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8巻
8-1
しおりを挟む第一章 聖女と戦災孤児
「まぁ、あの方が青薔薇の乙女?」
「王太子殿下とご婚約された、オリヴィリア伯爵家のリリアナ嬢ですわね」
次の瞬間、たくさんの視線がこちらに降り注ぎ、私は深くため息をついた。
初花の儀を終えてしばらく経ちましたが、いまだ私は家族と一緒に、王都に滞在しています。それというのも、私の婚約をととのえるためなんだけど……
「まぁ、あの方がリリアナ嬢でしたのね。見てくださいな、あの透き通るほど白い肌! キラキラ光り輝く白金色の髪。淡紅色の瞳は美しい花のようで、吸い込まれそう」
「本当……彼の君の隣に並んでも見目劣らぬご令嬢なんて、リリアナ嬢だけですわ……」
ヒソヒソ話しているつもりかもしれませんが、すべて聞こえています……お願いですから、そんなに持ち上げないでください‼
穴があったら入りたいと思いつつ、私は夜会のホールを進んでいく。
オリヴィリア領は辺境の地にあり、私はいわゆる田舎者ですが、王都に滞在している以上、夜会のお誘いが来ます。お断りするわけにもいかず、こうして参加しているものの――
そのたびにご婦人、ご令嬢の皆さんに注目されて、居心地が悪いったら!
私は隣を歩く人物に、恨みのこもった目を向けた。
私を優雅にエスコートするその青年は、絵画から抜け出してきたかのように美しい。太陽のごとく眩い黄金色の髪に、青空みたいに澄んだ瞳。非の打ちどころがないほど完璧な容姿です。
そう、彼こそ、このシェルフィールド王国の王太子クラウディウス殿下。
……私がこんなに注目される原因を作った人物でもあります。
「リリアナ嬢は、本当にお綺麗ね。姿絵を拝見したけれど、比べものにならないくらい美しいわ!」
背後から聞こえてきた言葉に、私は目を見開く。
えっ! 姿絵!? 知らないうちに、そんなものが出回っているんですか!?
思わず眉間に皺を寄せると、王太子様が私の視線に気づいたみたい。こちらの心中も知らず、にこやかな笑みを浮かべる。
その笑顔を見て、ご婦人方は黄色い声を上げた。
「まぁ! お二人とも本当に仲がよろしいのね。見つめ合っていらっしゃるわよ」
「ふふ、素敵ですわ。相思相愛ね」
違う、見つめ合っているわけじゃありません! 私は睨みつけているんです‼
「あぁ、どうしてこんなことになっちゃったんだろう……」
私は小さく呟いて、そっとため息をつく。
平凡に生きていこうと誓ったのに、どんどんその道から外れている気がする……
――私、リリアナ・ラ・オリヴィリアには前世の記憶がある。
かつては橘ゆかりという名の女子高生でしたが、交通事故で命を落とし、この世界に転生したんです。
もちろん、最初は戸惑いの連続だった。でも今は新たな生を受け入れて、オリヴィリア伯爵家の娘として生きている。
そんな私も、気づけば十六歳! セイルレーンでは成人とされる年になりました。
成人の儀に参加し、未来の旦那様を見つけるべく、オリヴィリア領から王都ローレリアへやってきたものの――
どういうわけか、たくさんの事件に巻き込まれてしまったんだよね。それをいつも助けてくれたのは、日本人によく似た容姿を持つランスロット様。そして――
隣で優雅に微笑む王太子様も、オリヴィリア家の危機に手を差し伸べてくださった。お父様が不正の濡れ衣を着せられそうになったとき、犯人を炙り出すために、ある小芝居をしてくれたんです。
王太子様の婚約者候補である、薔薇の乙女達。私は、その中の青薔薇の乙女にあたる。
黄薔薇の乙女を孫娘に持つリディストラ侯爵は、どうしても彼女を正式な婚約者にしたかったみたい。そこでお父様に濡れ衣を着せてお母様達も一緒に拘束し、私を婚約者候補から外そうとしていたんだけど――
侯爵を追い詰めるための作戦として、王太子様が私を正式な婚約者だと発表しちゃったんだよね。そのおかげで、お父様の疑いも晴れ、家族皆が助かる結果となりましたが……
『あれは嘘でした』という発表は、今のところない。だから私は出かけるたびに、王太子様の婚約者として注目を浴びているんです。その上、たくさんの褒め言葉までかけられてしまって――正直、気が重いよ。
そもそも、王太子様がよくないよね。
いつまで経っても、私が本当は婚約者じゃないって公表してくれないんだもの。そればかりか、私の出席する夜会でエスコートまでしてくださって……
これでは、周囲の誤解が深まるばかりです。
そのことについて抗議しても、いいようにはぐらかされてしまうし……だけど、今日こそは絶対に誤魔化されませんよ!
