魔王がやって来たので

もち雪

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王の命

魔石回収

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 腐臭の渦巻く大地で、女王蟻の死体は、直視出来ない。しかしみんな女王蟻に、わらわらと集まっている。

「ありましたよー! 魔石、後、涙石」

 魔石より、大きく、魔物の主からのみ取れる涙の様な形状をしているのが涙石だ。魔石や涙石も出所が出所だけに、装飾に使われる事は、少ない。魔法で効果を高めるために、黒魔術師使う装備にはめ込む程度だ。他の職は、けがれの概念がある為そう使われる事はないようだ。後の使い道は、黒魔術師が、独自の魔法の補助で使うのと錬金術師が怪しいものを作る為に使用してるらしい。ちなみに魔法攻撃を吸収してるようで、属性の攻撃には強いらしく滅多に魔物を倒して消失してましたと言う事はないようだ。

 蟻の上に易々と登って行った保護色の装備を着た狩人ぽい彼は、無造作にぽいぽと金髪イケメンの戦士に、魔石達を投げ渡している。

「これで全部」そう言って、また魔石を戦士に投げる。

これ女王蟻どうする? 焼くか?」

「女王蟻の死体なら、錬金術師達が何とかしてくれるだろう。後で、ギルド本部陣営で申請するよ」

 彼は、振り返り僕と視線が合う。

「しろし、手を出して」そう言うと、手を出した黒魔術師の2つの手のひらの上に、戦士は今まで受け取った魔石と涙石を流し込んだ。

「なんて事をするんだラアキ! 僕は、君みたいな頑丈な造りの体じゃないんだぞ!! 怪我するんじゃないか!」

「しろし、ごめん、ごめん」

 ラアキさんはそう言うと、彼は振り返りながら顔の前で片手でを前後に振り、こちらへ歩いてくる。

 僕は、ミッシェルとスドウの間を「ごめん」と言いながら通りぬけ、ラキアさんの前に立つ。

「このパーティーのリーダーをしているハヤトです。今回は助けて貰ったみたいで、ありがとうございます」

「いえいえ、チーム『黄昏のリーダー』のラアキです。よろしく。ところでアリの巣の中に降りる算段は付いているの? 良かったらうちも、報酬1割で、魔石を拾って来ようか?」

「僕は、頼もうと思っているけど異論のある人は居る?」

 オリエラ、ミッシェル、スドウは、皆、首を横に振る。

「お願いします。」

「フウクェ、そういうわけで頼むよ」

「ラアキ、そういう事はまず俺に聞けよ!」狩人は、降りて来ると両手を腰にやりイラついた声を出す。

「行ってくれないのかい?」

「行くが、晩飯はお前のおごりだからな」

「お手柔らかに、頼む」そう言ったラアキに返事もせず、狩人の彼は帽子と手袋を付けなおし、口にタオルをまく。近くの木にロープをまくともう片方の端にはバケツを括り付ける。そのまま下に降りていった。地上に残るのは、スドウと、神父とオリエラと決まった。

 全員、恐々穴のなかに着くと無数のアリ横たわっている。各自でわかれて、魔石を集めるが各自でテンションが下がる。

「これ微生物くんを使うしかない……仕方ないなぁフウクェに買うのを嫌がってたけど、微生物くんを使うしか手の施し用がないし――」

 黒魔術師のしろしさんが、フウクェさんを凄く煽っている。

「いいから使えよしろし」

 フウクェさんは、小さなしろしさんを見下ろしながら眺めいる。しろしさんは、笑顔でフウクェさんを見つめると虫かごの横の蓋を開けた。そこから青い何かが一斉に飛び出した。
 ふわふわ飛ぶそれは、アリに群がるアリを崩壊させて土にえていく。その中央に魔石が3つごろんと転がった。

「しるしさん微生物くんってなんなんですか?」

「錬金術師グループ『アジアフロント』のメンバーが作ったか、発見か、したやつだよ。死んだ魔物のお掃除生物らしい。なんでも……魔物の一部をビーカーに入れて実験途中に寝たら次の日、ビーカーにいたらしい」

「それって作ったんじゃないんですか?」

「そうかもしれないが、誰も見てない状態で発生してるぽいし、よくわかんない、一人は寝ている事が大切らしい。ちなみ、生きた生物を与えると3日は出てこなくてなるから、買った時は、気をつけて」

「そうなんですね。情報ありがとうございます」
 彼と話している間に、多くの蟻が土へとかえっていく。

 微生物くんは瞬く間に、1つのエリアを制覇し、勝手に下のエリアへと移動して行く。魔物の蟻は、普通の蟻と違い巣をそこまで深く掘らないようだが、それでも多くの魔石が集まった。

 微生物くんは、終わり間際に女王蟻の掘った空洞から逃げない様に――。

「微生物くん! 飴あるよ――!集まって――!」
 と、言うと彼の元に集まって来て、飴を頭の上に乗せて虫かごの中に入って行った。

「全部で、7ふわだからokだね」そう言うとしるしは、虫かごの蓋を閉めてリュックに吊るした。

 僕達は、女王蟻の巣からでると、鞄三つ分ある。魔石を確認すると――。

「数を数えるのは、しんどいから半分づつで、この鞄を半分に分けようか……」

 ラアキは、ひとしきり笑うと、「そちらのチームがいいのならうちの女王蟻の報酬も涙2つ、魔石は4つでいいですよ」と言って、反対するものがいなかったので、分け合った。まぁ……正直、鞄を半分にするのも疲れてしんどかった……。

 帰りは、別に帰るのでルイスから貰っていた。
 うちのパーティの名刺を差し出した。

「これ、うちの新しい名刺なんですが…」

「ありがとうございます。うちの名刺もどうぞ」

 チーム黄昏か…かっこいいチーム名だな……。
「チーム名、勇者パーティーあぁ……貴方が召喚された勇者様なのですね」

「えっ……?!えつ!!」
 僕が、名刺を見返すと読めなかった字が勇者って読める!!
 
「本当だ……勇者って……書いてある……」

「えっ?! 今まで知らなかったんですか?」

 ラアキは、笑いを隠すが……隠れてない。

「こちらの言葉は、魔法的な要素でわかるですが……注視してなかったからなのか理解出来なかったみたいで……そうか……勇者パーティだったのか……」

「何は、ともあれこちらの世界では、勇者は希望の象徴ですから頑張ってください」

「ありがとうございます。では、いろいろお世話になりました」

「こちらこそ、ではま……うん?」彼のそばには、ミッシェルとスドウが居た。

「私は、これから個人でギルドサポート事務所を立ち上げようと思いています。ミシェルと言います。良かったらこれ……私の名刺なのですが……。お困りの時はこちらにお手紙ください」

「おいどんは、荷物運びをフリーでしてる……スドウといいます。おいどには名刺は、ありませんが……ギルド経由で空いている日程も確認予約出来るようになっているので宜しくお願いします」

「あはっ、じゃこれはうちの名刺です。ラアキと言います。改めてよろしくお願いします。……では、私は、これで……」

 そう言いチーム黄昏のメンバーは、帰って行った。

 つづく
 
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