魔王がやって来たので

もち雪

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エピローグ

鮮やか色たちが駆け抜ける

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 (長い間ありがとうございました! 全部で、3箇所に書いてましたが、ここでしか読まれない日々が続きました。あの時、さすがここで読まれなくなったら、ここまで書けなかったと思います。ありがとうございました! では、またいつか。)

 時間経過は、魔王城に何の変化を与える事が出来ないように、そこにあった。
 ここは魔王の城の王座の間、眠る様に座っている魔王の前に、水色の流れような髪の見目麗しい男が現れる。

「君に新しい予言を授けに来たよ。もうすぐ新しい勇者が生まれる。また新しくチェスをしよう」

「アポストロフィ、我はお前とはチェスをした事もないし、これからもせん」
 魔王は肘掛けに、腰掛けた若い男を睨み付ける。そんな魔王を彼はせせら笑う。

「それでは君を、この地に落とした意味はないじゃないか。堕ちた世界の堕ちた妖精王、一緒に楽しもうよ。そのためにこの世界はある」

「たとえそうだとしても、お前の思う通りにはいかんよ」

 バサァバサァバサァ 

 青い鳥が扉を開け飛び込んで来た。そして彼らの前にて、人間の侍に変化し、一寸の猶予もなく魔王の好まざれざる人物に切りつける。

 ザァーーン!!

 けれど好まれざる客はその刃が、届く前にかき消えた。しかし部屋全体に響き渡る彼の声……。
「妖精王、君の番犬は本当に最悪だ。調教をしなよ」

「確かに」魔王は小さな声で呟いた。

 侍は、剣先を確認すると、「切れた気配もねぇ。おい、ヤーグ、俺の言うべきのか言葉じゃねぇが、本当に友だちは選べよ。アイツの好きなようにさせとくな」

 目付きの悪い侍の目が、刃物の刃の様な暗い光を放つ。

 そんな侍に、ただ静かに……「フィーナとハヤトの結婚記念日の土産は持ったか? 孫の分もだぞ」と、魔王は答えるのみ。

「お前、俺の話聞いてんのか? ……けっ、お得意の隠し事か、土産の件は孫の分まで時治がもう用意してたぞ。それに鳥の俺が可愛く歌う、って余興だけで十分だろう?」

「しかしだな……、やはり歌う時だけ、鳥の鳴き声に変えてやろうか?」

「駄目だ、せっかく鳥の鳴き真似の練習したんだ。絶体に駄目だ」

 そう言って、彼らは玉座の間から出て行った。玉座の端に置かれている。おもちゃ箱の椅子に座っているライオンのぬいぐるみが、ただ居るのみになってしまった。
            ☆

 ムーンドイルの近くの森林。
 森の木々の中に出来た小さな花畑。鬱蒼とした森のそこにだけ燦々と光は降り注いでいる。

 そこへ頭の黒い狐の耳がくるくると動く、黒い髪の男の子がやって来る。

 そして眠って少女の顔の上の、水色の髪を手で優しく横に流す。少女は花畑のちょっと上を、プカプカ浮きながらまだ起きる様子はないようだ。

「ウンディーネ、起きてー! もうお城に行くって! 起きてよ」

 その声を聞き彼女は、目を開けてアクアマリンの瞳で、男の子を見る。
「主様……」

 そう言った後、ウンディーネは目を見開き、そして男の子とは反対に寝返りをうってしまった。
「とうしたの? 子分……えっと、何号?」

「知らないよ、僕はエクラで一人しか居ないよ」

 男の子は彼女の前にまわり込む。それで気まずくなった彼女は体を起こす。娘盛りの彼女には、小さな男の子を相手をするのが苦手なのか、彼女は男の子とあまり目を合わせない。

