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第45話
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少年と慈照。
両者の戦いはこの一件が始まって以来、最高峰とも言える攻防を繰り広げていた。
少年の闇を凝縮した無数の武具が慈照へと殺到するが、その全ては炎によって焼き尽くされる。
お返しとばかりに慈照は火球を放ちながら少年がいるであろう場所へと飛びかかった。
爪が闇を引き裂くが手応えがなく、点では効果がないと判断した慈照は口を大きく開いて炎を吐き出す。
指向性を持った炎が周囲を薙ぎ払うように広がる。
少年は意識の中心――核とも呼べるものを闇の中で移動させて回避。
炎によって発生した光によって闇が押しやられる。 戦場は少年が後退する形で移動しており、戦況は拮抗しているようには見えるが少年がやや不利だ。
慈照には命中させれば少年を屠れる攻撃が可能だが、少年の攻撃はどれも慈照に届かない。
傍から見れば慈照が少年に対して一方的に攻撃しているように見えるかもしれないが、余裕がないのは慈照も同じだ。
慈照は少年を捉える為に別の魔導書も並行して使用しており、消耗と言う点では彼の方が上だった。
本来なら他の魔導書も攻撃に用いるべきなのだろうが、第四位階の戦いに下位の能力は効果が薄い事もあるが並列利用による意識の分散を恐れての事だ。
この状況で集中力を散らす要因を増やす事は敗北の可能性を引き上げかねない。
リスクが高すぎる事を二人は直感的に理解している事もあって、彼等は己が最も信頼する攻撃手段に全てを懸けているのだ。 ただ、この膠着状況に焦りを感じている事もまた事実だった。
――使うか?
第四位階を使用している以上、それよりも高位階の第五を使用して状況を打開するかといった選択肢が二人の脳裏に過ぎるが今の段階で自分の中にある何か大切な物が剥がれ落ちる喪失感を味わっているのだ。 第五位階を使用するとどうなるのかは薄っすらとだが察していた。
このまま打開の切っ掛けができるまで粘るのも手ではあるが、時間をかけ過ぎると消耗が重たい事もあるが何よりも他の介入する余地を生んでしまう。
同格の存在に乱入され、場合によっては二体一になるような状況は不味い。
共通点の全く存在しない二人ではあるが、戦いに対するスタンスだけは似通っていた。
それは他者に頼らず、独力で目の前の敵を叩き潰す。 だからこそ彼等は横やりが入る事を何よりも懸念していた。 何故なら誰かが乱入した場合、高確率で自分に敵対すると思っているからだ。
少年は闇の中を移動しながら必死に効果的な攻撃手段を模索する。
その悉くが効果がなく、若干の焦りが生まれていた。 一瞬だが、他の魔導書に切り替えるかと言った弱気な思考が顔を出すが即座に撥ね退ける。
他の魔導書に『68/72』以上の能力は存在しない。
そもそも敗北者の魔導書は精々、戦闘の補助にしか使えないと少年は思っており、所詮は器ではなかった者達の遺した残滓と軽視しているので第二位階で嗾ける以上の使用は選択肢に上らないのだ。
それは慈照も同様で強敵が相手である以上、下手に慣れない武器を使っても逆効果だと判断していた。
両者の戦いは良くも悪くも噛み合っており、望んでいない膠着が続く。
打開する為の何かを探している間にも時間は過ぎ、寿命と言う名の燃料も徐々に底が見えて来る。
この調子で戦えば若干ではあるが先に慈照が力尽きるだろう。
そうなれば少年の勝利となるが、寿命をほぼ使い切る形になるので相打ちに近い結果となる。
付け加えるなら、少年は時間切れによる勝利を望まない。
自身は神に至る器となる儀式に挑んでいる以上、転がり落ちて来た結果は不要。
独力で得た結果のみが神格としての自己を肯定するのだから。
――俺はここで勝ち抜き、神へと至る。
それだけを願って生きて来たのだ。 約束された運命の時を全力で駆け抜け、結果を掴む。