まずは、どこか静かなところに移動しましょう。さすがにこんな衆人環視の中で、打ち合わせなんてできないからね。
「あの、王太子殿下……お話があるのですが、場所を移しませんか?」
「あぁ、もちろん構わない」
王太子様は私の申し出に、にっこりと応じてくれる。
私達は、人気の少ない裏庭へと移動した。そこはとても静かで、風に揺られる木の葉の音がさわさわと聞こえてくる。
うん、ここなら秘密のお話もできそうですね。
「王太子殿下、今日は大切なお話があるのです」
「それは、ちょうどよかった。実は私も、リリアナ嬢に大切な話があったんだ」
気が合いますね、王太子様! もしかして、王太子様もようやくこの婚約が嘘だったと発表する気になったんですか?
「そうだったんですね。では、どうぞ王太子殿下からお話しくださいませ」
私が促すと、王太子様はにっこり笑みを深めて口を開く。
「私達の結婚式だが、いつにしようか? 私は、早ければ早いほどいいと思うのだが」
――え? けっこん、しき? それって、それって……
「えぇーーーーーー⁉」
私は思わず大声を上げてしまった。
せっかく人気のないところへ移動したのに、これじゃ、意味がありません。どうしよう、今の大声で人が集まってきちゃったら!
いやいや、でも、絶叫しちゃうのも仕方ないよ!
だって王太子様、結婚式をいつにしようかって言ったよね……?
それじゃあ、婚約を撤回するどころか話が進んじゃってるよ!
しかも早ければ早いほどいいって……
もう、どこから突っ込んでいいのかわかりません‼
口をぱくぱくさせていると、王太子様は少し困ったような笑みを浮かべた。
「驚かせてしまったなら、すまない。しかし、そうしなければまずそうな動きがあるんだ……」
え? まずそうな動きですか?
もしかして、リディストラ侯爵みたいに不審な動きをしている人物がいるのかな?
そっか、だから婚約の話を進めるふりをして、不穏分子を片づけたいってわけだね!
それならそうと言ってください。勘違いして、恥ずかしいよ……
私は熱くなった頬を両手で押さえ、口を開いた。
「そうだったのですね。そういう事情があるのでしたら、このまま話を進めたほうがよろしいですね」
とはいえ話を進めるとなると、ますます婚約は嘘だって言いづらくなっちゃいそう。本当のことを世間に公表するときには、婚約破棄って形になりそうだね。
うーん。その場合、私は結婚から遠ざかってしまいそうです。だって、王太子様と破談になった令嬢をもらってくれる方なんて、そうそういないもの。
……でも、それはそれで、よしとしましょう。
王太子様には、私の大切な家族を助けてもらった。そのおかげで、私はこうして笑っていられるんだから。
私が一人頷いていると、王太子様は嬉しそうに笑った。
「リリアナ嬢も、私と同じ気持ちのようでよかった。それでは近日中に、家族を交えて今後の話し合いをすることにしよう。必ずやリリアナ嬢を幸せにしてみせるよ」
……幸せに? 一体どういう意味なんでしょうか?
いえ、それより王太子様! そのとろけるような笑顔は反則です!
