魔王がやって来たので

もち雪

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はじめての異世界

魔法の授業(実践編)

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 そろそろおやつでも食べたくなるだろう時間に馬車は、目的地の山に着いた。しかし山と言っても、小さな川を抜け、丘と谷が織り交ざった様な地形の山のふもとが目的地であった。
 
 山の地肌が見えた斜面のある、空き地に馬車は止まった。

「こっちだ」
 
 丸太そのまま、使えわれた椅子が、円を描いて等間隔に置かれている。そして中央には焚火たきびあとがある。僕達はそこに座った、ぬいぬい曰く魔法使いの定番の配置についた。

 ぬいぬいの魔法の講義が始まり。

「いいか、魔法使いは、イメージを大切にする」

「すべては、イメージ、イメージ、イメージ!」
 
 ぬいぬいは、人差し指を胸の前でちょこん、ちょこん、ちょこんと右に動かす。

「まず、心臓は、ここにある」

 ぬいぬいから見て、中央より少し左の部分を、こぶしで軽く何度か叩く。

「ここにマナはある。真実なんかどうでもいいから、魔法使いはそう信じる」

「そこに暖かい炎をイメージさせろ、そこで手ごたえがあったら……。それを、手に送りこめろ少しづつ確実に入れろ」

「迷うな入れる、通す事だけ考えろ。そうしたら手で凝縮させてるイメージ持つ反応が現れたら、最後まで目的地、敵をイメージする場所に届く様にイメージして飛ばす」

「慣れて来たら、魔法を放ち、目的地に飛ばせるイメージの確信が出来たら、次のモーションに移ってよし」
 
 オリエラは、うんうんと、うなづきつつ聞き入り、レンはにこにこと笑顔を浮かべて聞いている。

「じゃーやれ」
 
 空き地にうまっている木、魔法使いの立ち位置をぬいぬいは指さす。僕が、木の上に立つとぬいぬいとレンさんが、その横に付く。


「心臓のイメージまでは最初は、目をつぶりリラックスする事が大切だら。途中で辞める時は、消すイメージか、空気を排除して押し潰すイメージで、止めろ」

「目標は、あの斜面」
 僕の横で、ぬいぬいが指差す。

「じゃあ気楽にいけ」
 と、肩で手をトントンと弾ませたのちふたたび横に立つ。

 (まず心臓に炎を起こす)

 炎を思い浮かべる……、ガスコンロの炎を思い浮かべる。あの青い火のゆらめきを思い浮かべ、手に通す。両手を並べた手のひらの上に、青い炎が弾んで飛び出すそれを中心として、まるで毛糸の束を作るように炎は加速して大きくなる。

「これもか……」
 ぬいぬいが静かに声を洩らす。

「早く、目的地に飛ばせ! ここままだと俺らも吹っ飛ぶぞ」
 頭をかきながら、ぬいぬいは慌てるように言った。

「そうしたいのですが……炎を安定させるだけで精一杯で……」
 
 僕の目の前で、炎は暴走した馬車の車輪の様の不安定に動く。止めれば、おかしな方向へ飛んでいくだろうし、正しい道へ進む保証がなくなってきていた。

「3数える、お前は前に飛ばす事だけ考えろ」
 レンが、魔法の詠唱えいしょうをする声が聞こえる。
 
「少しでも先に飛ばせ、いいな?」

「3」

「2」

「1」
 青い炎を前に飛ばすと次の瞬間に僕は、ぬいぬいとレンに脇を持ち上げられ後方へ運ばれていた。

「オリエラ!防御壁だ! 防御壁をはれ!」

「はい! 師匠! 」
 手を前にかざす彼女の右横をすり抜け、僕をおろす。僕を下した、レンとぬいぬいが手をかざした、少し後に僕の魔法の爆風が空気と絡まり勢いを上げて走る。

 しかし爆風波は、全面に一枚、その両脇に斜めの壁にはまばれている様にその火の勢いを止めた。……止めたように思われたが、炎がその壁さえかすめ取り勢います。
 しかし新な壁にはばまれてやっと、その勢いは止まった。

「上出来、上出来」
 と、ぬいぬいは、オリエラの肩を叩く。

「えへへ、師匠もっとほへていいよ」
 オリエラは、とてもうれしいのだろう、満面の笑みをうかべている。

「ハヤト、魔力は十分だが、安定性がないのはもちろんなんだが……」

「お前は、世界とつながってない」

(世界との繋がり?)

  つづく
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