13 / 30
12話 ドラゴンテイルの朝の風景
しおりを挟む
目を覚ますと太助はティカとリンを掛け布団にしているようにベッドで寝ていた。
目覚めは正直、良いとは言えない。
理由は太助の祖母、ホーラに手加減なしの蹴りを人中に受けて気絶したからだと覚えていた為である。
大口を開けて豪快に寝るティカと太助の首に抱きつくようにスースーと大人しく寝るリンに笑みが浮かぶ。
そっと目を窓に向けるといつも起きる時間より少し早い程度だと分かると2人を起こさないようにベッドから降りると傍にあるテーブルに一枚の紙がある事に気付いて手に取る。
「ジッちゃんらしいな……」
紙を見つめながら苦笑を浮かべる太助が目にしたのは雄一の字で『後は任せろ』と書かれた説明すら端折り、どこからどこまで? と問いたくなるような置き手紙であった。
だが、太助はあの雄一の孫。
当然のようにその言葉を意味を良く分かっていた。
「まったく、ジッちゃんに尻拭いさせる俺はまだまだだな……」
今回の騒動を落ち着かせるところの最後までという意味である。
そして、太助も気付いている。
太助の為にではなく、ドラゴンテイルにいる少女達、特に今回、渦中にカリーナが一日も早くこちらに溶け込めるように雄一が動くのだと。
だから、太助が亜人に関わる問題は解決するという言葉を吐いたギリギリの面子を守れる領域までしか介入をしない。
情けない気持ちを掻きだすように頭を掻きながら太助は作業場へと足を向ける。
「今日はカリーナの冒険者登録と初依頼に同行しないといけないし、時間もないから気合い入れるか!」
零細コミュニティ、ドラゴンテイルはいつでも貧窮していた。本当なら少しはカリーナを休ませてあげたいと思うが、ダンガに溶け込むという理由もあるがやはり働いて貰わないといけない。
その辺りの事情はロスワイゼがしてくれているだろうと太助は思う。テルルの時も言い難そうにする太助に代わって言ってくれていた。
再び、色々と情けなくなった太助は深い溜息を零す。
ヘコんだ自分に活を入れる。僅かとはいえ、収入源にもなっているポーション作成をする為に太助は仕事道具を取り出し始めた。
▼
それから無心にポーション作りに勤しんでいた太助が乳鉢に入れた薬草を乳棒で擦り終えたところで背中にティカとリンが飛び付く。
乳鉢の中で擦り終えた薬草が零れないように押さえる太助の顔の両端から2人が顔を突き出してくる。
「タスケ、ご飯なのだ!」
「今日はお魚さんデシ!」
早く、早くと揺する2人に苦笑いさせられる太助は「分かった、分かった」と乳鉢に出来たポーションの材料の1つを小瓶に移す。
無事に済ませ、立ち上がると揺すってた2人に向き合う。
「もうちょっとで零すかと思っただろう?」
両手を上げて「がおぉ!」とモンスターのフリをすると2人は楽しそうに高い声を上げて逃げ出す。
それを追いかける太助はギリギリ逃げれてるように演出し、食卓の近くに来た瞬間、2人同時に抱き抱える。
「ようし、悪戯っ子を掴まえたぞ?」
「捕まったデシ!」
「くそう、明日は逃げ切ってみせるのだ!」
終始嬉しそうにする2人と笑い合う太助の背後に人の気配を感じて振り返る。
そこには眠くて機嫌の悪いと思われるカリーナが見下すように見てくる。
不機嫌なカリーナの視線に呻かされる太助。
「朝から元気よね……」
「そうか、吸血鬼は総じて朝が苦手だっけ?」
頭を押さえて辛そうにするカリーナが溜息混じりに答える。
「血が足りてたらもう少しはマシなんだけどね」
「そう言えばそうよねぇ? タスケちゃん、血を少し分けてあげたら?」
台所からテルルと一緒に食事を運びこんできたロスワイゼに言われて、今、気付いた様子の太助がティカとリンを床に下ろす。
カリーナに近寄り、「どこから血を?」と甚平の腕を捲ったりする太助。
