないと不味いと考えている。 そしてその方法にも心当たりがあった。
「――いいだろう。 貴様に俺の本気を見せてやろう。 我が掌中に存在する闇の力、その真髄をな。 不正の器、無価値を象る闇の王よ、わが求めに応じその力を示せ!」
――<第四小鍵 68/72>
瞬間、闇が、闇そのものが蠢くような不気味な気配を慈照は感じ取った。
――<第四小鍵 64/72>
それは理屈ではなく、本能に近い何かだった。
慈照はそれに従って少年と同様に第四位階を開放。 その姿が激しく燃え上がり豹のような巨大な姿に変じる。 その体は炎に包まれており、まるで炎そのものが形を取ったかのような姿だった。
同時に闇の刃がその全身を貫いた。
「ぐ、おぉ――」
激痛に慈照は苦痛の呻き声を上げる。
「ふ、ふは、ふはははははは。 素晴らしい、素晴らしいぞこの力は! やはり運命は俺に神になれと告げている。 このまま闇の前に屈するがいい!」
少年の狂気を孕んだ声がこの空間に響き渡る。
慈照は位階を上げた事により、火力と規模を増した火球を放つが命中しない。
いや、正確には命中はしたのだが、文字通り闇に呑み込まれて消えたのだ。
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