魔王がやって来たので

もち雪

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旅立った僕達

朝飯!

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 ゲーストハウスの朝は眩しい。

 正確に言うと、僕の部屋の朝は直射日光で、きつい。

 あまりに起きない僕にルイスの一言がはっせられる。

「そんなに起きられないのなら、夜にカーテンをしないで寝てみてはどうですか?」

 優し気な笑顔と物言いだった……。

 昨日のデートでは、晩御飯前に帰ったが、それまでは近くの港に寄って砂浜の見える道の上から、僕達は水平線に沈む太陽を眺めていた。

 フィーナは占いの結果を聞いたからから、遠い空の下の魔王の城の魔王とよしのさんと言う人に思いをはせている様に夕焼けのもっと向こうを見ているようだった。

 そんな彼女は神秘的で、手に入れてはいけない月の姫を思い起こさせる。

 僕に気付いた彼女は、「元気ではない私を見られると少し苦手ですかね。だから今はちょっとだけ見ないで貰えると嬉しいです。後、ちょっとだけ……そうすればまた元気で笑えると思うのです」

 そう言った彼女は僕の顔を手で覆い、横を向いてしまう。僕はその手を両手で、掴んで手の裏を少し舐めてしまう。

「なんでこんな事するんですか? 人の手をとかを勝手に舐めちゃだめです。私は怒っているんですよ!」

「ごめんなさい」

「まず、どうしてこんな事をしたのか言ってください」

「君の気持ちはわかるから、だから君がとる僕との距離を、踏む込むキスや抱きしめる事は今の僕には出来ない。手の裏にキスもがらじゃない。だから犬や猫みたいな原始的な接触方法を僕はとってしまいました。元気じゃない君はほっとけないからね」

「う……ん」
 彼女は、口もとに手をやり少し考えるポーズをすると……、いきなり僕に視線を向ける。

「ハヤト、手を広げてください」

「あぁ……はい」
 僕は深呼吸の息を吐く様な恰好になった。そうすると、彼女が僕の腕の中に飛び込んできて僕達は抱き合う形になる。

「こうすれば、二人の希望がクリアーできます。だから勝手に手を舐めてはいけません」

「わかった。これからは舐めると時はフィーナの許可を取るね」

「そうしてください」

 ――僕達は少しエッチな会話をしているのを、彼女がわかって言っているのか疑問だけど、その後フィーナが僕から離れて……「帰りましょうか」と言って二人で一緒に手をつないで帰って来た。

 そんな事を思い出している僕はまだ布団の上、それでも起きなければならないので、その準備にかかった。

            ☆

 すべての準備が、出来たらキッチンではオリエラが待っていた。

 彼女の朝の挨拶をし、すぐさまジャンケンをする。見事グーで勝利!。

「オリエラ監督よろしくお願いします」

「あ……はい」

 と言うわけで、オリエラ監督と朝ごはんを作る。

 キッチンは、レストランの厨房ぐらいの広さで、ここには魔法のコンロがある。魔法の冷蔵庫まである。べらぼうに異世界魔法技術向上都市なのである。

「えっと……、さっき冷蔵庫の中をみたらだいたい材料揃っていたので、今日はオーソドックスに、スクランブルエッグに付け合わせは、缶詰のコーンを塩コショウで炒めて、ほうれん草もかな?後は、コッペパン付ければいいでしょう。美味しいものばかり食べてると、旅に、出た時辛いし」

「じゃーオリエラ監督は、スクランブルエッグとその他どっちやる?」

「私はねーもちろんスクランブルエッグだよー。この前は、少し焦げて失敗したからその屈辱を絶対晴らしたい。もー師匠は、舌があるるさんのご飯でこえてるから難しいだろうけど、師匠が思わず褒めるくらいには料理を極めたいんですよー」

「オリエラ頑張ろう! 打倒ぬいぬい!」

「師匠を打倒しちゃーだめだよー美味しいって言わせなきゃ。でも、ハヤトありがとう! 頑張る」

 そうして僕達姉弟コンビは、メシウマのあるるさんの手料理で、舌が肥えてしまっているぬいぬいを唸らせる事をご飯作りの活動の源としていた。

 まず、お皿の重ねて用意して、ほうれん草を切りザルでざっと洗う、沸騰したお湯に入れて茹で、またざるにあげるとコーンをぶち込む。

 その間に、パンの皿をダイニングテーブルに持って行ってパンを乗せて置いておく。

 そこまでしたらオリエラの手伝いに少し入る。

 一人分の卵と塩コショウと牛乳入れて、スクランブルエッグを焼いて今日は2枚焼いたら、ほうれん草とコーンをバターと塩コショウで混ぜて焼けば出来上がりだけど……。

 まぁ味はほぼ一緒だけど、スクランブルエッグには、トマトケチャップの瓶でも置いとけばいいか机に。

 とりあえずキッチンの料理器具を洗ってれば、来た人から勝手にコップとか持って行ってくれるので、フライパン類以外、片付けも一通り済んだところで。

「ハヤト、こっちも出来たから食べるよ!」と、オリエラ監督が呼んだので僕達は朝ごはんを食べる。

「卵に関しては、焼き加減も丁寧でよく出来てる。とても美味しい。腕をあげたな」

 僕達に聞かれて、師匠のぬいぬいがスクランブルエッグを食べてそう言った。

「やったー!」オリエラが声を歓喜の声をあげる。

「ほうれん草とコーンも美味しいけど、一緒にしたのか……」

 僕の担当の方の感想は、いまいちだったようだ。

「別の味にするのはいろいろ大変だんですよ……」

 僕はそう言って返す。「まぁそれはそうだが……」と言う返事だった。

 肝心のぬいぬいの料理も実は、結構おいしい……。そして彼は、分けて作る派なのだ。
 
 しかし彼は料理は、彼の魔法に対する向き合い方と同じように、料理に対しても繊細で素晴らしいものを作りだしてしまう。そうするとみんな腹ペコになってしまうので、だいたいは手際の良いルイスか、フィーナ達と料理を組んで作らねばならなくなってしまうのだ。

 でも、たまに食べたくなる味なんだよね――困ったことに。

  つづく
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