「ごめんね、気が利かなくて?」
「い、いらないわよ! アンタの血なんて!」
急に元気になったように顔を真っ赤にするカリーナは太助を指差して「馬鹿、馬鹿でしょ!」と本人も何を言いたいのか分からないらしく、とりあえず罵倒する。
拒否するカリーナを見てロスワイゼは食器をテーブルに置いて空いた手で頬づえするようにして困ったように綺麗な眉をハの字にして見つめる。
「とはいえ、今日は冒険者ギルドの登録と初依頼でしょ? それじゃもたないわよぉ?」
同性である私達では無理だと困るロスワイゼ。
それを見上げるティカが朝食の匂いに誘われてやってきたタヌキを掴まえるとカリーナに掲げる。
「タスケが嫌ならタヌキなのだ! タヌキは雄なのだ!」
「……気持ちだけ受け取っとくわ」
一瞬、大慌てしたタヌキだったがカリーナに拒絶されてホッとした様子を見せた後、何か落ち込むように項垂れる。
何やらヘコんでいるらしいタヌキを慰めるティカとリンを横目に太助が近寄る。
「追々、何か違う方法を考えるから当面は俺ので我慢してくれないか?」
「分かったわよ……」
妥協してくれたとホッと胸を撫で下ろす太助であったが、どこから血を摂取するのか分からず困っていると少し拗ねたような顔をするテルルが口を開く。
「……首筋からが効率的と聞いた事があります」
「そうなの? ありがとう、テルル」
テルルの微妙な表情に気付きもしない太助は嬉しそうに感謝を告げると首筋を出して後ろを向く。
一瞬、躊躇する様子を見せたカリーナを目だけを向ける太助に目を逸らすカリーナ。
「知らないわよ?」
「えっ、何が?」
振り返ろうとした太助だったが首筋に2つの尖ったモノが当たるのに気付いて動きを止める。
そして、すぐに太助の悲鳴が響き渡り、それが合図になったように残るメンバーは食卓に着いて手を合わせて「いただきます」をして食事が始まった。
目覚めは正直、良いとは言えない。
理由は太助の祖母、ホーラに手加減なしの蹴りを人中に受けて気絶したからだと覚えていた為である。
大口を開けて豪快に寝るティカと太助の首に抱きつくようにスースーと大人しく寝るリンに笑みが浮かぶ。
そっと目を窓に向けるといつも起きる時間より少し早い程度だと分かると2人を起こさないようにベッドから降りると傍にあるテーブルに一枚の紙がある事に気付いて手に取る。
「ジッちゃんらしいな……」
紙を見つめながら苦笑を浮かべる太助が目にしたのは雄一の字で『後は任せろ』と書かれた説明すら端折り、どこからどこまで? と問いたくなるような置き手紙であった。
だが、太助はあの雄一の孫。
当然のようにその言葉を意味を良く分かっていた。
「まったく、ジッちゃんに尻拭いさせる俺はまだまだだな……」
今回の騒動を落ち着かせるところの最後までという意味である。
そして、太助も気付いている。
太助の為にではなく、ドラゴンテイルにいる少女達、特に今回、渦中にカリーナが一日も早くこちらに溶け込めるように雄一が動くのだと。
だから、太助が亜人に関わる問題は解決するという言葉を吐いたギリギリの面子を守れる領域までしか介入をしない。
情けない気持ちを掻きだすように頭を掻きながら太助は作業場へと足を向ける。
「今日はカリーナの冒険者登録と初依頼に同行しないといけないし、時間もないから気合い入れるか!」
零細コミュニティ、ドラゴンテイルはいつでも貧窮していた。本当なら少しはカリーナを休ませてあげたいと思うが、ダンガに溶け込むという理由もあるがやはり働いて貰わないといけない。
その辺りの事情はロスワイゼがしてくれているだろうと太助は思う。テルルの時も言い難そうにする太助に代わって言ってくれていた。
再び、色々と情けなくなった太助は深い溜息を零す。