「――というわけなの」
数日後、王都のオリヴィリア邸で、私は王太子様とお話しした内容を家族皆に伝えた。
お父様とお母様、双子の弟妹ラディとレティ、侍女のエレンに加えて、今日は親友のミーナちゃんも遊びに来ています。医術の発達した国エルフィリアに留学していたミーナちゃんですが、少し前に帰国したんです。
私が話を終えると、お父様が身体をわなわなと震わせながら叫んだ。
「な、なんでそんなことになっているんだぁーーーーーー‼」
……お父様は両手で頭を抱え、青ざめた表情を浮かべる。
「まぁまぁ、ルイスったら落ち着いてちょうだい。いつかこんな日が訪れることは、昔からわかっていたじゃない。むしろ私は、リリアナちゃんが十六歳を迎える前に、すべてがととのってお嫁に行っちゃうと思っていたわ。ちょっとばかり遅かったくらいよ。本当に、よかったわ」
お母様……そんなに早く私が結婚すると思っていたの?
それに、婚約がととのったわけじゃありませんから。あくまでも結婚話を進めるフリをするだけだって、ちゃんと説明したのに。
あっ、もしかして『早くお嫁に行って』という圧力なんでしょうか?
私はお母様の謎多き言葉を受け流すように、曖昧な笑みで誤魔化す。
そんな中、絶望いっぱいの表情を浮かべていたお父様が、珍しくお母様に反論した。
「……しかし、だからと言って、こんな強引な方法を取っていいわけがない! 純粋無垢なリリアナがいいように利用されて、絡めとられているだけじゃないか!!」
「そうは言っても、ルイスだって本当はわかっているんでしょう? リリアナちゃんを任せるのであれば、誰が最適なのかって。それに、リリアナちゃんは前にこう言っていたわ。王太子殿下と結婚して、ゆくゆくは王妃になるのも楽しそうですねって。つまりこの件は、リリアナちゃんも望んでいること。リリアナちゃんなら、立派な王妃様になることができるわ。まぁ、とっても鈍いところは玉に瑕だけど」
お母様……それは冗談というものです。それに、鈍いって失礼ですよ。
もしかしてお母様は、本当に私と王太子様が結婚すると思っているんでしょうか?
急に不安になって、訂正しようと口を開きかけたのだけれど……
ふと向かい側の席を見れば、肩を落として何やらぶつぶつと呟き続けるお父様の姿。
「おっ、お父様……。大丈夫ですか?」
すると、可愛いラディとレティがお父様に駆け寄った。
「お父様、どうしてしょんぼりしているの? せっかくお姉様と王子様の結婚が決まったのに……変なお父様。でもいいなぁ、お姉様。レティも大人になったら、お姉様みたいにあの王子様と結婚したいなぁ」
そう言って、瞳をキラキラと輝かせるレティ。まだまだ小さいけれど、恋する女の子みたいな表情をしています。
そうだよね、レティは王子様みたいなヴィンセント様に憧れているものね。
イクシオン公爵家のヴィンセント様は、初花の儀で私をエスコートしてくれた方。ダンスの練習にも付き合ってくれた、優しくて紳士的な青年です。
年が離れすぎているからヴィンセント様は難しいかもしれないけれど、いつかきっと、王子様みたいな男性が現れるよ。
微笑ましくレティを眺めていると、お父様とラディが何やら不穏な表情を浮かべた。
「……お父様、僕も悔しいですが、お姉様がお嫁に行ってしまうのは……仕方のないことなのかもしれません。だって、こんなにも優しくて美しいお姉様なのだから……。ならば僕達にできるのは、可能な限り結婚式の日取りを延ばすことだけです! それにお姉様だけじゃなく、レティだって早々に結婚を決めてしまうかもしれません。それだけは阻止しなくては……!!」
「ラディ、さすがはオリヴィリア家の嫡子だ! それこそ、我々が今すべきこと!」
がっちりと握手を交わしているラディとお父様、頬を染めながらへにゃりと笑っているレティ。
なんだかカオスな状態になりつつあるよ……
「おっ、お母様どうしましょう……」
「放っておくのが一番よ、リリアナちゃん。……でも、さすがは王太子殿下ね。リリアナちゃんのことをよくわかっていらっしゃるわ。遠回しに言っても通じないでしょうし、正攻法で攻めても断りかねないし、いい策ね」
お母様はそう言って、艶やかに笑う。
……策?
