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異形手紙
異形手紙(1)
しおりを挟む「親友、異形の怪物、メッセージ、死、君が泣いている理由は端的に言うとこんな所だろう?」
そうだ。
「それ、私が巻き取るよ。」
え?
わからない。だけど、
「ありがとうございます、とりあえず」
と言って少女を家に上げてしまった。
藁にもすがる思いだったが、それよりも
混乱してしまい、正常な判断もできなかった気がする。
お腹がずっと鳴っている少女に
既に装っていたカレーを手渡し、
そのままリビングに向かった。
「おお!良い匂いだと思ったが、匂いだけでなく見た目も良い!デフォルトの人参、玉葱、じゃがいもだけでなく茄子も、ピーマンも入っている!夏野菜風だ!頂きます!美味しい…美味しい…!うう…生きてる…玉葱が大きく切られているのも素晴らしい…生きてる…日本人で良かった…」
確かに日本のカレーと本場インドのカレーは違うらしいけど、その感想はどうだろう…
少女がモグモグと一生懸命に食べるのを見て、私は少し安心し、落ち着いてしまった。
「あの、食べているところ申し訳ないんだけど、とりあえず名前だけ聞いてもいいですか…?」
「もぐ、むぐ、うん。そうか、まだお互い名前を知らないね。私は鳴味 蕾火 お腹が鳴る、ベロの粒粒の味蕾、火で炙るで鳴味蕾火」
鳴るものでお腹をセレクトしたのも、
火で炙るの「炙る」がいらないのも、
ベロの粒粒も意味がわからなかった。
てか、ベロの粒粒て名前があるのか。
「はあ…なるみさんですね。私は月見 蛍火です。月見バーガーの月見にほたるびと書いて、けいかと読みます。よろしくお願いします。」
お月見でいいのにバーガーを付けてしまった。まあいいや、それどころではない。
「月見バーガーに突っ込みたいが、少し我慢するよ。急ぐ訳では無いがそれどころではなさそうだしね。名前に火が付くもの同士仲良くしよう。」
「はい、正直今も何から話せばいいかわからないのですが、この件に関して鳴味さんに説明は不要って認識でいいですか?」
凡その事柄について知っているらしいが念の為に質問した。まだ信じられない。
「うん、凡そはね。でも少し詳しい話を聞かせて貰えると助かるよ、テレパシーなんてものは使えないからね。」
もうほぼテレパシー使ってるようなものだと思うが。
「わかりました。昔からある噂話の1種だと思うんですが…」
「チェーンメールみたいなものだね?転送しないと呪われる、みたいな。」
「そうです、ただそういう噂って昔からあって別に気にした事ないし、実際転送しなくても何も無いし。」
そうなのだ。実害は無いし、何も起こらない。
「ただ、最近1人、同じ大学の学生が居なくなったっていう話を構内で聞いて、それが私の親友、結衣の友達みたいなんです。そのチェーンメールみたいなメッセージがSNSで送られてきたらしくて、」
「そのメッセージを貰うと明らかにこの世のものではないものが自分にまとわりつくようになる、口が裂けているとか、髪が長くて白い服を着ているとかそんなレベルのものではなくて、どう説明したらいいかわからないけど、明らかに異様なものが取り憑く。それのせいで結衣の友達も行方不明になっているって。」
「うん、そこで親友から助けを求めるメッセージが届いた君はその噂と関連があるんじゃないかと推測した、そしてメッセージが届いた君自身にも何かが起こると思った。というところかな?」
「はい、だからまずは結衣の安否を確認したい。結衣からのメッセージは届いたけど、今のところ私には何もないみたいだし。そもそもどんなメッセージが届いたら呪われるとかわかんないんですけど。」
「…?何もない?いや、あ、そうか。うーん。どうしようかな。うん…」
何故、何を悩み始めたんだ?
「え?私何か変な事言いましたか?」
「いや、まあ、その。」
何故言葉を濁すのだろうか。
「ごめんね、ちゃんと言うよ。少し辛いかもしれないけど。」
身体に刺さる氷柱の感覚が蘇る。
まさか結衣はもう。
「結衣の身に何かあるんですか?間に合わないんですか?どうしたらいいですか?」
言葉が思いに追いつかない。
それくらい大切な親友なのだ。
「いや、君の親友はおそらく大丈夫だよ。ただ。」
ただ、何だ?
「君はもう死んでしまっている」
結衣は無事なのか、良かった。
でも、
私は、死んでいる?
安堵と驚きが入り交じり、
眠り落ちてしまうように、
そのまま意識が遠のいていった。
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