魔王がやって来たので

もち雪

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ホイルトツェリオ魔法学校

長い説明も終わりの時が来たはず？

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　魔法学校の寮の入り口は、魔法学校を出でて、校舎に向かって左側に校舎の前を歩いて行くと入り口があった。

　校舎に入ってすぐにラウンジがあり広々としたスペースの中に暖炉や購買が置かれている。そこで、オリエラが、僕達の前で一旦止まる。寮の中では、もう学校の授業を終えてゆっくりくつろいでいる者も結構いるので、少しこちらに視線が集まっていた。

「はい、ここがホイルトツェリオ魔法学校のホイルトツェリオ寮です。」

　オリエラが、説明を始めた。しかしすぐに、誰かをみつけたようで、少し大きな声で彼を呼び出した。

「ダニエルさん、師匠のぬいぬいさん達の、寮の見学許可は出ていますか？」
　
　ダニエルさんと呼ばれた彼は、こっちへやって来ると、ぬいぬいは、「お久しぶりです」と頭を下げ。僕もルイスも、各々が彼に挨拶をした。校長より少し若い位の彼の顔には多くの皺しわが刻まれ右目の上に、刻まれた傷は、何本もあり、まるで肉食動物の爪に引っ掛かれた様に見える。彼は少し曲がった腰に、手を置きながら穏やかに話している。

「校長からも許可は貰っています。生徒の生活スペースは廊下までで、男子寮を見学してくれとの事でした」

「ありがとうございます、では、少しだけお邪魔します」そう言うと、彼は――。

「これを、持って行きなさい防災時用の水なのだけれど、もう少しで保管期限が切れるので、生徒に配った残りだけど……どうぞ」

　と、僕達に水を一本ずつくれた。　お礼をいいみんなでいただく、暑い時期に、この気配りはうれしい。

　僕達は、ラウンジの空いている席にすわって、水分を取り少し休憩していると、女性徒が集まって来た。

「異世界から来たのは、本当ですか？」

「うん、そうだよ」

「じゃ――魔王を倒しに、行くのですか？」
　
　ここで、ぬいぬいが席を立とうとするが、ルイスが彼を制止してふたたび座らせる。

「初めまして、お嬢様方、ルイス　アルトと申します」

「もしかして、あのルイス家ですか？」

「はい、昔話によく登場するアルト家です」
　
　きっと彼の一族は、この話を何度も繰り返しているのだろう……、何度も同じ事を聞かれる事に対して、慣れてしまっている様だ。

　「なので、我がご主人を守るのが、私の役目でもあります。そう言うわけで、この魔法学校では、外に漏らしてはいけない秘密があるように、私達にも話して不都合な事がございますで……一緒にお茶を飲む事にはお付き合いしたいのですが……それ以外の事はご容赦くださいませ」

　ここで、女生徒達は「キャー」と黄色い声を発し、男性生徒からの腹の底からの「ヲォオー」と言う声を聞いた。

「なんか昔のレンを思い出すな……」ぬいぬいが、ぼそっと言ったのを僕は、聞き逃さなかった。

　水分補給をして立ち上がると、一緒にお茶を飲んだ女性徒達とさよならして、ラウンジを出る。オリエラに、洗濯スペースと各階にある水回りのスペースを案内される時、オリエラが少し呟く。

「アルト家の話をルイスさんの口から聞くと、本当に冒険への旅立ちが、近いって事を実感するよ……」
　
　彼女は、まるであの日の僕だ。漠然と異世界に行く事を受け入れながら尚も、今いる居場所に別れがたかった僕と同じ……。

「オリエラ、行きたくなかったら、俺が代わりに行ってやる」
　ぬいぬいも、彼女の気持ちを、感じ取り声をかける。

「ぬいぬいには、あるるさんもアルト君もいる。それは出来ないよ……」

「でも、もし……もし行きたくなかったら、正直に俺に、言えなんとかしてやる」
　ぬいぬいの弟子を思う気持ちは切実な様で、言葉の端々にそれを感じる。

「僕は一人でも行きます。オリエラが、行きたくなくない様だったら、無理に来なくて大丈夫です。これは、突き放すと言う事ではなく、僕には僕の事情があって行かなければならないし、そしてそれに誰かを無理やり巻き込むって事は考えたくないからです。ただ、それだけです」
　
　僕は、虚勢って言った。しかしすぐにルイスに――。
「今の、ハヤトさんなら同じ人間に、騙されて死ぬのが落ちなので、せめて私は連れて行ってください」
　と言って、少ない自尊心を砕かれる。

「なので、オリエラまだ焦る必要はありません。もし貴方が必要なら縄につないで、連れて行きますが……今は、まだその必要を感じておりませんので、なので――安心してください」

　ルイスは優しいく言うが、言ってる事は人でなしである。オリエラは、オリエラで――。

「師匠！　魔物より、倒さなければいけない者をみつけたかも？　」

「そうかもな」
　ぬいぬいは、少し流しぎみだが……オリエラは、結構本気の様だ。

「そんな話より、見学の続きをいたしましょう」
　
　（ルイスは、何て言うかアレだな……アレ）

「後は生徒の居住エリアは、男性が右、女性が左から上がると、半円の寮の入り口側が男子で、寮の奥側が女子のスペース。間の壁は、非常時などには、男女からの干渉が、あれば取り払われる仕組みになってます。ホームスペースは２階の学校への連絡通路と１階の休日間昼用出入口から学校のランチルームと２階と３階のハウスホームと解放されている自習ルームには出入り出来る仕組み――」

「で、説明終わり！　念のため２階へ行ってみる？　」

「………………」
　沈黙が流れ、「じゃ、終わりだけどどうするの？　」と、オリエラが問う。

「街まちへ、買いものだオラー！」

「買い物！　やったー！　」
　
　こうやって何かから、やっとな逃れたような、開放感の中、僕達は街へ行く。
（ぬいぬい、オラー！　って……）
　
　

　　　　　　つづく

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