さっきから、お母様の言葉の意図がわかりません。
困惑して視線をさまよわせると、どこか遠い目をしたミーナちゃんが目に入った。
あれ、そういえば今日はあんまり会話に入ってきてないよね? ミーナちゃん、どうしたのかな?
「ミーナちゃん、大丈夫?」
体調が優れないのかと思って尋ねたけれど、ミーナちゃんは虚ろな目をして大丈夫だと答えた。
そして――
「……リリアナちゃん、私はリリアナちゃんの親友だと自負しているわ」
「うっ、うん、私も、ミーナちゃんはかけがえのない親友だと思っているよ」
突然の言葉に、私は目を瞬かせた。一方のミーナちゃんは、視点の定まらない目でぶつぶつと呟きはじめる。
「ありがとう、リリアナちゃん。私達は親友だよね。……親友だからこそ、リリアナちゃんのことはきちんと理解していると思っていた。でも、それも勘違いだったみたい。リリアナちゃんは、いつだって私の想像のナナメ上を行くんだから。どうして、どうして……」
「ミ、ミーナちゃん?」
「リリアナちゃん、どうしてそんなに鈍いのぉーーーーーー!?」
ミーナちゃんはそう絶叫すると、頭を抱えてしまった。
「えっ、鈍い!?」
先ほどお母様にもそう言われましたが、ミーナちゃんまで!
「あらあら、リリアナちゃんから鈍さを取ったら、それこそリリアナちゃんじゃないわよ」
お母様、それ全然フォローになってないです!
「ミーナ、リリアナお嬢様が鈍いのなんて昔からじゃない。他人のことに関してはたまに鋭いけど、自分のことに関しては異常なまでに鈍い。それがリリアナお嬢様よ。平常運転だわ」
エレンも、同調しないでください!
うぅ、私って、そんなに鈍い……かな?
「……そこまで言うくらいですから、皆は私の話から王太子殿下の本意がわかったんですよね? 一体、なんのための策なんでしょう?」
そう言って詰め寄ると、ミーナちゃんは呆れたような表情で首を振った。
「リリアナちゃん、策も何も――王太子殿下の言葉には、なんの含みもないと思うよ。そのまんまの意味なんじゃないかな」
そのまんまの意味……。つまりは、ただ単に私と結婚したい……ということ?
次の瞬間、私は堪えきれず、つい噴き出してしまった。
私より家柄が良くて素敵なご令嬢はたくさんいますし、私と結婚してもメリットはさほどないでしょう。王太子様から好かれるような要素もありません。
「あはは、ミーナちゃんったらおかしい。もう、笑わせないでよ。王太子殿下が、私と結婚したがっているはずないじゃない」
私が胸を張って言うと、ミーナちゃんはポツリと呟いた。
「リリアナちゃん……可哀想……」
お母様とエレンも、私に憐れみの視線を向けている。
うーん、もしかして三人は、私に同情してくれているのかな。
でも、私は納得した上で偽装婚約に協力しようと思っているわけだから、気を遣わなくてもいいのに。
さっきお父様が言っていたみたいに、利用されていると思うとモヤモヤは募りますが、そもそもこれは家族を助けてくれたことへの恩返し。
つまりは、ウィンウィンの関係! 問題なしです!!