目の前の男はその為の試練だ。 奴を倒せばこの迷宮内にいる他の参加者は敵ではない。
そう確信できる程、少年にとって慈照は掛け値なしの強敵だ。
強い敵であればある程に打ち破る価値が高まる。
奴を倒し、この儀式の首謀者を倒し、全ての魔導書を束ね、王となり力を得て神格へ。
――俺は俺の価値観に従って全てを裁き、全てを救う。
負けられない。 負けたくない気持ちは慈照も同じで、ようやく自分の人生に纏わりついていた鎖のような束縛から解き放たれたのだ。
目の前の狂ったガキを処分し、こんな悪趣味な催しを開催した主催者を始末し、外に出て目に付いた人の形をした屑共を皆殺しにするのだ。
そうすればきっと素晴らしい事になる。 見た事がない程に清々しい景色が待っているはずだ。
何故ならそこには屑が一切存在しないより良い世界が待っているのだから。
理不尽な行いをする者の居ない完璧な世界。 互いが互いを思い合い、助け合える世界。
魔導書があればそれが実現できる。 人の理を越えた力であるなら人では成し得ない事も可能であるのは道理だ。 何せ屑が存在しないのだから。
彼はある意味で人の善性を誰よりも信じているのかもしれない。
その為、悪を成す者は人ではないと自らの思考を固定し、単純化する事でより純粋かつ強固なものとして定義している。
故に慈照の行いに迷いはなく、彼は自身の行いを絶対に正しいと言い切れるのだ。
――だから――
こんな所で負ける訳にはいかない。 図らずとも彼等の思考が着地したのは同時だった。
リスクを正確に理解はしていないが、使っては不味い事は分かっている。
それでも自らの我を貫く為に彼等は自らの持つ最大の力を解き放つ。
――<第五小鍵 68/72>
――<第五小鍵 64/72>
維持はしない。 一瞬だけ解放して即座に相手の命を刈り取る。
二人は無意識で第五位階使用の最適解を導き出し、それを実行した。
居合いのように抜き放たれた両者の全身全霊が交錯する。
防御を捨て全てを攻撃に傾けた慈照の一撃は少年の意識が存在する場所を正確に捉え、異形と化したその姿は光の矢を思わせる速さで爪を振るう。
爪は間違いなく少年を捉え、引き裂いた。 同時に少年の一撃も慈照を正確に捉える。
細く細く、強く強く、限界まで密度を上げ、威力の全てを内包した闇の刃は慈照の胴体を両断。
上半身と下半身が分離する。 両者は動きを止め――僅かな静寂。
ややあって決着が着き、勝者と敗者が確定した。
両者の戦いはこの一件が始まって以来、最高峰とも言える攻防を繰り広げていた。
少年の闇を凝縮した無数の武具が慈照へと殺到するが、その全ては炎によって焼き尽くされる。
お返しとばかりに慈照は火球を放ちながら少年がいるであろう場所へと飛びかかった。
爪が闇を引き裂くが手応えがなく、点では効果がないと判断した慈照は口を大きく開いて炎を吐き出す。
指向性を持った炎が周囲を薙ぎ払うように広がる。
少年は意識の中心――核とも呼べるものを闇の中で移動させて回避。
炎によって発生した光によって闇が押しやられる。 戦場は少年が後退する形で移動しており、戦況は拮抗しているようには見えるが少年がやや不利だ。
慈照には命中させれば少年を屠れる攻撃が可能だが、少年の攻撃はどれも慈照に届かない。
傍から見れば慈照が少年に対して一方的に攻撃しているように見えるかもしれないが、余裕がないのは慈照も同じだ。
慈照は少年を捉える為に別の魔導書も並行して使用しており、消耗と言う点では彼の方が上だった。
本来なら他の魔導書も攻撃に用いるべきなのだろうが、第四位階の戦いに下位の能力は効果が薄い事もあるが並列利用による意識の分散を恐れての事だ。
この状況で集中力を散らす要因を増やす事は敗北の可能性を引き上げかねない。
リスクが高すぎる事を二人は直感的に理解している事もあって、彼等は己が最も信頼する攻撃手段に全てを懸けているのだ。 ただ、この膠着状況に焦りを感じている事もまた事実だった。
――使うか?
