魔王がやって来たので

それでも少しずつ歩む日々

どうしょうもない気持ち

「ハヤトの希望はわかりました。今、奪還のミッションの後、昨晩は皆様、ここで勇者の間でお休みになったので、もう一度リビングで同じ事を言っていただけますか？」

　と言う、ルイスの一言で、ふたたび魔王の間で、みんなの自己紹介と僕の願いが披露された。変わった事と言えば、昨日夜遅くまで、お酒を珍しく飲んだぬいぬいが始終眠りこけながら、オリエラに起こされてたのと、ミッシェルが、抗議していたのと、シルエットが……。

「ここは、みんな可愛い子ばっかりで天国かしら」と言っていた。

　僕とフィーナの事については、彼女の種族や魔王の幹部と言う事については皆、結構沈黙し、オリエラとミッシェルが、学生が聞く事を根ほり葉ほり聞いて来た。

　そしてフィーナは、「皆さん楽しい方ばかりですね」と言っていた。

　あ……もちろんレンは、勇者の間に泊まったらしいが、朝も明けない内に出発したので彼女とは、何も話していない。

　そんな騒がしい一日もここ大豆畑で、日が暮れようとしている。フィーナとシルェットとミッシェル、ルイス組は、ギルドに行って彼女達について、レンに相談に行っている。そして僕は、フィーナが来た事であいまいだったウンディーネの関係について少しでもはっきりさせてくださいよって言う、ルイスの提案で大豆畑に二人といる。

　……しかしウンディーネの事の発端は、ルイスでは？と、思わずにはいられない、今日この頃。

　道沿いの畑、テニスコート位の大きなさの畑に、大豆の苗が、風に煽られて揺れている。まだまだ冷たさを感じない風に苛立ちを感じながら、畑に水を撒く。ウンディーネいつも通り黙々と、雑草を抜いている。
　いや……いつも通りではないか……やはりどこか沈んでいるようだ。

「ウンディーネ、水をすべて撒き終わったし、もうそろそろ帰ろうか？」そう言ったらいつも子犬の様にやって来るのに、今日もウンディーネまだ黙々と雑草を抜く。

「主様、シルスさんの馬見た事ある？」

「いや、ないよ」

「シルスさんとその馬は、戦場でいつも一緒に駆けるんですって、その馬は女の子でいつも信頼しあっているみたい。私は、少しうらやましいと思った。ウンディーネと人間の関係もそうだったら、私も他の人間を愛したウンディーネみたいに消える事はないのにって思ってた」

「でも、君は馬じゃないよ。ウンディーネ」

「だってしらないんだもん、私が知る人間とウンディーネの恋は、いつも悲恋で……。そんな恋しか出来ないウンディーネしか知らない。だから……ウンディーネは、考えを変えるべきだと思った。貴方をしってそうすれば……ウンディーネでいられるって。主様あるじさま、お願い私のいままでの人生を否定しないで……お願い……」

　いつもはよく泣くウンディーネは、今日は泣いてない。なんか不意に喰らったウンディーネの告白……。

「ウンディーネ、そんなの辛すぎるよ……」

　僕が、さきに泣いてしまったので、彼女も僕につられて泣いてしまう。この感情は、たぶん恋じゃない……。でも、ウンディーネに泣かれるのもとてもいやなんだ……。

　あ……ほんと……僕は、駄目だ……。

　　　　　　　　　　　　つづく