私は皆を安心させるように、ニッコリ笑って見せる。
……とそのとき、廊下をバタバタ走る音が聞こえてきた。使用人達の慌てた声も響いている。
「何かあったんでしょうか?」
前にも、こんなことがありました。
あれは……お父様に冤罪がかけられ、私達家族の身柄を拘束しようと、多くの兵士が邸に乗り込んできたとき。
そのときのことを思い出し、私はブルリと身体を震わせた。
幼いラディとレティも同じだったようで、青ざめた顔でお父様にギュッとしがみつく。お父様は二人を安心させるみたいに、小さな背中をぽんぽんと叩いた。それから優しい口調で語りかける。
「あのときのことを思い出したんだね? 大丈夫だ、安心しなさい。確かに慌ただしい様子がうかがえるが、あのときと違って怒号は飛び交っていないだろう?」
耳をすましてみると、お父様の言葉通り、不穏な気配はなさそう。
一瞬硬い表情を浮かべたエレンも、気を取り直したみたいに背筋を伸ばす。
「何があったのか確認してまいりますので、少々お待ちください!」
そう言い残し、エレンは勢いよく部屋を後にした。
それと入れかわりに、ふわふわ浮かぶ女の子が壁をすり抜けてやってきた。
(リリアナ、大変! たいへーーん!!)
この小さな女の子は、光の精霊ルーチェ。
普通の人には視えないけれど、私は精霊の祝福を受けたから姿を視ることができるし、心の中で心話というやりとりをすることもできる。
「あら、光の精霊様ね。なんだか慌てているみたい」
そう言ったのは、お母様。ラディとレティも、ルーチェのほうに目を向ける。
お母様は、真実の眼という特別な力を持っているから、精霊の姿を視ることができます。その力を受け継いだ、ラディとレティもね。もっとも、声を聞くことはできません。
(何が大変なの? ルーチェ?)
珍しく大慌てなルーチェに、私は心の中で尋ねた。けれどルーチェが答える前に、部屋の扉がガチャリと開いて――
「ご領主様、大変でございます! すごいお客様がいらっしゃいました‼ ほらっ、アル、ご領主様に説明なさい」
勢いよく部屋に入ってきたのは、エレンとアル君。
最近、オリヴィリア伯爵家で侍従見習いをはじめたアル君は、姉のエレンから背中をぐいぐい押されて、緊張した様子です。けれど、背筋を伸ばして口を開きました。
「……ご領主様に申し上げます。ご領主様とリリアナお嬢様に面会したいと、ローレリア司教様がいらっしゃいました」
アル君の告げた言葉に、私は頭が真っ白になった。
だってローレリア司教様といえば、王都ローレリアにある神殿を束ねているトップの人物!
つまり、シェルフィールド王国の神官で最も高位のお方です。そんなお方が縁もゆかりもない我が家を訪ねてくるなんて……!
どうしてローレリア司教様は我が家にいらっしゃったんだろう?
領主のお父様に用事があるのならまだわかるけれど、私にまで面会したいだなんて――
……あっ!
もしかして……最近、お祈りに行っていないから?
セイルレーン教には、週末、教会や神殿で祈りを捧げなさいという教えがある。必ず毎週末行かなくちゃいけないわけではないけど、王都ローレリアでは多くの人達が頻繁に祈りを捧げているみたい。
でも、私は王都に来てから何かとバタバタしていて、オリヴィリア邸に引きこもってばかりでした。
もしかして、そのことを咎めに来たとか……?
サッと血の気が引き、あわあわしていると、お父様が眉根を寄せて言った。
「ローレリア司教様が面会に……。わかった、すぐに会おう。応接間に案内しておくれ。決して、失礼のないように」
「「かしこまりました!!」」
エレンとアル君は、お父様に一礼して部屋を出ていく。
私はお父様の険しい表情に驚いて、思わず口を開いた。
「お父様、一体どうしたのですか? なぜ、そんなに怖いお顔をなさっているんですか?」
すると、ラディとレティも不安そうな表情で声を上げる。
「お父様、何か心配事ですか?」
「お父様、本当に怖いお顔……そんな顔のお父様、レティ怖い」
可愛い弟妹達の怯えた様子に、お父様は少し表情を和らげた。
「すまない、怖がらせてしまったね。ローレリア司教様が訪れたと聞いて、つい……。とうとうセイルレーン教会が動き出したか……」
お父様はぶつぶつと呟きながらこちらにやってきて、ふわりと私を抱きしめた。
「……お父様?」
「リリアナ、何があろうとも私達は家族だ。大切なリリアナを必ず守ってみせるよ」
背中に回されたお父様の腕に、ギュッと力がこもる。
私は戸惑うことしかできなかった。
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