ヘコんだ自分に活を入れる。僅かとはいえ、収入源にもなっているポーション作成をする為に太助は仕事道具を取り出し始めた。
▼
それから無心にポーション作りに勤しんでいた太助が乳鉢に入れた薬草を乳棒で擦り終えたところで背中にティカとリンが飛び付く。
乳鉢の中で擦り終えた薬草が零れないように押さえる太助の顔の両端から2人が顔を突き出してくる。
「タスケ、ご飯なのだ!」
「今日はお魚さんデシ!」
早く、早くと揺する2人に苦笑いさせられる太助は「分かった、分かった」と乳鉢に出来たポーションの材料の1つを小瓶に移す。
無事に済ませ、立ち上がると揺すってた2人に向き合う。
「もうちょっとで零すかと思っただろう?」
両手を上げて「がおぉ!」とモンスターのフリをすると2人は楽しそうに高い声を上げて逃げ出す。
それを追いかける太助はギリギリ逃げれてるように演出し、食卓の近くに来た瞬間、2人同時に抱き抱える。
「ようし、悪戯っ子を掴まえたぞ?」
「捕まったデシ!」
「くそう、明日は逃げ切ってみせるのだ!」
終始嬉しそうにする2人と笑い合う太助の背後に人の気配を感じて振り返る。
そこには眠くて機嫌の悪いと思われるカリーナが見下すように見てくる。
不機嫌なカリーナの視線に呻かされる太助。
「朝から元気よね……」
「そうか、吸血鬼は総じて朝が苦手だっけ?」
頭を押さえて辛そうにするカリーナが溜息混じりに答える。
「血が足りてたらもう少しはマシなんだけどね」
「そう言えばそうよねぇ? タスケちゃん、血を少し分けてあげたら?」
台所からテルルと一緒に食事を運びこんできたロスワイゼに言われて、今、気付いた様子の太助がティカとリンを床に下ろす。
カリーナに近寄り、「どこから血を?」と甚平の腕を捲ったりする太助。
「ごめんね、気が利かなくて?」
「い、いらないわよ! アンタの血なんて!」
急に元気になったように顔を真っ赤にするカリーナは太助を指差して「馬鹿、馬鹿でしょ!」と本人も何を言いたいのか分からないらしく、とりあえず罵倒する。
拒否するカリーナを見てロスワイゼは食器をテーブルに置いて空いた手で頬づえするようにして困ったように綺麗な眉をハの字にして見つめる。
「とはいえ、今日は冒険者ギルドの登録と初依頼でしょ? それじゃもたないわよぉ?」
同性である私達では無理だと困るロスワイゼ。
それを見上げるティカが朝食の匂いに誘われてやってきたタヌキを掴まえるとカリーナに掲げる。
「タスケが嫌ならタヌキなのだ! タヌキは雄なのだ!」
「……気持ちだけ受け取っとくわ」
一瞬、大慌てしたタヌキだったがカリーナに拒絶されてホッとした様子を見せた後、何か落ち込むように項垂れる。
何やらヘコんでいるらしいタヌキを慰めるティカとリンを横目に太助が近寄る。
「追々、何か違う方法を考えるから当面は俺ので我慢してくれないか?」
「分かったわよ……」
妥協してくれたとホッと胸を撫で下ろす太助であったが、どこから血を摂取するのか分からず困っていると少し拗ねたような顔をするテルルが口を開く。
「……首筋からが効率的と聞いた事があります」
「そうなの? ありがとう、テルル」
テルルの微妙な表情に気付きもしない太助は嬉しそうに感謝を告げると首筋を出して後ろを向く。
一瞬、躊躇する様子を見せたカリーナを目だけを向ける太助に目を逸らすカリーナ。
「知らないわよ?」
「えっ、何が?」
振り返ろうとした太助だったが首筋に2つの尖ったモノが当たるのに気付いて動きを止める。
そして、すぐに太助の悲鳴が響き渡り、それが合図になったように残るメンバーは食卓に着いて手を合わせて「いただきます」をして食事が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる