魔王がやって来たので

もち雪

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はじめての異世界

ホイルトツェリオ城

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 転移した空間は、厳かな教会の様で、祭壇には蝋燭ろうそく燭台しょくだいが両脇に置かれその中央には古びた分厚い文庫本、程度大きさの本が一冊無造作に置いてある。ぱっと見は、結婚式CMでよくみるおなじみの風景で、さっきまでの僕の部屋にいたと言う以外には、ぼくの世界でありふれていだろう風景の様に思われた。

 ぼくは、結婚式の招待客が座るだろう、並んでいる1つの椅子に腰を掛け、辺りをよく見まわす。
 椅子は1つ1つ独立した木の椅子、窓は大きいが障子しょうじの鉄製の張り中の障子紙の所に、窓ガラスをはめ込む様になっている。建物自体は長方形だが、先に進むごとに区切られた箇所で、長方形が細くなくなるとともに床が一段高くなりそこに階段が置かれている造りになっている。


 昼だろう今に、この教会内からでると大勢の人間に見つかる恐れがある。見つかるにしても、騒ぎの少ないだろう夜の方がいいのか、泥棒と間違えられない今がいいのか……。
 
 そう考えていると遠くで花火の音がした。外を見ようにも窓は、身長より高い位置にある為、外をのぞき見る事は出来ない。ボァフォと言う花火の音が先ほどより近くでする。その音は不規則であるが、近づいてくるとともに、城内の声があわただしく響く。
 
 その声は、始めは何を言っているかわからなった。しかし徐々に単語からわかり始め、単語と単語の組み合わせからこう話しているのか?と思うところまで来て――。

 窓のから虹色の煙が見えたと、同時に教会の扉が開け放たれた。現れた女性は、おかっぱなブロンドの女性でタイトなミニスカートに、ざっくりとしたファンタジー漫画でよく見るような上着を着てはいる。
 

「初めておめにかかる、勇者様、わたしがカントクノレンだよろしく」

「ぼくは草薙 ハヤトです。よろしくお願いします」
 
 彼女とがっちりかたい握手をする。

「うんうん、ではサロンまで案内しょう」

 教会は別棟になっているようで、僕たちは一度外へ出て、石だたみの道を歩く。小さなトンネル抜けるとそこには西洋にお城があった。
 
 レンガ? もしくは、石で、つくられた白く美しい城。青銅かもくは鉄? で、作られた像が、道を歩くたびに無造作に置かれている。

 その中に明らかに、日本の武士の像があった。

「彼は?」

「彼も、日出ひいずる国から、来た勇者と聞いている」

「現在の魔王、沈黙の魔王ヤーグと、最後の一人となっても戦っていたそうだ。武人として、私もかくありたいものだ」

 そう言う、彼女の腕組みをしている姿でさえ隙がなく、相当腕がたつ武人の様だ。

「彼はどうなったのですか? 」

「それはわからない、彼の死体だけは帰らなったらしい」
 
 魔王と最後に戦った勇者……考えても、どうどう巡りするので、答えは魔王に聞くしかない。


 彼女の後ろについて城の中を行くと、サロンの様な場所に通された。何人かの人々が話をしたり、軽い食事をとっているようだ。

「どうも副大臣のダイジスです」
 
 彼女から紹介された男はそう名乗った。燕尾服えんびふくに近い服を着て痩せている。鼻にひっかける眼鏡の付けた男。彼は少し小刻みにふるえていた。

「あの……大丈夫ですか? 」
 
 と言って手を差し出そうとした時、すべての音や声が止まった。ダイジスは軽く息を飲み。そしてこのサロンの人々は、ただ僕の挙動だけに細心の注意を向けている事がわかった。
 
 彼女だけがバツの悪そうな顔をして笑っていた。

「やぁー失礼、城の兵隊がこんなに殺気を誤魔化すのが、下手だと思わなかったから」

「じゃー皆さんにはご退場願おう、下手な役者はおよびじゃないんでね」

 そうすると一同一斉に敬礼したと思うと、退場して行った。その時、ダイジスも一緒に出て行こうとしたのだが……。
「副大臣は、なかなかの役者だと聞くよ」

「さぁー大臣の舞台はここ」
 
 彼女の隣のソファを叩いて、副大臣を座らせ、そして二人の前の特等席に右手を半円を描き、僕を招き寄せるのだった。

 つづく
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