「ウンディーネ、小さく座って」
「う……ん、はい」
 彼女は気が乗らなさそうにではあるが、座った。

「レイン、今日の花だよ。僕の家で育てたんだ。狐は自分の愛を間違えない。いつか、本物を貰ってね」

 花を受け取った、ウンディーネは眉間におもいっきり皺を寄せる。
「絶対に違うと思う」

「それでも……、いいや、あんまりしつこいと嫌われるって、お祖父ちゃんも、お父さんも言ってたしー」

                ☆

 ある日ハヤトたちに、お客さんが来ると頼まれ留守番をした。

 やって来たのは、ルイス達とエクラ。

 ハヤトの子分の仲間たちは、ダイニングテーブルの前の椅子に座れと言うから座った。

 そしてエクラはルイスに手渡された、凄ーく美味しそうなフルーツケーキたちと紅茶をテーブルに置くとーー。

「学校の魔法の初歩の授業で、水の精霊について勉強をして、ウンディーネにそれぞれ名前がある事を教えて貰ったの。お祖父ちゃんは『絶対教え貰えないと思う』って言ったけど『挑戦する事は止めないよ』って、だから最初の挑戦だよ! 僕の誕生日プレゼントの代わりに頼んだ、ウンディーネの為のケーキをぜーーんぶウンディーネが食べていいよ。だから、僕だけに名前教えて」

 ケーキは巨砲や林檎の砂糖漬け、桃のケーキとか何種類もあった。

 ケーキは宝石の様にキラキラ、甘くて、ふわふわしてそうで、凄く美味しそう。ウンディーネの為に、このケーキは発明されたのかもしれない。名前か、名前くらい……う……ん。

「ウンデーネが、教えるの嫌と言ったら?」
「えっ……、食べないの……?」

 半分くらい、エクラは泣きかけてる……、うん、仕方ない。こういう事もあるってウンディーネが教えてあげなきゃ。でも…………。
「食べる」「う……ん、ウンディーネの為のケーキだから、ウンディーネのどうぞ」

「やったーー!」エクラは、両手をあげて喜んでた。

「ウンデーネのためにヤトが、頑張って作ったので、食べる事を選んでいただいてよかったです」

「当然の選択だけど、ウンディーネの好きなものを、ルイスに聞い作ったかいがあっわ」

 ーーむむむ。教えなくても良くなった……?、うーん、ダメかも? こういう時のルイスは苦手。

「食べてからだから、後、これ全部、ウンディーネのだから……」

 お・い・し・い! ケーキの上の巨峰は、果汁いっぱいで瑞々しく、林檎も桃も砂糖漬けされて甘いのに、ちゃんとりんごなの! ももなの!味がちゃんとフルーツ。これは幸せかもしれない。

 そして残り同じ苺ケーキが、2つ。あれ? 3人ともにこにこ笑ってけど……、子分1号……。

「エクラ、エクラもハヤトの子分だから苺のケーキあげます」

「大丈夫だよ。君が食べなよ」

「いいのー、子分の世界いろいろなのー」

 そう言った私の言葉を聞いて、ヤトは笑ってだけど、すまし顔してるルイスは、姿は少し変わったけど……。うーんん

「やっぱりルイスは、いつか、絶対倒します!」
「えっ何で!? ルイスさん凄く優しいのに!?」「アハハハハ」

「ヤト、貴方はちょっと笑い過ぎです」

 そしてエクラが「ヤトさんのケーキはとても美味しいけど、今が一番美味しいかも?」と、フォークに刺さった苺を持ちながらいった。

「ウンディーネが、ケーキあげるの今回だから……」
「うんわかった」

 ……そんな事があった。

 でも、でも……ウンディーネは、世界で一番ハヤトが一番好き。永遠に好き。







 ーー「それでも……そんな君が一番好きだよ。僕は狐だから絶対に間違えないよ」
 
 目の前に居るのは、ムーンドイルに新しく作られた勇者のための教会での儀式を、先日終えたばかりのよく知る青年。 

 その時、遠い昔ウンディーネを捉えて離さなかった、草原を吹き抜ける緑の香りがウンディーネの心を駆け抜けた。
 
    終わり





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