第四位階を使用している以上、それよりも高位階の第五を使用して状況を打開するかといった選択肢が二人の脳裏に過ぎるが今の段階で自分の中にある何か大切な物が剥がれ落ちる喪失感を味わっているのだ。 第五位階を使用するとどうなるのかは薄っすらとだが察していた。
このまま打開の切っ掛けができるまで粘るのも手ではあるが、時間をかけ過ぎると消耗が重たい事もあるが何よりも他の介入する余地を生んでしまう。
同格の存在に乱入され、場合によっては二体一になるような状況は不味い。
共通点の全く存在しない二人ではあるが、戦いに対するスタンスだけは似通っていた。
それは他者に頼らず、独力で目の前の敵を叩き潰す。 だからこそ彼等は横やりが入る事を何よりも懸念していた。 何故なら誰かが乱入した場合、高確率で自分に敵対すると思っているからだ。
少年は闇の中を移動しながら必死に効果的な攻撃手段を模索する。
その悉くが効果がなく、若干の焦りが生まれていた。 一瞬だが、他の魔導書に切り替えるかと言った弱気な思考が顔を出すが即座に撥ね退ける。
他の魔導書に『68/72』以上の能力は存在しない。
そもそも敗北者の魔導書は精々、戦闘の補助にしか使えないと少年は思っており、所詮は器ではなかった者達の遺した残滓と軽視しているので第二位階で嗾ける以上の使用は選択肢に上らないのだ。
それは慈照も同様で強敵が相手である以上、下手に慣れない武器を使っても逆効果だと判断していた。
両者の戦いは良くも悪くも噛み合っており、望んでいない膠着が続く。
打開する為の何かを探している間にも時間は過ぎ、寿命と言う名の燃料も徐々に底が見えて来る。
この調子で戦えば若干ではあるが先に慈照が力尽きるだろう。
そうなれば少年の勝利となるが、寿命をほぼ使い切る形になるので相打ちに近い結果となる。
付け加えるなら、少年は時間切れによる勝利を望まない。
自身は神に至る器となる儀式に挑んでいる以上、転がり落ちて来た結果は不要。
独力で得た結果のみが神格としての自己を肯定するのだから。
――俺はここで勝ち抜き、神へと至る。
それだけを願って生きて来たのだ。 約束された運命の時を全力で駆け抜け、結果を掴む。
目の前の男はその為の試練だ。 奴を倒せばこの迷宮内にいる他の参加者は敵ではない。
そう確信できる程、少年にとって慈照は掛け値なしの強敵だ。
強い敵であればある程に打ち破る価値が高まる。
奴を倒し、この儀式の首謀者を倒し、全ての魔導書を束ね、王となり力を得て神格へ。
――俺は俺の価値観に従って全てを裁き、全てを救う。
負けられない。 負けたくない気持ちは慈照も同じで、ようやく自分の人生に纏わりついていた鎖のような束縛から解き放たれたのだ。
目の前の狂ったガキを処分し、こんな悪趣味な催しを開催した主催者を始末し、外に出て目に付いた人の形をした屑共を皆殺しにするのだ。
そうすればきっと素晴らしい事になる。 見た事がない程に清々しい景色が待っているはずだ。
何故ならそこには屑が一切存在しないより良い世界が待っているのだから。
理不尽な行いをする者の居ない完璧な世界。 互いが互いを思い合い、助け合える世界。
魔導書があればそれが実現できる。 人の理を越えた力であるなら人では成し得ない事も可能であるのは道理だ。 何せ屑が存在しないのだから。
彼はある意味で人の善性を誰よりも信じているのかもしれない。
その為、悪を成す者は人ではないと自らの思考を固定し、単純化する事でより純粋かつ強固なものとして定義している。
故に慈照の行いに迷いはなく、彼は自身の行いを絶対に正しいと言い切れるのだ。
――だから――
こんな所で負ける訳にはいかない。 図らずとも彼等の思考が着地したのは同時だった。
リスクを正確に理解はしていないが、使っては不味い事は分かっている。
それでも自らの我を貫く為に彼等は自らの持つ最大の力を解き放つ。
――<第五小鍵 68/72>
――<第五小鍵 64/72>
維持はしない。 一瞬だけ解放して即座に相手の命を刈り取る。
二人は無意識で第五位階使用の最適解を導き出し、それを実行した。
居合いのように抜き放たれた両者の全身全霊が交錯する。
防御を捨て全てを攻撃に傾けた慈照の一撃は少年の意識が存在する場所を正確に捉え、異形と化したその姿は光の矢を思わせる速さで爪を振るう。
爪は間違いなく少年を捉え、引き裂いた。 同時に少年の一撃も慈照を正確に捉える。
細く細く、強く強く、限界まで密度を上げ、威力の全てを内包した闇の刃は慈照の胴体を両断。
上半身と下半身が分離する。 両者は動きを止め――僅かな静寂。
ややあって決着が着き、勝者と敗者が確定した。
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